大阪の建物、歴史香る――登録有形文化財が最多

 
              
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大阪の建物、歴史香る――登録有形文化財が最多

2008/12/22配信

1階部分をカフェとして活用する生駒ビルヂング(大阪市中央区)
1階部分をカフェとして活用する生駒ビルヂング(大阪市中央区)

歴史を感じさせる地域といえば多くの人が京都を思い浮かべるだろうが、実は大阪こそ歴史の街だとの指摘がある。裏付けるのは国が指定する登録有形文化財(建造物)の数だ。大阪府は500あまりで、2位の兵庫県、3位の長野県などを引き離す。数多くの天災や大火、戦役をくぐり抜けた建物が、再び脚光を浴びようとしている。

 大阪市中央区の北浜から淀屋橋にかけて点在する大正から昭和初期の建物。代表的なのは大阪ガスビル(1933年)や北浜レトロビルヂング(12年)だろう。数百年にわたり経済の中心都市として栄えた大阪で、実業家らは北浜近辺に趣向を凝らした建物を建てた。第2次世界大戦などの被害を逃れ、今も当時の面影を伝えている。

 そんな建物を音声ガイド付きで巡るツアーがある。大阪市が企画して始まった「大阪まちあるき」がそれだ。市のサイトから無料の音声ファイルを取り込んで携帯音楽プレーヤーに転送し、同じくサイトからコース地図を印刷すれば準備オーケー。北浜の建物を巡るなら「レトロ浪漫中之島タイムトラベルコース」。語りは浜村淳さんで、淀屋橋から淀屋橋センタービルまでを独特の口調で案内してくれる。

 大阪市ゆとりとみどり振興局の森川久典担当係長は「大阪は歴史的な資源が豊富。音声ガイドを聞きながら思い思いに市内を散策し、大阪への理解を深めてほしい」と話す。市は携帯プレーヤーの貸し出しにも対応している。


 歴史的な建物はここ数年、レストランやアパレル関係の店舗に活用されるなど見直しの動きが広がっている。登録有形文化財の場合、建物そのものに影響を与えない内部の改装は認められている。

 大阪市中央区平野町にある生駒ビルヂング(生駒時計店)は30年の建設。時計塔のある独特の外観が特徴だ。1階にはイタリアンカフェが入る。店内を建物の内装に合わせた調度品で統一するなど風格のある落ち着いた造り。カフェの店長、船越直輝さん(29)は「お客さんからは『外国にいるような気分』と言われます」と笑顔で話す。

 大阪府の南部に目を移せば「自治都市」としての名残を感じさせる建物が多くある。

 大阪府貝塚市は寺院を中心に形成された「寺内町」の風情が残り、薬やしょうゆの醸造などの商家が並ぶ。市では秋から冬にかけて年に1度、回船問屋の「広海家住宅」を、応募した30人に公開。かつて寺内町で栄えた時代について市の職員が建物を紹介しながら説明してくれる。ほかにも大阪府内には八尾市や堺市に寺内町が多くあったとされ、各市に有形文化財として建物が残る。

 文化財保護を推進する大阪府教育委員会の林義久主査は「大阪は奈良時代の難波宮(なにわのみや)以来、経済の要衝だったため観光資源が多い。文化財の登録を進めるとともに、観光地を面としてアピールする必要がある」と話す。

 今年は新たに大阪市中央区平野町の「小川香料大阪支店」と大阪府豊中市の「府立桜塚高校」の塀が文化財に登録された。昭和初期の建物で、アールデコ様式の装飾に特徴がある。「登録有形文化財」と聞くといかめしい印象だが、実は身近な場所に点在している。

 通天閣や大阪城だけでない新しい大阪の魅力をアピールすれば、歴史好きの観光客らを呼び込む機会も広がるかもしれない。
(大阪経済部 佐々木元樹)

 ▼登録有形文化財 原則として築50年が過ぎた建築物や土木構造物などが対象。「国土の歴史的景観に寄与している」「造形の規範となっている」「再現するのが容易でない」などの条件があり、文化庁が登録する。ダムや煙突、トンネルなども登録されている。
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