65歳以上の高齢者が市区町村などに納めている介護保険料は、約6割の自治体で使い切れずに黒字となる見通しであることがNPO法人・地域ケア政策ネットワーク(代表理事、大森弥・東大名誉教授)の分析でわかった。サービスの利用が自治体の見込み通り進んでいないためとみられ、来年4月の保険料改定に向けた課題となりそうだ。
同NPOメンバーの学識者と自治体職員が、介護保険を運営する市区町村や、その広域連合すべて(1669自治体、07年10月時点)のデータを分析した。
高齢者の介護保険料は、自治体が予測した3年間の保険給付の見込み額に基づき、その一定割合をまかなうように決めている。そこで同NPOは、実際の給付額から本当に必要だった高齢者1人あたりの保険料(必要額)を算出し、徴収している保険料と比べてみた。
その結果、必要額より保険料の方が5%以上多い自治体が1025あり、全体の約6割を占めた。うち717自治体では保険料が必要額より10%以上多く、20%以上多いところも229あった。
介護保険のサービスは各自治体が3年ごとに見直し、併せて高齢者の保険料を改定する。現行期間は06年度から今年度末までで「中間期の07年10月時点で保険料が必要額より5%以上多ければ、全体を通じ財政は黒字基調といえる」と、分析した池田省三・龍谷大学教授は指摘している。
余った保険料は「準備基金」として各自治体に積み立てられ、09年度以降の財源に繰り入れることもできる。
保険料が余る背景として池田教授は▽提供されているサービスが利用者にとって魅力的でない▽ケアマネジャーの介護計画に十分なサービスが盛り込まれていない――などの実情があるとし、「黒字の自治体は、09年度の保険料改定にあたってサービスの利用が進まない理由を分析する必要がある」としている。(小野智美、生井久美子)