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愛していますの叫び方タイトルNO.80036
    宮澤 [URL] 11/08(土) 15:39 IP:61.7.42.44 削除依頼

「ごめんなさい」

母の謝る声が耳をつく。

いいよ、別に。

そんなのお母さんが悪いことじゃないでしょ。

謝らないでよ、謝らないで。


「再婚相手を探して、あなたが寂しくないようにしたかったのに」

「私はお母さんと2人でも寂しくなんかない」

母の目に涙が溜まる。


「でもこのままじゃあなたは。私はもうすぐ」

「言わないでよ」


白い四角の部屋。

窓からは光が差し込み、棚には花が飾られている。

ベッドの横にはコードが垂れ、

その先にはナースコールがついている。


「ごめんなさい」

「謝らないで!」


私は叫んだ。

そんなの認めたみたいじゃない。

自分が生きることはもう無理だって言ってるみたいじゃない。


目には涙が溜まっている。

私はそれを、腕で拭った。


泣いたら認めたみたいだ。

お母さんは死なない。

死なない。

死んだりしない。


「泉、そろそろ学校へ向かわないと遅刻するんじゃない?
お願いだから、学校へは通って。お願い」

母は祈るような表情で私を見た。

私はその表情に、次々と出てきそうになる涙をぐっとこらえた。


「行ってきます、お母さん」

無理矢理笑顔を作ると、私は大股で学校へと向かった。



NO.1 宮澤 [URL] 11/08(土) 15:40 IP:61.7.42.44 削除依頼

高校2年、4月16日。

東京から福岡へと引越ししてきてから、初めての学校だった。


門をくぐったとき、始まりを告げるチャイムが鳴った。

キーンコーンカーンコーンという音は、東京も福岡も変わりない。

私は別に焦ることもなく、靴を脱いであいている靴箱に入れた。


あらかじめ買っておいたシューズを履き、

階段をのぼる。


2年4組。

頭の中で確認する。

高校での転入というのは少ない。

試験を受けたりと、手続きも大変だった。

母は入学手続きをしている際もあまり体調は良くなくて、

でも一生懸命で、この学校に入れたいと強い気持ちを持っていることは伝わってきた。

だから私も、あまり得意でない勉強を頑張った。

試験はとても緊張した。

落ちてしまったら、母はどれだけ悲しむだろうと。

だから今日からこの学校に通えることも良かったと思うし、

母が望むことだから頑張りたいとも思う。


私は2年4組のドアをとんとんと叩いた。

今は何の授業中だろう。

時間割をもらいはしたけれど、月曜の1時間目の授業なんて覚えていない。


私は返事も待たずにがらっとドアを開けた。

クラス中の視線が私に集まり、心臓がどくどくと動き出す。

「すみません、遅刻しました」

「おお来たな宮田!担任の小林です。
皆この子が朝話した転入生だ。ほら宮田、簡単に自己紹介」

一番前の席の人が持っている教科書には、

“日本史”と書かれている。

今はどうやら日本史の時間で、たまたま担任が担当だったようだ。


「宮田泉です。東京から来ました。
よろしくお願いします」

私は例文にあるような当たり前の言葉を言った。

先生が席を示し、その場所に座る。

窓際の一番後ろだった。

なんていい場所だろう。

NO.2 宮澤 [URL] 11/08(土) 15:42 IP:61.7.42.44 削除依頼

「では授業の続きを始めます」

まだ教科書の届いていない私のために、

先生はあらかじめ教科書の内容をコピーしてくれていた。


あいている窓から風が入ってくる。

あたたかい春の風。

2年間、私はただ使命のように学校に通い続け、卒業しよう。

友達なんていらない。

だって大切な人を作ることって、

傷つく一番の原因でしょう?


私はもう、

胸が締め付けられるような思いは嫌だ。

蒼白な顔でベッドに寝たきりの母を思い、

私は目をぎゅっと瞑った。


授業が終わって先生が出ていっても、

私が話しかけられるようなことはなかった。

もうグループができてきて、

ここには誰も入れませんというような線がひいてあるようだ。

皆教室内で騒いでいる。

次の授業もここであるようだ。


私は鏡を取り出して、自分を見た。

ぼさぼさだ。

朝母さんのところによりたくて、起きたままの髪。

手ぐしで髪をなぞってみると、

胸までいく中で2箇所絡まった。

もちろん化粧だってしてない。

前髪だって伸びきっていて目にかかっている。

ださいなぁ。


自分でも思うが、どうすることもない。

どう思われようが、関係なかった。

大して何をすることもなく、鏡を鞄にしまう。

さっきから視線が気になる。


「髪ぼさぼさじゃん」

ふと話しかけられ、私は顔を上げた。

前の席にいる茶髪の男が、

後ろを向いて私を見ている。

唇の端をあげて、笑っている。


NO.3 宮澤 [URL] 11/08(土) 15:43 IP:61.7.42.44 削除依頼


「どんだけ急いで来たのさ」


返す言葉が分からずに、

ただただ机を眺める。


「菅本奏(すがもとかなで)って言うんだけど、
前の席になったのも何かの縁だし?覚えてな」

顔をあげると、菅本は笑っていた。

「宮田泉」

私も名乗る。

目の前の男が、とても嬉しそうに笑った。

何がそんなに嬉しいの?

でもなぜかその笑顔がやきついて、離れなかった。


昼休みになった。

クラス中の机が急に動き出す。

弁当箱を持って教室を出ていくグループもいた。

“弁当を食べるグループ”というのがあるらしく、

私はあっという間にぽつんと取り残された。


1人で居た方が気が楽。

私は教室を出た。

どこだったらひとりになれるだろうか。

全然分からない校舎をぐるぐると回る。

「迷子?」

ふと、聞き覚えのある声で話しかけられた。

振り返ると、前の席の男だった。

確か菅本さんとか言う……

「飯食える場所を探してる?」

「え、あ、まぁ……」

「こっち」

“ついてきて”というようにスタスタと歩き出す。

私はとまどいながらもついていった。


NO.4 宮澤 [URL] 11/08(土) 16:08 IP:61.7.42.44 削除依頼

「ここ」

菅本さんがドアをあけたのは、

“視聴覚室”と書いてある場所。

うながされるように中に入ると、菅本さんがドアを閉めた。


「靴は脱いでね」

慌てて靴を脱いで奥に進む。

ふと前を見ると、“飲食禁止”と書いてある張り紙が目にとびこんできた。


「あの、ここ飲食禁止って……」

「へぇ、意外と真面目なんだね」

菅本さんは壁を背にして座ると、

サンドイッチを取り出した。

「ぼろぼろこぼすようなことがなければ別にオーケーでしょ、
それとも宮田さんはぼろぼろやっちゃうの?」

「ばっかじゃないの」

思わず出た言葉に、“あ”と口を塞ぐ。


「ばかとか言われたー」

失言かと思ったが、菅本さんはけらけらと笑っていた。

なんてよく笑う人なのだろう。


「それより飯は?」

「あ、今日はプリン」


私はポケットからプリンを取り出した。

瞬間、菅本さんがお腹を抱えて笑った。


「いや、それ、プリンって言わねぇから!」

「プリン以外の何なのよ」

「飴、だろ?」


私の家庭は裕福ではない。

これからもっともっとお金がいる。

1円でも節約したい。

バイトをすることは、母が嫌がった。

だから私は、

昼をこれのいろいろな味で乗り切ることに決めているのだ。

私はチュッパチャップスのプリン味にまとう袋を

はずそうと両手に力を込めた。


NO.5 宮澤 [URL] 11/08(土) 16:58 IP:61.7.42.44 削除依頼

「待った、プリンはデザートで」

菅本さんはいまだ笑いながらそんな私の手を掴むと、

袋からパンを取り出した。

“卵ハンバーグパン”と書いてある。


「ほら、これ食えよ」

「いや、いい」

「買いすぎたんだよ、食えって」

「悪いからいい」


菅本さんは“はぁ”とため息をついた。


「食わなかったらキスするぞ?」

「え?」


菅本さんの顔が近付いてくる。

待って、なに、本気でする気なの?


「い、いただきます!」

顔をそらして叫ぶと、菅本さんがにっと笑った。

「よくできました」


“はい”とパンを渡される。

何で私、こんなにどきどきしてるんだろう。

本当にキスされるかと思った。


心臓の高鳴りを抑えられないまま、

豪華な昼食を透明の袋から取り出す。

がぶっとかぶりついた。


なにこれ、おいしい。


「うまいだろー」

「……うまい」

「どんな風にうまい?」

「なんか、ハンバーグの肉汁と卵の甘さが絶妙に絡んで、パンもふわふわで……」

「評論家みてぇ」


“あんたがどんな風にって聞いたんじゃない!”

心の中で訴える。

あれ、でも私なんか普通に会話してる……?

人付き合いなんて、苦手な方のはずなのに。


菅本さんが満足したように笑う。

心がほわほわと温かくなった。

これは春のせいだろうか。


「ありがとう」

私は自分にも聞こえないような小さな声で呟いた。


NO.6 ちほ 11/08(土) 17:13 IP:61.245.83.9 削除依頼


うわわわわ!はじめまして、ちほって言います!
まさかまさか、あの宮澤さまですか?
ずっとずっと今までの小説最初から最後まで見ていたんですが
結局今まで宮澤さまの小説に
1回もコメントしたことがないチキン野郎です(…

題名に惹かれて開いてみて名前に気付いて…
うわわ、ほんとに今リアルに胸が高鳴ってます笑


お話すっごく面白いです、菅本さんが素敵できゅんきゅんしまくりです。
更新頑張ってください!応援してますっ
長くなりましたが、ネクスト希望です(^ω^)


NO.7 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:21 IP:61.7.42.44 削除依頼

時間は過ぎ、

あっという間に掃除の時間になった。

掃除が終わればホームルームがあって終わりだ。

掃除場所も振り分けられている。

私の掃除場所は女子トイレだった。


廊下に出てうろうろしたら、女子トイレはすぐに見つかった。

女子トイレのドアをあけると、

そこには4人の女子がいた。

班ごとに掃除場所が回っていくので、

この4人は私と同じ班、ということなのだろう。


4人は掃除をする気配もなく、げらげらと話をしている。

私はほうきを手に持って、端の方からはわき始めた。


「あーあー嫌ー男好きな女って」

ふと、1人が大声でそう言った。

周りの3人が、大爆笑する。


「あんたよ、そこの転校生。
菅本さんに話しかけられていい気になってない?
視聴覚室に一緒に入っていくとこ見たわよ」

私は何も言わずに、ただ地面を見ながら掃除を続けた。

1人がほうきを取り上げる。


「菅本さんがあんたみたいな女を相手にするわけない。
これは覚えていてね」

私は顔を上げた。

なんて嫌な顔をしているのだろう、4人揃って同じ顔。


「1つ良いことを教えてあげる」

1人がつかつかと私に歩み寄る。


「菅本さんがあなたに話しかけたり一緒に昼ご飯を食べてあげたりしてるのは、
罰ゲームなのよ」

「罰ゲーム?」


思わず口が開く。

相変わらず皆してけらけらと嫌な笑みを浮かべている。


「えーまさか本当に相手にされてると思ったの?
菅本さんが?あんたを?まさか」

別の人が口を開く。

「流行りの大富豪。
朝の時間にやってて、菅本さんが大貧民になった。
罰ゲームの内容はこう。
“今日来る転校生がもし悪い女だったら、そいつの世話をする”
あんたが美人だったら成立しなかったんだけど、
不細工でよかったわ」

「……あ」

ごく、と唾をのむ。

NO.8 11/08(土) 17:26 IP:222.5.63.36 削除依頼
宮澤さんだ!!
この話も面白くて好きです。ひきつけられます
管本さんがかっこいいです。
ネクスト

NO.9 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:28 IP:61.7.42.44 削除依頼
>ちほさん
わー!リアルタイムでこんばんは!
初のコメントありがとうございます^^
なんだか嬉しすぎてきゅんきゅんしてしまいました。
私を知ってくださっている、というのに感動してしまいます。
私もリアルに胸が高鳴ってますよー!
更新精一杯頑張ります!応援してもらえるなんて更新意欲がわいてきますよー
コメント本当にありがとうございました!

NO.10 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:29 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
すれ違いすみません><
、さん前作でコメント下さってましたよね?
人違いだったらすみません;;
この作品にも来ていただけて本当にうれしいです。
惹きつけられるようなお話が書ければいいなぁと思うのですが、まだまだですねー><
ネクストありがとうございました。頑張ります!

NO.11 あめみや [URL] 11/08(土) 17:35 IP:61.215.45.218 削除依頼
前の小説も好きでした!
宮沢さんの小説、好きです(*´・ω・`*)

NO.12 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:35 IP:61.7.42.44 削除依頼

恥ずかしい、恥ずかしい。

私は口元を押さえた。


いい気になんかなってない。

いい気になんかなってないけど、

嬉しいと思ったのは事実だ。


確かに考えてみれば変だと思う。

ただ前の席というだけにしては、

私に近寄ってきすぎではなかっただろうか?

休み時間に話しかけてきたり、

昼休みのあれも……まさか偶然じゃなくて計算?

パンの袋を持って、何でわざわざ廊下をうろうろしていたの?

おかしい。

確かにおかしい。


菅本さんは、かっこいいと思う。

そんな人が、

髪もぼさぼさで、前髪も伸び切ってる私なんかの相手をする?

しない。


だったら何で?

それは――



NO.13 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:38 IP:61.7.42.44 削除依頼
>あめみやさん
リアルタイムでこんばんは!
コメントいただけてうはうはしています。
私の小説が好きだとか言ってもらえるなんて、
もう嬉しいという言葉じゃ表現できないほどですよ!
更新頑張っていきますねー!
とても力になりました!ありがとうございました。
バスケ部キャプテンとかかっこいいです^^

NO.14 宮澤 [URL] 11/08(土) 17:53 IP:61.7.42.44 削除依頼

答えが出たとき、私はトイレを飛び出していた。

やっぱり嫌いだ。

やっぱり人と関わりを持つのは嫌いだ。

トイレから聞こえてくる笑い声を聞きたくなくて、

私は早足で教室に戻った。

教室では、教室掃除担当の人が机を前にあげている。


私の机は、まだ棚にぴったりとくっついている。

関係ない。

私は周りの机を動かし、

机の横にかかっていた鞄を背負った。


怒りと悲しみが心の中をぐるぐるする。

教室を出て、げた箱へと向かった。


「ちょ、なに、帰るの?」

げた箱には、菅本さんがいた。

ほうきを持ったまま、驚いたような目で私を見る。

ここが掃除場所のようだ。


私は何も言わずに自分の靴を出すとそれを履いた。


「まだホームルームがあるけど?」

菅本さんが私の肩に触れる。

「触んないで!」


私は逃げるように駆けだした。

NO.15 11/08(土) 19:22 IP:222.5.63.44 削除依頼
はい前作でもコメントさせていただいてました。
続き楽しみしてます!!本当に罰ゲームだったのかな??

NO.16 宮澤 [URL] 11/08(土) 19:58 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
やっぱり前作でもコメントくださってた方ですか!
こちらの方も見に来てくださってありがとうございます。
これからも続き頑張っていきますね!
続きを書く意欲になりました。
コメントありがとうございました。

NO.17 宮澤 [URL] 11/09(日) 02:04 IP:61.7.42.44 削除依頼

後ろで菅本さんの声がした気がしたけれど、

無視して走り続けた。

300mくらい走っただろうか。

私は体力の限界を感じ立ち止まった。

はぁはぁと息が漏れる。


菅本さんが今日私を気にかけてくれていたことが

全て罰ゲームだったなんて。

少なからずショックだった。


――おかあさん。

お母さんに会いたい。

私は病院へと向かった。

病室に入ると、

母はすぐこちらに気づいた。


「泉?学校はどうだった?」

一番に学校のことを聞いてくる。

どうして母は、学校にこだわるのだろう。


「すごく楽しかったよ」

これが母の望む答え。

「そう、良かった」

ほら、その証拠にお母さんが笑っている。

私はふぅ、と息を吐いて母を見た。

「ねぇお母さんは?
お母さんの体調はどう?」

「大丈夫よ。だから泉は、お母さんのことなんか気にしないで。
学校生活を楽しんで」

「気にしないなんて無理だよ、
ねぇ、また一緒に暮らせるよね?」

「暮らせるといいわね」

母は、どこか遠くを見つめていた。

“暮らせるといい”という言葉は、

とても残酷な台詞に聞こえた。


「お母さん、私今の学校卒業するよ、
だから卒業式、見にきてね」

言うと、母が“ふふ”と笑った。

死なないで。

目が熱くなる。


だめ。

母の前で泣くのだけはしちゃいけない。

私はぐっと涙をこらえて、明るい口調で話した。

「顔見にきただけだから帰るね!
夕食の準備もしなきゃいけないし!」

「泉」

泣いてしまう前に帰ろうとドアノブを握ったとき、

呼び止められた。

振り返ると、母の口は何かを言いたげに開いた。

でもそれはすぐに閉じてしまった。


「なんでもないわ」

なんなのだろう。

でもしつこく聞くことも気が引けて、

私は“また来るね”と言って病院をあとにした。


――このとき母が言ってくれていたら、

何か変わっていたでしょうか。


NO.18 宮澤 [URL] 11/09(日) 02:13 IP:61.7.42.44 削除依頼


外はもう薄暗くなっていた。

家に向かって歩き出す。


私はあの学校で2年間を過ごしていけるだろうか。

いや、過ごしていかなければならない。

母に、卒業式を見に来てもらうんだ。

きっととても喜ぶだろう。

母が死ぬわけがない。

母が死ぬわけが……。

涙が出そうになって、首を振った。

ここで泣いちゃいけない。

ここで泣いたら、母が死ぬのではと思っているみたいだ。


学校で罰ゲームの対象にされていること、

母が入院していること、

2つの悲しさが私を襲って、くらくらする。


「ちょっと君」

ふと、背後で声がする。


「ちょっと君ってば」

え?私?

振りかえると、スーツを着た優しそうな人が立っていた。

30歳くらいだろうか。


「一人?俺会社仲間と飲みに行くはずだったんだけど
急にキャンセルになっちゃってさ。
良かったら一緒に食事でもしない?
おごるよ」

その人は満面の笑みで私を見た。

食事……私と?

この人はそれを望んでいるの?

