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それはいつかのさよならよねタイトルNO.17985
    かわ 01/28(月) 01:26 IP:122.17.193.183 削除依頼

はじめまして、か、こんにちは!クリックありがとうございます!ここではちょっとした交流企画的なものをやっていきたいと思っています。以下企画内容。


・・・・・・・・・・・・・・・・・☆


【一レス以内で回答創作バトン】


※バトンの回答は、全てこのスレ内で行うべし。

ルール

一、
まず一番最初は、私が御題を作るので、一番最初に参加して下さる方は、その御題で詩でも小説でも何でも良いので、創作をして下さい。
(一レス以内に収めて頂けるとありがたいです。)

二、
創作を終えたら、次の御題を創作して下さい。
レス内に、次の御題と分かるように書いて下さい。
(字数制限に限り、これがどうしても創作の邪魔になるようでしたら、次の二レスめ突入OKです。)

三、
最後に、投稿する前に、一度ページを更新してみて下さい。
あなたの前に既に投稿をしている方がいらっしゃるかも知れません。
御題が被るとお互い気まずくなってしまうこと必然ですからね(そんな企画を提示した奴がよくも)(殴)


・・・・・・・・・・・・・・・・・☆


以上がこの企画のルールになります。
不明な点はどうぞどんどんご質問下さい!

質問がくるとあれですので、少し間を置いてからスタートしたいと思いますー


どうぞよろしくお願いします!



NO.1 かわ 01/28(月) 01:44 IP:122.17.193.183 削除依頼

と思いましたが特に問題もないかなと思うので始めてしまおう…かな…!\(^o^)/


御題:それはいつかのさよならよね


ではではよろしくおねがいします〜!

NO.2 枯野きのこ 01/28(月) 12:15 IP:59.135.38.213 削除依頼
それはいつかのさよならよね

それでは、しんろう、しんぷがごたいじょうなさいます。
ふたりに集まる笑顔と拍手がやわらかにひびいた。伏せたまつげも、ふわりと染まる頬も幸せな白につつまれ、ののちゃんはゆっくりと扉に向かっていく。たったいま夫となったひとと細い腕を組みながら。
やがてふたりが扉の向こうに消えてしまうと、わたしは今まで立っていた父の椅子に座り込んだ。
式場となっていた父の書斎には先ほどまで拍手をしていたいくつかの人形たちが置かれていたが、もう、ひとつも動かなかった。
ののちゃんとけんくんはきっと、廊下の端まで歩いてからこちらへ駆けて戻って来るだろう。それまでわたしは、神父用の白いシーツをかぶりながら、ぽかんと書斎を見つめつづけなくてはいけない。
不意にわたしは、ののちゃんはほんとうにいなくなってしまうのではないかと不安になった。もう、もどらなかったらどうしよう。どくりどくりと喉のあたりが波打ちはじめ、それはしばらくすると目のまわりまでなにかをせり上げた。ほんとうに、けっこんしたら、どうしよう。
いかないで、ののちゃん。そう思った途端に、いつのまにかぼんやりとしていた視界からなまぬるいものが手のひらに、そしてシーツに落ちはじめた。息が苦しくなって、喉がぐうと痛くなって、それでもわたしは声をあげて泣きじゃくった。いかないで、いかないで。廊下の先に、まだののちゃんがいますようにと神様に祈りながら。

明日はさすがに叫ばないでよね。
受話器越しに彼女が笑っているのがわかった。
まさか、わたしだっておとなになったんだから。わたしは、受話器から少し顔を遠ざけて返事をする。
すぐそこに掛けられたカレンダーの、明日の日付にハートを書き込んでいるのは、ののちゃんのため。
幸せになってね。
服の袖でぼんやりとした視界をぬぐってからわたしは、わたしのののちゃんにさよならを言った。


NO.3 枯野きのこ 01/28(月) 12:27 IP:59.135.38.211 削除依頼
2レス目失礼します。
はじめまして。
素敵な企画に参加させていただいてありがとうございました。
そしてどきどきするような御題ありがとうございました。
もしよろしければ、また参加したく思うのですが……!
次の御題は「きみにもわからないだろうね」でお願いします。
使いづらくてすみません。
つづかなかったらどうしよう……!
というわけで逃げます!
失礼しました。

NO.4 九十九在処 01/28(月) 16:38 IP:220.33.78.117 削除依頼
きみにもわからないだろうね


「これなんだか分かるかい?」
 そんなことをぽつりと呟くと彼はその手にある物を私に見せる。大きくて、真ん丸い石みたいなものだった。
「なにこれ?」
 そういうと彼は残念そうにぼんやりと空中を見上げる。何を思っているのか、彼はすべての事に対して不思議を持っていて、可笑しな人だった。
「なにそれ」
 もう一度聞いてみると彼はぼんやりと此方に視線を向けると、はぁ、とわざとらしい大きな声をもう一度出す。そして、また視線を空中へと向ける。

「きみにもわからないだろうね」
 その言葉に不意に彼は悲しそうに眉を下げる。彼は何時か随分と前に同じような顔をしていた。
 確か、死んだ奥さんの話をしていたときだ。
 哀しそうに眉を吊り下げていたけど、口元には何時もどおりふわふわとした甘い笑みを浮かべていた。今と同じように。
 貴方はどうしてそんなに悲しい顔をしているの、てっ彼に聞いても何時もどおり空中を眺めて、きみにはわからないだろうね、てっ呟いた。
 今日とおんなじ調子で。

 あたしが奇跡てっ信じるてっ聞いた時も。哀しみてっ何てっ聞いた時も。奥さんはどうして死んだのって聞いた時も。ぜんぶぜんぶぜんぶ。
 きみにもわからにだろうねって。



意味不明ですみませんorz
枯野様の素敵お題にかなり負けていますが其処はあえてスルーで←
次のお題は「かみさまは僕のことがきらいなんですか」で。
変なお題ですみません!
それでは、逃亡させてください(え)
かわ様、素敵企画に参加させてくださって有難う御座いました。

NO.5 かわ 01/29(火) 16:53 IP:122.17.128.19 削除依頼



いまもみみの奥で鐘の音が響くの
耳を塞いでも視覚がしはいされる、おうごんに

あのひ着た喪服の色をだれが剥がせるというの
はだしのあのこの脚と、服と、ぼくと対比する白を、

誰が剥がせると言う、
乞う為に掲げた筈の頭上の両手で
柄を握りふりおろされた、かみさまはあのこをころした。(なぜ、どうせなら、)
 
 
 
 
・かみさまは僕のことがきらいなんですか



・・・・・・・・

おおおおおおお…!!!(平伏し)高名なお二方が早速参加して下さるなんて夢かもしれないふおおおおおお…!!!
ありがとうございますありがとうございます穴だらけのこんな企画に…!!
どうぞまたお願いします!ありがとうございましたー!

・・・・・・・・


次御題:星の出ない夜に、


NO.6 高瀬ひさ [URL] 01/29(火) 17:41 IP:124.154.9.38 削除依頼


「いつになったらさらってくれるの」

くりかえし、くりかえし。そう呟く彼女はその微かに震うくちびるを動かしながらも、気丈な姿勢は崩さない。怖がっているのだと、恐れているのだと。認めたくないから、だから強がってみせる。余裕があるように振る舞う。
けれど逆効果だ、と言ってしまえばそれまでで。
俺にとってはその態度こそが格好の餌。浸けこむにはちょうど良い。
ただそのタイミングが見つからない、という理由だけを彼女に囁いて、焦らす。

懲りないのは自分自身かもしれない。
そう頭に過ぎりながらも彼女の元へ通う。そんな俺が分からなかったけれど。
一度、頃合だと思って伸ばした手がある。掴んで、抱き寄せて。苦しめようと思った。もう「さらって」なんて言えないくらいに痛みを与えようとした。
だけど、触れてしまえば終わってしまうような気がして。抱き寄せてしまえば別の何かが溢れてきてしまいそうで。これ以上近付けば、間違うような気がして。

「また、こんど。星の出ない夜に、さらってやるよ」

無理して強がった。指先の震えを誤魔化すように飛び立つ。
お前は知らないだろう。また次の日に俺が来るのをあのベランダで今か、今かと待ち続けるのだろう。これからも、ずっとずっと。
でも、もう何も来ないよ。
そこで待っていても、誰も来やしない。少なくとも俺は、行かない。

無知なお姫様に知恵をひとつ。
この世界に星の出ない夜なんてありはしない。
(あるのは星々が照らす明るい夜か)(閉じた瞳の中にある闇だけさ)


 ―――

 楽しく書かせていただきました^^
 御題に添えているか分かりませんが、次の方に繋ぎます!
 お目汚し失礼致しました。

 ―――

 次の御題 : 聞こえていますか



NO.7 かまきりこ 01/29(火) 18:25 IP:219.53.96.61 削除依頼

聞こえていますか

 それは唐突過ぎてあまりにも非現実的な話だった。知りもしないただ廊下ですれ違っただけの彼女に聞こえていますか、と短く問われる。最初は自分に言われているのだと思わず無視していたが貴方の事よと言われ振り返る。
 この学校にこんな人がいたのか、そう思ってしまった。綺麗な栗色の髪、小さな顔に不釣り合いな大きな瞳。白い肌に細い筆で描いたような唇。
 僕は思わず微苦笑をしてから、なんですかと聞く。

「聞こえてますか」
「だから……何がですか」

綺麗な容姿の持ち主だが、幾度となくそれを問いかけてくるので何処か頭のねじがおかしい人なのではないかという無駄な疑いをかける。美人なんていうものは、もしかしたら頭のねじがおかしいかわりに美しさを得ている人物なのかもしれない。
 彼女が幾度も聞こえていますかと問われるたびに何がですかと答えるのにそろそろ疲れてきたとき、彼女は綺麗に微笑んで言う。

「My feeling」

 綺麗な発音、きっと英語だったのだろうけどどういう意味なのかは分からなかった。それだけ言って再びにこりとほほ笑むと歩き出してしまう彼女を呆然と間抜けな表情で見つめる僕。

 My feeling、私の気持ち。聞こえてますか? 私の気持ち。



 初めまして、鎌木吏子と申すものです。今回は、とても素敵な企画だなと思い思わず参加させて頂きました。皆様の文章、表現の一つひとつがとても綺麗で憧れます。
 では、短いですがこれで。



御題:狂った時計は何を思う


NO.8 かまきりこ 01/29(火) 18:30 IP:219.53.96.61 削除依頼

※2レス申し訳御座いません
 「聞こえていますか」が「聞こえてますか」になっていました! 本来は「聞こえていますか」となります。本当に申し訳御座いませんでした!

NO.9 鞍菜 [URL] 01/29(火) 19:18 IP:163.139.27.232 削除依頼
「ねえ、これ、すごい狂ってるよ?」
 僕の部屋に来た、君は言う。不思議そうに、あいつを指差しながら。
 白く、艶やかな外見。鼓動のような音。あいつはいつも僕と一緒にいる。僕の一部のように感じている。
「うん、でも別に不便じゃないんだ」
 僕がそう言うと、君は、ふうんとつまらなそうに返事をして、読んでいた雑誌を閉じた。
「じゃあ、私帰るね。また明日」
「うん、また明日」
 僕が君を見送らなくなったのはいつからだろう。君が僕の家のインターホンを押さなくなったのはいつからだろう。
 最近のような気もするけれど、大分前のような気もする。僕が会話を適当に済ませてしまうと、君はいつも帰ってしまう。
 その度に後悔する。
「……また、やっちまったな」
 白く艶やかなあいつをもって、後ろのネジをグルグル回す。
 僕が後悔するたびに、あいつの表情は歴史を逆戻りする。否、僕がさせているのだ。
 今、あいつの中では平成何年で、何月で、何日で、何時で、何秒なのだろうか。せめてあいつが喋れたら、それくらいわかることができただろう。
 今、あいつは、後悔ばかりの僕に対して、何を思うだろうか。あいつに、感情があれば、知ることができただろう。

 あいつは僕であるのだったら、あいつが何を思うかわからないわけじゃないだろう。でも、あいつは僕であって、僕ではないのだ(ただの、後悔の塊だ)。


.//狂った時計は何を思う

初めまして! 素敵な企画だと思い参加させていただいたのですが……。
ぐはあ、伝わりにくい状態に!
でも、楽しかったです。

次の御題 > こんなにも、崩れそうだ

い……いけますかね?

