身寄りなく行き場なし Xマスに解雇、北上の男性
<全財産は10万円> 男性は、勤務するいすゞ系部品製造会社、アイメタルテクノロジー北上工場が、減産のため派遣契約を更新しないとの理由で、派遣会社に解雇を通告されたという。 派遣会社からは寮を1月末までに出るよう言われた。頼る身寄りもなく、26日、市役所3階の相談窓口を訪れた。「どうしたらいいか分からない」「税金も払ってきたのに、ホームレスは嫌だ」 男性は母の再婚相手と折り合いが付かず、大船渡市の工業高校を卒業後に家を出た。秋田県大仙市、盛岡市で職を転々とし、4年前に北上市で派遣労働を始めた。母も亡くなり、部屋を借りる際の「保証人」もいない。 寮を用意してくれる派遣会社は魅力的だった。6畳2間のアパートは同じ派遣社員と相部屋。寮費を引かれても手取りの月給は22万円あった。だが、11月から仕事量は激減。12月分の給料は10万円で、これが今の全財産だ。相部屋の同僚は「青森の実家に戻る」という。 <正社員の夢遠く> この先、住まいをどうしたらいいのか。市の担当者には「うちも提供できる住宅は多くない。家が見つからなければまた来て」と言われた。失業者を受け入れる市営住宅はわずか4戸、雇用促進住宅もほぼ満杯だ。公共職業安定所で仕事も探すが、住む場所がない不安定な身では、再就職は厳しい。 北上の街は、ここ数カ月ですっかり変わった、と男性は思う。「東芝の新半導体工場もできるし、正社員になる可能性が高い街だったのに…」 今、北上に求人はほとんどない。知人からは東京の飲食店業界を紹介された。「東京に行くのは僕にとって最終手段ですね。帰る場所や仕事がなくて苦しいのは自分だけじゃない。1万2000円の定額給付金より今すぐ普通の仕事が欲しい」 男性は「年末、年明けも職業安定所に足を運ぶつもりだ」と言って、雪道を歩き出した。
2008年12月28日日曜日
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