誰かと一緒にいたい。

ふいにそう思った。

人付き合いなんてもう嫌と思っている私がこう思うのは、

なんだかとても矛盾しているようだけど。

それに、今日の食事代だって浮くし。


NO.19 宮澤 [URL] 11/09(日) 02:20 IP:61.7.42.44 削除依頼

「私で良かったら」

「そう!良かったー良い店知ってるんだ、こっちこっち」

男がほっとしたような表情を見せる。

私はただただその男の後ろをついて行った。

どのくらい歩いただろうか。

男が、ぐっと強い力で私の腕を握った。


「ねぇ、まずここに入ろうよ」


土地勘の全くない私は、

特に抵抗するわけでもなくその場所まで来てしまった。


顔をあげると、お城のような建物。

看板に、“HOTEL”という文字が書いてある。

ここがどういった意図のホテルなのか、

すぐに理解できた。


「すみません、やっぱり帰ります……!」

握られている腕を払おうとする。

だが、男の力にかなうはずもない。


「その気にさせておいて今更それはないよ。
やることやったらちゃんと飯にも連れていってやるからさ」


男の顔は、変貌していた。

目はつりあがり、

口元はいやらしく歪んでいる。


「いやだ!いや!」

拒否反応を見せても、今更遅かった。

男の強引な力に、体が移動していく。

「やめ……っ」


涙が目にたまっていく。

こわいこわい……!

なんで私ってこうなの。

もう嫌、もう嫌。


「てめぇ、何してんの?」

ふと声がして、男の体が私から引きはがされる。

なに、誰?


NO.20 宮澤 [URL] 11/09(日) 02:33 IP:61.7.42.44 削除依頼

「早くどっか行けや」

その人はなおも強い口調でいいながら、

今でも殴りかかるのではないかというような目で睨んだ。

「違う、この子が誘ったんだ!」

「へぇ、それで連れ込もうとしたわけ。
制服着てる女子高生をねぇ」

30代くらいの男が悔しそうに唇を噛む。

それから何も喋らずに走り去って行った。

喋れずに、というのが正しかったかもしれない。


私は急に力が抜けてへなへなと座り込んだ。

「よう」

「すが、もと……さん」

それは菅本さんだった。

汗をかいている。

まるで駆けつけてきたみたいに。


「お前は馬鹿か、何やってんだよ」

菅本さんは、はぁと息を吐いて私の手を優しく握った。


「怖かったか」

口調がとても優しい。

その声が、心に浸透していく。

頬を涙が伝った。

ずっとこらえていた涙だった。


NO.21 宮澤 [URL] 11/09(日) 02:42 IP:61.7.42.44 削除依頼

「お前女のくせに足速ぇんだよ。
お前が学校飛び出してから、どれだけ探したと思ってんだ」

まさかずっと探してた?

それでその汗?

いや、でも、まさか。

どうして?


何も言わない私に、

菅本さんはあきれたように笑うと、

“よいしょ”と私を抱えた。


「え、なに、おろして……」

「暴れたら目立つよ?
どうせ下ろしてやる気はないんだし、おとなしくしてて」

菅本さんは、

私を軽々と抱えたまま歩きだした。


「もう私に関わらないでよ」

「それは俺の自由でしょ」


どうして、ここまでしてくれるのだろう。

誰も見ていないところで罰ゲームをする意味なんてあるのだろうか。


「もういいってば、近づかないで」

「それも俺の自由」


私は口を開きかけて、やめた。

菅本さんには何を言っても無駄なのかもしれない。


辺りが真っ暗になっていく。

電灯に照らされて、

菅本さんと抱えられている私の影がくっきりと浮かぶ。


菅本さんは、1軒の家の前でやっと私を下ろした。

そして一言こう告げた。

「俺の家、あがってけ」


NO.22 11/09(日) 02:47 IP:125.54.227.99 削除依頼
はじめまして、和と申します。
なんだか、この小説を読んでいると
どんどんどんどん小説のなかに惹(?)きこまれていって
「この先はどんなことが起こるんだろう?」と
想像もできないし、すごくおもしろいと思います。
文も読みやすくて一気に読めちゃいました(笑

続きが楽しみです。
ネクスト

NO.23 11/09(日) 12:45 IP:222.5.63.40 削除依頼
あげます

NO.24 宮澤 [URL] 11/09(日) 15:39 IP:61.7.42.44 削除依頼
>和さん
はじめましてこんにちは!
コメントありがとうございます、本当に力になります。
小説に惹きこまれていくとかこのような小説には勿体ない言葉ですね><
なんだか感動してしまいました。
これからも続き頑張っていきますので、見てくださるとうれしいなと思っています。
コメント本当にありがとうございました!

>、さん
あげありがとうございました!
流れてしまうのは恐ろしいのであげてくださること
とてもありがたいです><
これからも続き頑張っていきます^^

NO.25 宮澤 [URL] 11/09(日) 15:40 IP:61.7.42.44 削除依頼

鍵を取り出して玄関の鍵穴に差し込む。

「あの、いや……でも」

「門限厳しいとか?」

「いえ、1人暮らしみたいなものだしそんなことは……ないけど」

「じゃあいいじゃん」

菅本さんはドアを開け、靴を脱ぐ。

私はなんとなく動けないでいた。

そんな私に、菅本さんがにや、と唇の端を上げる。

「それとも、警戒してるとか?」

「警戒?」

首を傾げると、菅本さんが靴下のまま私の近くまで来た。

「えろいことされるって」

目の前に菅本さんの顔がある。

私は思わず顔をそらした。

「そんなことは考えてない……!お邪魔します!」

私は勢いよく歩を進め中に入ると、

後ろ手でドアを閉めた。

菅本さんがくすくすと笑っている。

乗せられた、と思った。


「こっちおいで」

案内された場所は、ソファと机しかない殺風景な部屋だった。

よく片付いている。

うながされて、ソファに座った。

落ち着かない。

何で私は、菅本さんの家に今いるのだろう。


菅本さんも向かいのソファに座ると、私をじっと見つめた。

「なんでホームルーム出ずに学校飛び出したんだよ、お前」

「なんでもない、ただ帰りたい気分で」

私はうつむいて、そう答えた。

目の前で、菅本さんが立ち上がるのが分かる。

そして私の近くまで歩いてくると、膝をついて座った。


NO.26 宮澤 [URL] 11/09(日) 15:41 IP:61.7.42.44 削除依頼


「言わなきゃキスするぞ」

またこのパターン。

“菅本さんがあなたに話しかけたり一緒に昼ご飯を食べてあげたりしてるのは、
罰ゲームなのよ”

クラスメイトの声が思い出される。

どうせキスなんてできないんでしょう。

そういう風にハッタリを言って、

私をどきどきさせようとしてるんでしょう。


菅本さんが私の頭の後に手を添える。

菅本さんの顔が近づいてくる。


どうせできない、できるはずがない。


もう少しで唇が触れる、というところで

案の定菅本さんは唇を離した。


「あーあ、言わねーし」

「できないくせに」

私は菅本さんを睨んだ。

本当にされなかったことが、

なんだかとても苛々してきた。

キスをされたかったわけではない。

そうではないのだけれど、

まるで“罰ゲームの対象にされた悪い女”と言われているようで。

「できないくせに、キスするとかよく言えるわね」

「なに、しても良かったわけ?」

菅本さんが挑戦的な目で見てくる。

できないくせに、できないくせに。


「どうせ私にキスなんて……っ」

“できないくせに”と続けようとした。

だが、声は続かなかった。

私は目を見開いた。

塞がれている。

なにに?え、なんで?

菅本さんは私を強引に引き寄せ、

私の唇を自身の唇で塞いだ。

NO.27 宮澤 [URL] 11/09(日) 19:59 IP:61.7.42.44 削除依頼

キス、されてる?

目を大きく見開く。

やっぱり目の前に菅本さんの顔がある。


菅本さんは一度私の目を見て、

それから離した。


「なんで、なんで……」

「煽ったのはお前」


体が熱くなる。

何故か分からないけれど、目に涙がたまる。


「なんで、罰ゲームで普通ここまでする?
皆で私の反応見て楽しんでるのかもしれないけど、そんなの……」

「え、待って」

「もう私に関わらないでよ!関わらないで!」

「待てって!」

叫ばれてびくっとする。

たまっている涙がぽろっと落ちてくる。


「何が罰ゲームだって?」

「だから、大富豪の……」

「なんだよそれ」


菅本さんの表情は真剣そのものだった。

私は何を信じればいいのか分からずに、

ただただ菅本さんを見つめる。


「それ誰が言ったんだ?」

菅本さんの目がキッと何かを睨むようにきつくなる。

「分からない、名前知らない……」

“はぁ”と菅本さんが息を吐く。

「そんなの信じるなよ、ばか」


目の前に困ったように笑う菅本さんの表情がある。


嘘、なの?

あの女の子達が言ったことは、嘘?

安心してか、涙がぼろぼろとこぼれていく。

考えてみれば確かに変な点がある。

あの女の子達は“朝の時間に大富豪をやった”と言った。

でも先生は、今日の朝のホームルームで私のことを話したはずだ。

そんなことも気付かなかったなんて。


NO.28 宮澤 [URL] 11/09(日) 20:34 IP:61.7.42.44 削除依頼

「でも、ならなんで?」

もし罰ゲームじゃなかったとしたら、

なんでこんな風に。

「なんでこんな風に、話しかけてくれたり、助けてくれたりするの?」

菅本さんが、目を見開く。

そして、少しだけ考えたような表情を見せた。


「宮田さんは何で東京から福岡に来たの?わざわざ」

「え?」

望んでいた返答と違う言葉が帰ってきて、

私は思わず聞き返した。

菅本さんが私をじっと見つめている。


「えっと……」

なんだか上手く私の質問を流された気がする。

でも菅本さんは私の返答を求めている。


「私の母親って、昔父親と離婚してるらしいのね。
私の記憶にないほど昔の話なんだけど……」

気づけば話し始めている自分がいた。

なんだか菅本さんの言葉は心地良い。

心の中に浸透して、ふわふわする。


「それで最近再婚したんだけど、そいつがとんだ暴力男で、福岡に逃げてきたの」

「え、それって大丈夫なの?」

「大丈夫じゃなきゃ困る」

菅本さんが、困ったような顔をした。

私は空気が暗くなっていくのが嫌で、

勢いよくその場に立ち上がった。


「今日は助けてくれてありがと。
そろそろ帰る。また明日ね」

「え、送ろっか」

「そんなの良い。じゃあね」


私はバッグを背にからうと、

菅本さんの家を飛び出した。


自分の家までの道を精一杯走る。

心が言いようのない気持ちに包まれた。

この気持ちはなんだろう。


罰ゲームじゃなかった。

菅本さんが私にかまってくれるのは、罰ゲームじゃない。


それがなぜこんなにも嬉しいのだろう。

菅本さんは、私を何か温かいもので包んでくれているようだった。

NO.29 宮澤 [URL] 11/09(日) 21:10 IP:61.7.42.44 削除依頼

次の日、

いつも通り母のところに寄って学校へと向かった。


教室のドアを開けると、

昨日と変わらず全員の会話が一度止まる。

すごく、嫌だ。


私はうつむいたまま自分の席へと向かった。


「宮田さん、おはよ」

顔を上げると、菅本さんが私に笑いかけていた。


「おはよう」

私も返す。

少しだけ声が暗くなってしまった。

そんなことを気にする自分は変だと思う。


菅本さんは“うーん”とうなった。

「昨日から思ってたけど、宮田さんって表情薄いよなー」

「薄い……?」

「なんかにこぉって笑わない」

笑う……。

私は唇の端を懸命にあげようとしてみた。

「うわーめっちゃひきつってる」

菅本さんがげらげら笑う。

「いつか笑わせてやるからー」


あ、まただ。

心臓がどきどきと高鳴る。

ふわふわとした気持ち。

これは何、なんなのだろう。


「……なんて顔してんだ」

言われて、私はばっと顔を隠した。

なんて顔してたの?

体が熱い。

菅本さん、あきれてるだろうか。


私は手と手の隙間から菅本さんを盗み見した。


……あれ?

目の前には、想像していたもと違う表情があった。

菅本さんは手を口元にあて、

頬は少しだけ赤らんでいるように見えた。


「すがもとさ……」

「あ」

声をかけようとして、菅本さんが声をあげる。

もう普通の表情をしていた。

さっきの表情は見間違いだったのだろうか。

NO.30 宮澤 [URL] 11/09(日) 21:26 IP:61.7.42.44 削除依頼

「言わなきゃいけないことがあったんだった」

菅本さんはそう言うと、息を吸う。

“なんなのだろう”と思った瞬間に、菅本さんが叫んだ。


「俺罰ゲームなんてしてねぇから。
好きで宮田さんの傍にいるから」

教室内が静まり返る。

驚いたのはクラスメイトだけではなかった。

私もまた、おろおろと目を動かす。


菅本さんはそんな私を見て、

“はは”っと笑った。


その日、勇気を出して掃除場所へ行ったが、

他の4人に何かを言われるということはなかった。


とても幸せだと思った。


――それからのことは、よく覚えていない。

いや、思い出したくもない。

流れで、私は菅本さんと一緒に帰ることになった。

菅本さんはとても優しくて、

私は何度も何度も心が温かくなった。

菅本さんは私の家まで送ってくれて、そして。

ああ、そうだ。言われたんだ。

それはあまりに急で、予想もしていなくて。

ふわふわしていたものが、ぎゅうっと痛くなった。


NO.31 宮澤 [URL] 11/09(日) 21:26 IP:61.7.42.44 削除依頼



 


 

「ねぇ、そろそろ罰ゲームやめていい?」


 


 


 


NO.32 11/09(日) 23:29 IP:222.5.63.38 削除依頼
ほんとなんかうまいですね
続き気になります

NO.33 斎藤EX 11/10(月) 17:15 IP:116.90.199.235 削除依頼
はじめまして
とても引きこまれました
胸がきゅんとしました

続きが気になります
また来ますね*

NO.34 11/10(月) 19:50 IP:222.5.63.42 削除依頼
あげあげ!!

NO.35 宮澤 [URL] 11/10(月) 23:25 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
2度もあげてくださってありがとうございました^^
うまいとか言っていただけて本当に励みになります><
完結に向けて頑張っていきたいと思いますので
これからも応援してくださると本当にうれしいです。

>斎藤EXさん
はじめまして!
とても嬉しい言葉をくださってありがとうございます!
私には勿体ないくらいの褒め言葉です><
私用で1週間くらい書けなくなってしまうのですが
完結まで頑張っていきたいと思いますので
お付き合いくださると本当にうれしいです。
わざわざコメントくださってありがとうございました!

●○
明日から実習ですので1週間ほど書けなくなります><
まだ全然話も進んでいないのにって感じですが;;
さほどの展開もない場面で止まっていますが、
もしよければあげてくださると助かります。
では流れていないことを祈って実習頑張ってきます!

http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=miya221 
宮澤

NO.36 11/12(水) 18:16 IP:222.5.63.45 削除依頼
あげ
自分は初めに注目を引くような題材を持ってきてそれだけのような勢いだけの小説より、
流れとか筋道のちゃんとある宮澤さんの小説のがすきです。
続き楽しみしてます、実習頑張って下さい

NO.37 斎藤EX 11/20(木) 20:38 IP:202.51.40.23 削除依頼
あげます

NO.38 ...コナツ。* 11/21(金) 18:30 IP:210.156.29.139 削除依頼



 お久しぶりです!!
 宮澤さんの小説、楽しみにしてました。
 宮澤さんの小説の書き方は、
 すごく憧れです!!
 実習、がんばってきてください♪
 この小説は流れたりしないと
 思いますよー☆


NO.39 まあちゃん 11/21(金) 21:36 IP:210.153.84.80 削除依頼

素敵すぎます(´・ω・`)

あげ!!


NO.40 宮澤 [URL] 11/22(土) 01:20 IP:61.7.42.44 削除依頼
実習終わりまして今日誌に追われています。
日誌が終わってから更新しようと思ったのですが、
あがっているのを発見して嬉しくて衝動的に更新します(笑

>、さん
あげていただいてありがとうございました。
発展までが遅くても、
自分の立てた流れにそって書いていけたらなと思います。
本当に伝えたい場面が来たとき、
まだ見てくださっている方がいるといいのですが><
続き頑張っていきますね!
褒めていただいてありがとうございました嬉しかったです^^

>斎藤EXさん
あげていただいてありがとうございました!
前のあげから8日もたっていたのですね><
流れていなくてよかったです^^
続き頑張りますね!

>...コナツ。*さん
わーお久しぶりです!
私なんぞの小説を楽しみにしてくださってありがとうございました。
流れてなくて本当に良かったです。
こんな序盤でコメントを下さったり、あげてくださる方がいるなんて
私は幸せ者だなと思います^^
これから少しですが更新していきますねー続き頑張ります!

>まあちゃんさん
こんばんは!あげてくださってありがとうございました。
素敵すぎるなんて私には勿体ない言葉ですね><
でもなんだかとても嬉しくなって、更新しよう!という気持ちに駆られました。
これからも続き頑張っていきますー!
見てくださるととてもうれしいです^^

NO.41 宮澤 [URL] 11/22(土) 01:34 IP:61.7.42.44 削除依頼

ベッドに倒れこむ。

溜息なのか苦笑なのか分からないような息が漏れる。


罰ゲームをやめる。


菅本さんのあの言葉は、一体どういう意味なのだろう。

どんなに違う意味でとらえようとしたって、

その答えは1つしかでてこない。


布団を深くかぶる。


やめる、ということは、

今まで私にしてくれたこと全てが

ただの罰ゲームだったということ。


教室内でまで罰ゲームでないと叫んで、

安心する私の姿を見て、

クラス全員で笑っていたのだろうか。


「なんでよ……」

気づけば唇を噛んで必死に涙をこらえる自分がいた。

悔しいから?

悲しいから?

分からない。

何がこんなにショックなのだろう。


たった2日の人。

たった2日間、少しの間話をしただけの人。

そんな人が嫌々私と関わっていたからって、

泣くことないでしょう、ねぇ、私。


――ああそっか。

嬉しかったんだなぁ。


ここに引っ越してくる前、

再婚相手の父が、母を殴る姿を見た。

母が泣いても殴ることをやめない父。

それはまるで悪魔だった。

私は、一体どいつが人間のフリをしているのか分からなくて恐ろしかった。

NO.42 宮澤 [URL] 11/22(土) 01:34 IP:61.7.42.44 削除依頼

そして、大好きな母が病に倒れて。

なんだ、人と関わることって悲しみにしか結びつかないのだと悟った。

たとえ大好きだと思えるような人が現れても、

それには必ず別れがある。

人と関わることなんて、涙しかないと。


でも、菅本さんは。

涙とは別の、あたたかいものをくれた。

だからきっと私は、嬉しかったんだ。

嬉しかったから、それが罰ゲームだと知って、こんなに悲しいんだ。


でも、あれ?

ということは、クラスメイトの女の子達の話が本当だったてこと?