NO.10 雛向 莉嗚* 01/29(火) 19:33 IP:125.55.95.138 削除依頼

「貴女、之なんだと思う?」

 彼女は不思議な空間を指差し、僕に問いかける。別に其処には何にもないのに、彼女は大人の癖に少女のように僕に問いかける。
 すると、突然笑い出した。僕は何時ものように酔っているのだろうと思い、優しく毛布を掛けてやった。だが、彼女は僕を振り払いもう一度、狂ったように笑い出す。

「私に優しくしないで……っていつになったらわかるのかなぁ?」

 笑っていると思ったら、次は涙を流して髪を掻き分けている。僕は壊れそうな彼女の身体を優しく抱擁した。
 彼女は短い髪をもう一度艶やかに掻き揚げ僕を見下した。

「貴女のお名前教えてくれないかしら」

 ほら、君は今日もまたそんなことを聞くんだね。
 僕は紳士気分で、君の耳元に囁いた。

「名無しの浚い人……」

 彼女は瞳に涙を浮かべている。両手を秤のようにあげながら。そして、何時ものように、壊れた人形のように何かを呟く。
 直ぐ隣にいる僕は、何度も聞かされている。

「私を……唯一浚ってくれる人? 私を浚って逃げてくれるの?」

 初めて逢った時も君はそういっていたね。嘲いながらいってやりたかったけど、今の僕には声さえ振り絞れない。
 満月の夜。今にも崩れそうな彼女と僕。
 だから、今日こそは彼女の耳元で言ってやった。

「崩れるくらい、浚ってやる……」

 ――僕の心は、砂のように崩れていった。
 僕と彼女の瞳に、一つの涙が零れ落ちたのは、その瞬間だった。

//こんなにも、崩れそうだ

 初めまして。
 素敵な企画だと思い、参加させて頂きました。駄文で申し訳ございません。一応、精神崩壊した女としそうな男の話なんですけど、伝わりませんね←
 しかも、捉え方によっては15禁くら……(ry
 さてはて、次の御題は

>夕やけのそらに誓おう

 続くかどうか分からないですが、之にて失礼します><

NO.11 かわ 01/29(火) 22:41 IP:123.224.102.71 削除依頼


また掌にキスをしてあたしの捨てられた木の下で誓うの
冷え冷えとしたきんぱつを結って、一人にしないって、



・夕やけのそらに誓おう



・・・・・・・・・・・

少し来ない間に な ん と … !!!
レベル高すぎますおわわわわ…!
皆様ありがとうございます!こんな駄目企画へ参加してくださって本当…!!!ありがとうございます…!!!(平伏し)

どうぞこれからも…(贅 沢 な !)


NO.12 かわ 01/29(火) 22:43 IP:123.224.102.71 削除依頼

御題を忘れていまst・・・OTZ(もう帰れよ…)

次御題: あゝ、心中


NO.13 [MAIL] 01/30(水) 00:34 IP:219.98.165.199 削除依頼

 君が息を絶やそうかといったからなのです。ですからそれを受け入れたまででありますし、もともと僕には意思なんて存在しません。それに、もし僕に意思というものがあっても、君の言葉を拒むことは出来なかったでしょう。だって、僕は君の忠実なるしもべ、なのですから。

「ね、いっせーのせ。よ?」

 小さく頷くと、君は少しだけ寂しそうな笑みを浮かべました。そこから何かを読み取ることは、出来ませんでした。自分自身はこの状況になんの感慨も感じる事もなく、淡々と過ぎてゆく行程を見送っているだけでした。

 三十秒後にはきっと、僕たちはもう、呼吸をしていないのでしょう。僕がそれまでの間に出来ることといったら君の震える手を握って、死後の世界まで誘ってあげることくらいしかありません。


・あゝ、心中


こんな時間にこんにちは。
素敵なスレッドを見つけてしまい、スランプ中でありながらも思わず書いてしまいました。周りの方々が素敵な言葉を連ねていく、とても尊敬している人々ばかりなので少々緊張気味です。
また、参加させていただくことは可能なのでしょうか? そしたら無理にでもこの身体に鞭を叩いてこのスレッドに参上する気満々なのですが。笑
とても楽しませていただきました。ありがとうございました。

次の御題は
・呟く君の横顔、沈みかけた夕陽、瞼
で宜しくお願い致します。
使いにくかったらすいません……!

NO.14 カラス 01/30(水) 11:10 IP:218.126.125.5 削除依頼

 世界の終焉の夕陽ってのは、こんなにも赤いものなんだな!

 絶望したような、抗うような叫び声。
 その癖、美しさに飲まれてる。
 水滴がぱたぱたと顔に掛かった。
 馬鹿だな、泣いてんのか。らしくない!
 いつもは冷静な筈の顔から眼を背けて、沈む夕陽を見る。
 おお、綺麗だ、美しい、恐ろしい、なんて、赤い、太陽!
 何かに意識を猛烈に引きずられた。
 あーあ、これで、御終い。
 朦朧としたまま、小さく呟く。
 まだ! まだ駄目。
 駄々っ子かい、お前は!
 霞んだ視界を振り払い、最後に顔を見上げる。
 お前は、左腕でこちらの肩を抱え、右手は夕陽に伸ばしてた。
 懇願するように叫ぶ。
 沈むな! まだ沈んじゃいけない!
 ああ、お前は馬鹿かい。
 そんな、生まれたての赤ん坊だって知っている真理を覆そうとして!
 真っ赤な夕陽が最後の視線を投げて海の中へ帰ったとき、瞼を閉じて、最後の息を吐き出した。

・呟く君の横顔、沈みかけた夕陽、瞼
 
 

◆初企画参加です。思ったとおり撃沈しましたorz
ものっそい死にネタ!ああ、なんだかすみません(おろおろ)
素敵な企画!続けばいいな!(責任重大)

次の御題:世界を変えましょうか、ミスター

あ、続かない予感がバシバシと。orz
使いにくくて御免なさい!

NO.15 秋郷 汐月 [URL] 01/30(水) 13:35 IP:58.85.68.104 削除依頼

 ゆるり。ぬるい風の通る窓際で、今日も君はつまらなさそうに外の景色をみていた。
 真っ青な空だとか、そこに浮かぶ綿飴みたいな雲だとか、窓の位置より少し背の低い木の葉っぱだとか……実際色々なものがその瞳には映っているはずなのに、君はちっとも楽しそうに、不思議そうに、哀しそうに、しない。絶対。
 まれにクラスメイトの誰かが声をかけても、君が返す答えは「うん」とか「そう」とか「へぇ」とかで、その後少しだけしょんぼりした彼らは、君から目を離す。

 けど僕だけは絶対、逸らさない。
 じっと君を見て――勿論そうしたところで君がこっちを見てくれないのは知っていたけれど……ただ、ただ、見ていた。誰よりも孤独を望むくせに永久不変の何気ない日常に飽き飽きしている君の横顔を。綺麗だと素直に思っていた。
 そして、いつか言えたら良いなと思っていたその言葉を君に言えるタイミングを、待ってたんだ。

「世界を変えましょうか、ミスター」

 (、ツマラナイ日常に僕と終止符を打とうよ。)

***

何やら素敵な企画が、と思い参上させて頂きました、秋郷汐月と申します。
せっかくの素敵なお題をものの見事にぶち壊してしまっていないか
そりゃもう限りなく心配ですが投下させて頂きます。
小説とは呼べない文章の塊でお目汚し間違いなしですが、そこはご愛嬌で←
また機会があればお邪魔させて頂きたいなと思いつつ…

次の御題『 好きと嫌いと境界線 』
(なんかもうすみません!)

NO.16 高瀬ひさ [URL] 01/30(水) 21:23 IP:219.102.63.59 削除依頼


 :好きと嫌いと境界線


ぼくときみとが離れる、ってゆうのは元から決められていたことで。雲の上の誰かさんが決めたことなのかどうなのかはよく知らないけれど、ただぼくもきみもまだ生まれてない頃から定められていたのだと、なんとなく分かっている。
しょうがない、と割り切るには大分時間がかかったから、きみも駄々をこねてくれるかなあ、とかそうゆうのを期待していたんだけど。
意外とあっさりとした別れになった一分前。
さよなら、を告げたのはきみ。さよなら、と返したのはぼく。

「……な、んで。まだ居るの、よ」

けれど一度離れて背を向けたあと、未練があって振り返った。
きみのしゃん、とした後姿を瞳に焼き付けておこうって思った。
でもそこに映ったのは予想していなかったきみの姿。いつも強がって、どんな時も弱さなんて思わせないように傍にいたきみ。震える肩なんて、見たことはない。

「だって、泣きそうでしょ」

泣いてなんかない、と。
あんたなんか嫌い、別れるくらいで泣くはずがないの、と。
いつもよりビブラートのかかる声でそう言われて。はいそうですか、と立ち去れるわけないのに。さようなら、と元の道に帰れるわけないのに。

後ろから抱きすくめられて一瞬驚くきみ。
逃げよう、とかゆう抵抗はなくて。ただ、声をあげないように我慢し続けてた。
ぼくはきみの瞳から溢れるものを拭いはせずに、ただただ腕の中の温もりを覚えていようと、そう思っていた。

「大丈夫。離れてもまた、どこかで、めぐり逢えるよ」

それがいつの日になっても。
きみがぼくを忘れても、それでも。
(ふたりの間に、きみとぼくの立っている距離分しかなくなったときに)


―――

 ふたたび失礼します、高瀬です!
 前回と使っている言葉が似ていることにショックを覚えてます。
 そしてまたもや御題に合っていない可能性が高いとゆう^^;
 お目汚し失礼致しましたー。

―――

次の御題 : さくら、ひらり。



NO.17 かわ 01/31(木) 00:57 IP:122.29.43.131 削除依頼
・さくら、ひらり。



(一緒に逃げよう、)なんたる浅墓、嗚。
この体たらく。私の恋をするまえの冷静さ
をどうか貴方かえしてください、

嗚、折角の、春!


・・・・・・



\(^O^)/ ありえん、アリ円…、有り得ん。
この穴だらけ企画大分敷居が高くなり過ぎてしまっている…なんてハイレベルな参加者様郡…!OTZ
すてきすてきゆって下さって有難う御座います(´・ω・`)しかし素敵なのは皆様でし、た。た!

これからもどうぞよろしくお願いします…!(平伏し)
何回でも大歓迎であります!(^▽^)ノありがとうございます!


・・・・・・


次御題:みじめさしかない、


NO.18 唯瀬 01/31(木) 17:47 IP:221.253.130.220 削除依頼
 彼女はずっと泣いていた。
震える肩に手を伸ばし、そっと抱き締めて問いかける。
「もう泣くのやめない?」
彼女は首を横に振った。視線の先には出来たばかりの小さな墓。
「……忘れるしかないだろ」
自分でも残酷だと思ったが、俺はそんな台詞しか口に出来なかった。
 ぽつぽつと降り出した雨、今朝の天気予報はばっちり当たっていた。
彼女の頭を梳くように撫でて、また言う。
「もう泣くなよ。泣いても何も変わらないし、みじめなだけだ」
それでも彼女の身体はまだ震えていた。
本当に、どうしようもない。
 さっきまで平常心を保っていた俺も、そろそろ泣きたくなってきた。
彼女から手を離し、立ち上がる。頭上の空はコンクリートのように汚れていた。
「……みじめでもいいよ」
雨音に紛れて発せられた彼女の言葉、俺はただその華奢な身体を見下ろす。
「なんで」
彼女は何も返さなかった。
 再び空を仰いだ俺は、ふと可笑しな事を考える。みじめなのは彼女じゃない、俺の今いる立場でも、小さな墓でも、雨の降る空でもない……この世界、全てがみじめなんだ。

−−−−−−

初めまして。
衝動的に参加しちゃいましたが、こんなものしか書けなかったというorz
素敵企画なのに本当にすみません、すみません!;
では、潔く逃避させてもらいます……!

次お題→可憐な花と空き缶

NO.19 かなし 02/01(金) 00:04 IP:218.45.105.9 削除依頼
 生けられた花よりも、ささやかに咲くその小さな花のほうが美しいと言ったのは誰だっただろうか。花を愛でるその行為の意味を、僕は汲み取ることができない。
 彼女は花が好きだった。道端に咲くスミレに足を止めて微笑み、週末には花屋に通って、家に飾った。僕には彼女のその歓びは、全くもってわからなかったけれど。一度だけ、彼女に花を贈った。そんなに好きなら、と、気まぐれに。真白の百合の花を見て、彼女は微笑んだ。ほんとうに、しあわせそうに。桃色の、桜色の、―――比喩できるほど僕は色彩を語れはしないが―――唇で、ありがとうを紡いだ。・・・そのとき何も感じなかったといえば、うそになる。

 「本当は安い女だったんじゃないか、お前」

 墓前の前で呟いた言葉は、線香の煙で濁った(気がした)。僕が彼女に贈ったものと言えば、今や儀礼でしかない安物の指輪を除けば、後にも先にもその百合だけで。なのに彼女は、僕をについてきた。そしてそのうち―――月日は流れ、あっけなく追い越して、今。

 「僕には未だに、わからないよ」

 花を愛でる気持ちも、君がしあわせだったのかも。前に来た時に生けた花を除き、先ほど買ってきた花を生け直す。生前僕が彼女に花を贈ったのは、たった一度だったのに。その後、缶コーヒーを片手に一服する。そうして時々、語りかける。もう何年も、こうしている。

 「・・・ああ、でも」

 花を愛でる君は確かに、しあわせそうだったなと。そんな君に、きっと僕は惚れたのだと

 「・・・青くせー」

 居た堪れなさに空になった缶を握りつぶして立ち上がった。コーヒーがなくなったらここを去る。勝手にできたルールだった。惚れただの腫れただの。いい歳したおっさんが、何を今頃。

 「じゃあな、奥さん」

 またくるよ、今度は春の花を持って。

――――
はじめまして、素敵企画に便乗させていただいたのですが、・・・唯瀬さんの素敵お題にもそぐえてないですし・・・お目汚し失礼しました。楽しかったです
次お題→ 枯れ果てた涙の後に

NO.20 cina [URL] 02/01(金) 18:19 IP:58.1.90.81 削除依頼
枯れ果てた涙の後に


君は笑うだろう。
私は確信している。
なぜなら、私という生き物が今君に縛り付けられているから。
なぜなら、心という私の中が今君で埋め尽くされているから。

君は笑うだろう?
こんな私の羞恥。

部屋に散らばったティッシュの数だけが現実的で、私という存在は浮遊的。
赤い目で窓の外を伺えば、照らし出す月、星。
助けを呼びたい受話器のボタンは光るのを止めて無呼吸。
どこに行ってしまったの、なんて、捜しても無駄。
君の居場所なら知っている。

「…、」

言葉が声に乗らない。詰まる息が苦しい。
君は笑う?笑うだろう?

