ロバート・アラン・フェルドマン「回復シナリオか、没落まっしぐらか」
日本経済のとるべき道
いちばん厄介なのは、金融危機の発端となった住宅の価値をどう評価するかということです。
梶山寿子=インタビュー・構成 澁谷高晴=撮影
──アメリカ発の金融危機が世界を不安に陥れていますが、その発端となったサブプライムローン問題について、どうお考えですか。また、今回の危機はいつ頃から収束に向かうと見ておられますか。
いちばん厄介なのは、金融危機の発端となった住宅の価値をどう評価するかということです。日本のバブル崩壊では不良債権が焦点でしたが、アメリカのサブプライム問題では不良資産が問題になっている。つまり、住宅をつくりすぎてしまった。300平方メートル以上の広すぎる家や、極端な郊外に建ててしまった住宅も多く、その評価は非常に難しい。
貯蓄金融機関(S&L)の経営危機でも似たような問題がありましたが、当時と違うのは、サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅融資)が複雑に証券化されて、さまざまな金融商品に組み込まれたこと。住宅という有形資産を縦横に切り刻み、二次、三次証券化したため、現状では正確な価値の把握ができていないのです。
正しい値段がわかれば、どの金融機関がどれだけ損をしたかがはっきりする。評価が正当だと認識されれば、お金がそこへ向かって一気に動き出し、アメリカ経済は回復に向かうと思われます。当社の経済予測では、その時期を2009年後半と見ています。ただし、アメリカの住宅価格指数から判断すると、住宅価格はまだ下げ止まっていない。もう少しかかるかもしれませんが、09年後半以降の経済回復は可能ではないでしょうか。
今回の金融危機の本質は、実体経済にあります。むろん金融は絡んでいますが、住宅市場がおかしくなってしまったことに主因があるのです。サブプライムの貸し出し基準の緩さから、ろくに収入もないのに投機的にいくつも物件を買った人もいました。そういう人に同情の余地はないでしょう。ほんとうの被害者と、頭金なしで家を5軒も買った軽率な人、そして意図的にリスクを取って失敗した人を区別して救済するべきなのです。
個人資産においてキャッシュ、長期投資分などポートフォリオのバランスを考えるのはいわば当然のことですが、アメリカ人の多くがこれを無視してキャッシュを持たず、無謀なギャンブルのような投資に走ったのです。
──野村ホールディングスなど、いくつかの日本の金融機関が救済役を買って出ました。1980年代の「ジャパンマネー」の世界進出を彷彿とさせますが、当時の失敗を糧に、今度はうまくやれるでしょうか。
「日本の金融機関が世界の表舞台で再び活躍できることを印象づけた」という意味で、投資家にプラスの印象を与えたと思います。海外の金融機関と提携したり、出資をする機会は、今後もたくさんあると思います。
「日本は金融立国になれるのか」という議論も出ている。でも、本質的に問われるのは、「海外で活躍できるか」ではなく、まずは「国内の金融市場を次のステージにもっていけるか」ではないでしょうか。国内でやるべきことの一例が、地方の金融機関の再編です。達成できれば地方活性化にもつながりますが、縦割り行政などの弊害もあって、なかなかうまく進んでいないのが実情だと思います。
梶山 寿子
ノンフィクションライター
かじやま・すみこ●ニューヨーク大学大学院で修士号取得。TV局勤務、新聞記者を経てフリーとなり、社会、ビジネス、経営と幅広く執筆。主著に『ジブリマジック』『家族が壊れてゆく』『子どもをいじめるな』『雑草魂 アニメビジネスを変えた男』など。
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