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韓国の精神障害者、8割が強制入院=人権委

人権委による調査、40年間入院したままの事例も

家族が反対すれば退院は不可能、暴力も深刻

 京畿道のある私立の精神科病院に入院中のハンさん(49)は、18年にわたり10カ所以上の精神科病院を転々としながら治療を受けている、いわゆる「長期入院患者」だ。ここ2年は面会に来る家族を除いては、外部の人を目にすることもなくなった。1990年から精神科治療を受けてきたハンさんの病名は「そううつ病」だ。夫と離婚してからは実家で家族とともに暮らしてきたが、その後、精神科病院に入院するようになった。入院を望まないハンさんを、母親と姉はタクシーに無理やり乗せて病院へと連れていった。ハンさんが退院を望んでも、家族は「再発したらまた別の病院に行かなければならないのだから、もう少しここにいなさい」「病院にいた方が安全だ」などと言って退院させようとしない。

 ハンさんは今年9月、医師から社会適応能力を検査する一般的な機能評価を受け、「保護者の支援があれば、退院しても生活は可能な状態」と診断された。しかしハンさんは退院できなかった。入院当時「非自発的に入院した」という理由で、保護者の同意なしには退院ができなくなっているからだ。精神保険法第24条の規定だ。母親と姉は今回も退院に反対した。

 慶尚北道のある私立の精神科病院で1年間入院治療を受け続けているAさんも、夫人により強制的に入院させられた。最初に入院してからすでに20年が過ぎ、15回以上も各地の精神科病院で入退院を繰り返している。6カ月以上の長期入院も2回経験した。Aさんも今年10月に「独立した生活は可能」との診断を受けたが、「いつまた再発するか分からない」として不安を訴える夫人と息子の反対で退院できずにいる。

 国家人権委員会は今年6月から全国72カ所の精神保健施設の患者2253人を対象に調査を行い、その結果を「2008精神障害者の人権実態調査」と題する報告書にまとめ、17日に発表した。この調査は入院患者との個別の面談やアンケート、さらには現場の実態調査を行って作成されたものだ。

 人権委の調査によると、入院患者全体の82.5%が家族などの保護者や市長・道知事、警察などにより強制的に入院させられていた。自らの意志で入院したのはわずか17.5%だ。また病院関係者や家族などから治療の過程や期間、退院の条件などの情報を得ている患者は全体のおよそ半分。残りはそれらについて何も知らされておらず、先の見えない入院治療を受けていることになる。

 彼らの平均の入院期間は668日で、英国の10倍、ドイツの25倍、イタリアの50倍にも達する。中には40年以上(488カ月)入院しているケースもあった。

 精神障害者に対する暴力も深刻だ。調査対象となった患者の29%が、医療陣から布きれや医療用ゴムバンドなどで両手を縛られた経験があり、その中のさらに35%は「何の説明もなく縛られた」と回答している。また縛られた経験のある患者の6分の1は、縛られていた間に言語的、身体的、性的な暴力を受けたと答えた。

 さらに強制入院患者が退院を申請した場合、これを審査する精神保健審判委員会が退院を認めるのはわずか3%にすぎなかった。

 人権委は「精神障害者が自らの権利を守るためには、基本的には精神保険法を改正して、これらの人権侵害に対する厳格な刑事処罰や損害賠償などの法的対応ができるようにする必要がある」「精神障害者の治療施設に対する管理監督や、患者の社会復帰プログラムを強化する必要もある」などと主張した。

国家人権委員会が精神保健施設の入院患者2253人の実態を調査したところ、82.5%が強制的に入院させられていたことが分かった。/朝鮮日報DB

パク・セミ記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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