「…ごめ、んなさ…」

それでも好きだと口にしたら、笑うだろう?


-------------------------------------------

初めまして、素敵企画に参加させていただきました^^
かなしさまの素敵お題を台無しにしてしまい申し訳ありません…orz
悲恋だ!片想いだ!と意気込んでいたのにあ…あれ…^^
書いている途中で路線変更なりました。すみません…。

NEXT「隠した赤の切り傷」

NO.21 02/01(金) 22:55 IP:219.103.3.40 削除依頼
ときめきを隠せなかった。

休日に会った彼女は、いつもより長い睫をしていて、艶やかな赤い唇は見惚れてしまうほど美しかった。

「化粧してるの」とはなかなか言い出せず、僕は畏まって「やあ」と実に不気味な笑みを浮かべた。

僕の挨拶に、彼女も笑って「やあ」と返した。

「私服初めて見る」とわざとらしく赤い唇を突き出した彼女の毛先は、内側に綺麗な弧を描いていた。学校で見る二つ結びとのギャップにやはり、ときめく。

     [ 隠した赤の切り傷 ]

「猫、散歩させてるの?」
僕の腕の中を不審そうに覗き込みながら彼女は尋ねた。そんなわけは無い。
「いや、さっき捕まえて怪我してたから」と呟いてからなんだか偽善者みたいだ、と自分の台詞に嫌気が差した。気持ち悪い。

「優しいね」彼女は予想通りの言葉を投げかける。

辞めて欲しい。余計偽善めいてしまう。

「撫でさせて」彼女はそういって腕を伸ばした。
僕はその細い腕の中に大きな猫を抱かせる。

猫を彼女に渡したと思った途端、可愛らしくない鳴き声をあげて、猫が地面へ飛び降りた。

華麗な着地は拍手ものだった。

途端、首筋に嫌な熱が走った。気づいたときにはもう遅く、彼女の赤い唇が喉仏へと移動する。

「な、なにするの」口元を拭う彼女に、顔の火照りを感じながら問うた。掴まれた両腕が痛む。

戸惑い、若干引き気味の僕に「やだ、怪我みたい」と笑いかけてから彼女は僕の脇をすり抜けて手を振った。

「ばいばい」

 ちらり、と袖の下から覗いた生傷に僕は言葉を失った。

-------------------------------
たたた楽しかったです><!
勢いで書き上げたのでかなり不安……。折角の素敵お題がなんだかとんでもない事になってしまいました。
 現実に居たら絶対嫌な女の子ですね。
それでは次のお題を、
  [風に体温を奪われていくあの感覚が、]

NO.22 真木 02/02(土) 21:32 IP:59.143.133.161 削除依頼


 雑踏を悠々と進めぬ猫は、時折寂しそうな顔をする。そして皮肉を込めて「にゃあ」と鳴く。歓喜に聞こえるも、悲鳴に聞こえるも人様の自由だと云うのならば、僕は後者を選ぼう。少しでも、皮肉を分かち合おう。

 :風に体温を奪われていくあの感覚が、

「ん、子猫」

 君がそんな調子で可愛く笑うから、僕は愛らしい猫がいるのかと、指さす方をちらりと見た(、どきどきも、わくわくも沢山含めて)。
 目を見開く。そこにいたのは片方の耳が無い血濡れた猫だった。小さいのは確かに、と言えるが、僕には君みたいに笑う余裕は見つからなかった。

「どうして笑ってるの」

 頻りに鳴く猫が痛々しく、目を閉じたくなる。

「だって、この子元気そうじゃない」

 どこを如何とっても元気には見えない。苦しんでいる。そんなこと、幼稚園児にだって分かるであろう。倒れこむ事に抵抗があるのか、片足に重心を乗せて必死に踏ん張っている。

「子猫はね、助けて貰おうとして怪我を負ったんじゃないのよ」
「でも……!」

 次の言葉を続けようとした時、ごみ箱の影から「にゃあ」と一声聞こえた。猫だ。同じような顔だちをした、子猫が一匹。
 そちらの猫は頻りに震えていた。片目が開かないのだろうか、一方の目は塞がったままだった。

「生きようとして、頑張った、のよ」

 君の瞳からは涙が、

「同情して救ったって、何の意味もないこと」

 血濡れ猫は鳴いたままで、もう一方の猫は震えたままで、

「だから、駄目。これも、試練」

 そう言って涙を拭って、また微笑った。君は白く細い指を猫の毛に絡ませて、一言「頑張れ」とだけ言って僕を振り返った。後に軽いキス。
 猫は何も変わらない。痛みも辛さも皮肉さも。変わったのは、僕だけ。

  Fin.(どんだけの雑文)

 すいませんすいません、スランプ気味です;
 皆様の中で明らかに浮いていますねー;ごめんなさい。
 楽しかったです^^
 次のお題は「まるで、という空想の上に」


NO.23 沖本 02/02(土) 23:53 IP:210.153.239.126 削除依頼
まるで、という空想の上に


 まるで、なんとかのようだと言えば友人に陳腐な言葉だと笑われた。見たものを見たままに声に乗せただけなのに。
 僕たちの前には、一つの惨殺死体が転がっていた。

 友人は薄笑いを浮かべながら、もう少し言い方ってもんがあるだろーなどと言っている。僕はそれを聞きながら、お前はもっと考えることがあるだろう、などと心中突込みを入れてみる。まあ、同じ言葉が僕に返るだろうがね。
 惨めに殺された死体、なんて言葉がよくお似合いだ。
 最近こういう事件が多い中でも、一際酷いそれは、最早人間の形を留めていなかったりする。どうすればこんなに汚く殺すことができるのか、と尋ねたくなるくらい。
 有言実行、僕は硝子の破片の上で金属棒を片手に薄笑いを浮かべている友人へ話を振った。ねえ、どう殺ったの? えー、適当にちゃかちゃかっと。そして友人は首を僅かに傾げて僕へ問いを返す。なあ、どう浚った? うん、聞かれてみれば返答に困るね。適当にさくっと? 語尾を上げめで苦笑。
 はははははははははは。
 乾いた嗤いが廃墟へこだまする。
 けたけたけたけたけた。
 口から離れて闇へ吸われていく。


 手中の新聞を畳んで棚に戻すと、僕の顔を見上げる瞳がある。目を見開いて聞き入っていたらしい。握り締めた拳は白くなっている。
「……面白かったかい?」
 少し笑いかけると、しばし呆っとしていたが、大きく頷いた。本当にあった怖い話みたいだった! なんて、笑顔で言ってくる。それはよかった。それなら、その希望に応えなければいけないね。「本当に」なければいけないだろう、なんて。僕はもう一度、口を開いた。
 君は今から――惨殺死体になるからね。


 酷く外れたものを書いてしまった気がひしひしとしますが、気にしない方面で。素敵企画、参加で着て嬉しい限りです。お題なんてものを考えたことが無いのでよく解りませんが、次題、「イバラの路、撒かれる赤」

NO.24 唯瀬 02/03(日) 12:01 IP:221.253.130.220 削除依頼
 人二人が通れるくらいの細い路、すれ違うのはきっと無理だと分かる左右のイバラ。

 イバラの路、撒かれる赤

 「何やってるんですか?」
今では誰もが怖がって通りたがらない道を、一人の少女が籠を手にゆっくりと進んでいく。その籠にあるのはたくさんの赤い花。小さな花も、大きな花も、種類もバラバラ。
「んー、こうしていろんな花を地面に落としていくと、なんか綺麗じゃない?」
クラスで一番の変人と言われるキズサは、そう言ってまた赤い花びらを地面へ落とした。
僕はそれを踏まないよう、慎重に歩いていく。
「綺麗だけど……こんな路、誰も通らないよ?」
彼女は鼻歌を歌いながら、ザラザラした地面を赤い花で飾り付けているだけだった。
「ねぇ」
声をかけても、彼女はやっぱり立ち止まらないし、振り返らない。
僕は呆れて、もう何も言わないことにした。
 小さな頃からずっと怖くて避けていたイバラなのに、そこに赤い花が散りばめられたというだけで、何か別のものに思えてくる。
「ヤイヤ、花がなくなったわ」
ふと彼女の声がして、振り返った彼女が空っぽの籠を僕に見せた。
「知らないよ、そんなこと」
溜め息まじりにそう僕が答えると、彼女は目を丸くして、唐突に大きな声を上げた。
「思ったとおり、素敵な道になったわ」
はっとして後ろを見ると、赤い花が風に吹かれて舞っていた。それが左右を縛るイバラと一つになって……
「何か良いことありそう」
とても神秘的だった。
「すごいね……」
キズサはふいに僕の手を取って、微笑んだ。
「だから言ったでしょう、この道は元々綺麗なのよ」
「……」
言動は理解不能だが、彼女の可愛らしさは本物なので、やっぱり僕は彼女を嫌いになることは出来ない。

−−−−−−−−−−

二度目まして、唯瀬です。
皆様の作品がどれもシリアスなので、明るいものを目指して見ました……が、普通ですねorz
今度参加する時はもっとおもしろい小説を書けるように頑張ります。
え、三度目ってありですよね?;
ではでは、失礼しましたー(逃)

次お題→冷えすぎたヤカン

NO.25 雛向 莉嗚* 02/03(日) 16:06 IP:125.55.95.138 削除依頼
冷えすぎたヤカン

 一つの山から女の叫び声がする。

「もーっ! な・ん・で遭難するのよ」

 山小屋からだ。女と男がスキー中遭難したらしく、其処にはスキー道具が並べられていた。青年は手で耳をふさぎながら実に迷惑そうな顔をしている。別の言い方で言えば、無愛想で生意気な瞳で女性を見つめていた。そして、静かに冷たく皮肉に言い放つ。

「お前が悪いんだろ。よかったな、良い人が山小屋の道を教えてくれて」

 どうやら二人は親密な関係のようだ。女は深く頷きながら、寒そうに体育座りをする。男は用意されてあった薪に火をつけ、薬缶を其処に置いた。
 水の用意の必要もなかった。不思議なことに、この山小屋には生活に必要なものばかり揃っている。

「ところで、不思議よね。何でこんなに揃ってるんだろ」

 女は天井を見つめながらボソリ、と呟く。男も同じように天井を見て「何でだろうな」と愛想も糞もない相槌を打つ。
 全く会話が噛み合わないらしく、山小屋の中には異様な雰囲気が流れ出す。

「あの叔父さん、何だかうちの学校の亡くなった校長にそっくりだっただけど……」
「気のせいじゃないか。ほら、沸騰したぞ、お湯」

 男は女の言葉など右から左に受け流しているようで、興奮しながら茶碗を要求している。女は大きな溜め息をつきながら起き上がった。
 棚の中から茶碗を取り出し、男に渡した。女はその場に体育座りで座り、じっと端正な顔立ちの男の顔を眺めている。頬が赤く染まるのが自分でも分かるらしく、一人で手を押さえた。すると、男が「アッ」と叫んだ。

「このお湯……冷めてる……」

 女は半信半疑に、茶碗に入っているお湯に人差し指をつけた。何と驚くことにお湯は温くなっており、二人の背筋を震わせた。
 薬缶は、まだヒューという奇妙な音を立てている。

//冷えすぎたヤカン



NO.26 雛向 莉嗚* 02/03(日) 16:06 IP:125.55.95.138 削除依頼

 すみません、冷えすぎてません← 二回目の登場と言うのに全く成長していないorz
 明るい(?)話にちょっとミステリーと言うかホラーと言うかを絡ませてみたかったのですが、私の文才では全くと言っていいほど伝えられてませんね>< 本当にすいません><
 しかも、二レスも……orz
 えと、次のお題は
 「癒えぬ傷跡、君の声」
 です。

NO.27 李遊 02/03(日) 16:47 IP:202.147.216.47 削除依頼


誰かの呼ぶ声が聞こえる。遠くから、耳元から、地面のもっと下から、中から。春の息吹にも似ているし、冬の凛とした空気にも。だれのものでもなくきっとそれはずっと前からここにあった。
(ああなんてことだ)
(もうずっといてくれたのに、気付けなかった)
ふと心臓が鼓動をうつそれを感じた、僕が息をしてから、幾回目かの酸素を送ってくれている。

誰かの呼ぶ声が聞こえる。右手首の開いた傷跡はありがたくその赤を受け取っては垂れ流す、勿体無いとは思うけど仕方ないずっとこのままにしておくよ僕は痛くない、本当に痛いのはもう痛いとも思えない君だから。
(ああそうかそうか)
(もうずっと僕を呼んでくれていたんだね、)

「ばかだな」
気付けなくて、僕は本当にばかみたいだ、でも君だってだめじゃないか呼ぶだけじゃ、触って揺すって呼んでくれたらよかった。よかった。よかったのに。
…まあうんどっちでもいいか、もうすぐ会いにいくさ。
その時にもう一度お互いの悪いところを言い合って喧嘩しようそうしよう。

