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【社説】

ガザ空爆 全面戦闘の回避に動け

2008年12月29日

 イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの大規模空爆で、一日としては過去最悪の二百数十人が死亡した。武力の報復連鎖による全面的な戦闘の回避が急務だ。ここは双方に自制を求めたい。

 二十七日の空爆はガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスの関連施設約五十カ所に約五十機のイスラエル戦闘機がミサイルや爆弾約百発を撃ち込み、警察官の卒業式場では警察長官も死亡、負傷者は七百人を超すという。黒煙とがれきの中での救出劇が伝えられ、年の瀬の世界に衝撃を与えた。

 自治政府のアッバス議長は「卑劣な大量虐殺」と非難、国際社会の介入を求めたが、ハマスは「あらゆる手段を用いる」と報復を宣言。イスラエル側は「ガザからのロケット砲攻撃への自衛だ。必要な限り拡大する」とし、報復連鎖への逆戻りが強く懸念される。

 パレスチナは〇七年六月、ハマスが実効支配するガザと、アッバス議長率いる穏健派ファタハ支配のヨルダン川西岸の両自治区に分裂した。欧米はハマスへの経済支援を打ち切り、イスラエルもエジプトとの検問所を封鎖し、物資の搬入を止めた。

 今年六月にエジプトの仲介で停戦協定が発効したが、十一月に衝突が再燃した。今回は二十三日、イスラエルとの境界付近で民兵三人が同国軍の攻撃で死亡したことにハマスが報復、これにイスラエルが大規模空爆で応えたようだ。

 ハマス側はガザへの軍事攻勢に慎重とされるオバマ米新政権の誕生に期待をつなぎ、イスラエル攻撃を自粛、攻撃の多くはハマスに属さない過激派によるものとされる。だが、イスラエル側は「すべて責任は支配者のハマス」とし、オバマ氏就任前に駆け込み攻勢したとの指摘もある。

 イスラエルでは来年二月に総選挙がある。世論調査では和平に消極的な野党リクードが第一党になる可能性があり、政権与党カディマのリブニ党首(副首相兼外相)は弱腰非難を意識してハマスを糾弾、両者が引くに引けぬ状況に追い込まれたともいえる。

 だが、このまま武力報復を許すと全面戦闘に発展しかねない。欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領、さらには緊急に開かれた国連安保理が双方に即時停戦を要請した。経済危機に疲弊する国際社会も新たな不安材料を抱え込むことになる。イスラエルとハマス双方に報復連鎖を断ち切る決断を望みたい。

 

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