それには、時間的に矛盾があったはず。

……それなら、ひょっとしたら。


「……はは」


考えて、私は苦笑した。

都合の良いように考えたって同じこと。

だって、“菅本さん本人が”罰ゲームであったことを認めた。

きっと先生は前日とかに私のことを話したのだ。

ただ、それだけのこと。


菅本さん本人から聞いた言葉は、

私の心に重くのしかかり、その場所を離れてはくれなかった。


NO.43 宮澤 [URL] 11/22(土) 01:36 IP:61.7.42.44 削除依頼

眩しい朝の光りに目が覚めた。

電気をつけたまま眠ってしまっていたようだ。

携帯で時間を確認する。

そろそろ出ないと学校に遅刻する。

私は嫌がる体を無理に起こした。

鏡の前で、着ていた制服を整える。

昨日から着替えずに学校へ行くことには、抵抗がある。

でも遅刻はしたくない。

帰ったら真っ先にお風呂に入ろう。


今朝はお母さんのところへ寄ることはやめた。

母のところで行くと完全に遅刻だ。

それは母が悲しむ。


早足で学校へと向かう。

教室のドアの前でチャイムが鳴った。

まさに遅刻すれすれ。

菅本さんは、もう席に座っていた。

急に足取りが遅くなる。


菅本さんがこちらを見た。

ふと目が合う。

心臓が熱くなるような感覚におちいる。


「……おはよ」

菅本さんは小さく私に挨拶をして、

それから目をそらした。


私は何も言えずに席に座った。

先生が来て、挨拶をしてから、

私は机に突っ伏した。


菅本さんは、何故挨拶をしてくれたのだろう。

罰ゲームだったことは十分に理解した。

もう完全に無視でもいいだろうに。

哀れに思っているのだろうか。

罪悪感?


それとも、私の返事をもらってないからかな。

“ねぇ、そろそろ罰ゲームやめていい?”

この質問に対して、私は何も答えていない。

なんなのだろう、そんなの気にしないで突き放してしまえばいいのに。


でも、小さかったけれど、すぐに顔をそらされたけれど、

“おはよう”は嬉しい、どうして。


私は両手をぐっと握りしめた。

黒板を使いながら、先生が何かを話している。

その内容は、もう耳には届かない。


NO.44 宮澤 [URL] 11/22(土) 01:38 IP:61.7.42.44 削除依頼


「……やめていいよ、菅本さん」


呟いた声はとても小さいものだったけれど、

きっと菅本さんの耳には届いた。


それから、私と菅本さんの間に会話はなくなった。


NO.45 になかわ 11/22(土) 02:40 IP:219.125.145.7 削除依頼

み、みやざわさん…!!
お久し振りですになかわです!!(あれ…自分名前変えたんだっけ…?)
やっぱり自分はこの名前が一番しっくりくる気がします

新しい作品、携帯からようやっと見つかって…嬉しい限りです!
またこれから読ませて頂きますね

これからも頑張って下さい!
あげ

NO.46 11/22(土) 12:20 IP:222.5.63.39 削除依頼
あげあげあげ!

NO.47 まあちゃん 11/24(月) 16:59 IP:210.153.84.76 削除依頼

あげ\(^O^)/

NO.48 まあちゃん 11/24(月) 17:00 IP:210.136.161.243 削除依頼

あげ\(^O^)/


NO.49 ...コナツ。* 11/25(火) 17:56 IP:210.156.29.139 削除依頼


  めちゃくちゃ楽しみにしてましたよー^^
 
  あのー、宮澤さんはここに書き込む小説を
  あらかじめ、ノートなどに書いたり
  メモしたりしてますか??
  私は途中で話がつまる事が多いので参考にしたい
  です。

  ゆーっくりでもいいんで、宮澤さんのペースで
  頑張ってください。応援してます!!


NO.50 水瀬マリ [MAIL] 11/26(水) 17:15 IP:219.214.64.31 削除依頼



 続き、気になります!
 更新頑張ってください\(^o^)/


 _

NO.51 宮澤 11/26(水) 23:07 IP:61.7.42.44 削除依頼
今日実習日誌の提出に行ってきました!
これで実習からも完全に解放です^^
皆さんロクな更新もできなかったのに
コメントをくださって本当にありがとうございました。
なんだか心が温かくなりました。

今日はもう眠いので寝たいと思いますが、
コメントに対するお返事と更新明日からやっていきます。
頑張っていきますので、見ていただけるとありがたいなと思います。
報告でした^^  宮澤

NO.52 11/27(木) 17:06 IP:219.125.145.68 削除依頼
あげ

NO.53 11/27(木) 17:53 IP:222.5.63.35 削除依頼
あげ!

NO.54 宮澤 [URL] 11/27(木) 21:59 IP:61.7.42.44 削除依頼
>になかわさん
に、に、になかわさーーーん!
お久しぶりですこんばんは!
私のことをまだ覚えてくださっていて本当にうれしいです。
これまでの作品もになかわさんには読んでもらっているのに、
なんだかとてもあたたかい気持ちになりました。
になかわさんは今何も書かれていないのでしょうか?
もし書いているなら教えてくださいね^^

>、さん
2度のあげありがとうございました!
これから続き書いていきたいと思っています。
これからも読んでいただけるような展開にしていけたらなと思います。
頑張っていきますね!あげ力になりました^^

>まあちゃんさん
あげてくださってありがとうございましたー!
読んでくださったのかなと思うと、
そのことがまず一番に嬉しかったりします。
これから続き書いていきます。
続き方も読んでいただけるとありがたいなって思っています^^

>...コナツ。*さん
楽しみにしてくださってありがとうございます!
実習終わったのでこれからばんばん書いていけると思います^^
私は最初に大きな流れを考えて、
そして今日の分をここに投稿する前にワードに一度書きますー。
頭に文章がすぐ浮かんでくるようなのっているときはここに直接書き込んだりもしますが、
ほとんどのときが一度ワードに書きますね。
コナツさんも何か書かれているのでしたら是非教えてださいー!
コメントありがとうございました^^

NO.55 宮澤 [URL] 11/27(木) 21:59 IP:61.7.42.44 削除依頼
>水瀬マリさん
読んでくださっている方がいてとても嬉しくなりました!
そのうえコメントまで残してくださってありがとうございます。
更新頑張ります!
応援していただけると更新するぞという気持ちがふつふつとわいてきます^^
これから続き書いていきますので、読んでいただけるとありがたいなと思っています!

>赤さん
あげありがとうございました!
読んでくださっているのかなと思うと本当にうれしいです。
実習終わってこれからばんばん更新していけますので、
見ていただけるとうれしいなと思っています。
続き頑張ります!

NO.56 宮澤 [URL] 11/27(木) 22:02 IP:61.7.42.44 削除依頼

** 02

ぽつぽつと降っていた雨がしだいに勢いを増し、

ざあざあという音を立てるまでになった。


早々と時は過ぎて6月になった。


「後ろからアンケート用紙集めてこーい」

先生の声がして、

私は自分が記入したアンケート用紙を裏返し、席を立った。

今は帰りのホームルームで、

健康に関するアンケート記入をさせられている。

菅本さんはただただ窓の方を眺めていた。

“今日は雨になったな”なんてことを思っているのか、

それとも“宮田さんとは目を合わせたくない”と思っているのか。

私が後ろから何かを集めるとき、いつも菅本さんは窓の方を見ている。

私は机の右上に裏返されている菅本さんのアンケート用紙をとると、

上に重ねた。

一番後ろの席だから、

よくこんな風に何かを集める役をさせられることが多い。

最近思うのだが、

菅本さんはプリントをいつも私が取りやすいように置いてくれている。

机の右上に、きれいに。


私はアンケート用紙を回収すると、

それを整えて先生の机に置いた。


この学校に来てから、もうすぐ2か月になる。

最初の2日間を例外として、

クラスメイトとは事務的な会話しかしていない。

菅本さんが私と関わらなくなったのを機会に、

掃除の時もいろいろとまた言われるようになった。

いちいち覚えていない、思いだしたくもないし。

NO.57 宮澤 [URL] 11/27(木) 22:06 IP:61.7.42.44 削除依頼

「じゃあ帰りの挨拶をします、ホームルーム委員」

先生が言う。

今日もやっと帰れる。

そう思ったそのときだった。

「あー!ちょっと待って待って!
このあと少し時間欲しいんだけどー!」

1人の女の子が立ち上がって前に出る。

「文化祭のことでいろいろ決めなきゃ!」

どうやら前に出た女の子は実行委員らしい。

文化祭なんて、面倒だなぁ。


「ミスコンと仮装とカラオケ大会に出る人を決めなきゃなんだけど……」

私は机に突っ伏した。

クラス内で話し合いが行われている。

耳からいろいろな声が入るが、

どうせ私には関係のないことだろう。


「うーん……じゃあ明日クラス内で投票して決めよう!
皆ごめんね!帰っていいよー!」

「おいおいまだ帰りの挨拶していないだろう、
帰っていいなんてお前の基準で決めるな渡谷―」

クラス内にどっと笑いが起こる。

どうやら出場者は今日の話し合いでは決まらなかったらしい。

それにしてもあの子、渡谷さんっていうのか。

2か月もたつのに、私は全員の名前を知らなかった。

関わる機会もなければ、名前を聞く機会もないのだ。


私は笑いながら席に着く渡谷さんを見て、

なんて可愛い子なのだろうと思った。

ビー玉みたいな大きい目。

頭のてっぺんでおだんごが作られた、おしゃれな髪型。

私も渡谷さんくらい可愛ければ、

いろいろな人が私の相手をしてくれたりするのだろうか。

違う、別に親しい人が欲しいわけじゃない。

私は誰もいらないのだから。

NO.58 宮澤 [URL] 11/27(木) 22:10 IP:61.7.42.44 削除依頼

「気をつけ、礼、さよーならー」

帰りの挨拶が終わって、

私は鞄の中に教科書を詰める。

菅本さんは帰りの会の時に用意をしていたらしく、早々と立ち上がった。

その時、菅本さんの少しだけ傾いた鞄から筆記用具が落ちた。

菅本さんはそれに気付かずすたすたと歩き出す。


……どうしよう、気づいてない。

家に帰って筆記用具がないと気づいて、困ることってあるだろうか。

確か今日は数学の宿題がある。

でも家に筆記用具くらい……あるかなぁ……。


散々悩んで、私は少しかがむとその筆記用具に手を伸ばした。

そのとき、横からすっと手が伸びてきた。

「菅本さーん!落としたよ!」

「ああ、瀬戸。ありがとー」

瀬戸さんは、掃除時間に一緒になる4人のうちの1人だった。

長く伸びた髪はまかれて、化粧だってばっちりとしている。

少し目つきはきついけど、美人な人だ。

「ううん、菅本さんばいばい!」

「おーまたなー」

瀬戸さんに向かって笑みを浮かべる菅本さんに、

胸がきゅうっと痛んだ。

私が何故ここで胸を痛める必要があるのだろう。


「ねぇ、あんた」

菅本さんが見えなくなると、

瀬戸さんは私を見た。

さっきまで菅本さんに向けられていたやわらかい表情はそこにはない。

「さっき菅本さんの筆記用具触ろうとしたでしょ?
まだ分からないの?最近見ているけど、菅本さんにとってあなたはただの空気よ?」

なにを言っているの。

別に深い意味なんかないのに。

筆記用具に触ることってそんなにだめなこと?

「ただ落ちたから拾おうとしただけ」

「おこがましいのよ」

おこがましい?筆記用具に触れることが?

でも体が熱くなっていく。臆病な私。


NO.59 宮澤 [URL] 11/27(木) 22:15 IP:61.7.42.44 削除依頼

「あなた、自分が可愛いと思っているでしょ」

可愛い?そんなこと一瞬も思ったことない。

何を言っても無駄な気がして、

私はただただ帰るための準備を進めた。

クラスはまだ多くの生徒が残っていて、騒がしい。

「最初の何日間か菅本さんに優しくされたからって、
何か勘違いしているんじゃないの?」

「……瀬戸さんは菅本さんが好きなの?」

準備が終わって鞄を閉める。

少しだけ流れた沈黙が、肯定の意を表していることは分かった。

「こんな空気を相手に……自分に自信がないの?」

私は目をそらしたまま、静かにそう言った。

瞬間、ダンという大きな音がした。

クラス中がシンと静まり返る。

瀬戸さんが、私の机を両手で叩いた音だった。

私は唇を噛みしめて、鞄を背負うと教室を出た。

「恥かかせてやる!」

背後でそういう声がした。


外に出ると、雨が私を責めた。

気にせずに歩いた。

たった何秒かで、私はずぶ濡れになった。

泣きそう、どうして。

私はなにか間違えたことを言った?

ううん、言っていない、私は何も悪くない。

自分の中で自分を必死に正当化する。

それでも涙が目にたまってしまう、なんて弱い私。

NO.60 11/27(木) 22:53 IP:125.192.237.9 削除依頼

みみみ宮澤さま……!!!
前作から拝見させていただいてましたっ
宮澤さまの文章は本当にすてきです!
人間の心理描写がものすごくリアルで、
読んでてひきこまれます!
宮澤さまの文章力に憧れます(';ω;`)
 
続き期待してますっ
がんばってください!
 

NO.61 になかわ 11/28(金) 00:53 IP:219.125.145.7 削除依頼
あわわわ私も、覚えていて下さって嬉しいです!!!
そして相変わらずみやざわさんの文章は私のハートをがっちりキャッチですね笑
心理描写が細かくて心に突き刺さってより感情移入しちゃいます
て言うか思えばかなり昔からみやざわさんとは仲良くさせて貰ってますよね…なんだか今1人で凄く感動しました!


えーと私もたまーに書く…のですが
何分飽き症なのですぐ故意に流してしまいます
自分の文章が嫌いなんです、トホホ

ネクストあげです

NO.62 ...コナツ。* 11/28(金) 17:25 IP:210.156.29.139 削除依頼



質問に答えて下さり、
ありがとうございます!!
えっと、、ワードというのはなんでしょうか??
ごめんなさい、質問ばかりで。
小説はですね…一応書いてます。
宮澤さんの小説と比べれば
見劣りしますけど、見てくれたら嬉しいです。
「空と太陽」というものです。
お忙しいかもしれませんが
更新がんばってください♪

NO.63 宮澤 [URL] 11/29(土) 14:20 IP:61.7.42.44 削除依頼
>ささん
こんにちは……!
私のことを知ってくださっていることが
なんだかとても嬉しかったりしてしまうのですが!
心理描写がきちんと描けて
読んでいる方が感情移入できるような文になっていたら嬉しいなーなんて思っているので
憧れるなんて言ってもらえるとうれしすぎますよ!
力になりました!コメント本当にありがとうございました。
続きを期待してくださる方がいるから頑張れます、続き頑張ります!

>になかわさん
よく考えたらになかわさんって1作目からいてくださってますよね…!
もうこの作品で4作目になるのに!
そんな方なかなかいませんよーとてもうれしいです^^
書いたら私に教えてくださいよ!
そしたら絶対流させません ふふ
になかわさんの詩とかも見てみたいなーて思っています。
続き頑張っていきますね!ありがとうございました!

>...コナツ。*さん
ワードというのはパソコンの中のノートみたいなものですー。
変な日本語とかになったら線を引いて教えてくれるので便利です^^
空と太陽ですねー今あがってますよね^^
時間があるときに見てみます!
教えてくださってありがとうございました!
これから更新していきますね!
続きも見てくださったら嬉しいななんて思っています。
続き頑張りますー!

NO.64 宮澤 [URL] 11/29(土) 14:24 IP:61.7.42.44 削除依頼


ずぶ濡れになったことで風邪でもひけば、

学校を休む口実になったのかもしれないが。

目が覚めてすぐ熱を計ってみてもそれはいつも通りだった。

学校にいきたくない。

それでもとろとろと準備を始める。

あまりにゆっくりと準備をしすぎたせいで、

母のところへ行く時間が少なくなってしまった。

私はほぼ走るような形で病院へ向かった。


「おかあさん」

息を弾ませながら言うと、

母はびっくりしたような表情で私を見た。


「あなた、学校は?
こんなとこ寄ってたら遅刻するでしょう」

「顔見に来ただけ。すぐ行く」

「早くいきなさい!」

母の強い口調に、私はびくっと肩を震わせた。

その口調は、私を叱っているように感じられた。

どうして。

会いたくて、

母を喜ばせたくて来たのに。

何故怒られなければならないのだろう。

どうしてそんなに学校に固執するの。

私は本当は、学校なんて行かないでそばにずっとついて居たいのに。

「死ぬ人間なんて放っておいて、学校で友達をたくさん作って」

その表情はとてもやわらかかった。

優しく私に声をかけている。

心がざわざわとした。

妙に苛々して、めまいのようなものまで襲ってくる。

「そんな言葉は聞きたくない!」

叫んで、私は病室を飛び出した。

お母さんが大好き。

私はお母さんだけ。

それなのにどうして、“放っておいて”なんて言うの。


NO.65 宮澤 [URL] 11/29(土) 14:28 IP:61.7.42.44 削除依頼

携帯で時間を確かめながら学校へと急ぐ。

母のために遅刻しないよう駆ける自分が、とてもみじめな気がした。

学校に着いてドアを開けると、クラス中の視線を感じた。

珍しい。

こんなことは転校してきた最初の何日間かだけだったのに。

教科書を引き出しに入れて鞄を横にかけると、

ホームルーム開始のチャイムが鳴った。

それとほぼ同時に、渡谷さんが前に出る。

「文化祭のカラオケ大会、ミスコン、仮装の投票しまーす」

渡谷さんは、朝のこの時間を先生にもらったらしい。

「あ、美希ー私カラオケ大会出ていいよー」

美希というのは渡谷さんの名前だ。

立候補者が出たことに、クラス中で拍手がおこる。

「じゃあミスコンと仮装の投票用紙だけ配るよー。
良いと思う人を1人ずつ名前書いてねー」

プリントが目の前にきて、

私はミスコンにも仮装にも渡谷さんの名前を書いた。

渡谷さんならどうしたってきっと可愛い。

そしてそんな渡谷さんを私自身見てみたいと思った。

“菅本さんは誰に入れたのだろう”

回収しながらふと気になった。

「はーい、じゃあぱぱっと集計しまーす」

渡谷さんは1つ1つ紙を見ながら正の字を書いていっているようだった。

クラスがシンと静まり返る。

こういうときって、“誰に入れた?”とかって騒がしくなるものじゃないのだろうか。

それからしばらくして、“よし”と渡谷さんが言う。

「決まりましたー仮装は私―」

別に嫌そうでもない、軽い感じで渡谷さんが言う。

拍手がおきた。

「それからミスコンは宮田泉さんね。拍手ー」

3秒くらい間があって、拍手がおきる。

何人かの視線が私に注目する。

クスクスという笑いまであった。

NO.66 宮澤 [URL] 11/29(土) 14:29 IP:61.7.42.44 削除依頼


なにこれなにこれなにこれ。

私が選ばれるはずがない。

私みたいな不細工に票が集まるはずがない。

ふと瀬戸さんと目が合う。

瀬戸さんは嫌な笑みで私を見ていた。

“恥かかせてやる”

昨日の瀬戸さんの言葉を思い出す。

すべてが理解できた気がした。

私に恥をかかせるために、

クラス中が、私に投票を……?