君の声は陽炎のように消え、最後の数回を送り終えた心臓はゆっくりと眠った。おやすみなさいと。僕ももうねむから目蓋を下ろす、おやすみなさい。

        *癒えぬ傷跡、君の声*


初めまして。そしてごめんなさい(スライディング土下座
見事にズレてしまった感が拭えません;しかしこのような素敵企画を見つけて参加させていただき楽しかったです。

next title>>喉もと過ぎれば熱さも忘れ、


NO.28 カラス 02/04(月) 00:48 IP:218.126.125.5 削除依頼

 
 帰ったら鼻歌が洩れていた。
 今日は平年通り2月らしい寒さ。雪が降る中帰ってきたのに、同居人はなんて冷たいんだろうか。雪にまみれたスニーカーを脱ぎ捨てる。ぱんぱん、と払うと結晶が舞って直ぐに溶けた。ああ、空気に、なってしまった。
 馴染みの音楽の発生源は、どうやら風呂場らしい。白い息を吐きながら、そこに向かって歩を進める。酒飲みのような調子っぱずれが嫌に耳に付いた。
 脱衣所の扉を開けると、もぁ、と湯気が纏わり付く。
「……ちゃんと風呂場のドア閉めろよ」
「あ、お帰りダーリン」
 おっそかったじゃーん、と赤ら顔の彼女は笑った。風呂につかりながら、右手に缶チューハイ。ああ、完璧に、出来上がっているみたいだ。ため息を吐いて、ただいま、と返した。
 踵を返そうとしたら、全裸の酔っ払いに呼び止められる。
「何」
「ただいまの、ちゅーはぁ?」
 冗談じゃない、と言う顔をしたら、右手首をぐいと引っ張られた。催促していた癖に、彼女は俺の首に巻きついてくる。湯気が絡んで顔が火照った。
「酔っ払い。風邪引くぞ」
「引いてもいい。この寒さがダーリンなら」
 ふふ、と耳元で笑われる。
「好きです。愛してます。世界で一番。この世が、終わったとしても」
 何処かで、ぴちょん、と水滴が音を立てた。
「愛してます」
 酔った勢いか、彼女は呟いた。髪の毛に指を滑らすと、冷たい。ため息を吐いて、洗面器を持った。風呂のお湯を汲み、そのまま彼女にかけてやる。ざばぁ、と音を立てた湯は、彼女の背中を伝って再び風呂桶に戻る。体が温まるまで掛ける。それまで、彼女はずっと愛しています、と呟いていた。
「なんで」
「すぐに忘れるでしょ?」
「まさか」
 う、そ、つ、き、と小さく呟いて、彼女は俺に口付けた。脳が痺れて悲鳴を上げる。
 洗面器ががらんと鳴ったのも、まったく意識の中には入ってこなかった。

 
 
・喉もと過ぎれば熱さも忘れ、

NO.29 カラス 02/04(月) 00:49 IP:218.126.125.5 削除依頼

入りきらなくて、2レスすみません!!(土下座)
まったく御題に沿ってないような…!まぁそこはスルーの方向で御願いします(最悪な奴)2回目投稿してしまいました…!まったく成長してない。

次の御題:愛を放り投げて

続くといいな!(え)

NO.31 siw 02/04(月) 20:40 IP:122.211.208.129 削除依頼
*愛を放り投げて

ハロー! さあさ、よくごらんなさい!
笑い出したくなるほど愉快だろう?

服についた赤色! 金色! 緑色!


顔には笑顔を絶やさずに!
空はこんなに青いのに!

さてさてそれでは、準備はいいかい?

負けたら負けたで笑えばいいさ!
いち、に、さんでいくんだよ!


さあ、いち、に、さん!



──花嫁がブーケを放り投げた。



-------------

はじめまして。
参加しても宜しいです…か…?

というよりこれ小説じゃないですね。
詩でもないけど…。

ブーケを奪い合う人たちってもう女まで捨てて挑んでる気がする。
私が一回見たのは、ロングスカートをギリギリまで上げた人でした。

次のお題:甘くて蕩けるちょこれいと!

NO.32 鞍菜 [URL] 02/04(月) 23:12 IP:163.139.27.232 削除依頼

  甘くて蕩けるちょこれいと!

「しいちゃん、今日はなんの日か知っとお?」
「知らん、ん? ああ、バレンタインや」
 冷たい風が、二人の十センチ程の間を抜けていった。
 しいちゃんと付き合い始めてから、五ヶ月と少しがたった今日は、チョコレートの甘い匂いがする、バレンタイン。
 料理は大好きだし、周りから“バレンタイン期待してるね”とも言われるし、結構自信があるんだ。
 ほかの事は全然駄目だし、今日が勝負! だと思ってた。
 でもしいちゃんは別にバレンタインに興味がないのかな……。
「しいちゃんに好きなもの聞けばよかったと思ったんやけど、やっぱ驚かせたかったんよ」
 鞄の中から用意した青い箱を取り出して、しいちゃんに手渡した。
 しいちゃんは、少しだけ声を漏らして、照れくさそうに笑った。
「ばり嬉しい……」
「甘くて蕩けてまうよ」
 私がそういうと、しいちゃんは開けても良い? と私に聞いた。良いよって答えたら、包装紙が切れないように、丁寧にあけてくれた。
「ケーキやん」
 チョコレートタルト。初挑戦(練習はしたけれど)のそのケーキはなかなか難しかったけど、そのかわり達成感があった。
「うま! ばりうまい!」
 あ……少し、まずかもしれない。
 本当は、甘いチョコレートでしいちゃんを蕩けさせるつもりだったの。
 でも、ね?

 (あなたの笑顔に、蕩けちゃうみたい)


うぁあああっorz すいません!
二度目でこんなたっるい文章を……。
しかもよくわからないという事実orz

失礼しました。

次御題→ いつも言ってるでしょ、駄目だって

続くでしょうか!?

NO.33 九十九在処 [URL] 02/05(火) 17:33 IP:220.33.78.117 削除依頼
//いつも言ってるでしょ、駄目だって


「どうしたの」
 うつむき加減の僕の背中に圧し掛かると君はそんな馬鹿みたいなことを僕に聞く。そんなのわかってるじゃないか、そう言うつもりで後ろを振り返ると頭と頭がぶつかる。
「痛い……」
 僕が頭を抑えるとその手を君が無理やり引っ張る。
「質問には答えなさい」
 まるでお母さんのようなその表情と仕草と声に少し苦笑交じりに、知らない、と君の頭を叩く。そうするといつも通り君は莫迦、と笑う。
 この繰り返しが堪らなく好きで、何度も何度も繰り返し行われるこの行為のために大嫌いな学校に行って、君に下校時間を合わせる。
 きっとこんなのは普通は女の子がやる事で、僕みたいな男の子がやる事じゃあ無いんだろうけど、それでも楽しくて、わくわくする。

「ちょっと聞いてる?」
 君は僕の頭に自分の頭をごつん、とぶつけるとその綺麗な瞳を此方に向ける。
「聞いてる、聞いてる」
「じゃあ、何いったか言って見なさい」
 どうせ知らないでしょうけど、君がそう呟く前に僕は君の手をぎゅっと握り締める。
 突然の行動に驚いたのか、それとも普段はボーイッシュだけど、やっぱり女の子なのか、君は顔を真っ赤にさせると照れたように怒る。

「もー! いつも言ってるでしょ、駄目だって!」
 その時、丁度、日が傾き始める。


・・・

お題に沿っていませんねorz
なんだか、無理やり締めた感がありまくりですが其処はあえてスルーで←
今回は明るい感じで頑張りました、……明るいですよね?(黙れ)

それでは次のお題は//それはいつか目指した空想の中の幸せで

長くてすみません。
それではこのお題で続くことを願っています……!
(使いにくいお題でごめんなさい><)

NO.34 枯野きのこ 02/08(金) 03:03 IP:59.135.38.219 削除依頼
それはいつか目指した空想の中の幸せで

わたしの中にはいつも君がいたよ。
とくとくとわたしたちはなまぬるい、まるで無重力な空間に、いつもいたかったよ。
やがてぱちりぱちりと光を放ちながらあたりがだんだんと乾燥していってしまって、ひび割れからは何かが見えるはずなのだけれど。
それは結局外でしかなかったんだね。
頭の中で思い描いていたものとはみな、形こそは似ていたけれど、ふきっさらしに水分を失っていて少し違ったみたい。
君は笑いながらそちらに向かうことができるんだね。
置いて行かれまいとわたしもここまで来たのだけれど、もうこれ以上進むことはできないかもしれない。
乾いてしまうよ。なけなしの力を出す度にひちひちとひび割れは痛むよ。
ああ、頭の中に行けたらいいのにな。わたしなりの幸せ、中にいる君とずっと、いたかったよ。
もう目がしぱしぱとしていて、前を見つめることすらもできないようだよ。そしていなくなる君とはもうずっとさよならなのかな。
変わってしまった君と引き返しも進めもしないわたしは、結局空想の中だけで。

・・・
こんばんは!
二度目の参加をさせていただきました。
素敵な御題ありがとうございました。
これからもたくさんの方々の作品が続いていくことを願っています((勝手に笑

それでは次は、「なかみの無いものにさよならを告げて」でお願いします。
続きますように……!
それでは失礼しました。

NO.35 かわ 02/08(金) 20:58 IP:124.102.54.6 削除依頼



そんな風に、還らせて、あたし
貴方の居ない世界を 知ってるもの、還らせて



・なかみの無いものにさよならを告げて



:::::::

素敵執筆者様方有難う御座いますー!!(^▽^)
サボリ気味ですみません…、しかし皆様の作品があればそれで良いので、大満足なので、寧ろ私は邪魔ですからね、うへっ!


次御題 : 私は明日、うまれる


NO.36 かわ 02/10(日) 15:41 IP:123.224.188.232 削除依頼
改めて最初からぜんぶ読んでいくと、読み終えてから思わず溜息が零れてしまうスレ…と銘打ちたいですね。

企画は私ですが、私ではなく、皆様の作品で成り立っているここが、もう少し続いてくれれば良いなあ、と思っています、実は。

口下手というか…、上手く運営だったりが出来ないので、大体途中で自然消滅なのですが私の企画は!
ここは頑張りたい所存であります!

それにそれにまさかこんな素敵な方々が集まってくれるなんて思わなかったので、とっても嬉しい予想外なので…!あわあわ 続いてくれ!


ではではそんな邪魔レス失礼しましたっ
どうぞこれからも宜しくお願いします!^▽^


NO.37 せいくん 02/11(月) 17:22 IP:210.153.84.107 削除依頼
私は明日、生まれる

死んでゆく今日にさようなら。
ミカコは自分を冷淡に見下ろした。かの有名な幽体離脱とはよくいったもの。楽しくお空を跳ぶうちにあれよあれよと進んだお葬式の仕度は進む。

はた、と気がついた。お通夜の日
私は、私の自我は死なないのだろうか?
肉体が死んでも尚自我が漂っていたらばそれは死んだと呼べるのかしら。
このまま土や雨分子と混ざり合っても生きていなきゃいけないのかしら。
ミカコはそんなの嫌と音のない声で叫んだ。
友達の凜が言っていた永遠の話。死んだって心は生きてるからアタシタチの友情は不滅よ!彼女の声がこだました。
それからミカコは死に物狂いで死のうとした。けれどミカコは消えてくれなくて…。

そして明日。
ボロボロになったミカコはやつれた目で泣いている母親を見た。ミカコの身体を乗せて霊柩車は走る走る。
火葬場につくと熱を感じてミカコは慌てて飛び下がる。
まさか。
ミカコの遺体がゆっくり台に乗せられた。
やめて!!!ミカコは叫んだ。ちりちり黒ずんでゆく身体、脳天を打ち抜かれるような痺れ、その場に崩れ落ちそうになりながら、ちいさくちいさく、なってゆくミカコの身体をミカコは抱きしめた。
ああ、わかった。自我が消える。どこかで産声が聞こえる。あれはミカコが生まれる声だ。
ミカコは昔母親がいった言葉を思い出した。死ぬことも生まれることも結局は一緒なのよ。と

次のお題→サイコロは目を決めつけた

NO.38 [MAIL] 02/15(金) 22:59 IP:59.146.204.124 削除依頼

 分かっていたのだけど、と彼は云った。そんな言葉では答えにはなんかならないのにと思うのだけど、そんなこと口には出来なくて、ただただ頷く。それくらいしか、出来ることがないのだ。
 わたしは出来るだけ彼の言動ひとつひとつに耳を傾けようとするのだけど、どうも意識は留まってくれないで、ゆらゆらとわたしの中を動き回っている。彼はわたしに向かって喋り続けているのに、何を云っているのか。全く把握出来ない。

 この両の耳はどうも機能してくれない。だけど多分、わたしは察しているのだろう。彼の言葉が最終的に行き着くところを。そしてわたしが何を彼に話せばいいかを。決まっているのだ。否、そう決め付けてしまっている。
 彼の言葉が止まった。そして何かを云って欲しいとしきりに瞳で訴えていた。わたしは霞んでよく見えない眼をゆっくりと彼に向けて、云うべき言葉を口にした。彼は、笑った。

「       」


・サイコロは目を決めつけた

お久しぶりです。笹です。二回目です。
いつ来ようかと迷いながら、一応形にまとまったのでこんなものを書いてみました。みなさまの作品が素敵過ぎて眩暈がしますが、挫けず書きにきたわたしを褒めてやって下さい。笑
主催者のかわさまも頑張ってくださいね!

