【ブリュッセル=井田香奈子】ベルギーのルテルム首相は19日夜、内閣総辞職を決めた。金融危機で国有化した銀行フォルティスの仏銀行BNPパリバへの売却に反対する株主らが起こした訴訟で、政府に有利な判決を得ようと裁判官に圧力をかけた問題の責任をとった。憲法規定により、国王アルベール2世が近く総辞職を認めるかどうかを決める。
問題になっている訴訟は、ベルギー政府のフォルティス売却決定に対して小規模株主が「正当な議決手続きを踏んでいない」などと訴えたもの。第一審は株主の訴えを退けたが、控訴審は今月12日、株主側の主張を認め、65日間の売却凍結を命令した。
その後、この判決の言い渡し前に政府が司法介入した疑惑が浮上。政府に不利な判決内容は維持されたものの、ロンデルス最高裁長官は、ルテルム政権から政府に有利な判決への働きかけがあったと批判する書簡を国会に提出した。ファンドゥールゼン法相はこれらの指摘に「あまりに打ちのめされた」として、19日午後、単独で辞意を表明。野党の批判も強まっていた。