くらくらする。

気持ち悪い。

クラスメイト全員が、敵になったような感覚がする。

ミスコンでは可愛い人達が更におしゃれをして出てくるはずだ。

そんな中出る私を見て、皆で笑うつもりなのだ。

胸が締め付けられる。

痛い。

目をぐっとつむって開けた瞬間、視界がぐらりとした。

「宮田さん?」

菅本さんの声がした気がする。

でもきっとそれは、気のせい。

私は椅子から落ちた。

そしてそのまま意識を失った。


NO.67 11/29(土) 15:51 IP:222.5.63.36 削除依頼
あげ!!

NO.68 宮澤 11/29(土) 23:22 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
あげてくださってありがとうございました!
本当にうれしいですー^^力になります!
これから少しだけ更新頑張っていきますねー
ありがとうございました!

NO.69 宮澤 [URL] 11/29(土) 23:30 IP:61.7.42.44 削除依頼


暗い闇の中に突き落とされる。

這い上がろうとしても、どうしても届かない。

上を見上げると、人が私を見降ろしていた。

その人数はどんどん増えていく。

クスクスという笑いが起こる。

私は必死に叫んだ。

“助けて、ここから私を出して”

聞こえないのか聞こえないフリをしているのか、

誰も私の声を聞き入れない。

ただ笑いながら、私を見下ろしている。

“宮田さん”

声がして、そちらに目を向ける。

そこでは菅本さんが、手を精一杯に伸ばして私を助けてくれようとしていた。

私はそれにすがろうと、懸命に手を伸ばす。

だが届かない。

“助けて、菅本さん助けて……!”


「宮田さん!」

私は薄らと目を開けた。

目の前に、どこか懐かしい人の顔がある。

「すごい汗」

状況がうまく掴めない。

私、どうしたんだっけ。

重い体を無理におこして、

きょろきょろと辺りを見回す。

どうやらここは保健室のベッドの上で、私は眠っていたようだ。

NO.70 宮澤 [URL] 11/29(土) 23:31 IP:61.7.42.44 削除依頼

「単なる疲労だろうって、先生が。
最近ずっと顔色良くないけど、栄養不足なんじゃないの。
まさか昼飯まだ飴ですませているなんてことはないよな?」

「……菅本さんなの?」

「他の誰に見える?」

目の前に菅本さんがいることが信じられなかった。

でも本当に、確かに、目の前に菅本さんがいる。

約2か月ぶりの会話に、心があたたまる。

しかも“最近ずっと”て。

たまには私を見てくれていたのかなとか、

都合の良いように考える。

「お前さぁ……ちゃんと食えよなー」

質問に答えなかったことを肯定の意とみなしたのか、

菅本さんがあきれたように溜息をついた。

確かに、昼ご飯はまだ飴ですごしていた。

最近は体育館裏の階段に座って食べている。

気にかけてくれている、嬉しい。

心がざわざわと騒ぐ。

やっぱり私は、この人と話したかったのだろうか。

「菅本さん、授業は?」

「さっき終わった」

「終わった、て……」

菅本さんの話が本当ならば、

私は8時間くらい眠っていたことになる。

NO.71 11/30(日) 12:45 IP:222.5.63.49 削除依頼
続き楽しみです!!あげ!!

NO.72 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:33 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
あげてくださってありがとうございます^^
しばらくほとんど発展もないまま進むのですが、
それでも飽きずに見ていただけると嬉しいです><
続き頑張ります^^

NO.73 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:36 IP:61.7.42.44 削除依頼

私は目を細めて時計を見た。

4時……確かに授業は終わっている。

「それでどうして菅本さんが?」

「保健委員だから」

“はい”と鞄を渡される。

帰るための準備をしてくれたようだ。

なるほど、菅本さんは保健委員だからここに来たわけか。

都合の良いように解釈してしまっていたことが

なんだかとても恥ずかしくなる。

「これ届けにきただけだから。じゃあな。
ミスコン頑張って」

「あ……」

“ミスコン”

頭の中に、嫌な台詞が蘇る。

そうだった。

あろうことか私なんて不細工がミスコンに出場することになってしまったのだ。

それも夢であったら良かったのに。

「ちなみに俺も宮田さんに票入れた、期待してる」

菅本さんが意地悪く笑う。

それは不快であるはずなのに。

“あ、笑った”と思った。

保健室の先生にちゃんと食べてとか寝てとか言われてから

鞄を背負って外にでる。

それにしても、菅本さんも私に票を入れたのか。

ふと左にある雑貨屋さんの透明のガラスに、自分の姿がうつる。

気持ち悪い顔。

こんな私に票を入れたという菅本さんは、

やっぱり私のことを傷つけて楽しんでいるのだろうと思う。

そんな人なのに、今日目を開けた時目の前に菅本さんがいて、

少しだけだけど話もできて嬉しいなんて思っている自分がいる。

転入当初、菅本さんがくれた温かさが心地よくて、

それをまだ求めてしまっているのだろうと思う。

文化祭は、体調不良ということで休もう。

1日くらいいいよね、お母さん。

皆に笑われる不細工な自分。

想像するだけで気分が悪くなってくる。

寝ろと言われたばかりだったのに、

その日なかなか眠ることができなかった。


NO.74 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:38 IP:61.7.42.44 削除依頼

一度休むことを決めてしまえば、

心は幾分軽くなった。

掃除時間なんかに、

「ねぇ、ミスコンの準備してるの?」

なんて意地悪く聞かれると、胸がどきどきとするけれども。

文化祭は、明日というところまで迫っていた。

当日に休むなんて、逃げたと思われるだろうか。

それでも良い。

そもそもクラスでグルになって私に恥をかかせようとするなんて、

そっちの方が悪いに決まっている。

「さよーならー」

挨拶が終わると、皆が散っていく。

部活生は走るように教室を出ていくし、

早々と帰ろうとする人や、

隣のクラスが終わるのを待っている人、

座り込んで話している人など様々だった。

私はその中の、“早々と帰ろうとする人”にあてはまる。


「宮田さーん」

げた箱で靴を履いていたとき、ふと呼びかけられて振り返った。

そこには意外な人物がいた。

「今日宮田さんの家寄っていい?」

そして更に意外なことを言い始めた。

なに?なにかの作戦?

またクラスで話し合って私を傷つけようとしているの?

「いや……えっと、何で?」

「いいからいいからー!帰ろー!」

にこにこと笑って私の背中を押す。

大きな目。

可愛くておしゃれな女の人。

もう名前は覚えた。

文化祭の実行委員をしている、渡谷美希さんだ。

なぜ渡谷さんみたいな人が、

私に話しかけているのだろう。

有り得ない。

絶対これはなにかの作戦であるに違いない。

そう思ってはいても、

にこにこと笑う渡谷さんに否定の言葉を言うことができない。

結局なんだかんだで、自分の家まで案内をする形になってしまった。

「失礼しまーす」

私は渡谷さんを居間に通すと、

お茶を出した。

渡谷さんはそのお茶を一口飲むと、

自分の鞄をがさがさとあさりだした。

「さーてやりますか!」

「なにを……?」

思わず問う。


NO.75 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:44 IP:61.7.42.44 削除依頼

心臓がどくどくと騒いでいる。

渡谷さんは、新聞紙とハサミを取り出した。

「とりあえずさぁ、そのぼさぼさな髪なんとかしようよ」

“はい持ってて”と言われて自分のおでこの場所で新聞紙を持たされる。

チョキチョキという音が聞こえてきて、さすがに私も焦った。

「ちょ、ちょっと待ってなに……!」

「なにって前髪切ってるの、動かないで」

確かにそうだ、前髪が切られている。

「待って、やめてよ!」

どんな髪型にされてしまうのかという恐怖が走る。

もともと無造作ヘアーであるのにそんな台詞が出てくるのは

おかしいかもしれないけれど。

「私の家美容室だしー私まだまだだけど変にはしないから大丈夫だって」

有無を言わさぬ口調。

新聞紙に髪の毛が落ちていっているのが分かる。

前髪が終わると、渡谷さんは片手で新聞紙を持ち片手で切るという器用な格好で

後ろ髪まで切り始めた。

結局私はされるがままになった。

「よし、すっきりしたー!」

渡谷さんの満足そうな声が聞こえてきたのは、それから少したってのこと。

「ほらほら可愛いよ見て見てー」

渡谷さんが手鏡を私に渡す。

見ると、確かに重々しかった髪がすっきりとしている。

目にかかっていた前髪は、短すぎないかと思うくらい短くなっていたが、

それがおしゃれにさえ見えてくるから不思議だ。

“可愛い”とまではどうしても見れないけれども。

「あと髪をいじってー化粧してーそれは明日してあげるー。
服も明日貸すから安心しておいでね」

その言葉に、はっとした。

なぜ渡谷さんが今日ここにきて私の髪を切ったのか分かったような気がした。

明日のミスコンのためだ。

私は焦った。

そんなことをされたら、休むなんてできなくなってしまう。

そそくさと帰ろうとしている渡谷さんを私は引き留める。

NO.76 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:46 IP:61.7.42.44 削除依頼

「ま、待って!私明日!」

「ん?」

「明日……うん、具合が……悪くなる予定で」

ばればれだ。

私は渡谷さんから目をそらして顔をしかめた。

渡谷さんが“あはは”と笑う。

「宮田さん、可愛いよー自信持ちなよー」

そんなの嘘だ。

そんなこと言って、休まないようにさせて、私を笑い者にする気なのだ。

「とりあえず明日おいでね?用意して待ってるから」

渡谷が家を出て行って、私はさんざん悩んだ。

行きたくない。

行きたくない。

行きたくなんかない。

一瞬鏡を見てみるけれど、

やっぱり私なんて可愛くもなんともない。

笑い者にされる、惨めな気持ちになる。

でも渡谷さんの笑顔が、私の頭から離れない。

私は渡谷さんに、どこか憧れていた。

可愛くて、明るくて。

外が明るくなってくると、私は制服を握った。

ゆっくりとそれを着る。

ただ制服を着ているだけなのに、心臓がうるさい。

怖い。

何度も来た道を引き返そうかと思いながら、

それでもゆっくりと学校へと向かった。

文化祭の時は、体育館で出席がおこなわれる。

体育館へ向かおうとしたとき、体育館から渡谷さんが出てきた。

「宮田さーん!こっちこっち」

手を握られ、走ってどこかへ連れていかれる。

私は驚いた。

突然こんな風に連れていかれたことと、

それから……。

渡谷さん、可愛い。

渡谷さんは、魔法使いの格好をしていた。

そういえば、渡谷さんも仮装にでることになっていたのだ。

なんて可愛いのだろう、よく似合っている。


NO.77 宮澤 [URL] 11/30(日) 23:47 IP:61.7.42.44 削除依頼

連れていかれた場所は、教室だった。

文化祭ということもあり、誰もいない。

「ミスコンと仮装はすぐ始まるから急ごう!
宮田さんの出席丸つけておいたから大丈夫だよー」

渡谷さんが焦ったように化粧道具を出し、

私に化粧をしていく。

「はい、これ着て」

化粧が終わると、服を差し出された。

私はそれにぎょっとした。

思わず首を振ってしまう。

「絶対似合う!凄く美人なお姫様なるよー」

「でも……」

それは、黒のロングドレスだった。

胸元もあいていて、セクシーなドレスだ。

「私、胸ないし、無理……」

「そのくらいの胸のがちょうどいいの!
いいから着た着た!」

ある方とはもちろん思っていなかったけれども、

胸がないということを肯定されて少し落ち込む。

「着ないなら脱がすよー」

渡谷さんが迫ってきて、私はさすがに焦った。

「着る、着る!」

叫んで、そのドレスを奪う。

渡谷さんが笑っているのが分かった。

私は教室の隅で、こそこそと着替えた。

もうひけないのだと今更になって思う。

そう思うと、なんだか気分が悪くなってきた。

逃げ出したい、と思う。

綺麗な人がたくさん出る中で、私が出て、

その姿を皆が見る。

菅本さんだって、見る。

どう思うのだろうか。

「あ、いいねー」

私が着たのを確認すると、渡谷さんが私の髪をいじりだす。

「大丈夫だよ、皆目が点になるくらい綺麗になるよ」


NO.78 斎藤EX 12/01(月) 14:38 IP:116.90.199.24 削除依頼
宮澤さんは本当に凄いです
なんで、こんなに心に迫ってくる文章が書けるんでしょうか
どんどんあなたのこと
好きになってます
…ちゃっかり告白してしまった(笑)

ネクストです

NO.79 ...コナツ。* 12/01(月) 14:51 IP:210.156.29.139 削除依頼


前のコメ訂正ですっ。
「空と太陽」と書いてますが
「僕の幸せは全て、」
にしました。
新しいの書き始めたんですね、はい。
ということです。

クラスに美希という子いるんですが
その子も優しいですw


NO.80 12/01(月) 20:07 IP:222.5.63.39 削除依頼
あげます

NO.81 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:41 IP:61.7.42.44 削除依頼
>斎藤EXさん
前にもコメントくださっていたのに
またコメントいただけて本当にうれしいです!
ありがとうございます!^^
心に迫ってくる文章なんてそんなこと言ってもらえるような文書けないですよ><
でもすごくうれしいです!
告白していただけて(笑)なんだか更新意欲がすごくわいてきました。
続き頑張ります!

>...コナツ。*さん
タイトル変わったのですね!了解しました。
伝えに来てくださってありがとうございました!
優しい子は素敵ですよねー。
優しいというだけで輝いて見えます!
コナツさんのクラスにも美希さんがいるのですね!
続き頑張っていきますね^^

>、さん
あげありがとうございました。
更新のたびにあげてくださっていることが嬉しくてなりません。
更新分をいつも見てくださっているのかななんて勝手に思っています。
続き頑張ります!

NO.82 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:45 IP:61.7.42.44 削除依頼

渡谷さんの手慣れた手つきが心地よい。

心地よいとは確かに思うのだけれど、

それをじっくりとは感じることができない。

渡谷さんは最後に私の髪に何かをつけると、

私の手を引っ張った。

きっと髪につけたものは、ピンクの花のコサージュだろう。

さっき机の上に乗っていたのを見た。

「急いで急いで間に合わないー!」

「え、ちょっと……」

私は渡谷さんに引きずられるまま走った。

自分の姿も見ていない。

もしこれが作戦で私が今ひどい格好をしていたら、と思う。

例えこれが作戦でなくて、

渡谷さんの優しさなのだとしても、

私がおしゃれをして出てきたところで笑い者になるに違いなかった。

「次、2年2組。
仮装谷山あゆみさん、ミスコン鈴木美奈さんですー」

体育館からマイクを使った声が響く。

もう始まっているようだった。

渡谷さんに連れていかれるがまま体育館の裏へ行くと、

そこにはおしゃれをした人達が並んでいた。

「すみません2年4組ですー」

渡谷さんがそう言うと、
“この場所に並んで”と示されそこに割り込む。

どの人もすごく綺麗だ。

仮装の中にはプーさんの気ぐるみを着ているだけとかいう人もいるけれども。

「それ脱いでこれ履いて」

渡谷さんがヒールのある靴をバッグから取り出す。

“それ”が示す物はすぐに分かった。

私はすぐに上履きを脱いで、目の前に置かれた靴を履いた。

それからはっと息を飲んだ。

渡谷さんの焦ったような口調に思わず急いで履いてしまったが、

これでは出ることを肯定してしまっている。

ふいに、拍手がおこった。

その大きさから多くの人が見ていることが分かる。

逃げたしたい。


NO.83 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:46 IP:61.7.42.44 削除依頼

「次2年3組ですー」

マイクを通した司会の声。

2年4組の私は、

ひょっとして次だったりするのだろうか。

嫌だ。

もう惨めな思いはしたくない。

自分の姿を鏡で見ていないから、なおさら怖い。

きっとひどいのだろう。

確かに服や靴は可愛いけれど、

私の顔でこんなものが似合うはずがなかった。

「次2年4組の方どうぞー」

声がかかって、心臓がはねる。

渡谷さんは、ずんずんとステージに立とうとしていた。

でも私の足は動かない。

だめ、出れない。

まるで期待をしているかのように拍手がおこる。

「あれ、2年4組の渡谷美希さん宮田泉さんーどうぞー!」

私は目をぎゅっと瞑った。

小さく首を振る。

渡谷さんの溜息が聞こえた。

渡谷さんは私の後ろに回ると、ぐっと背中を押した。

それによって、ステージに出される。

高いヒールを履いていたため転びそうになる。

前を向くと、多くの生徒、先生が私のことをじろじろと見ていた。

耐えられない。

すぐにでも逃げ出そうとしたところを、渡谷さんに捕まってしまう。

渡谷さんは司会の人からマイクを受け取ると、PRを始めた。

何か定型文のようなことを言っていると思うのだけれど、

私の耳には入ってこない。

「かわいー!」

ふと、前の方で見ていた女の子達の声が耳に入ってきた。

一瞬“え”と思ったが、すぐに理解できた。

それは渡谷さんに向けられた言葉だ。

あちこちからカメラのフラッシュが光る。

たくさんの人に見られていることに、頭がぐるぐるとする。

「では皆さんミスコン宮田と仮装渡谷に一票お願いしますー!」

渡谷さんはそうまとめると、

私の手を引いてステージ裏へと連れていく。

「ありがとうございましたー!いやー可愛かったですねぇ。
では次2年5組の方ー」

司会の声と、大きな拍手が耳に届く。


NO.84 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:47 IP:61.7.42.44 削除依頼
多くの人の目から解放された瞬間、私はへたへたと座り込んだ。

「よしよしよくやった」

渡谷さんは私に笑いかけた。

なんだか心がすっきりしない。

私は一体どう思われたのだろうか。

そればかりが気になる。

「菅本はどう思ったかなー」

頭が真っ白とは、まさにこのことを言うのだろうか。

ぼっとして、渡谷さんが言っている言葉の意味がよく分からない。

菅本さん?菅本さんが何?

「私に宮田さんのことを頼んだのは菅本。
実行委員だから無理って言ったんだけどねー。
そしたら俺が実行委員の仕事やるって言って。
まぁよく働いているみたいよ?」

どういう意味?

渡谷さんに私のことを頼んだのは菅本さん?