次の御題は「青とブルーのはざま」でよろしくお願いします。
またもや使いにくくてすいませ……!
続きますことを祈って。失礼しました。

NO.39 唯瀬 02/16(土) 13:45 IP:221.253.130.220 削除依頼
 王子は言った。
「青空と青空の間には闇があるんだよ。その闇っていうのはつまり夜のことなんだけど、それと同じで君の哀しみも……」
なんていうのかな、と彼は目を逸らして頭をかく。

 青とブルーのはざま

わたしはただぼんやりと、彼が何か言うのを待っていた。
「だからね、暗く沈んだ気持ちもいつかは晴れて、その繰り返しで人は生きて行くんだってこと」
わたしを伺うように見つめて、王子はまた言う。
「今は哀しいかもしれないけど、明日には笑えるようになってるよ」
首に下げた青い色の宝石と寝巻きの青い布。
「僕だって、母上を亡くした時は哀しくて仕方なかった。でも叔母様が僕に話をしてくれたんだ」
『暗闇を抜ければ青空が見える。青空は素晴らしい色、喜びの色。だけど決まった時間になると真っ暗で哀しい色に変わってしまうの。でも、夜はまた朝を向かえて青空になるでしょう?』
「青とブルーのはざまには、必ず哀しみが襲って来るんだ。でもそれは必然で、受け入れなければならないことなんだよ」
そして彼は立ち上がり、わたしの目の前に跪いた。
「ちょっと、タイミングが悪いね。でもハノン、君は絶対に僕が守るから」
わたしの右手を取り、手の甲へ口付ける。
「僕と、結婚してくれますか?」
宝石と寝巻きの間にあった心臓が、ドクンと高鳴った。

---------------------------------------
三度目ですこんにちは、唯瀬です。
企画が続いていて安心すると共に、また駄文を書いてしまいましたorz
本当におもしろい企画なので、これからも続くことを願って……!

次お題→散らかった包装紙

NO.40 02/17(日) 13:05 IP:219.103.3.40 削除依頼
漫画みたいだ、靴箱から溢れ出す、
雪崩の様な手紙とプレゼントの数々に
僕は第一にそう思った。


散らばる沢山の品物を見下ろし、
紫がかった黒いフレームの眼鏡を
面倒くさそうに押し上げて、彼は笑う。

「くだらない」
「その割にはやけににやついているね」

床に散らばる沢山の手紙を拾って、
僕は彼に手渡した。
誕生日おめでとう という崩れた文字に
不覚にも腹が立った。

「お前の分とまとめてだろう」
僕に気を遣ったのか、
彼は宛名に苗字だけしか書かれていない
手紙とプレゼントを僕に差し出した。
「全部、兄貴の分だよ」
僕は兄の気遣いに、余計腹が立って
差し出された手紙とプレゼントを払いのけた。
兄はまた眼鏡を押し上げる。

「誕生日が一緒だろうが、
 顔が似ていようが、苗字が同じだろうが、
 これは全部兄貴の物だ。」
「しかし、俺が兄だから俺の靴箱に入れただけで、
 俺とお前二人宛かもしれないという可能性も
 無いわけではないだろう」
僕は呆れて、溜息をひとつ零した。
「そしたらさ、
 普通宛先に僕と兄貴の名前を書くだろう。」

僕は自分の上履きの上に置かれた
三つのプレゼントをバッグに入れる。
そして、もう一度兄の靴箱を見た。

何が違うっていうんだろう。
双子なのに。顔も全く一緒なのに。
いったいこの差は何なのだろう。
誕生日なんてなければ良かった。
幼稚な自分の考えに僕は、ひっそりと息を零した。

NO.41 02/17(日) 13:07 IP:219.103.3.40 削除依頼
家に帰って、包装紙だらけの床を見て、
僕の口からまた溜息が零れた。
今こそ気を遣うべきだろう。
部屋で開けるなりなんなりすれば良いのに、
なんでまた居間で開けるんだ。

くしゃり、くしゃり、と
兄は包装紙を丸めていた。
「何してるの」
「お兄ちゃんはだな、
 こんなプレゼント要らないんだ。」
嫌味かよ、と思わず舌を打った。
「お兄ちゃんは、生まれた時から既に
 最高のプレゼントを貰ってるからな」
照れたように笑う兄の姿を見て、
寒気がしたし、腕に鳥肌が立って立って立ちまくった。
「何のドラマの真似事」
「昨日のホームドラマ、良かったぞ、あれ」

くしゃりくしゃり、と兄は包装紙を丸める。
そして丸めた包装紙を僕に投げつけた。
不意打ちに驚く僕を見て、
わはは、と兄は下品な笑い声をあげた。

「悔しいか、弟」
「別に」

「お前の誕生日は今日じゃない」
「は?」
「俺とお前は双子じゃない。兄弟だ」
「は?」

僕はカレンダーに目をやる。
今日の日付の所には、荒々しい丸と
「奏、要誕生日」という汚い字が書かれている。

「俺は今日の二十三時五十八分に生まれたんだ」
「そしてお前は明日の零時一分に生まれた」


NO.42 02/17(日) 13:08 IP:219.103.3.40 削除依頼
次の日、
僕の靴箱から
雪崩のようにプレゼントと手紙が出てきた。
僕は驚いて、
急いで床に散らばるプレゼントを拾い集める。
兄の言葉は本当だったんだろうか。
今日が僕の誕生日なのだろうか。
僕は胸が躍った。
しかし、すぐさま不信感を覚える。
何故だか包装紙の全てに見覚えがあるのだ。

僕はプレゼントを全て拾い集め、
耐え切れなくなって噴出した。
この全ての包装紙は母が大事にしまっていた物だ。

手紙を一つ開いた。
宛先の「奏君へ」という文字と
手紙の中身の「お誕生日おめでとうございます」
という字のあまりの違いに笑いがこみ上げてくる。

馬鹿やろう。変な気回しやがって。
自分が貰ったプレゼントの一つ一つを
包み直す兄の姿を思い浮かべて、僕は笑った。
此処まで気を遣われたら、
悲しいとか情けないだとか全部通り越して面白くなる。
馬鹿だ、大馬鹿だ。馬鹿兄だ。
手紙も僕に当てはまる内容のものだけ選び、
名前を書き直したのだろう。
馬鹿だ。馬鹿だ。

「おお、弟よ。大量のプレゼントだな。」
芝居じみた兄の声色に、
僕は腹が痛くなるまで笑った。

        :散らかった包装紙

-------------------------------
すいません、
思った以上に長くなったので三レスめ行ってしまいました。馬鹿ですね、馬鹿。三レス目とか。
…本当でしゃばってすみません。
前の作品があまりにも酷すぎて浮いていたものですからまた参加させてもらいました><!
なんだか馬鹿みたいなお話になってしまいました。
ありがちですねえ…::

次のお題:
いや、単なる羞恥心からの自己防衛で

NO.43 枯野きのこ 03/05(水) 02:45 IP:59.135.38.214 削除依頼
いや、単なる羞恥心からの自己防衛で

かつて、ホリー・ローは間違ってはいなかったのだと主張したのは、どこの新聞局だったろうか。
カッターで、または手でめためたにされた新聞紙は、切れ端となったり丸いたまになって部屋の中に散乱していた。一枚を取り上げて見つめると、彼を称える記事の一文字が手に黒く跡として残る。
ホリー・ローがあの事件を起こした時、彼は極度の恥ずかしがりやだったのねと、赤いマニキュアを塗りながらマクレンゼは笑った。
彼女はどうして他人のなかみをああもたやすく見抜けるのだろうか。今更ながら自分よりも彼女が捜査すべきだったのだとため息をつく。
「ホリー・ローは、おとなしく、成績は人並、とくに問題のない生徒だったようですね。」
典型的な報告を受け、また、そのような彼だからこそ事件は起きるということもまたよくある話ではある。
ふう、と息を吐き出して部屋全体を見やると、生々しい光景が改めて目に映る。
「証拠とか、捜さないんですか。」
報告を終え、小さなノートを閉じた助手の目に好奇心が溢れる。
「警察に任せる。」
そう言い放てばひどくがっかりするだろう。しかしそのままを口にする。そして、その部屋を後にした。
「あ、ちょっと待ってくださいよ、というかあれ、これ印刷じゃ……。」
音にこそならなかったが、助手の絶句くらいならば、容易に想像ができた。
恥ずかしがりやの防衛は何重にもなっているものよ。どんな小さなものにもね。ゆっくりと歩きながらマクレンゼの笑い声を思い出す。
すべてが手書きの活字の海はホリー・ローの真実を表しているようにはみえる。だがその衝撃こそが、彼の真実を偽装しているという訳か。
目をきらめかせながら追って来る助手を見ていると、こんな複雑な事件を持つなら私ももう少しあいつのようならよかったかもしれない、とため息をつく。それから、マクレンゼのような能力もあればともう一度ため息をつく。
単なる羞恥心を紐解く作業は、まだ糸口さえも見つからない。

NO.44 枯野きのこ 03/05(水) 02:47 IP:59.135.38.214 削除依頼
お久しぶりです。
2レスに分かれてしまってすみません!話はなんとか一レスにまとめました!
いつも書かないタイプで難しかったですが楽しませていただきました。御題からずれてしまいすみませんでした!御題ありがとうございました。
次の御題は「さよならが上手だった君へ」
続くといいな……。
失礼しました。

NO.45 03/05(水) 04:26 IP:59.171.235.249 削除依頼
「さよならが上手だった君へ」
そういうことがさよならと呼ぶのなら
僕は一生さよならなんてしなくていい、と思った。

明るい調子で歌われる賛美歌
気持ち悪いくらいのすすり泣きの声
黒い礼服はなぜかしっくり僕にあっていて、手に握り締めた献花は萎れていた。

「青、早くしなさい」
「わかってる」
わかってるわかってる。此処は別れの場所なんかじゃない。
さよならしたなんて僕は信じない
白い花が揺れる、弟の身体が滲む。
生理的にあふれ出た涙の意味がわからずに父親に押し付けられたハンカチで涙を拭った。
「あお!」
きつい声が飛ぶ。ねぇママそれは僕をよんでいるの?それとももう死んじゃった弟の藍をよんでいるの?
うつろに花を落とした僕は振り返り、教会からすたすたと出て行った。

「なぁ藍、お前は選ぶならば空のあおと海のあおどっちがいい?」
「そうだな俺は青になりたいから、空のあおがいいな」
「んじゃぁ僕は海の藍だね」
小さいころの思い出、弟の死んだ空
彼が飛び降りた高校の屋上にこしを掛けていると、隣に立つ人の気配を感じた。
「危ないぞ、青」
「お前にいわれたくねーよ、藍」

双子の偶像を無事作り上げた僕にはさよならなんてこない。
そうおもって偶像が伸ばした手を僕は取った。
------
次のお題→ had better I stay?(僕が残る方がよいのだろうか?)

二人はいつまでも幸せに微笑んでくらしましたとさ。
1レスっていう文字数制限にくるしみまくりました。この企画が長続きすることを祈って!


NO.47 カラス 03/08(土) 03:25 IP:218.126.125.5 削除依頼

“TEA”書かれたガラス瓶を戸棚から取り出す。
ブラウスの袖を腕まくりしていたら、海から淡色のキッチンを駆け抜けた風が襟を揺らせた。
カチャン、と音を鳴らして蓋を取れば、溢れるは紅茶の甘い葉の香り。
朝は、パンを焼いて、目玉焼きを焼いて――。
適当なものでいいか、と用意を済ませる。
「おい」
声を掛けられ、開かれた大きな窓に眼をやると、きりりとした強面の男が桟に手をついて眉根を寄せていた。
「何か?」
涼しげな顔をして聞くと、男はムッとした様子。
「今日、和食が良いって言ったよな」
「僕、朝はパン派なんですよね」
「いつもパンじゃないかよ」
「いつも僕が作りますからね」
細い肩を竦めて、偶には手伝ったらどうなんですか、のポーズ。
男は諦めたようにため息をついて背を向けた。
「何処行くんですか、新聞買ってきて下さい」
ひらひら、と振り返らずに手だけ振られる。
くすりと笑うと、トースターが軽い音をたてた。
皿を2つ出しながら、この2ヶ月を思い起こす。
2ヶ月も同じ場所に滞在したのは、彼らにとって快挙に値する。
土砂降りの雨の中、自分は右脇腹を撃たれ、男に負ぶされて此処にやってきた。
けど、この穏やかな時もそろそろ終止符が打たれるのを、自分だけは知っていた。
右足が引き攣っているのを男に知られずに過ごすのにも骨が折れた。
邪魔にしかならない。2週間、過ごして決めた。
どうしようか。1ヶ月、考えた。

重厚なテーブルにトースト達をのせた皿を2つ置き、カップに熱い紅茶を注ぐ。
コトリ、と2つ置いてから、開け放った窓を仰いだ。
まだ彼が帰ってくるまで十分に時間がある。

外に出たら、海風がすりよる。
急かしているのかい。
海へと気まぐれに誘う風に苦笑しながら、浜辺を歩く。
いいな、こういう雲ない空の日っていうのは、なんだかとても似つかわしい。
辿り着いた先の波に足を絡ませたら、大きな青と蒼が笑って迎え入れた。


NO.48 カラス 03/08(土) 03:26 IP:218.126.125.5 削除依頼

「……アキト?」
男が新聞を携えて、テーブルへと歩み寄る。
まだ紅茶は温かい。何か用事でもできたのだろうか。
新聞を開く。そろそろ、此処もヤバイかもしれない。
あいつが帰ってきたら、次の計画でも立てようか。
逃亡者のわりに、のんびりと、優雅に、男は紅茶に口をつけた。
ふと気が逸れて、背後の窓を振り向く。
男は無言で、カップをテーブルに置いた。
一つの足跡が、白い浜辺に海まで伸びている。

その足跡はまっすぐで躊躇いがなく、波はそ知らぬ顔で、ざざん、と満ち引き。


“Had better I stay?” 



