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年の3月13日は日曜日だったことをよく覚えている。翌日が新聞の休刊日だったことも。なぜなら、その日の北海道新聞(以下=道新)朝刊第1社会面に私の目は釘付けになっていたからだ。
〈覚せい剤130キロ道内流入?〉
〈道警と函館税関「泳がせ捜査」失敗〉
〈捜査関係者ら複数が証言〉
〈末端価格150億円超〉
 紙面には派手な見出しが躍っていた。
 記事の内容はおおかた次のようなものだ。――2000年4月ごろ、北海道警(以下=道警)銃器対策課と函館税関が「泳がせ捜査」に失敗、その結果、相場価格で約150億円に相当する130 kgの覚醒剤と2tの大麻が北海道の石狩湾新港に流入し、密売されていた可能性が高いことが複数の捜査関係者の証言から明らかになった。また、この捜査には、02年7月に覚せい剤取締法違反で逮捕され現在服役中の稲葉圭昭よしあき・元道警警部(51歳)が深く関与しており、彼自身の逮捕につながった覚醒剤も、この時の捜査で入手したものであると、稲葉本人が公判中に提出した上申書で認めている――。
 私がこの記事に釘付けになったのは、内容に驚愕したのでもセンセーショナルな見出しに圧倒されたわけでもない。これとほぼ同じ内容の記事を、道新の記事が出る半年も前の月刊「現代」に執筆していたからである(『 25億円の覚醒剤が捜査ミスから流入 北海道警が闇に葬った大スキャンダル』04年9月号)。
 私は自分の記事が先だったと言いたいがために本稿を執筆するわけではない。この道新の記事がきっかけとなって、後述するように道警と道新は、今日にいたるまで不毛で無意味な泥仕合を繰り広げている。だが、この両者の確執がヒートアップすればするほど、私が自分の記事で主張したかったこと、世論に訴えたいことが薄らいでいくように思えてならないのだ。
 そこで、不毛な泥仕合はひとまず傍におき、まずはこのスキャンダルの経緯について、もう一度簡単にふりかえっておきたいと思う。


犯罪に手を染めた 4 人の捜査員


 そもそも、この「道警・覚醒剤スキャンダル」は、稲葉元警部の第4回公判( 03年2月24日)中に浮上したものだった(稲葉事件をめぐる北海道警の構造的腐敗の詳細については、拙著『北海道警察の冷たい夏』をご参照いただきたい)。弁護士の被告人質問に答える形で、稲葉はおおむね次のような証言を行っている(一部要約)。
「 00年の4〜5月、CD(コントロールド・デリバリー)かCCD(クリーン・コントロールド・デリバリー)で挙げようと捜査していた。自分だけの単独捜査ではなく道警本部(生活安全部)銃器対策課の指揮で、拳銃を挙げる目的で、覚醒剤取引の1〜2回目を見逃して、3回目に被疑者をまとめて逮捕する予定だった」
 ここで言うCDやCCDが、密売組織を一網打尽にするために当初の犯行は泳がせておく、いわゆる「泳がせ捜査」である。このように道警の関与を明言した稲葉は、翌3月に行われた論告求刑で「上申書」を読み上げることで、より核心に踏み込んだ発言を行っている。
「……入手先は香港であり、到着港は石狩新港であります。(中略)以上の泳がせ捜査の失敗は結局、関係者全員が秘密とすることにより、闇に葬られましたが、皮肉にも私の事件によって露見したことになりました……」
 この「稲葉証言」を元に、私はおよそ2年半にわたって取材を行い、この時の覚醒剤の密輸入に関わっていた複数の人物から証言を得た上で、その裏付けをひとつずつ取っていった。その結果、少なくともこの時期に北海道で大規模な覚醒剤の密輸があったという確証を得ることができた。つまり、稲葉元警部の証言には相応のリアリティがあるのだ。以下、確認が取れた事項を箇条書きに列挙してみよう。

1・2000年4月から、2002年6月にかけて、都合3度にわたり、覚醒剤の密輸が計画された。計画したのは日本に偽装留学している中国人マフィアのグループである。
2・密輸にはパナマ船籍の貨物船が用いられた。上海を出航し、香港で覚醒剤を積み込み、石狩新港で荷揚げされている。1回あたりの密輸入量は約129 kgに達する。
3・覚醒剤は中国製のプラスチック玩具の箱の中に小分けして入れてあった。一つの段ボール箱に、その玩具が2ダース入っていた。合計 12箱の段ボール箱が荷揚げされた。

 私は現在でも道警が、この「覚醒剤大量流入疑惑」について捜査を行うことを強く望んでおり、そのため詳細については差し控えるが、もちろんパナマ船籍の貨物船の名前も、荷物が荷揚げされた日時もすべて特定している。さらには、荷揚げされたブツがどのようなルートで分配されたのかという点についても細かく関係者の証言を得ている。繰り返すが、大量の覚醒剤が北海道に流入したという点について、私は事実であると確信している。
 そして私は、北海道警の少なくとも稲葉を含む4人の捜査員が「泳がせ捜査」に関与し、その過程をリアルタイムで知り得る立場にいたことも取材の結果確信している。稲葉自身の供述や、複数の暴力団関係者の証言を総合した上で、私が取材によって確認できた事実だけで構成するならば、その流れは以下のようなものとなる。
 北海道警の銃器対策課は、これまでも暴力団の組員やマフィアとつながりをもつ外国人の協力を得て、拳銃のヤラセ押収を頻繁に行っていた。中でも稲葉は元暴力団幹部の石上勝之、同じく渡辺司、そして中古車販売ブローカーのパキスタン人、ハーン・マリックという3人の“捜査協力者”によって密輸拳銃や覚醒剤の摘発を次々と行い、銃器対策課のエースとして組織内では有名な存在だった。
 ところが 90年代後半、警察の拳銃ヤラセ押収スキャンダルが次々と明るみに出たこともあり、稲葉は中国人留学生グループを使って別の“拳銃押収ルート”を作ろうと企てる。つまりは、単なる「泳がせ捜査」ではなく、犯罪行為そのものが警察官によって起案された、壮大なヤラセだったわけだ。
 まず、石上たちを使って、中国人留学生に覚醒剤密輸を持ちかけ、札幌市中央区に「北斗星」という名の中国雑貨店を開かせた。次に商品の輸入を装って、中国製玩具の箱の中に香港で入手した覚醒剤を詰め込み、石狩で荷揚げする。後は前述したとおりである。
 この計画を最初から知っていたのは現場の稲葉に加え、当時の生活安全課長だった方川東城夫かたがわとしお警視、同じく生活安全課所属で稲葉の上司にあたるOとN捜査員の4名である。1回目、2回目の覚醒剤密輸は実行に移され、計画はうまくいくかに見えた。だが、3回目はなかった。「泳がせ捜査」だと気づいた中国人グループが摘発前に行方をくらましてしまったからである。かくして捜査は完全な失敗に終わった。
 捜査協力者の渡辺が札幌北警察署に駆け込み、覚せい剤取締法違反で稲葉が逮捕されるのは、それから約1年後のことである。ちなみに、この「泳がせ捜査」の全貌についても知っていたはずの渡辺は、勾留中の札幌拘置所で変死を遂げ、また、生活安全課長だった方川も、監察官に取り調べられているさなかに自殺している。

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