考えようとすると、頭の中で鐘が鳴る。

ボーン、ボーン……なんだか疲れた。

「ちょっと宮田さん!?」

渡谷さんの焦った声が聞こえる。

私は壁にもたれた。

私ってなんて弱いのだろう。

ミスコンへの出場が決まった時も、くらくらして倒れたんだっけ。

その時と同じような感じ。

たくさんの視線を浴びただけで、こんな風になるなんて。

きっと刺激に耐えられないんだな、私は。

そういえば、今日もなんだかんだで眠れなくて、

起きたまま朝の光を感じたっけ。

まばたきをしようと目を閉じたら、

それから目を開けることができなくなった。


NO.85 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:50 IP:61.7.42.44 削除依頼

……

渡谷が俺を呼んできたのは、

ちょうど3年1組の出場者が出てきた頃だった。

“ちょっと菅本あんた運びなさいよ!”

“は?”

なんのことか分からず駆けてみたら、そこに宮田さんが倒れていた。

なんだってこいつはこんなにばたばた倒れるんだよ。

渡谷が呼んできたらしい保健の先生とすれ違う。

結論はこの前と同じだったらしい。

“過労、ぐっすり眠れば治る”

俺は宮田さんを抱えると保健室へ連れて行った。

ベッドに寝せる。

「保健の先生来ねーの?」

俺は椅子に座って後ろからついてきていた渡谷に尋ねた。

「私達が見ているから大丈夫って言った。
体育館で出し物見てると思うよ?なんかあったとき、又は保健室離れるときは呼びに来てって」

「達ってなぁ……」

俺は頭を掻く。

渡谷は楽しそうに俺の前にある椅子に座った。

「可愛かったでしょ、宮田さん」

「美人だったな」

俺は横目で宮田さんを見た。

黒いドレスに、ピンクのコサージュが映え、

髪は高い位置で片方に結ばれ、それが程良く巻かれていた。

それまでのミスコン出場者みたいな笑顔はなかったが、

その無表情さがツンツンした姫を思わせ、

違う雰囲気が流れた。

きっと笑顔がなくても映えるようなチョイスを

渡谷がしたのだろう。


NO.86 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:53 IP:61.7.42.44 削除依頼
「本人は相当自信なかったみたいだけどね。
不細工だからおしゃれなんてするのも恥ずかしいとか思っていたみたいよ。
女は明るい気持ちとおしゃれ!これを保てば可愛くなるのにー」

「なんだそれ」

渡谷論に俺はけらけらと笑った。

確かに宮田さんには明るい気持ちもおしゃれもなかったような気がする。

「あんたもさー素直になれば?」

「ん?」

渡谷が宮田さんをじっと見つめる。

宮田さんはぐっすりと眠っているようだった。

「素直に……ねぇ」

俺は苦笑いを浮かべた。

それができれば、どんなに良いか。

「素直は大事よ、素直で居てくれないと何も通じない」

渡谷がじっと俺を見る。

見透かされているような気持ちにさえなる。

「しばらく、自分の気持ちに真っ直ぐになるのも良いかもな」

例え、あとからお互いが苦しくなることになるとしても。


「あ」

渡谷が小さく声をあげたのは、

少しだけ時間が流れたときだった。


渡谷は携帯の画面を見ている。


NO.87 宮澤 [URL] 12/01(月) 23:57 IP:61.7.42.44 削除依頼

「宮田さん、明日の本戦に3位で出場だってー。
友達票が殆どない中、凄いね」

報告のメールが入ったのだろう。

俺も渡谷も、さして驚いてはいなかった。

ただ、予選を通過したことを話すと宮田さんはどうなるだろうか。

きっと焦っておろおろし出すのだろう。

想像するとなんだかおかしくて笑えてくる。

「渡谷はどうだったんだよ?」

「えー?私は2位で通過だって」

「友達票か」

「友達票と実力です」

俺が冗談を言うと、渡谷がくすくすと笑う。

それにしても、

自分のことよりも宮田さんのことを先に伝えるあたり、

渡谷もきっと気がかりだったのだろう。

明日は一般客の票も入る。

宮田さんがどの順位に食い込んでくるのか楽しみだった。

俺はふと宮田さんを見た。

そこで異変に気づく。

宮田さんの表情が、なんだか苦しそうに見えたのだ。

顔もいささか赤いような気がする。

俺は宮田さんに触れた。

「……熱い」



NO.88 斎藤EX 12/02(火) 14:10 IP:116.90.199.24 削除依頼
いや、胸キュン
本気で本当の胸キュンです
なんでしょうな
思わず応援したくなります

あの、余談なのですが
宮澤さんは、本読まれたりしますか?
好きな作家さんとかいたら、ぜひ教えて欲しいです

ねくすと

NO.89 12/02(火) 16:39 IP:222.5.63.42 削除依頼
宮澤さんの文の書き方が好きです
あげ

NO.90 まあちゃん 12/02(火) 19:13 IP:210.153.84.81 削除依頼

あたしも胸キュンです!
やばいです!

宮澤さん素敵すぎます(´;ω;`)

あげ!


NO.91 12/02(火) 20:25 IP:222.5.63.36 削除依頼
あげ!!

NO.92 まあちゃん 12/05(金) 22:18 IP:210.153.84.163 削除依頼

あげ!!!


NO.93 宮澤 [URL] 12/06(土) 22:05 IP:61.7.42.44 削除依頼
更新遅くなりまして申し訳ありません><
流れていなくてよかったです^^

>斎藤EXさん
胸キュンだとか言ってもらえるなんて
なんかもう私の小説に対して言われてる言葉じゃないようです><
読んでる方の心を動かせたらいいなーて思います^^
好きな作家さんですか?
私は乙一さんの本とか好んで読んでます^^
ネクストありがとうございました!続き頑張ります!
コメントとても嬉しかったです!

>、さん
2度のあげありがとうございましたー!
文の書き方が好きなんてこの上ない褒め言葉ですね><
嬉しくてたまりません;ω;
続き頑張っていきますね^^

>まあちゃんさん
素敵すぎますなんてことを言ってくださるなんて><
しかも2度もあげてもらって、
続きを読みたいと思ってくださっているのかななんて
勝手に想像して喜んでいました。
コメントいただけること本当にうれしいなって思います。
昨日あげてもらえて本当に助かりました^^
続きがんばっていきますね!

NO.94 宮澤 [URL] 12/06(土) 22:08 IP:61.7.42.44 削除依頼

自分にも触ってみて、

その熱さの違いは明らかだった。

渡谷も確認するように宮田さんのおでこに触れると、

慌てたように保健室を飛び出そうとした。

「先生に宮田さんは早退したって言っておいて」

俺はそれを強い口調で制すと、宮田さんを抱きかかえた。

「菅本、あんたまさか連れて帰る気じゃ……」

「そのつもりだけど」

保健室を出て行こうとする俺に、渡谷が抗議する。

「あんたね!宮田さんに無理させるつもり?」

「家に電話したってどうせ誰もいないんだし。
学校は文化祭でうるさいし。
そんな環境で休ませるよりも静かな場所で休ませた方がいいと思わない?」

渡谷が黙る。

先生に熱ということが知れる前に連れていかないと、

きっと先生は保健室でしばらく休養することを勧めるだろう。

だが今日はハイテンションな生徒が廊下でがやがやと騒ぐことが予想される。

誰もいない家に宮田さんを車で運ぶことも反対するだろう。

今が放課後なら先生に頼んで車に乗せてもらうよう頼むだろうが……。

「バッグは次学校に来たときに」

「菅本」

保健室を出た俺に、背後から渡谷が声をかける。

「襲うなよ?」

「はぁ?」

思わず聞き返す俺のことなど気にせずに、

渡谷はそそくさと体育館の方へもどっていく。

“襲うか、あほ”

俺は小さく呟くと、

宮田さんを抱えたまま学校を出た。


NO.95 宮澤 [URL] 12/06(土) 22:09 IP:61.7.42.44 削除依頼

時間が時間だけに、人はあまり歩いていない。

はぁはぁという宮田さんの息が耳に届く。

ただの疲れからきた熱ではないかと思うのだけれど、

心は不安でいっぱいだった。

出てきてから思ったのだが、

俺は宮田さんの家を知らない。

そして足も、無意識に俺の家へと向かっていた。

家に着くと、片手で宮田さんを支えて、

不安定な姿勢で鍵を開ける。

足でドアを開けると、宮田さんを自分のベッドに寝かせた。

毛布を深くかけて、ドアを閉めに行く。

「……はぁ」

そこまでして、俺は座り込んだ。

さすがに汗をかいている。

宮田さんが軽いとはいえ、

人ひとりを抱きかかえたまま移動することは大変だった。

「宮田さん」

声をかけてみるが、

宮田さんは苦しそうに目を閉じたままだ。

「……泉」

意味もなく呼んでみる。

俺がこんな思いではいけないのに。

心の中に、罪悪感が生まれた。


NO.96 宮澤 [URL] 12/06(土) 22:10 IP:61.7.42.44 削除依頼
……

苦しい。

息が上手くできない。

“泉”

ふと私の名を呼ぶ声が聞こえて、

薄く目を開いた。

「すが……もとさん?」

そんなはずないのに。

何故か目の前に菅本さんがいるような気がした。

「他の誰に見えるんだよ」

声を聞くと、心にぽっと温かいものが生まれる。

菅本さんの笑顔が確かに見える。

それは、ほんのちょっと前にした会話と全く同じだった。

もっと見ていたい、と思うのに、

ほぼ無意識に目が閉じられてしまう。

瞼(まぶた)がとても重い。

「苦しい?」

尋ねられると同時に、

髪を撫でられるような感覚がした。

優しい手。

私は首を振った。

苦しいはずだった。

なぜ自分がここで首を振るのかが、分からなかった。

「うそつき」

私を撫でる手は、止まらない。

もう一度目を開けると、

菅本さんは苦笑をしていた。

何故そんなに苦い表情をするのか、私には分からない。

NO.97 水瀬 [MAIL] 12/07(日) 17:10 IP:219.214.64.31 削除依頼


 胸がきゅんきゅんしちゃってヤバイです……!
 ネクスト

 _

NO.98 宮澤 [URL] 12/07(日) 20:21 IP:61.7.42.44 削除依頼
>水瀬さん
わー!こんばんは!
見てくださっている方がいるのだなぁと思うと本当にうれしいです><
コメント残してくださってありがとうございました。
きゅんきゅんしてもらえるような小説ではないかもしれませんが、
これからも頑張って書いていきますので
見てくださったら嬉しいなと思っております!
続き頑張りますー!

NO.99 宮澤 [URL] 12/07(日) 20:23 IP:61.7.42.44 削除依頼
私は手を伸ばし、菅本さんの腕に触れた。

その場所を少しだけ撫でてみる。

いつもの私なら、

こんな大胆なことできるわけがなかった。

ただこの苦しさでおかしくなって、そんな行動にでたのだと分かる。

「なんだよ」

菅本さんが怪訝そうに私を見る。

本当になんなのだろう。

ただなんとなく、

苦虫を噛みつぶしたような菅本さんの表情に、

いたたまれない気持ちになった。

「誘ってんのか?」

誘う?何を誘う?

意味がよく理解できず、

ただただ菅本さんを見つめる。

菅本さんは困ったように頭を掻いていた。

「どうして、菅本さんがここに?」

尋ねたところで、

喉に何かが詰まったような感覚になり、咳きこむ。

「おい、大丈夫か?」

菅本さんは私の顔を覗き込んだ。

まるで心配しているかのよう。

聞きたい言葉が、聞けないままになってしまった。

でももう一度は、聞けない。

「とりあえず寝なよ」

優しい言葉が耳に届く。

こんな優しい言葉は、いつ言われただろうか。

私はまだ、こんな優しい言葉を母からしか聞いたことがない。

気分が悪い今、

母以外の誰かが私のそばにいてくれていることが、

とても不思議で、でも嬉しくてならない。


NO.100 宮澤 [URL] 12/07(日) 20:25 IP:61.7.42.44 削除依頼

私はぎゅっと菅本さんの袖の部分を掴んだ。

何かを言いたい。

何かを伝えたい。

でもそれが何なのかが分からない。

そのもどかしい思いが、

私の袖を掴む力を強くする。

瞬間、掴んでいた手が逆に掴まれ、

ベッドに押し付けられる。

押し付ける、という言葉を使うのは適当でないかもしれない。

だってそれは、押し付けるというには

あまりにも優しくて。

何も考えられない私の顔に、

菅本さんの顔が迫ってくる。

そのまま、私の唇に菅本さんの唇が触れた。

ほんの一瞬だけ。

きっとそれは、キスとも呼べないだろう。

それでも、とても心地良い。


私は菅本さんがすきだ。


無意識に出てきたそのすきは、

どのような意味だっただろう。


「もう眠れよ」

“眠れ”と繰り返す菅本さんの言葉はまるで子守唄のように、

私を優しく包んだ。

眠る寸前に、

私はきっととても都合の良い夢を見ているのだと思ったが、

それでも構わなかった。

NO.101 宮澤 [URL] 12/07(日) 20:39 IP:61.7.42.44 削除依頼

目が覚めたとき、

そこに菅本さんの姿はなかった。

“ああやっぱり夢だったんだ”

思って、あたりを見回す。

そこで、はっとした。

ここは私の部屋ではない。

頭をぐるぐるさせながら体を起こす。

そのとき、がらっとドアが開いた。

「ああ、起きた?」

「え、ちょっと」

出てきたのは、紛れもなく菅本さんだった。

「なんでこんなところに!」

「なんでって、俺の家だから?」

そんなことは分かっている。

そんなことが聞きたいわけではなくて。

混乱している私の表情を、

楽しそうに菅本さんが眺める。

「すっかり良いみたいだな」

その言葉に、

自分が体調をくずしていたことを思い出す。

それならひょっとして、

菅本さんが私を看病していたのだろうか?

今日の朝からのことを思い出す。

朝文化祭のミスコンに出て、

それが終わって、倒れて?

目が覚めたら菅本さんが居て……唇が。

体が急に熱くなるのがわかった。

菅本さんが不思議そうに私を見つめる。

有り得ない。

きっとあれは夢なのだ。

看病は本当だとしても、

キスなんて菅本さんからするわけがない。

転入当初キスもされはしたが、

あれは罰ゲームだったのだ。

理由もなく、菅本さんが私なんかにキスをするわけがない。

ふいに菅本さんの手が、私のおでこに触れた。

急なことに驚いて、身をひく。


NO.102 宮澤 [URL] 12/07(日) 20:55 IP:61.7.42.44 削除依頼

キスのことなんて考えていたときに

菅本さんに触れられたからか、

心臓がうるさいくらいに鳴っている。

「うーん、まだ微熱があるかなー。
明日のミスコン本戦は出れないな?
また倒れてもいけないし」

「本戦?」

「宮田さん生徒投票3位だって」

まるで何でもないことかのように言われて、

私は目が丸くなる。

3位ってなに?

何が3位?

一体何がどうなって3位になったの?

そしてすぐに分かった。

ああ、からかっているんだ。

この人はいつも冗談を言っているようなイメージがある。

「言っとくけど、からかってないよ?」

思っていたことが分かったのか、

菅本さんがそう言う。

それでも私は信じられなかった。

菅本さんが私の髪に触れる。

それから顔を近づけて、にやっと笑った。

「可愛いよ?」

「……ちょっと!」

私は焦って顔をそむけた。

菅本さんがくすくすと笑っているのが分かる。

完全にからかわれている。

「家、帰る」

「家ひとりだろ?」

「私ならもう平気!」

「だめだめ」

菅本さんは有無を言わさぬ口調で否定する。

「服なら貸すから今日一日は泊まってけ」

とんでもないことを提案されて、

私はぶんぶんと首を振る。

菅本さんが何で急にそんなことを思いついたのか

私には分からなかった。

第一菅本さんだって嫌だろうに。

「まぁ、その前にさ。
早く楽な格好に着替えたいだろうけど、
その格好見せたい人がいるんじゃない?
微熱だし、それくらい見せてきたら?」

菅本さんが誰のことを言っているのかは分からなかったが、

私の頭の中にはすぐに母の姿が浮かんだ。


NO.103 HRK 12/07(日) 21:05 IP:219.115.241.47 削除依頼
宮澤さん!!!泣
お久しぶりです!はるです!!
名前は変えてしまいましたが、元はるです!!←
また宮澤さんがここで小説を書いてるなんて知りませんでした;;
今さっき気付いて、驚きです。
ゴミを抱いていて。は物凄く心に響き、
あのあとも宮澤さんのHPで、他の小説も読ませていただきました。
一分間一万円契約も感動し涙し、勇気をもらいました。

これからも、宮澤さんの小説、読ませていただきたいと思います。
何だか、一方的になっちゃいましたが、
更新、頑張ってください。

NO.104 12/07(日) 23:58 IP:222.5.63.47 削除依頼
面白すぎです、あげ!!

NO.105 あこ 12/08(月) 19:37 IP:219.111.113.105 削除依頼
お久しぶりです、あこです。
先日までパソコンが使えず
ここにくることができなかったのですが、
治ったので久しぶりにきました。
運よく小説を発見することができてよかったです。
今更ですが、更新楽しみにしてますね!

NO.106 HRK 12/09(火) 17:18 IP:219.115.241.47 削除依頼
あげます^^

NO.107 ...コナツ。* 12/09(火) 18:25 IP:210.156.29.139 削除依頼
あげます、、
頑張ってくださいっ!!

NO.108 宮澤 [URL] 12/09(火) 22:02 IP:61.7.42.44 削除依頼
>HRKさん
わーこんばんは!はるさんですか!
お久しぶりです、本当にお久しぶりですー!
前作でたくさんコメントくださってましたよね。
この作品にまで来てくださって、そのうえコメントまで残してくださって
本当にうれしくてたまりません。
HPで1分間1万円契約まで読んでくださったということで><
読んでいただけたこと本当にうれしいなと思います。
これから続き頑張っていきますので、読んでくださるとありがたいなと思います。
あげもありがとうございました><助かりました^^

>、さん
あげてくださってありがとうございました。
書く速度が結構気まぐれなので、
あげてくださること本当に助かります。
続きがんばっていきますね!

>あこさん
あこさんお久しぶりです!
この小説も見に来てくださって、コメントまで残してくださって
本当にうれしく思っています。
私の小説を発見したことを運よくなんて言ってもらえるなんて
感謝の気持ちでいっぱいですよ><
更新頑張っていきますので、これからも見ていただけるとありがたいです^^
コメントありがとうございました!

>...コナツ。*さん
あげてくださってありがとうございます!
以前にもコメントくださってましたよね!
まだ読んでくださっていたことがとてもうれしいなと思います。
続き頑張っていきますので、これからも読んでくださったら
幸いだなと思っています。
力になりました!コメントありがとうございましたー!