文字数にくるしみましたorz
2レス、ほんとにすみません、けど、文章は999字のはずなんです!(必死)
ああ、しかも御題に沿えてないぜ。

次御題:シエスタ幸福論

NO.49 高瀬ひさ [URL] 03/09(日) 01:01 IP:124.154.9.105 削除依頼
 
 
「ごめん。起こしちゃったかな」
 微かな物音しかしていなかったけれど、昨日の睡眠時間は二桁なもので、勝手に開いてしまった目に彼女は気がついた。肩甲骨の下までなびいている髪が目の前にあって、手を伸ばしてすぐにでも触れたい衝動に駆られる。でも耳元のピアスが光って、その想いはそこで留まった。誰からもらったのだろう、という考え自体がどうしようもない。僕の知らない彼女が居るなんて、今に始まったことじゃないのに。
 
「寝てていいよ。まだバイトの時間じゃないでしょ」
「ん、平気」
「そう。それなら良いんだけど」
「……やっぱり、あとちょっと。寝かせて」
 分かった、と笑う彼女に少しだけ後ろめたくなって、身体を仰向けに戻して、溜息をつく。僕は、僕がまだ眠い、と言えばこの人は傍に居てくれることを知っている。知っていて、わざと。長い時間一緒に居たくて我が儘を言うんだ。なんてずるい人間。
 また眠くもないのにわざとあくびをして、脱ぎっぱなしの服を彼女が畳むのを横目に、天井にありがとうと呟いてみる。返答はもちろん、なかった。
 どこまで続くか分からない。ギリギリのライン、絶妙なバランスの中で。幸。
 
 
 ―――

 お久しぶりです高瀬です^^
 御題に一目惚れ。そして午後のひと時が書きたかったという。
 ……見方を変えれば夜に見えなくもないですが、これにて失礼致しますー。

 ―――

 次の御題 : せまくて、くるしい。
 
 

NO.50 雛向 莉嗚* 03/09(日) 22:09 IP:125.55.95.138 削除依頼

 君の甘い声や、優しい眼差し、ゆったりとした物腰や、時折みせる表情。全てが愛しくて、全てを愛したくて、わたしは遂に想いを伝えた。
 君はすぐさま了解をしてくれて、甘い日々を送ることになったんだ。けれど、人生ってそう上手くはいかなかった。
 愛しい部分が段々鬱陶しくなっていった。わたしの世界が君で埋め尽くされて、胸の辺りが苦しくなった。
 とある昼下がり。ゆっくり背伸びして、外の空気を吸う。直ぐ目の前には原っぱが広がっていて、雄大な自然が其処にはある。すると、後ろから細い手がわたしを抱きしめた。
「おつかれさま」
 耳元で囁かれる甘い声。わたしはくすぐったい仕草で笑うけれど、心の中は彼を拒絶していた。両手には君の白いティーシャツ。臭いは甘くて、彼の性格を指しているようだ。
 瞳が交わされる。こんな目が大好きで今も愛しくて。でも、もう限界に達したのかもしれない。
 柔らかい唇が触れる。その瞬間、わたしの心の中は一気に崩壊したような気がする。如何でもなりたい、寧ろ、如何にかなりたい衝動が心の中を駆け巡った。そんなわたしに気づいたのか、彼はもう一度唇にキスを落とす。
 初めて見せた一面。そんな彼をもっとわたしは好きになる。けれど、また苦しくなるのは秒読みだ。

「可愛すぎるよ」

 また頭を掻き撫でる。
 わたしの心の中もぐちゃぐちゃでどろどろで、もう如何にでもなってしまった。
 もう、救わないで。もう、優しくしないで。
 責め続けて。もっとわたしを苦しめて。もっと、もっと……。

//せまくて、くるしい。


 お久し振りです。
 また、素敵なお題を荒らしてしまいました。本当に申し訳御座いません。でも、書きたい衝動に駆られたのですっ。
 後半、また微妙にあれになりましたが、どうにかご愛嬌で。
 それでは、お次のお題を。

次のお題⇒グッバイ、また明日!


NO.51 ななみ [URL] 03/09(日) 23:35 IP:219.19.220.86 削除依頼
参加させていただきますね^^

「グッバイ、また明日!」

「……最悪」

 靴箱を開けて、すぐにそうつぶやいた。
 お気に入りの買ったばかりのスニーカーに、馬鹿だの消えてだの、落書きがされてあったのだ。油性のマジックで。
 最近靴へのいじめが無かったと思えば。このチャンスを狙ってたってわけか。
 油断して新しい靴を買った私も悪いと言えば悪かった。
 いじめられているのには、もう慣れた。
 けれど、こういった実害を伴うものには若干の怒りと悲しみを覚える。
 私だって一応中学生女子だ。
 雑巾を投げつけられるとか、トイレに閉じ込められるとかはまだいい。
 顔はすぐに洗えるし、閉じ込められたって授業さぼれるし、頑張れば上から出ることだって可能だからだ。

「買ったばかりなのにな……」
 私はもう一度小さくつぶやき、深くため息をついた。
 今日は本当に最悪な日。
 と、落ち込んでいたところに肩をぽんと叩かれた。
 いじめっ子だと思い身構えたが、違ったようだ。
「健二」
「いよ、夏美。……じゃあな、また明日!」
 健二だった。幼馴染で、私の唯一の友達の。
 そして最近少し気になっている奴。
 健二は、私の靴のことには一切触れず、明るく手を挙げて帰って行った。
「ばいばい!」
 私も思いきり笑って、健二に手を振る。
 今ので、かなり気が晴れた。 
 たったの一言で。たった数秒ほどのやりとりで。

次のお題→「最期の一日」

変な文章、変なお題……目汚し申し訳ございません!

NO.52 ひなた 03/13(木) 20:31 IP:218.216.253.109 削除依頼

「すきなの」
 
 彼女はそう云った。迷いのない眼が僕をしっかりと見据えていた。眼をそらすことは、きっと彼女の想いを無下にしてしまうという事に繋がってしまうのだろう。それは避けたかった。
 
「何故、僕なんだ。僕は君が誰かすら知らないのに、」
「わたしは知っているもの。あなたが素敵な人だって」

 分かりそうで分からない理屈を彼女はさらりと言ってのけた。とり合えず名前だけでも教えてくれと僕が提案すると、彼女の声はすこしだけ小さくなり、そして「アオイ」と云った。漢字は葵と書くらしい。
 素敵な名前だね、と僕は思ったことを彼女に伝えた。彼女はすこし頬を赤らめながら「…ありがとう」と云った。とても可愛らしい姿だった。

 嗚呼、と呻く。彼女はとても素敵な人だろう。僕をとても好いてくれているし僕も彼女を愛せるだろう。
 ………だからこそ悔しかった。最後の日が今日であることが、とても悲しかった。

「アオイ、聞いてくれるかい」
 彼女はこくりと頷いた。僕は事実すべてを彼女に伝えた。彼女はとても驚いた顔をして、その後に分かったわ、と笑った。無理をして笑っているのが分かった。抱きしめたいと思った。けれどそれが叶わない事も知っていた。
 歯噛みしたい衝動をどうにか押さえながら、僕は微笑んだ。

「ありがとう、告白とても嬉しかった」
「わたし、本当にあなたのこと好きだったわ。その事忘れないで欲しいの」
「ああ、きっと忘れない」
「ありがとう。………さようなら」

 彼女の声が今はとても遠くに聞こえた。実際はそれほど離れてはいないけれど、耳から聞こえてくるのは消え入りそうな彼女のさようならだけだった。
 彼女の去っていく背中を僕は見つめた。僕はもう一度さようならと呟いた。
 
・最後の一日

***
素敵企画便乗させて頂きました←
何か、あれです。何か最後なんです、きっと←
設定を決めずに衝動だけで突っ走った結果です(最悪
駄文・御目汚しすみません(´・ω・`)!

次の御題→「こころゆくまで、こわしてください」

NO.53 枯野きのこ 03/22(土) 22:49 IP:59.135.38.218 削除依頼
こころゆくまで、こわしてください

わたしがうごけないことを、あなたはまだしらないのです。
てとあしをうごかして、かわりにおはなしをしてくれて、そうやってあそんでくれるあなたがいなければ、いなければわたしはうごかない。
いつもかまってくれてありがとうといいたいのです。
それもいえないのだけれど。
わたしはしっています。
あなたはいつか、わたしを、おへやのたなのうえにかざったまま、どこかへいってしまうのですよ。
それはわるいことではないのです。けっしてわるくはないのです。
だけれどわたしはさみしいわ。
あなたのへやをみつめながら、あなたをよべないわたしはねむれもしないのです。
とても、とても、さみしいわ。
だから、せめてあなたがそうなるまえに、こころゆくまで、こわしてください。



こんにちは!
短いおはなしをひとつ失礼しました。
次の御題は、「かなしくなんかないよ」
でお願いします。
続きますように!
失礼します。

NO.54 秋郷 汐月 [URL] 03/23(日) 14:27 IP:58.85.89.191 削除依頼

 一人には慣れていた。
 同じ年頃の子供たちがそうするように、
 グループになって喋ったり楽しんだりする必要も特にないと思っていた。
 それに、他人から自分への印象とか、そういうのを考えて
 発言したり行動したりするのは苦手だったし、
 何より他人に気を使うことが疲れるから嫌いだった。

「安藤さん、」
「はい」
 だから、こんな風に声をかけられても簡単な返事しか私は返さない。
 そんなつまらない私の言葉を聞いた彼女等は、「ごめん、何もないよ」とか
 「やっぱり良いや」とかいってすぐに側を離れていく。
 自信があった。彼女もそんな風にすぐにどこかへ行くのだろうと。


「安藤さんって、いつもつまらなさそうな顔してる」


 一人には慣れていた。
 けど、なぜか涙が溢れた。

「ほら、本当は泣いちゃうほど寂しくて、かなしいんじゃないの?」
「分かったような、口利かないで」
「ぼろっぼろに泣かれてちゃ、全く説得力ないけどね」
 クスッと笑った彼女は徐に隣の席の椅子を引いて腰を落とした。

「まぁ、とりあえず思いっきり泣いてみたら?」

 勿論、涙は止まらなかった。
 一人に慣れていた、フリをしていただけから。


「べつに、かなしくなんかないよ」


 それでも、皮肉しか知らない私の口では、そんなことしか言えなくて。
 本当は彼女の言葉がすごく嬉しかったのに
 私はそれにもただ気付いていない、フリをした。

***

おっとっと(何
密やかに二度目の参加になります、秋郷です。
何かちょっと前と視点変わっただけで
内容的に結局あまり変化がないだけの気がしないでもないのですが・・・
これまたご愛嬌で!←

次のお題は『赤いリボンをかけた意味、』
(す、すみません!(またか))

NO.55 03/23(日) 18:14 IP:218.43.109.205 削除依頼

「なに?これ。」

指差した先には女ものの指輪、赤いリボンがかかっている。
男の俺がこんなものを持ってるのがおかしいと思ったんだろう。それを持ち上げて聞いてきた。

「さぁ、知らない。」

適当に返事を返してから納得してない様子の
そいつから指輪を奪い返した。

「なんでリボン結ばねぇーの?」

指輪を元の位置に戻して、リボンを指輪に結ぶことなく上にかけただけの俺の指先を見ながら聞いてくる。

「さぁ、知らない。」

いや、理由はあった。
この指輪は1年前、転校して会えなくなった彼女からもらったもの、彼女がいつも肌身離さず持っていたものだ、そのときはこの赤いリボンがちゃんと結んであった。
指にはめることも、ネックレスにすることもせずにただおいていた。
でも、別れることになって指輪を捨ててもいいと言われたときに、リボンを解いた。
捨てることもできずに女々しくまだ机の片隅においてある。

心が離れたからリボンを解いた。それが
赤いリボンをかけた理由、

***
意味不明だ!
参加させて頂きありがとうございます!

次のお題は「信じてる、ずっとずっと」でおねがいします。。
では、ありがとうございました!



NO.56 03/23(日) 18:18 IP:218.43.109.205 削除依頼
お題は「赤いリボンをかけた意味、」
だったのにかってに「理由」にかえておりました!

本当にすいません・・・!

NO.57 03/24(月) 02:00 IP:59.171.235.249 削除依頼
「あいしてる」
小さく唇がかたどった、その言葉を僕は忘れない。
「あいしてる」
君が言ったその声を、僕は忘れない。
「あいしてる」
君の泣き出しそうな表情を、僕は忘れたくない。
でも現実は残酷で、僕は君を信じていていいのかさえあやふやだ。

「あいしてる」って重いよ
君がきっぱりと言う君は忘れてしまったかのようにあっけらかんと笑った。
泣き出しそうなあの君はもういない。
「あいしてる」なんてしんじられないね、そう思わない?
「僕は思わない。よ…だってそれは君が僕にくれた一番大切な言葉だから」
「……まだいってるの?あたしにそんな記憶はないのに」
「うん、それでも」
「あたしの記憶の保有時間ちゃんと覚えてる?」
「うん、知ってる」
「それでも、その言葉が真実だっていえるわけ?」
「そうだよ、いくら君が一週間後の君と違う人間でも、違う人生を歩んでも。君が僕に言った『あいしてる』は忘れない」
「……ほんと、馬鹿」
「なんどでも僕がきみに『あいしてる』って伝えればいいんだからさ」

「あいしてる」
昨日と違う君へ
「あいしてる」
僕のことは嫌っていてもかまわないから
「あいしてる」
この言葉の意味さえ信じていられれば

それでいい。
僕は君を信じていられる。ずっと?ずっと。

next→あおいくちづけ

忘れてしまう彼女とあいしてる僕の話でした。

NO.59 沖本 03/26(水) 10:15 IP:61.197.7.169 削除依頼

あおいくちづけ


 眠る女の唇へ、縁まで満たされたグラスが触れる。
 既に死んでいる身には毒薬も意味が無い。含ませても嚥下しない咽喉は静かなる空洞。動かない女がどうそれを飲み干すというのだろう。口の端より液体が溢れ出る。

 開けた空に上り行く太陽の光でさえ彼女には届かない。
 色硝子を抜け降り注ぐ光でさえも、彼女を起こすには至らないのだ。
 見下ろす女の顔は美しく、それを眺めていると今にも目覚めるのではないかと思った。

 瓦解した世界は、人も動かない無機質な空間となる。
 口の中は渇き切り、出そうとする声がかすれる。咽喉が引き攣ったようで、酷く痛い。
 一瞬で燃え上がった炎は街を焼き尽くした。
 滾るような孤独を抱いた身体は、無為な雫を暗い闇へ落とす。
 熱に焼かれた死滅を前に、孤独なイキモノは一声高く啼く。
 蒼空に突き立つ柱へ突き込んだ拳の皮膚が裂け、赤い跡を残した。
 冷たい肌に触れ、真っ白い手を引き寄せる。胸を抉るような記憶へ、更に傷をあわせて深く、長く、刻み付けていく。

 酒蔵のボトルの毒薬を、柔らかくたゆたう液体を、グラスへ注いだ。
 口中に広がる熟した果実のように、甘美なものは色濃く残っている。

 血の気を失った女の顔は美しく、重ねた唇の冷たさに彼女が目覚めないということを確認する。
 私の背後にはただ、廃墟が広がる。
 私の眼前にはただ、眠り続ける女がいる。
 私達を取り囲むのはただ、一夜の幻と消えた都。


 ども、沖本です。どっかぶっ飛んでいるものを書いてしまった気がひしひしとしますが、気にしない方面で。素敵企画、二度目の参加になります。相変らずお題を出すのが苦手なのでした。
 次題、「覚めやらぬ夢の滸」

NO.60 沖本 [URL] 03/26(水) 13:14 IP:61.197.7.169 削除依頼
どうも、沖本です
さっきのに書けばよかったと、今更後悔です。
「覚めやらぬ夢の滸」←最後の「滸」という字について一言「ほとり」と読みますが、私のパソコンでは変換できませんので一つの変換方を「水滸伝/すいこでん」で出ます。多分。

こちらの企画、(勝手に)まとめさせていただきました。……と言っても、そうたいしたことはしてありませんが。
ざくざく作ったので雑なところが目立ちますがちょこちょこ修正していきたいと思います。
では失礼します。

NO.61 朝丘 汀 03/26(水) 18:41 IP:219.114.220.163 削除依頼


 わたしは耳をすませていた。そして、だれもいない音楽室の床で、ぺしゃんこのかばんを枕にしてまっ白な天井を見上げながらつまらない想像をする。
 ここはわたしが欲しかったあの夢の世界で、このアラベスクは永遠に続くのだ。教科書なんて必要なくて、そもそも学校なんて存在していなくて、わたしたち以外に誰もいなくて。このままドビュッシーのアラベスクに溶けてなくなってしまうの。……それが本当なら、わたしはあなたの王子さまになれるのに。

 今この瞬間にも、あなたの指先からドビュッシーのアラベスクが生まれて、開け放たれた窓のそとへ消えていく。他のだれが奏でるよりもずっと愛おしい。わたしはまた、急に苦しくなった。喉が収縮して息ができなくなる。
「ちぃ、そのアラベスク、終わらせないで」
 わたしは出かけた涙を制服の袖でぬぐった。相変わらず息がしづらい。ちぃはうなづいたかもしれない。それとも、もしかしたら困ったように笑ったかもしれない。両手のひらで目を覆って、目を閉じる。真っ暗な視界のなかで、わたしはアラベスクが終わってしまわないことを祈った。夢が覚めないことを願った。
 だけどあっけなく、アラベスクは終わった。
 鍵盤に蓋をおろして、席を立つ音が聞こえた。ちぃがわたしのすぐ隣に立っていて、わたしを見下ろしている気配がする。
「また会えるよね」
 死んでしまうかもしれないと思った。とうとうこらえきれずに涙が流れた。他のだれでもないあなたの声が、わたしを呼ぶ。夢のほとりに立ちすくんでいるわたしを。

 そんな不確かな希望よりも、わたしはあなたがほしい。なんて、言えるわけがなかった。

 ------------------------------------

 はい、すいません。こういうの書いてしまって……。久しぶりにきてみたらおもしろそうな企画があったのでこっそり投下してみました。

 次のお題は、「ぼくのきれいなひと」で。


NO.62 かわ 03/27(木) 00:05 IP:123.225.21.9 削除依頼



「この小さな部屋の中で僕はどうすれば君を手に入れる事が出来るのだろうか」

 と、彼はいつもの憂鬱そうな表情で、私の前に無防備に寝転がり、上目で訪ねてきた。


 この人がこんな風な、だらしのない姿を見せるのは、あたしだけな事を知っている。
 ごろごろと寝転んで、休みの日はぼさぼさの髪でお風呂にも入らない。歯磨きをしない日だってある。
 あたしが奇麗にして、テレビを見ていたりすると、頭をいやに撫でてきて、邪魔をする。



 ねえほら、あたしはとっくに貴方のものよ。



 と、それを彼に告げたり出来ない事は、もう、生まれた時から分かっているので、あたしは今日も大人しく彼に顎を撫でられる。

 ぴんぽん。あら、インターフォンが鳴ったわ。きっとお隣のお節介な女の子ね。にゃーお。面倒臭がりな貴方を導く為に、あたしは先に玄関まで行ったげる。ね。
 
 
 
 
・ぼくのきれいなひと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆



どぅわ〜〜〜…!!!!!!!11

大変失礼ながらすごい久し振りに来てみたら何だかとっても続いていて…!!!どぅううわあああああ〜〜〜…!!!!!!!

ありがとうございますありがとうございます…!
何か涙出そうです…!あの…嬉しかったり情けなかったり…本当に…!


沖本様!
まとめページ拝見させて頂きましたとっ…っても感動しました素敵すぎます…!!!!!(平伏し)
ありがとうございますと言うのは、こんな情けない主催ですのでおこがましいとは思いますがもうもう本当に心からありがとうございますと…!言わせて下さいありがとうございますぶぶぶ…!!!(おちつけええ)


素敵な執筆者様によってこの企画は成り立っているのだなあと改めて…!
これからも皆様に支えていって頂けると嬉しいなあ・・などと思ってしまいました。

ではそろそろうざったいと思うので失礼いたしますっ



NO.63 かわ 03/27(木) 00:12 IP:123.225.21.9 削除依頼

すみません失礼しました本当…駄目だ〜〜〜……
次御題です(忘れてました自ら終わらせるところだった…)

・その日消えた雨を僕は見ていた


NO.64 桐野 芹 [MAIL] 03/27(木) 21:07 IP:219.103.3.40 削除依頼


しゅんっと、彼の筆が舞った。
それと同時に、僕の眼鏡に黒い粒が飛び散る。

「あはは、」
と彼は笑ってティッシュ箱を僕に渡した。

拭き取っても墨の匂いが鼻にまとわりついて、
苛立った僕は、彼の鼻の先に筆を当ててやった。

「うっわ、お前最悪」
「お前のが最低だろ。下手な字書きやがって」

彼の荒々しい字が、半紙いっぱいに広がっていて、
その堂々とした文字は、見ていて心地が良かった。

「なんだよ。」とすねた様子の彼は、
彼の作品の中で、一番の出来だと思われるものに
ぽとりぽとりと墨を垂らした。

「ばか」と僕が彼の手首を掴んだが、
雨、と書かれた大きな文字の上に
何粒もの黒い雫は落ちてしまっていた。

「洒落てない?こっちのほうが」
「洒落てない」

何故だか僕が腹を立て、僕も自分の作品に、
朱色の雫を落とした。

「俺、その色好き。習字の先生って感じで」
と僕の持っている筆を見詰めて彼は笑った。

なんだか馬鹿みたいに面白くなって、
僕等は垂らし続けた。

美術室から、絵の具まで掻っ攫って、
僕等は雫を垂らし続けた。

雨 という文字は
もうかろうじて読める程度までに染まっていた。

カラフルな雨は、先生の怒鳴り声で止んだ。
僕は雫だらけの作品を持って帰り、
自分の部屋に飾った。

彼に告白したその日、
雫に消されてしまった僕が
雨を見詰め続けるのはもう少し先の話だ。


    :その日消えた雨を僕は見ていた

NO.65 [MAIL] 03/27(木) 21:10 IP:219.103.3.40 削除依頼

ぬおおおおお、三度目の挑戦です。
なんだこの駄作。

……勢いで投稿してしまったことを
酷く恥ずかしく思います。

まとめのサイトを見ました.+(´^ω^`)+.
素敵過ぎます。
あ、すみません、名前に桐野が入ってますが、無視してください。

NO.66 [MAIL] 03/27(木) 23:57 IP:219.103.3.40 削除依頼

お風呂場で、次のお題を思い出し、
急いで上がってきました。

次のお題です。

「若く、凛々しく、永久に。」

NO.67 河野 [URL] 03/28(金) 13:39 IP:221.188.210.195 削除依頼
「若く、凛々しく、永久に。」

昔、一人の王女がおりました。
富を持った彼女の今の夢は「不老不死」
いつまでも若くありたい。
そういつも願っておりました。

東に美容に効く薬あれば、どんなに遠くてもどんなにお金がかかっても手に入れる。
西に不死の薬あれば、どんなに遠くてもどんなにお金がかかっても手に入れる。

そうしているうちにいつしか彼女は歳を取りました。

確かに同い年の人と比べると若く見えるかもしれません。
しかし、それだけの話。
昔よりはしわも増え、肌にも張りがなくなった。

終いにはお金も底をつきはじめてきました。

そんな時、彼女は夢を見ました。
その夢にはとても美しい女神が出てきました。

「いつまでも美しくいたいのであれば……」

女神は王女にそっと、耳打ちをします。

それから王女の目が覚めることはありませんでした。

いつまでも美しくいる方法。
それは、死ぬことでした。

そして彼女は人々の記憶の中で、老いることなく美しい王女であり続けましたとさ。


*******************************
面白そうな企画なので参加させてもらいました。
こういう企画なら大歓迎ですね。
私のはとんでもない駄作ですけどね;;

次のお題は「ページを開くと」でお願いします。

NO.68 沖本 [URL] 03/28(金) 14:35 IP:210.153.232.147 削除依頼
ども、沖本です
ご迷惑をお掛けしますが、諸事情により纏めサイトのアドレス変更します(…と言っても大して変わりませんが
この企画の益々の発展を願って、失礼します

NO.69 黒崎架蓮 [URL] 03/28(金) 15:06 IP:210.165.167.93 削除依頼
「ページを開くと」


表紙に「数学」と書かれたノート。
「数学」の下には「2-2 神谷つぐる」の文字。
うっとりするほど、綺麗な字で書かれていた。
そのノートの主は、クラスでも1、2を争うイケメンくん。
(そして私は彼が密かに好きだったりする)


と、いきなり、ガラガラと教室のドアが開いた。
驚いた私は「えっ」と小さく声を上げた。


ドアの真ん前に立っていたのはノートの主の彼だった。
息が荒く、肩が激しく上下に揺れている。
走ってきたのだろうか?(そんなに大事なノート?)
彼は無言で、スタスタと私の方に向かって歩いてきた。
(無性にも胸が高鳴る。心臓の鼓動が早くなってきた)


「ねえ?中身見ちゃった?」


私は必死になって、首を左右に大きく振った。
(みるわけない!人のノートだし)

「それならいいや。」

彼は安心したようだった。
そして彼は、机の上に置かれたノートを大事そうに手に取った。
(貴方のその、器用で綺麗な指も好き)

「だってさ。このノート。好きな人の名前が書いてあるから」

ずきん、と胸が痛む。鼓動が一気に遅くなる。
やっぱ、神谷くんにも好きな人いたんだ。
当たり前か...年頃だもんな。
私の気持ちはどん底。真っ暗闇。


「馬鹿だよね。俺。何で好きな奴の名前書いてるんだろう」

「べ、別にいんじゃないの。神谷くんに好きな人いたって驚かないし。」


驚いているのは他人ではなく私だ。
落ち着けと、自分自身に何度も言い聞かせた。
(まじで泣きそう)


「でも、このノート。お前になら見られても良かったかもしれない。」


へ?っと私の頭の中は疑問符でいっぱいになった。
(意味わかんないよ。もしかして、知られてもいいってこと?)
彼は一息つくと、理由は、と付け加えて彼は言う。

「だって、お前の名前だから。」

見つめ合って照れ笑い。
いつまで続くかな。こんな関係。


NO.70 黒崎架蓮 [URL] 03/28(金) 15:07 IP:210.165.167.93 削除依頼


*ノートに好きな人の名前書くとか...
いつの時代の人なんだよ..!って感じですよね。
久しぶりの小説です。この企画には初参戦です。
改めまして、黒崎と申します。
いろんなとこに出没中です←
駄作、御題汚し失礼しました。
次のお題は、
「鮮やかパステル」でお願いします。


NO.71 03/29(土) 09:01 IP:218.43.109.205 削除依頼

昔、パレットの上に何種類もの好きな色を出して混ぜたことがあった。
どんなに美しい色になるのだろうと期待していたけどだんだん暗い混沌の色になり、酷く絶望したのを憶ええている。シンプルな色ひとつひとつならあんなに好きなままで居られるのに、好きなものを詰め込んでどうして失うことがあるのだろう。
それから私の好きな色は一つになった。
彼を連想させる白。
今の私のパレットは白一色。
好きなものを詰め込むことができたらいいのに。