NO.109 宮澤 [URL] 12/09(火) 22:04 IP:61.7.42.44 削除依頼
「あ……行ってくる」

「早く帰ってこいよ」

菅本さんが、寝たことでくずれた私の頭に軽く触れてくる。

整えてくれているのだと分かる。

私は顔を赤くしながら、目をそむけた。

「うん」

少しだけ重たい頭を持ち上げて、菅本さんの家を出る。

なんで“うん”なんて言ったのだろう。

それに、お母さんに見せに行くなんて。

今どんな姿をしているかも分からないのに。

でも何故か、自分がお洒落をしてもらっている気がした。

こんなに素直な気持ちになれるのは、

熱のせいだと思う。

お母さんの病室をノックして、少しだけドアを開ける。

この姿を見せたいとは思うが、

なんとなく気恥ずかしい。

「泉?入っておいで」

部屋からお母さんの声がする。

私は手に力を込めて一気にドアを開けると、中へ入った。

お母さんが驚いたような顔をした。

「まあ、まあまあ」

それから、とても嬉しそうに笑う。

「どうしたのそれ?お姫様みたいよ」

「あの、学校のお友達がね?
私のために頑張ってくれたの」

「お友達にしてもらったの?まあまあ」

嬉しそうだ。

お母さんがとても嬉しそうだ。

心がきゅっとなった。嬉しい。

お母さんの笑顔を飽きずに見ていると、

ふいにその笑顔が無表情になった。

「ねぇ泉、今の生活は寂しくない?」

小さく、聞いてくる。

「寂しいよ。あの家は、私には少し大きい」

私はそう返事をした。

「また暮らしたいわ。
私がお腹を痛めた生んだ子どもと一緒に暮らせたら……幸せ」


NO.110 宮澤 [URL] 12/09(火) 22:08 IP:61.7.42.44 削除依頼

「暮らせるよ」

私はその場にひざをついて、お母さんの手を握った。

お母さんに幸せになってほしいと本気で思った。

思いながら、何かが頭に引っ掛かると思った。

お母さんの言葉に、違和感がある気がするのだ。

この違和感はなんなのだろう。

「泉、大好きよ」

「私もだよ」

お母さんが、ぎゅっと私の手を握る。

その力の弱さに、泣きそうになった。

「私にお洒落なんて向かないかもしれないけれど、
またお洒落する。そしたら見せにくるね」

お母さんは何度も何度も頷いた。

それから他愛もない話をして、

日が落ち始めた頃に病院を出た。

顔を両手でこする。

微熱とはいえ、やっぱり頭が痛い。

お母さんと話しているときは夢中であまり意識しなかったけれど。

「宮田さん、今帰り?」

病院を出てしばらく行くと、菅本さんが立っていた。

何故こんなところに菅本さんが立っているのだろう。

「俺はコンビニの帰り。一緒になったな。体調は?」

よく見ると、確かに菅本さんは手から袋を下げていた。

私を待っていてくれていたとか一瞬思ってしまって、恥ずかしくなる。

大体菅本さんは私がお母さんに会いに行ったことも、

お母さんが入院していることも知らないのだから。

「ほら、飲め」

袋から買ったばかりだと思われるお茶を手渡される。

確かに、とてもお茶を飲みたい気分だった。

「ありがと」

「その素直さはまだ体調悪いな?」

けらけらと菅本さんが笑う。

なによ、それ。

渡されたお茶を一口飲む。

それは冷たかったけれど、

買ったばかりにしては少しぬるくなっているような気がした。

NO.111 宮澤 [URL] 12/09(火) 22:08 IP:61.7.42.44 削除依頼

それから半ば無理矢理菅本さんの家に連れていかれた。

お風呂と、着替えを貸してもらった。

疲れたのか、ぐったりしてしまって、

私は菅本さんがご飯の準備をしてくれているときに、

部屋で寝てしまった。

起きたときベッドにいたのは、

きっと菅本さんが運んでくれたのだと思う。

次の日もまだ微熱があって、私は文化祭の2日目にいけなかった。

菅本さんも、それを休んだ。

私に気を使ってくれたのではないかと思うと、申し訳なくなる。


その間、菅本さんとたくさん話をした。

騙されているのかもという思いは抜けなかったけれど、

それでも、私の中にある“話したい”が離れてくれなかった。


NO.112 宮澤 [URL] 12/09(火) 22:11 IP:61.7.42.44 削除依頼

03.

微熱が抜けず、私は3日ほど寝込んだ。

熱が下がって学校へ行くと、不思議なことがおきた。

「宮田さんおはよー」

「あ、おはよ……」

朝、挨拶をしてくれる人が何人かいたのだ。

首をかしげながら席へと向かう。

途中で、背中をばしっと軽く叩かれる。

「泉!おはよー!」

渡谷さんだ。

他の人と会話をしていたのを、中断して挨拶をしてくれたようだ。

「あ、渡谷さん、ミスコン……ありがとう」

お礼を言うと、渡谷さんはとても可愛い笑顔を見せてくれた。

それから、宮田さんという呼び方が泉に変わったことを

密かに喜んでいる自分がいる。

「宮田さん、おはよ」

席に着くと、菅本さんが後ろを向いて笑顔で挨拶をしてくれる。

「……おはよう」

私は下を向いたまま呟いた。

ミスコンを境に、何か良い方向へ向かっていっているような、

そんな気がした。


毎日は早々と過ぎ、また週末がやってきた。

6時半に目が覚め、土曜日なのにと少し後悔する。

ざあざあと激しい音が耳に届き、外は雨が降っているのだと気づく。

二度寝しようかと思っていた時、家の電話がなった。

珍しい。

私は煩わしさを覚えたが、

寝起きの重い体を起こして電話をとった。

「はい」

「泉ちゃん!?」

電話をとると、焦ったような声が聞こえてきた。

どこかで聞いたことあるけれど、誰の声だろうと思う。

「東京のおばあちゃんだけど!」

ああ、あまりに久しぶりのことで誰の声だか分らなかった。

「どうかしたのですか?」

全く予感をしなかったのは、何故だろう。

ほんの一週間前、ミスコンの姿を見せたとき、

とても嬉しそうに笑っていた。

昨日だって一昨日だって、朝と放課後に会いにいったのだ。

そのときだって普通に話した。

笑顔だって見られた。

だからそんなのはまだ早いって、

そう思っていたのだろうか。

いや、信じていた。


「お母さんが危篤状態なの!駆けつけてあげて!」


NO.113 66 12/10(水) 01:13 IP:213.250.63.225 削除依頼

す、すごいですっ
話に引き込まれました!
夜中にも関わらず一気読みしてしまいました(゜O゜)!
これからの展開、凄く気になります!!
これからも頑張ってくださいっ
絶対続き読みに来ます><
 

NO.114 12/10(水) 17:11 IP:222.5.63.39 削除依頼
あげ!!

NO.115 HRK 12/10(水) 18:39 IP:219.115.241.47 削除依頼

いえいえ!
私が好きでコメントして
好きでHPの方でも読ませてもらったんですから^^

覚えててくれたんですか!!嬉しいです(^-^*)
まさかとは思ったけど、来てみて正解でした++゜
しばらくは、宮澤さんにまた会えた嬉しさと
宮澤さんの作品をまた見れるという感動で
興奮してしまい、ドキドキが止まりませんでした(笑

もちろん!
最後まで読ませてもらいます。

ネクストb
お母さんの様態が気になって仕方ありません><;

NO.116 HRK 12/11(木) 17:36 IP:219.115.241.47 削除依頼
あげw

NO.117 あこ 12/11(木) 22:08 IP:210.148.138.112 削除依頼
以前と全く読みやすさも変わっていなくて、
やっぱり宮澤さんだなぁと思います
「ゴミを抱いていて」が終わった後、何か書かれていたんですか?

続きも楽しみにしていますね!


NO.118 宮澤 [URL] 12/11(木) 22:18 IP:61.7.42.44 削除依頼
>66さん
こんばんは!夜中にもかかわらず一気読みしてくださったのですか!
ありがとうございますー!
これからも読みにきてくれるなんて、本当に嬉しいです><
これから続き頑張っていきますので、
読んでくださると幸いだなと思います。
コメント力になりました!続きがんばります^^

>、さん
あげありがとうございました!
更新のたびにあげてくださっているような気がして、
更新されているのに早く気づいて読んでくださっているのかと思うととても嬉しくなっています!

>はるさん
はるさんこんばんはー!
前作でもたくさん力をもらった方ですので、
その方にまた見ていただけるなんて本当にうれしいです。
完結まで更新頑張っていきますね^^
続きも見ていってくださると幸いだなと思います。
でも合わないなーと思ったらすぐにやめてくださいね!
無理にみることはないですので!
続き頑張ります^^あげもありがとうございました><嬉しいです!

>あこさん
感情移入できるような小説を書いていけたらなと思うのですがなかなかです><
でもそう言っていただけて本当にうれしいです^^
ゴミを抱いていての後は何も書いていませんでした。
ゴミを抱いていて完結後最初の作品になりますー!
それをあこさんに見に来ていただけてうれしいです!
続き頑張ります^^

NO.119 宮澤 [URL] 12/11(木) 22:36 IP:61.7.42.44 削除依頼

傘をさすことも忘れた。

深いことは何も考えられなかった。

信じない。

そんなこと信じない。

そう繰り返すのに、足だけは速く動く。

それが、まるで母が危篤状態であることを肯定しているようで嫌だった。

間に合って……!

思って、首を振った。

間に合うって、何に間に合うなのよ。

目に涙が浮かぶ。


「先生!娘さんです!」

病室に入るとはぁはぁと荒い息を繰り返している母が目に映った。

お母さんが苦しそう。

お母さんが苦しそうだ、嫌だ。

元気な母の姿が、そこにはない。

現実をつきつけられたようで、体から力が抜ける。

「お母さん、おかあさん…?」

ふらふらと駆け寄るが、

その目に私は映らない。

母は目を閉じたまま、

ただただ苦しそうに呼吸をするばかりだった。

「お母さんの笑顔が見たいよ。おかあさん」

軽く腕に触れてみるが、母は笑わない。

「頑張ってよ……おいていかないで」

こんなに苦しそうな母を前に、

頑張ってなんていうのは酷だろうか。

“おかあさん”と何度も呼びかける声が、

だんだん震えてくる。

泣きたくない、泣きたくない。

母は死んだりなんかしない。

そう思うのに涙が溢れてくるのは……。


NO.120 宮澤 [URL] 12/11(木) 22:46 IP:61.7.42.44 削除依頼


ふいに、母が大きく息を吸った。

その息が、スローモーションのように抜けていく。

瞬間、お母さんの荒い呼吸がぴたっと止まった。

周囲にあるモニターの1つから、ピーという独特の機械音がする。

目の前が真っ白になる。

私は無意識に耳を塞いだ。

医者が、腕時計を見ている。

その光景は、よくドラマで見るものだった。

医者の口が、ゆっくりと開く。

何を言われてしまうのか、予感した。

「い、いや!待って!言わないで!」

医者は悲しそうな目で私を一度見て、

それでも時刻を読み上げることをやめなかった。

「いやだ!言わないでよ、その先を言わないで」

“泉、大好きよ”

“私もだよ”

「ご臨終です」

「ああああああああああああ!」

私は病室を飛び出した。

人にぶつかる。

またぶつかる。

きっとこれは夢。

起きてまた病院へ行けば、

母がいて、今日あったこととか話して。

そして母が元気になったら、

また一緒に暮らすの。

冷たい雨の中にまた飛び込む。

「また一緒に暮らすの」

呟く声は、雨音のせいで自分の耳にも届かない。


NO.121 宮澤 [URL] 12/11(木) 22:48 IP:61.7.42.44 削除依頼

家に着くと、

私は玄関に座りこんで、耳を塞いだ。

きっとこの玄関を開けて、母は入ってくる。

ほんの一週間前、

母が私のミスコンの姿を見て、とても嬉しそうに笑ったのを思い出す。

“お友達にしてもらったの?まあまあ”

「おかあさん!」

少し大きな声で叫んでみる。

息をするのが苦しい。

「早く帰ってきて……」

玄関のドアが開くのを、ひたすら待つ。

嫌なことがあったとき、

1人がとてつもなく寂しくなって、私はいつもこうして母を待っていた。

玄関のドアが開くと、

買い物袋を2つ抱えて、私を優しく包んでくれる笑顔が見られた。

“あらあら泉。どうしたの?何があったの?”


何分たったのだろうか。

ドアは開かない。

涙はあまり出なかった。

母が帰ってくると信じているからだろうか。

家の電話がさっきから何度も鳴っている。

私は、出なかった。

それがきっと、東京のおばあちゃんからの電話だと分かっていたから。

そして何を言われるかということも分かっていたからかもしれない。

それでも私は待ち続けた。

そのとき、玄関のドアが開いた。

私は目を見開いた。

「おかあさん……!」

本当に帰ってきてくれた。

だってお母さんは、私のことを愛してくれていた。

いつもそれを表現してくれた。

だから、おいていったりしない。


NO.122 宮澤 [URL] 12/11(木) 22:50 IP:61.7.42.44 削除依頼


しかし、目の前にうつったのは母の姿ではなかった。

「菅本さん……」

菅本さんがどんな表情でいるのかとかは、分からなかった。

ただ理解できるのは、お母さんじゃないということだけ。

お母さんじゃない。

おかあさんじゃない。

おかあさんは帰ってなんかこない?

「しんだ……しんだ?死んだ?」

何も考えられなくなる。

苦しそうな母の呼吸が、

ぴたっと止まった瞬間が思い出される。

涙がひとつ零れた。

そのままぼたぼたと両目から溢れ出す。

「いやああああああああ!」

狂ったように叫ぶ私を、菅本さんが何も言わずに抱きしめた。

「いや、いや!」

暴れる私を優しく押さえつける。

涙がとまらない。

「泉、いずみ」

名前を丁寧に呼ばれる。

私は首を大きく振った。

「いや!たった3日だったの!
この家に引っ越してきて、お母さんすぐ入院したから。
この家で、お母さんと過ごしたのはたった3日だったの!」

それでも、洗面台にある歯ブラシとコップだって2セットのままで、

玄関にも2人分の靴が丁寧に並べられていた。

「一緒にまた暮らす!暮らすはずだったのに……!」

涙で、言葉が途切れる。

泣きすぎて、頭がくらくらしてくる。

母の死を実感した号泣だったようにも思う。

「泉」

耳元で、もう一度菅本さんの優しい声がする。

もう出る涙もないと思うのに、

まだまだ涙はとどまることなく流れている。

「俺が守る」

心地良い声に、心が安心していく。

背中を撫でられて、呼吸も整ってくる。


NO.123 12/12(金) 13:14 IP:222.5.63.38 削除依頼
涙が・・
ねくすと!!

NO.124 HRK 12/12(金) 16:27 IP:219.115.241.47 削除依頼

私だって泉ちゃんを守りたいです。
私だったらどうしているのかと思うと
胸が痛くてどうしようもありません><

私も、宮澤さんからはたくさんの勇気を貰いましたよ。
全ての作品から私は勇気をたっくさんもらったんです。
だから、嫌だとか絶対思ったりしませんし、飽きたりなんて有り得ません。
また宮澤さんに、宮澤さんの作品に会えたのだから、
最後まで読ませてください^^


ねくすとっb

NO.125 12/12(金) 23:02 IP:222.5.63.47 削除依頼
あげ!!

NO.126 宮澤 [URL] 12/13(土) 18:36 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
コメント下さってありがとうございました。
あげまでしてくださって本当に感謝しています><
これからも続き頑張っていきますので、
見ていってくださったら嬉しいなって思います。
続き頑張ります!

>HRKさん
コメント下さってありがとうございます。
なんだか更新のたびにコメントしてくださっているようで、
それがとても嬉しかったりします。
結構頻繁に見てくださっているのかなとか考えると
嬉しくてたまらなくなります><
最後まで読んでくださるということ、本当にありがたいです。
私も何かを伝えられるような小説にしていけるよう頑張っていきます><
続き頑張ります!

NO.127 宮澤 [URL] 12/13(土) 18:41 IP:61.7.42.44 削除依頼

そのとき、電話が鳴った。

菅本さんは立ち上がるついでに私の頭を軽く撫でると、

電話をとった。

「もしもし」

相手は東京のおばあちゃんではないだろうか。

受話器は私に渡されるものだと思った。

しかし、それはなかった。

「奏ですけど」

菅本さんが自分の名前を口にする。

電話の相手は誰なのだろう。

あまり考えることができない頭を、精一杯に動かす。

やがて菅本さんは受話器を置くと、

「祭儀場においでだって。
ちゃんとお別れしておいで」

と言った。


菅本さんが、私を祭儀場に連れていく。

菅本さんにお礼も言えないまま、

私はひとりで祭儀場へと入った。

祭儀場で、私は呼吸が苦しくなるほど泣いた。

お母さんは、やっぱり死んでいた。

結局、お母さんの死に立ち会えたのは、私だけだった。

“きっと泉ちゃんを待っていたのね”なんて言われる。

私は大きく首を振った。

小さい頃から、母とずっと一緒に暮らしてきた。

母の笑顔が大好きで、母が喜ぶようなことをいつも考えていた。

私を愛してくれていた人がいなくなった。

あんなに温かかった母の体が、ただの骨になる。

いやだ、やめてよ。

いつ生き返るか分からないじゃない。

有り得ないことを口走って、親族に憐みの目で見られる。

お母さんは、いなくなった。

朝になって病院に行っても、そこは空き室になっていた。

お洒落をしてみたって、

見てくれるはずのお母さんはいなかった。

お洒落をしたら見せにいくって約束したのに。


――思いきり泣いたら、

あとには喪失感しか残らなくなった。


NO.128 宮澤 [URL] 12/13(土) 18:42 IP:61.7.42.44 削除依頼


03.(前回の03.は間違いです)

9月になった。

9月と聞くとなんとなく涼しい気がするのだが、そんなことはない。

まだまだ日差しは強く、暑い。

時計を見ると、10時過ぎ。

しかし私は、まだ家にいた。

長い夏休みが終わり、今日から学校のはずだった。

母が死んでから、私には何もなくなっていた。

東京においでという親戚の言葉に、

学校を卒業することは母の願いだからと言ってここに残ったのに。

こんなことではいけないと自分でも思うのだが、

気づけばただぼーとしているだけで1日が終わっている。

ドアは全て鍵をかけて、インターホンが鳴っても開けなかった。

一人でいたかった。

誰とも関わりたくなかった。

なにもいらない。

「……私は何のためにここにいるのだろう」

呟いた声は、静かな家の中に響く。

洗面台の母の歯ブラシとコップのセットも、

玄関に出された母の靴も、しまうことができない。

私の居場所を考えていたら、

もうどこにもないような気がした。

何もすることのないまま、ただだらだらと毎日だけが過ぎていく。

死んじゃった方がいいんじゃないかな。

そう思ったのは、今日が初めてではない。

ずっと、そう思っている。


NO.129 宮澤 [URL] 12/13(土) 18:43 IP:61.7.42.44 削除依頼

台所で包丁を手にして、それを手首にあててみる。

とたんに、心臓が激しく動き出す。

これも初めてではない。

いつもこう。

怖いんだ。

死にたいのに、臆病で、死ぬことすらできない。

目をぎゅっと瞑って、包丁を軽くひいてみる。

包丁を握る右手は無意識に込める力を制限する。

左の手首には、薄く傷が残った。

血がゆっくりと出てくる。

血管がある場所が、ぷつっと盛り上がる。

痛い。

リストカットは痛みを感じないなんて聞いたことがあるけれど、

私は痛いと感じた。

それでも、左手の傷を見ると、どこかなにもない心が埋まっていくような、

そんな感覚がした。

こんなのでは足りない。

もう一度左手に包丁をあててひいてみるが、

それでも薄い傷しか残せなかった。

力いっぱい引いたらお母さんのところに行けるかもしれないのに。

「怖いよ……」

包丁を床に置いて、両手を目元にあてる。

手のひらが濡れていく。

泣いているのだと分かる。

電話にもでなければ、

インターホンが鳴ってもドアを開けないのに。

私の心は助けてほしいと叫んでいて、矛盾していた。

NO.130 66 12/13(土) 20:35 IP:193.95.232.88 削除依頼

また読みに気ました(∩^ω^∩)

うあぁぁあ(;ω;`)
お母さん死んじゃったんですね …
泉ちゃんがんばれー><
宮澤さんも頑張ってください!

ネク(!)

NO.131 HRK 12/13(土) 21:02 IP:219.115.241.47 削除依頼

私も、こうやってコメントすることを
少し楽しみにして毎回読みに来てます。

文の書き方が凄く好きなんです。
ひきつけられてしまうんです^^
ゴミを抱いていての最初のころ、
宮澤さん、いつも自信ないって言うようなコメ返しをしてくれたような気がします。
その頃が少し懐かしい感じもしますね。

ねくすとっ
泉ちゃんには必ず立ち直って、明るく生きてほしいです。

NO.132 12/14(日) 09:17 IP:222.5.63.48 削除依頼
自分も母子家庭だし母が死んだらこうなるかも・・すごくリアルです

NO.133 12/14(日) 09:40 IP:114.181.72.16 削除依頼
宮澤さんの作品、すべて感動させられます。
これからも頑張ってください
ネク*

NO.134 12/14(日) 18:56 IP:222.5.63.39 削除依頼
あげ!!

NO.135  ゆんの。 12/14(日) 19:27 IP:219.31.217.116 削除依頼




   初こめです!
   実は隠れて読んでました←
   涙がとまらなかったです;ω;`
   ねくすと!



   

NO.136 さくら 12/14(日) 19:36 IP:118.0.197.131 削除依頼
宮澤さんの小説初めて読みましたが・・・

あっと言う間に話にひきこまれいつの間にか泣いてしまいました。


更新頑張ってください。

NO.137 12/15(月) 18:30 IP:222.5.63.49 削除依頼
あげます!!

NO.138 ...コナツ。* 12/15(月) 18:32 IP:210.156.29.139 削除依頼
ねくです!!

泉ちゃんと私には似ている所が
たくさんあるんで、
泉ちゃんが頑張っていると
私も頑張ろうと思えます。
本当に、涙がでてきてしまいます。
宮澤さん、頑張ってください。

NO.139 宮澤 12/16(火) 23:23 IP:61.7.42.44 削除依頼
皆さんコメントありがとうございます。
とても温かい気持ちになりました^^
少しの間更新できず申し訳ありません><
明日レス返しと続き更新をしますので、
もう少しお待ちいただけるとありがたいです^^

宮澤

NO.140 あこ 12/17(水) 06:05 IP:219.111.112.115 削除依頼
情緒不安定になると無意識に人を傷つけてしまいそうだから
人間って怖いですよね。
菅本さんみたいな人とリアで出会えたらいいなぁ…。

更新楽しみにしてますね!

NO.141 斎藤EX 12/17(水) 14:50 IP:116.90.199.24 削除依頼
言うまでもなくボロ泣きでした

なんというか、人間の感情についてすごく深いなあ、と思いました
急に親が恋しくなって、今、また泣きそうです

宮澤さんは本当に凄いです(何回言ってるんだ私…)
大きな変化はないかもしれないけど
確実にこの物語の世界にいる間は
何かいつもの自分と違う風に
周りの事を考えられる気がします

この小説なら、本気で読者感想文が書けそうな気がします…
これからも、マイペースで頑張ってください

ねくすとです

NO.142 12/17(水) 15:03 IP:202.221.165.163 削除依頼
宮澤様ァァァ(ボロ泣き)

また小説を書き始めたんですね!
前の小説も読んでいたんですが、パソコンの調子が悪くてコメントできなかったんです(涙)
また宮澤様の小説が読めてすごく嬉しいです

NO.143 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:51 IP:61.7.42.44 削除依頼
>66さん
また読みに来てくださってありがとうございます><
続きを気にして読みに来てもらえるような
小説になっている自信はないので、本当にうれしいです。
コメントまで残してくださって!本当に力になります><
マイペース更新だったりするのですが、
できるだけ早く更新していけるよう頑張ります!
続き頑張りますね^^

>HRKさん
なんだか本当にいつもコメントをいただけるので、
本当にいいのかなって思ってしまいますよ!
貴重な時間をこの小説に使ってくださってありがとうございます。
コメントも本当に嬉しいです。
文の書き方が好きなんてこの上ない褒め言葉ですね><
テンポのある文で、読む方が感情移入できるような小説にしていけたらと思っています。
続き頑張ります!

>、さん
、さんも母子家庭なのですね。
リアルさが出せていれば、と思います。
3回もあげありがとうございました!
本当に助かります。
続き頑張ります!

>yさん
コメント残してくださってありがとうございます!
“私の作品”と言ってもらえるなんて本当にうれしいことです。
これ以外にも私の小説を読んでくださったのかなーと思うと感動せずにはいられません。
マイペース更新になるかもしれませんが、
これからも続き更新頑張ります!
続きも見ていただけると嬉しいです^^

>ゆんのさん
はじめまして!初コメありがとうございます!
読んでくださっていただけでもうれしいのに、
コメントまで残してもらえるなんて嬉しくてたまりません。
泣いてくださったということは、
少しは泉の気持ちを伝えることができるような文章だったのかなと
勝手に思って力にさせてもらいました。
ネクストありがとうございます!続き頑張ります!

NO.144 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:52 IP:61.7.42.44 削除依頼
>さくらさん
こんばんは!コメント残してくださってありがとうございます。
話にひきこまれたという言葉に感動してしまいました。
ひきこむことができるような文章になっていればと思います。
これからも更新頑張っていきますので、
気が向いたら続きも見てくださると幸いだなと思っています!
コメント本当にありがとうございました、力になりました。

>...コナツ。*さん
またコメントくださってありがとうございます!
泉と似ているところがあるのですか?
私の中で泉は、時に不器用だったりするけれど、優しく繊細なイメージです。
コナツさんもそんな方なのかなと想像してしまいました^^
続き頑張っていきますので、続きも見てくださると幸いだなと思います。
コメントとても励みになりました!

>あこさん
そうですね。情緒不安定だったという理由で人を傷つけてしまうと、
あとでそんなことをしてしまった自分が情けなく、
とても嫌になってしまいます><
誰の前にでも菅本さんみたいに一人の人のことに真剣になってくれる人があらわれると、
勝手な自論を持っていたりします。
自分の良いところを見つけてくれて、認めてくれる人が現れるといいなと思います。
更新頑張りますね!ありがとうございました!^^

NO.145 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:52 IP:61.7.42.44 削除依頼
>斎藤EXさん
またコメントしに来てくださってありがとうございます!
本当に更新の力になります。
何かあったとき、必ず動いているであろう心について、
読んでくださる方が共感したり何かを感じてくれるような文章を
書けたらいいなと思っています><
読書感想文が書けそうとまで言てくださって感動してしまいました。
なんだか自分の小説について言われてることではないようです(笑)
とても力になりました!長文ありがとうございました。

>姉さん
こんばんは!コメントありがとうございます!
前の小説も読んでくださっていたのですか
この小説も読みにきてくださって、
そのうえコメントまで残してくださってありがとうございました。
これからもマイペースながら更新頑張っていきますので、
気が向きましたら続きを読みにきてくださると本当にうれしいです。
力になりました、更新頑張ります!

NO.146 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:54 IP:61.7.42.44 削除依頼

散々泣いて、ふらふらと立ち上がる。

泣いても泣いても、すっきりとしなかった。

左手に残った傷からわずかに見える血は乾き、変色していた。

明日にはかさぶたになり、痕も残らないだろう。

私の死にたいなんて、こんなものなのだろうか。

そんなはずないのに。

そんなはずは、ないのに。

私は冷蔵庫の前でぺたんと座ると、それを開けた。

お腹がすいた。

こんな時でさえ、お腹がすくなんて。

冷蔵庫は、ほぼ空の状態だった。

それもそのはずだ。

母が死んでから、

何も買い物をしていない。

今まで、東京に帰る前におばあちゃんが大量に買ってきてくれていたものを食べていた。

そのおかずもなくなり、

米だけで毎日過ごしていた。

米も、確か昨日でなくなったはずだ。

お母さんの手料理が食べたい。

お母さんは、いつも豪華な食事を用意してくれていた。

机で、お箸を持ってうきうきと待つ私の前に、

お母さんが料理を置く光景が浮かぶ。

目の前には、ハンバーグが置かれた。

母が向かいに座って、一緒にとる食事。

母と過ごした時を思い浮かべると、

また涙が浮かんできた。

もう泣きすぎて頭が痛い。


NO.147 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:56 IP:61.7.42.44 削除依頼


ふと時計を見ると、11時をまわっていた。

平日のこの時間帯なら、きっと人も少ない。

さすがに米がないのは困る。

米だけでも買って、早々と帰ろう。

ぼさぼさの髪に、泣きはらした目。

ひどい顔だろうが、そんなことは考えもしない。

私は財布だけ手に持つと、家を出た。

庭を出て右に曲がろうとしたとき、

私はそこに会うはずのない人物がいるのを目にした。

無意識に目を見開く。

その人はどこか遠くを見ていたが、

やがてゆっくりと私を見た。

なぜこの人は、いつも私のそばに?

理解できない、理解できない!


そこには、学生服を着た菅本さんがいた。

学校にいるはずなのに、こんなところにいるなんておかしい。

でも確かに、菅本さんは私の家の塀に背中を預けて座っている。

私は地面を蹴った。

今来た方向を戻り、家に入る。

「おい!」

背後から声が聞こえる。

私は構わずドアを閉めようとした。

それを、菅本さんの手が押える。

「いや、いや!一人にしてよ!」

叫んで両手でドアを閉めようとするが、

菅本さんが少しだけ歯をくいしばって力を込める。

私が、菅本さんの力にかなうはずもなく、

あっけなくドアは開いた。

菅本さんは私の両手をしっかりと握る。

暴れる私の動きも制限される。


NO.148 宮澤 [URL] 12/17(水) 22:58 IP:61.7.42.44 削除依頼

「吹っ切れなんて言わない、だけど、一人で悩むな!」

菅本さんは叫んで、一度私をじっと見ると、

後ろ手でドアを閉め、玄関の一段高くなっている場所に腰をおろした。

言われた言葉が、じんじんと耳に響く。

菅本さんの隣に座るのがためらわれて、

私は靴を脱いで、菅本さんの前に座った。

口が、何かを喋りたがるように小さく開閉する。

しばらく誰とも話していない私は、

ただひとつ声を出すことさえとても緊張しているようだった。

「どうして、外に……?」

小さく尋ねる。

「お前が出てくるのを待っていた」

菅本さんは、まるで何事もないかのように返答した。

不思議な感覚が胸を襲う。

まただ、また温かいのが心を包んでいる。

「お前インターホン鳴らしても開けねーじゃん。
いつかポスト見るためとか、買い物のためとかで出るはずだと思って。
学校来ているかもとか考えて朝のホームルームまではいたけど、来ないから。
出るまで待つつもりでずっと外にいた。
前に渡谷に住所聞いてきたときは鍵開いていたから良かったんだけど……」

それは、母が死んだ日のことだった。

菅本さんが、祭儀場に連れていってくれたのだ。

「なぜこんなのにも……?」

「ん?」

それは、変なこと。

私をただ一人愛してくれていた母は、死んだ。

だったら私はもう、この世界には必要ないし、

本気でお母さんに会いたいと思う。

会いたい、とても会いたい。

なのに菅本さんがいると、変になる。

「なぜこんなにも気にかけてくれるの……?」

「さあね」

菅本さんが苦笑を浮かべる。

私は首を傾げた。

そんな答えじゃ、よく分からない。


NO.149 宮澤 [URL] 12/17(水) 23:02 IP:61.7.42.44 削除依頼


「また罰ゲーム、とか?」

「あほか!」

菅本さんが頭を掻く。

「あれはなー……本当に罰ゲームとかじゃなかったんだけど、
まぁちょっと、いろいろあって。罰ゲームとか言っちゃって」

それはとても、信憑性が薄いと思った。

だって罰ゲームでもなければ、

転入生だった私に初日からあんなに話しかけてくれるとは思えない。

表情を変えない私に、菅本さんがため息を吐く。

「あー!もう、この言葉は用意してなかったのに」

菅本さんが私の手を引いて、

肩口に顔を持ってくる。

そして、小さく、でもはっきりとその言葉を口にする。

  


――ああ、なんなのだろう、これは。

両目から涙がぽろぽろと流れだす。


“泉、大好きよ”


とまらない、とまらない。


「泉のこと、好きなんだけど」


お母さん以外から言われることのないはずの言葉が、

確かに耳から入っていって、心を温かくさせる。

嘘でも、冗談でも良かった。

それだけで、生きていけると思った。

「……ふ」

これまでも散々流してきた涙が頬を伝う。

頭の上に、大きな手が置かれる。

その手はまるで、私を慰めるかのように動く。


もう人となんて関わりたくない。

私は何度もそう繰り返しながら、

きっと人一倍、人を求めていた。

認めて、認めてと叫んでいた。

死にたいのに、死にたくない。

そんな矛盾が、ずっと起こっていた。

NO.150 宮澤 [URL] 12/17(水) 23:03 IP:61.7.42.44 削除依頼

「泉は?俺のこと好き?」

ふいに問われる。

いつの間に、呼び方が“泉”になったのだろう。

いつからだったか、思いだせない。

心を温かいものが駆け巡る。

それが嬉しいと思う。

この人といると、この温かいものがいつもやってくる。

心地良い。

この感覚を、なんと呼ぶのだろう。

「……すき」

その言葉は、とても自然にでてきた。

「好き」

もう一度繰り返す。

声に出すと、菅本さんを好きなんだという気持ちがぶわっと生まれた。

ああ本当に好きなんだ。

大好きなんだ。

「本気で言ってんの?
なんか表情変わってないけど?ちゃんと考えてる?」

菅本さんが覗き込んでくる。

考えてる?と言われると、考えていなかった。

考えることもなく、その言葉は無意識にでてきた。

言葉に詰まってうつむく私の顔を、

菅本さんが優しくあげる。

「ごめん今更冗談なんて言ってももう遅いや。
火ついちゃった」

顔が近づいてきて、私はぐっと目を瞑った。

想像した通り、菅本さんの唇が私の唇に触れる。

私は慌てて顔を背けた。

恥ずかしくてたまらなかった。

楽しそうに、菅本さんが笑う。

「2回目……」

「3回目だけど?」

「え?え?」

困惑する私に、菅本さんがけらけらと笑う。

それからもう一度、今度は少しだけ長いキスをしてくれた。


すかすかになった心を、

菅本さんは温かいもので埋めてくれた。

一人じゃない、一人じゃない。

この時から私は、少しずつ前へ進むことができるようになった。


NO.151 66 12/18(木) 00:20 IP:193.95.232.231 削除依頼

ぬほーっ(∵)! ←
菅本さん好きですっ
かっこよすぎるっ><*

ネクスト希望です(∩^ω^∩)
宮澤さんのペースで更新頑張ってください( ! )

NO.152 斎藤EX 12/18(木) 14:38 IP:116.90.199.24 削除依頼
なんか、暖かいですね

正直、私も人と接するのは苦手、というか色々あって本当に自分は必要な人間なのかとか
この世界に、誰からも愛されていない人がいてもおかしくないんじゃないかとか
わけの分からないを考えてしまう事があるのですが
菅本さんを見て、宮澤さんの作品を見て
ああ、そうでもないのかなと
ある希望のようなものが生まれてきます

いつも、長々と申し訳ないです;
一方的に伝えたいだけなので、軽く流してくださって結構ですヨ!

ねくすとです!

NO.153 12/18(木) 19:09 IP:222.5.63.44 削除依頼
あげ!!
きゅんとしました

NO.154 HRK 12/18(木) 21:48 IP:219.115.241.47 削除依頼

小説も楽しみで毎回読みに来てるんですけど
宮澤さんと話すこともできるから、
なんか嬉しくてつい長文になっちゃうんですよね><

びっくりしたけど
2人がくっついてくれてなんかほっとしました。
このまま泉ちゃんが1人になるのは気が気じゃなかったので;;

ねくすとっ

気になりますb

NO.155 12/20(土) 12:06 IP:222.5.63.35 削除依頼
あげ!!

NO.156 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:23 IP:61.7.42.44 削除依頼
>66さん
わー!またコメント下さってありがとうございます><
本当にうれしい気持ちになります。
菅本さんの魅力を文で表せていけたらなと思っています。
ネクスト希望ありがとうございました!
続き頑張っていきますので、これからも見てくれたら……なんて思っています。
連続でコメントくださったことに感動している宮澤でした^^

>斎藤EXさん
もし辛いことを思い出させてしまったのだったら申し訳ありません。
でも、誰からも愛されていない人なんていないと私は思います。
絶対ひとりひとりが持っている良いところに気づいて、
愛してくれる人はいるのではないかと考えています。
もし辛いことがあったら、相談くらいには乗れますので話してくださいね><
コメントくださってありがとうございました!
とても嬉しい気持ちになりました^^続き頑張ります!

>、さん
2度のあげありがとうございます。
きゅんとしてくださったこと、嬉しく思います。
これからも続き頑張っていきますので
見てくださったら幸いだなと思っています^^

>HRKさん
毎回読みにきているなんて嬉しい言葉ありがとうございます!
HRKさんからコメントがあると、
また見に来てくださってそのうえコメントまで残してくれたのかと
なんだか言葉にできないような嬉しい気持ちになります。
ネクストありがとうございました!
これから続き頑張っていきますので、更新分も見てくださったら嬉しいなと思います。
続き頑張りますね!

NO.157 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:24 IP:61.7.42.44 削除依頼

それから、私は菅本さんと一緒に過ごすことが多くなった。

学校にもちゃんと行っている。

お母さんのことを思うとまだまだ涙が浮かぶけれど、

少し前より、ずっと気が楽だった。

「何食べたい?」

お互い1人暮らしということもあって、

夜も一緒に食べていた。

「だから私が作るってば!」

勝手に私の家の冷蔵庫を開ける菅本さんを制す。

菅本さんはけらけらと笑った。

「だってお前料理下手じゃんー?
目玉焼きも卵焼きもスクランブルエッグになるしさ」

最初は私が作っていたのだが、ここ3日間くらいは菅本さんが作っていた。

一緒にご飯を食べてもらっているのに、

菅本さんに作らせるなんてやっぱり違う気がする。

「俺料理好きだしー。いいから座ってろ?」

菅本さんがフライパンをガスコンロの上に乗せる。

そこまでされると、私は強く言えなくなる。

「チャーハンは好き?」

「……好き」

答えると、“よし”と菅本さんが呟く。

菅本さんは驚くくらい料理が上手だった。

私も人並程度には作れるようにならなければと思うのだけれど。

お茶や箸の準備をして机の前で座って待っていると、

しばらくして私の前にチャーハンが置かれた。

チャーハンには、納豆やナスや高菜などが入っている。

NO.158 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:25 IP:61.7.42.44 削除依頼

「納豆……?」

怪訝そうな顔をすると、菅本さんは首を傾げた。

「えー?珍しい?」

こくこく頷くと菅本さんはやわらかく笑った。

「俺は好きだけど、どうだろ?」

“いただきます”と呟き、それを口に入れる。

少し変わった味だけれど、おいしい。

「おいしいね」

「どうおいしい?」

「えっと、納豆のネバネバがあまり残ってなくて食べやすくて、
高菜とナスとも合ってて、和風な感じが……」

“あ”と思う。

菅本さんは机に肘をついて、楽しそうに私を見ている。

「初めの頃を思い出すな」

私は小さく頷いた。

視聴覚室で、菅本さんに卵ハンバーグパンをもらった。

その時も、このような会話をしたのだ。

罰ゲームだったのだと告白されたとき、

もう菅本さんと話をすることはないと思っていたのに。

またこんな風に……

じわっと涙が目に溜まる感覚がした。

「何泣いてんだ」

「だって、なんか……」

「泣くなよあほ」

こんなにふわふわした中でいられること。

菅本さんの温かさ包んでもらえることが、

幸せでたまらない。

「俺まだお前の、にこぉって笑顔見てないんだからな。
泣くよりそっちを見せてほしいんだけど?」

意地悪く菅本さんが笑う。

“ほら”と促される。

私は懸命に唇を上げた。

菅本さんがくすくすと笑う。

「うわー凄くひきつってる」

NO.159 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:29 IP:61.7.42.44 削除依頼

私は顔を背けた。

笑顔を見せたいのに。

「まぁいいや、じゃあ照れた顔で」

「そんなのしろって言われたって無理!」

「ん?だからさせる」

菅本さんが持っていたスプーンが丁寧に机に置かれる。

「わ」

焦ったような声が出る。

菅本さんが楽しそうな顔で、私に近づいてくる。

今まで何回かしてくれたキスを思い出す。

体が熱くなる。


瞬間、電話が鳴った。

近づいている菅本さんの動きが止まる。

私は逃げるように立ち上がると、受話器をとった。

「泉ちゃん!?」

「あ、東京のおばあちゃん?」

おばあちゃんは焦っているような大きな声だった。

そういえば、ずっと電話が鳴っていたなと思う。

そのたびに、私は電話をとっていなかった。

「心配したのよとても!」

「ごめんなさい……」

「あなたはお母さんの宝なの、
立ち直るのは難しいかもしれないけれど、前を見てね」

「うん」

小さく呟いて、菅本さんを見た。

菅本さんはソファーに寄りかかって私の方を見ている。

その表情が、少しだけ怖く見える。

「あのね……今メモできる?」

「え?あ、ちょっと待って」

ためらいがちなおばあちゃんの言葉。

私は急いでメモ用紙とシャーペンを用意した。


NO.160 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:30 IP:61.7.42.44 削除依頼

「用意したよ」

言うと、おばあちゃんは11桁の番号を口にした。

うながされるままそれをメモする。

携帯電話の番号のようだ。

「これなに……?」

「いいからこれにかけてみなさい。
あとは出る人から聞くといい。
悪い人かもしれない、でもあなたのことを真剣に考えてはくれている」

「意味が分からないよ」

「泉ちゃんは福岡にひとりじゃない。
ひとりと思って泉ちゃんが苦しむのは私の子ども……あなたのお母さんは望まないから」

疑問符が頭に浮かぶ。

おばあちゃんが言っていることがよく分からない。

その後も励ましの言葉をかけられて、電話が切れる。

目の前には訳の分からない11桁の番号だけが残った。


「なんだって?」

菅本さんが、真剣な表情で聞いてくる。

「なんかよく分からないんだけど……この番号に電話をかけろって」

メモした紙を菅本さんに見せてみる。

「それだけ?」

「うん、あとは電話に出た人に聞けって。
なんなのだろう……」

菅本さんが、唇の端をあげた。

「かけてみたら?」

どこか挑戦的な目をしている。

「いや、あとからでいいよ、悪い人かもしれないとかおばあちゃん言ってたし」

“菅本さんもいるし”

心で呟くが、菅本さんの表情は変わらない。

「今かけて?」

少しだけ強い口調で言われて私は妥協し、

滅多に使わない携帯電話をとった。

もう3日は使っていないのに、充電は減っていない。

「じゃあかけてくる……チャーハン食べててね」

私はメモ用紙と携帯電話を手にすると、2階へと上がった。


NO.161 宮澤 [URL] 12/20(土) 20:32 IP:61.7.42.44 削除依頼

携帯電話に番号を入れながら、心臓が何度も跳ねる。

鼓動が速くなっているのが分かる。

番号を押し終わると、すぐにプルルルルルという音が鳴った。

誰も出なければいいのに、とこの瞬間思った。

だって何を話せばいいのだろう。

急に切りたい衝動に駆られる。

瞬間、断続的に聞こえていた機械音が止まった。

どきどきがピークに達する。

「あ、もしもし」

呟くが、返答はない。

不安が募る。

「もしもし?」

もう一度言う。

少しの沈黙のあと、低い声が耳に届いた。

「……泉」

「あ、えっと、東京にいるおばあちゃんが、ここにかけろって……」

聞こえてきた声に焦りながらも、必死に言葉を紡ぐ。

「誰かわかんない?」

ふいに問われた声に、聞き覚えがあるなと思った。

必死に考えると、

頭に声の主が浮かんで、首を振った。

そんなはずはない。

だって、何でおばあちゃんが彼の携帯電話の番号を知っているの?

階段を音を立てて降りる。

リビングのドアを開けると、菅本さんが携帯電話を耳にあてていた。

驚いている私の表情に、菅本さんは苦笑を浮かべる。

菅本さんが耳から携帯電話をはなしボタンを押すと、

私の耳にツーツーという音が響いた。

菅本さんが携帯電話を折りたたむ。

「それ俺の番号って言っても良かったんだけど。
実際にかけてみなきゃ冗談と思うだろ?」

NO.162 12/21(日) 10:32 IP:222.5.63.50 削除依頼
気になる!!
ねく

NO.163 HRK 12/21(日) 12:59 IP:219.115.241.47 削除依頼

はい!
応援してるんで!!b
あ、でも体調には気をつけてください><;
最近は寒いですし。

何で菅本さんだったのかめちゃくちゃ気になりますw
ねくすとっb

NO.164 12/22(月) 17:40 IP:222.5.63.42 削除依頼
あげます

NO.165 宮澤 [URL] 12/23(火) 16:32 IP:61.7.42.44 削除依頼
>、さん
気になってくださってありがとうございます!
続き頑張っていきたいと思っています^^
完結までお付き合いいただけると幸いです。
頑張ります!

>HRKさん
またしてもコメントくださってありがとうございます。
本当に力になっていますし、嬉しくて仕方ありません。
はるさんも体調には気をつけてくださいね^^
菅本さんと泉のことを少しずつ判明させていけたらいいなと思っています。
これからもお付き合いいただけると本当にうれしいです。
完結まで頑張っていきますね!
これから更新頑張りますー!

NO.166 宮澤 [URL] 12/23(火) 16:50 IP:61.7.42.44 削除依頼

「どういう……?」

口の中に唾が溜まるような感覚がする。

菅本さんは小さな笑みを見せていた。

「驚いたよ、最初聞かされたときは」

菅本さんが息を吐く。

私ははっと電話を切っていないことを思い出し、

電話を切った。

突っ立っている私を菅本さんはちらっと見て、

自分の横に呼ぶような仕草をする。

その柔らかな表情がまた心地よい感覚がして、

私は菅本さんの隣に座った。

それはさほど近くはなかったけれど、

それでも“隣”だと言える距離だった。

菅本さんを見つめると、ふと目が合う。

私は慌ててそらした。

菅本さんの口から微かな笑い声が漏れる。


「俺小さい頃にさ、両親離婚してるんだよね」

菅本さんは、何事もないかのように話し始めた。

思えば菅本さんは、自分の話をしたことがなかった。

私はどこか新鮮な気持ちで、それを聞く。

「私と一緒だ」

私は体育座りをして、ひざとひざの間に顔を埋めた。

“そう”と菅本さんが小さく呟く。

「それで、俺は父親の方についていったんだよ」

「そうなんだ」

相槌をうつと、“おい”と菅本さんが言う。

「分かんない?」

「なにが?」

顔をあげて菅本さんを見ると、

その表情はいつになく真剣なものだった。

この表情、私は今までも時々見たことがあった。

「泉は離婚して、どっちについていったの?」

「母親……ですけど」

沈黙が流れる。

だから何なの?

私が母親の方についていって、

菅本さんが父親の方についていって、

そこに何か深い意味がある?

経済力があるという理由から、

父親の方についていく子供だって、少なくはない。

そこになにかあるの?

「双子だってさ」

「何が?」

「俺とお前が」


NO.167 宮澤 [URL] 12/23(火) 17:02 IP:61.7.42.44 削除依頼

“ふ”と口から笑いがこぼれた。

菅本さんが真剣な表情で、とんでもないことを言い出すから。

「信じられないよな、顔だって全然似てない」

「なにその冗談……」

大声で笑って見せるが、

なんとなく不安になっている自分がいる。

だって菅本さんの表情が、変わらない。

真剣なまま動いてくれない。

私と菅本さんが?

双子だって?

有り得ない。

だって、顔だって全然似てない。

それに、私は一人っ子だって聞いていた。

黙っておく意味が分からない。

頭の中で必死に証拠を探す。

双子である証拠ではなく、

双子ではない証拠。

そんな私の頭の中を読んだのか、

菅本さんは言う。

「泉、何で福岡に来たか知ってる?」

「だから、再婚した男から逃げて……」

「何で福岡の必要があった?
何で母は、あの学校を卒業することを求めた?」

お母さんは、学校へ行くことを望んでいた。

私がいま通っている、“あの”学校へ行くことを望んでいた。

頭の中でひとつの答えがでる。

菅本さんがいるから?

私の血のつながりがある人間が、そこにいるから?

もし菅本さんが、

私が“妹”であることを知っていたとしたら?

そしたら例えば罰ゲームでなかったとしても、

私のそばにいてくれて、助けてくれて……?

「おかしい!」

私は叫んでいた。

首を振る。

今まで抱いていた疑問が合点してしまうのがいやだった。

「おかしいよ!だったら何でそれを言わないのよ!」

「祖母は父親が嫌いだからな。父親は母親を散々に扱ったらしい。
俺は結局その父親についていったんだし、父親の子供だろ?
お前は宮田とは関係がないって強く言われてた。
それで黙ってたんだけど……泉に俺の携帯番号教えたってことは、
明かせってことだろ」


NO.168 宮澤 [URL] 12/23(火) 17:19 IP:61.7.42.44 削除依頼

「ちがう、ちがうちがう!」

ぐるぐると頭の中を何かが駆ける。

混乱する。

“早く楽な格好に着替えたいだろうけど、
その格好見せたい人がいるんじゃない?
微熱だし、それくらい見せてきたら?”

ミスコンのとき、菅本さんはふいにそう言った。

その一週間後にお母さんは死んだ。

知っていた?

菅本さんはお母さんにもすでに会っていて、

お母さんの容体も知っていた?

私がお母さんに会いに病院へ行ったことを知っていたから、

帰りも私のことを待てたの?


はっとする。

病院で、お母さんが口にした言葉。

“私がお腹を痛めて生んだ子どもと一緒に暮らせたら……幸せ”

あの言葉に、私はあのとき違和感を感じた。

“泉と一緒に暮らせたら幸せ”と言えば良かったはずだ。

なのになぜ、

なぜ“お腹を痛めて生んだ子供”なんて言い方を?


それだけではない。

お母さんが死んだとき、

菅本さんは私の家の受話器をとって、

“奏ですけど”と言った。

そして、私に祭儀場に行けということを伝え、

案内までしてくれた。

そんなことができるのは……。

答えが出そうになって、慌てて耳をふさぐ。


「でも、菅本さんお葬式……いなかった」

口調は弱くなる。

「それもさっきと同じ理由。祖母に来るなって言われてた。
さすがに危篤状態っていう連絡は来たし、
間に合わなかったけど……お別れもした」

ふさいだ耳に菅本さんの声が届く。

目に涙がたまっていく。

これが何の涙なのか分からない。


私は、私は、いやだ。

そんなのはいやだ。

突きつけられた現実をまだ信じられない自分と、

どこかで本当かもしれないと思う自分がいる。


NO.169 宮澤 [URL] 12/23(火) 17:36 IP:61.7.42.44 削除依頼

泣く私を慰めようと思ったのか、

菅本さんの手が私の頭に触れようとする。

私はそれから逃げた。

涙がとどめなく溢れ出す。

「菅本さ……、
私、何がこんなに悲しいのか分からないよ」

父も母もいなくなった私にとって、

血のつながりが近くにいることは、嬉しいことなのではないか。

そう思ったからおばあちゃんも、

菅本さんの電話番号を教えてきたのではないか。

「泉」

菅本さんが、私の顔を覗き込む。

ああ、菅本さんがどうしていいか分からない表情をしている。

「黙っていてごめんな。
自分の気持ちに気づいて、罰ゲームとかいって、一度は離れようとしたんだけど……」

自分の気持ちってなに?

“泉のこと、好きなんだけど”

私の心に今も残る、菅本さんの優しい声。


「どうして言ったのよ!」

私は菅本さんを怒鳴った。

ああ、こんなことしたくないのに。

「どうして好きなんて言ったの?
知ってたんでしょ、どうして言うのよ!」

違うよ、すごくうれしかった。

私のことを好きなんて言ってくれる人がいたこと、

私は嬉しくてたまらなかった。

「ごめんな」

ああ、菅本さんが悲しい顔をしている。

そんな顔は見たくない。

私が菅本さんの表情をそうさせてる?

「おかげで私気付いちゃったじゃん!
知らなかったのに、この思いをそう呼ぶなんて、知らなかったのに!」

気づけて嬉しかった。

私恋愛なんてしたことなかったし、

あんなにふわふわな気持ちにしてくれてうれしかったのに。

血のつながりのある恋愛が禁忌である常識が抜けない。

それがこんなにも私を苛立たせる。

NO.170 Date 12/23(火) 18:33 IP:119.150.253.27 削除依頼
前々から拝見させていただいておりました。
読みやすい文章だなあ、と思っていたのですがこの複線が凄いのなんのって。
感服いたしました。

これからも影ながら応援させていただきます。
短文となりますが、これにて失礼致します。

NO.171 実捺 12/23(火) 20:17 IP:119.239.122.214 削除依頼
ずぅーとよんでました!!初コメです!
がんばってくださいね〜〜><

NO.172 66 12/24(水) 04:33 IP:213.250.63.234 削除依頼

ふ、双子…(゜Д゜)
意外すぎる事実にびっくりです!
宮澤さんの小説を読んでいると、毎回毎回
主人公と一緒に喜怒哀楽してしまいます(^ω^)
凄く楽しいです♪
続きもわくわくしながら待っています(∵*)
ネクスト∩^ω^∩

NO.173 12/24(水) 16:34 IP:222.5.63.41 削除依頼
あげあげ!!

NO.174 HRK 12/24(水) 17:45 IP:219.115.241.47 削除依頼

泉ちゃんのことを気にしているくせに、
簡単に好きとか言った菅本さんが少し許せません。
でも…好きなのはどうしようもないんですよねぇ;;

ねくすとっb

頑張ってください!!^^

NO.175 実捺 12/25(木) 16:47 IP:119.239.122.214 削除依頼
読んでいると普段感動しない私でも
泣いてしまいましたww
なぜか感動しました

NO.176 まあちゃん 12/25(木) 22:30 IP:210.153.84.65 削除依頼

お久しぶりです^^

いつも更新楽しみにしてます(^ω^)

切なさが伝わってきて涙が止まりません(´;ω;`)

これからも頑張ってください!

Merry X'mas!

NO.177 12/25(木) 23:09 IP:202.212.57.122 削除依頼
お久しぶりです宮澤さん^^
といっても前作の時に数回コメントしたくらいなんですが;
新作執筆なされてたんですね!
今ごろ気づいて一人で舞いあがっていました笑
先にコメントを・・・と先走ってしまったので今から1時間かけて本編読みます^^
軽く目を通しただけなのに、相変わらずの文章力と構成力に脱帽してます笑
今作もすごく期待大きいです!
頑張ってくださいね^^
ちょいちょいコメントしにきます。

NO.178 HRK 12/26(金) 10:14 IP:219.115.241.47 削除依頼

まさか、槙さんも宮澤さんとお知り合いだったとは^^
2人は私の憧れですw

あげときますねb

NO.179 まあちゃん 12/27(土) 11:27 IP:210.153.84.81 削除依頼

あげ!


NO.180 HRK 12/27(土) 11:36 IP:219.115.241.47 削除依頼
あげw

NO.181 Pity 12/27(土) 14:15 IP:122.218.174.183 削除依頼
一気読みしました・・・
あああ続きが気になってしまいますううう
あげます\(^O^)/

NO.182 12/28(日) 03:03 IP:222.5.63.50 削除依頼
年末ということもあって宮澤さん忙しいのかな。このスレ消えたら相当嫌だ;;

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