鮮やかなパレット


。。。。。。。。。。。。。。。

意味分からん・・
2度目の投稿。
スペースありがとうございます!
次のお題は「灰色の空。」
おねがいします。

NO.72 ひなた 03/29(土) 17:10 IP:218.216.253.109 削除依頼

 「空が泣き出しそう」だなんてよく小説なんかで使われているけれど、ああその通りなんだなあと、今俺は妙に納得していた。
 
 何てことはない普通の一日。朝起きて、歯を磨いてご飯を食べて、気分晴らしにお気に入りのシューズを履いて、ランニングしながら外へ出て散歩。平凡という言葉がここまで似合う奴を探しても他には居ないんじゃないかと思うほど、平凡な日々、そして俺。
 只、少し平凡と違っていたのは家庭内の状況だ。父が暴力を振るうだとか母が出て行ったきり帰ってこないだとか、そんなに大それた事ではない。まあ少し、家族が魔法を使えるというだけだ。
 
 ちなみに、俺の家族構成は、母父姉俺といういたって普通の四人家族である。そこ重要。──そして、その事に最初に気づいたのは姉だった。
  
「ちょっとさ、何か朝起きたら浮いてたんだよね」
「まあ奇遇ねえ、母さんもよ」
「ああ、父さんもだよ。…母さん、お茶をついでくれないかい?」
「んあー…俺もだ。母さん、俺にもお茶」
「はいはい、ちょっと待ってねー」
 
 と云った具合だった。俺の家族(俺を含める)は驚くと云う感情が抜け落ちているのか、それとも単に興味が無いのか。俺は後者なのできっと彼女たちもそうだろう。
 

NO.73 ひなた 03/29(土) 17:14 IP:218.216.253.109 削除依頼

 地球の自転を止めるだとか、大金持ちになるだとか、俺はそんな大きな夢はない。彼女たちも(以下省略)。
 試した事はないが、きっとそのような事も出来たりするのだろう。けれど俺はするつもりはない。何故かと言うと俺はこの世界が好きで、家族が好きで、平凡を心から愛しているからだ。よって世界が破滅することになれば俺がそれを止めて、また平凡な毎日が帰ってくる事になるのだろう。そんな事を考えながら俺は空を仰いだ。
 
 灰色の空が泣き出しそうな色で渦巻いていた。俺は詩人でも小説家でもないので比喩等と云ったそんなうまい言い回しは頼まれても出来ない。なので率直に云おう。雨が降りそうだ。
 俺はついっと指をポケットの中で動かした。そうすると空を覆っていた灰色の雲たちが、まるで命令されたかのようにすいーっと無くなった。何処からか小学生たちが「晴れたぜーっ。野球行こうぜ野球ー」と云う声が聴こえてきた。
 
俺はこれからも何ら変わらないであろう平凡な日々を思い浮かべ、ついでに今日の晩ご飯についても思い浮かべて、小さくふっと笑った。
 

・灰色の空。 
 

***
魔法良いですよね魔法。←
自分が魔法使えたら世界がすんごいことになっていると思います。笑
皆様の素敵小説がいっぱいで融けてしまいそうです><もう半ば融けてます液状です(ヾ・ω・)でろーん←
2レスになってしまってすみませんでした><

次の御題→「あなたが望むせかいならもっと、」
 
 

NO.74 かわ 03/31(月) 15:42 IP:122.29.189.187 削除依頼

葬式を
しないで良いと朝食の並んだtableの上に母は零した。
私は青い絵の具が溢れる様な心持ちでそれを聞き、
「そう。」と、母と同じに淡々とした調子で返答した。
薄くなったテレビは沢山の犯罪者を映し出していた。


時計を
直しに行こうと煙草を灰皿に押し付け祖父は炬燵を出た。
貴女に言ったのよ、と義理の祖母が私に耳打ちをしたので、
私は読んでいた本を閉じ炬燵を出て立ち上がった。
茶色のベルトの腕時計を祖父は店の人に差し出す。
買った方が明らかに安い修理の金額であったが、
「(何故、私を連れて来たのだろう。)」と私は
そればかり考えていたので何も言わなかった。

修理から返ってきた時計を、支払いをする前に祖父は
私に手渡した。
その後も、祖父の家を去るまで私に預けたままだったので、
これは恐らく、私にくれたんだろう。


母の運転する助手席で、私はぼんやり泣いた。
ラジオからは殺人のニュースがつらつらと流れていた。



・あなたが望む世界ならもっと、



・・・・・・・☆

参加しすぎですみません…

次御題 : 私はその余白にあたる答えを知らない


NO.75 雛向 莉嗚* 03/31(月) 17:59 IP:125.55.95.138 削除依頼

 私が一番嫌な時期に差し掛かった。ついこの間進学したと言うのに、もう六月になって学年最初の期末考査が行われる。その前日だったが、私は成績最下位に等しいので友達に勉強を教えて貰っている。
 本当は一人で勉強した方がいいらしいのだが、拍車と言うものが掛からない。ので、手っ取り早く頭のいい友達に知恵を貸して貰うことになった。
 かりかりかり、シャープペンの虚しい音が静かな空間に流れる。一人でやっていると、この音は鬱陶しくて胸が苦しくなって脳内も破裂してしまいそうになるので一時間も持たない内に手は止まってしまう。しかし、今はそんな感情はなくてすんなりと問題が解ける。まあ、殆どが間違っていると思うが。
 一つだけ分からないところがあったので其処はあけておいた。すると、其れを見計らったかのように友達が口を開いた。余り自分から話しかけない子なのに、何だろうと思い顔を上げる。

「私さ、知香の好きな人のこと好きかもしれない」

 と微笑を浮かべながら私と視線をあわせる。居心地が悪くなるというのはこのことで、私は目を背けると其処にはその人の姿があった。此処は誰でも使える図書館の一室で勉強のみの場所である。随分前は沢山の人が使っていたが、今はすっからかんで余計に些細な音が響く。たまにマナーのなっていない中高生が出入りすることも屡ある。今の私達もそうなのかもしれない。
 そいつは彼女の言葉は届かなかったかもしれないが、こっちを向いてきた。その視線からも目を背けると先程とは打って変わって真面目に問題を解いてる彼女の姿があった。
 彼女の言葉を解釈すると、私達はライバルになる。そう、私が一番苦手とする恋のライバル。
 如何しようか、この問題、聞き辛くなった。仕方が無い自分で答えを見出すしかない。
 心に靄が生じる。しかし、私はその正体を知らない。心に余白が開いたということも、其れを解く答えも知らないまま、時は過ぎていく。

//私はその余白にあたる答えを知らない


NO.76 雛向 莉嗚* 03/31(月) 18:01 IP:125.55.95.138 削除依頼

 2レス目すみません。
 久しぶりの登場で何でかわからないのですが手に汗かいてます。
 今回は普通の恋愛書こうかな、と思って頑張りました。うん、出来は微妙だけど←
 それでは次のお題をば。
 「声が聞きたくて」
 お願いします。

NO.77 [MAIL] [URL] 03/31(月) 22:32 IP:58.87.217.98 削除依頼

 ひとりの、女。もう身体はボロボロで、もう腐敗がはじまっているのだろう。臭いがする。俺は思わず顔をしかめると、中へと入っていく。その女の横には、男。大粒の涙を流しながら、女のものらしき名前を叫んでいた。俺はもっと顔をしかめた。
 
「なんで殺した?」

 男を連行するとき、俺はなぜかふと、そんなこと聞いていた。今までも何回か殺人犯と向かい合ったこともあるし、こうして自ら手錠をかけたこともある。だけど、他の犯人に対してはそんな疑念など浮かび上がってもこなかったのに。勝手に自分の口が動いてしまっていたような気がした。
 ずっとくすんくすんと泣きながら俯いていた男は、俺の問いかけに一瞬顔をあげた。目が合う。思わず、背けたくなった。なぜって、

「声が、聞きたくて」

 震えた声でそう呟くと、また視線を下に戻す。そうしてまた、くすんくすんと泣き始めた。俺は、黙っていた。余りに無垢で、純粋な男、怖かったのだ。今までの、私利私欲の為に殺人を犯した奴とは全く違う、その目が。

「声が、聞きたくて、さあ」

 男はもう一度、俺にしか聞こえないくらいの声で呟くと、ゆっくりと呼吸をする。そうしてそこを立ち去る時にそこに残っていたのは、一片の絶望とその刹那だけだった。


・声が聞きたくて


こんにちは。お久しぶりです。三回目、になります。
お久しぶりに来たら、沖本さまがまとめサイトを作って下さっていたり、
素敵な言葉たちが沢山並んでいたりで、ドキドキしながら読ませていただきました。
自分も!って思いながら書いたのですが……あんまりな結果に自分でも切ないです。笑

次の御題は
「さよなら、いとおしいひと」
でよろしくお願いします!


NO.78 あえての 04/01(火) 13:20 IP:211.132.104.99 削除依頼

愛していた。君より,愛しい人はいないと思った。
愛していた。それは,変わらない。
ただ君がいるだけで,僕は幸せになれた。
幸せになれたはずなのに。
今は,君の姿を見るだけで辛くなる。

「・・・・」

ぼーっと遠くを見る君は,僕を気付かせた。
だって,僕が君に片思いしていたときの目と,同じだったから。

付き合って6ヶ月。
十分だ。十分だろう。
お互い,たくさんの幸せを得ただろう。
そう思うのに,君に声をかけるのは,どんなに苦い薬を飲むことより,辛かった。
一緒にいるのも辛い。手放すのも辛い。
どちらも辛いなら,君の幸せだけを

幸せだけを願おうときめた

「・・・もう・・さよなら,だ」

鼻の奥をひっぱられる感覚。
僕は,きっと泣いてしまう。
だから,俯いた。
きっと無理矢理でも笑顔をつくるなど,僕にはできそうにない。
だから,俯いた。君を,見ないために
早く行ってくれ,と願いながら

「・・・ごめんね。ありがとう」

君の足音が,聞こえる。
僕から,遠ざかっていく。遠ざかっていく。

遠ざかっていく

僕は,顔を上げた。
君の笑顔が,申し訳なさそうに笑う君がいた。
ぶわっと,涙があふれる。
愛している。それは,今も変わらない。
でも,君の負担になるのは,嫌だったから
泣いてても格好良くいたかったから

さようなら

でも,覚えておいて
僕たちは愛し合っていたこと
結婚しても,おばさんになっても,思い出として大切にしてほしい

 

NO.79 あえての 04/01(火) 13:26 IP:211.132.104.99 削除依頼
入れ忘れてました;;
↑は,「さよなら,いとおしいひと」です
ごめんなさい!
上手くまとまりませんでした・・・←
すいません

次の御題は,「オレンジ色のスカート」でお願いします。

NO.80 siw 04/03(木) 19:51 IP:118.236.144.54 削除依頼


「ねえ、わたし、すっかり色あせてしまったわ」


ぼくはそういった彼女の全身をくまなく見た。

「そうかな。ぼくはそうは思わない」

「きみはいつになっても、魅力的だよ」

「そんなことより、窓際はまぶしくないかい」

「ねえ…」

ぼくがなんといっても、彼女はきいていないようだった。



まどから差し込む陽が、彼女の頬をてらしていた。

かのじょは机に肘をつき、組んだ手にあごをのせている。

その瞳は、ぼくを見ているようにも思えるし、みていないようにも思えた。


彼女は、もう何年もその場所に座っている。

緑色のセーターに、ぼくがプレゼントした、真っ白でふわふわなカーディガンを羽織っている。

スカートはずいぶん昔にぼくがえらんでやった、赤いロングスカートだ。

彼女には、もう何年も陽があたっている。


「ねえ、わたし、すっかり色あせてしまったの」

「こんなわたしを、あなたはもう愛してはくれないでしょう」


ぼくは大げさに首をふった。

「いや、ぼくは今でも君をあいしている」

「さあ、いつまでもそんなところにすわってないで、こっちへ歩いてきておくれ」

彼女はすこしなやんだようだったけれど、たちあがって、ほほえんだ。


よかった、なにもかも変わってない。

緑色のセーターに、ぼくがプレゼントした、真っ白でふわふわなカーディガンを羽織っている。

そして、スカートは…。

「…あれ?」


*オレンジ色のスカート

NO.81 siw 04/03(木) 19:54 IP:118.236.144.54 削除依頼
二回目の投稿でございます。
彼女ロボット説。はやめましたが…
でもどうやってたんだろう。動かずに生活。
ぼく=下僕ですね。


次のお題

「本日は晴天なり!」

NO.82 04/05(土) 02:33 IP:59.171.235.249 削除依頼
本日は晴天なり

ラジオが一台荒れ果てた廃墟に落ちていた。ざざざざとノイズを含みながらそのラジオはまだ電池がきれてないらしくどこかの言葉を受信している。

「知ってる?」
「何を」
あきれた顔をしながらこれだよこれ、と目の前に出されたのは大昔にはやったらしい、携帯型の通信機だ。
それがどうしたんだ?と目だけで促すと奴はよくぞ聞いてくれましたといわんばかりににんまりと微笑みいった。
「これは大昔の発明品のひとつで……あデっ!」
「んな事は俺だって知ってる、まさか俺がそんな事きいてるんだと思ったのか?お前は」
「そんな風に叩かなくてもいいじゃない」
少しむくれた面をしながら幼馴染は叩かれた頭を押さえる、彼女はまだ子供じみた顔をしていて、格好は男そのものといった感じだ。彼女と俺は遺跡狩りという職業を生業にしている。今日はその帰りでいくつかガラクタを持って帰ってきていた。この携帯型通信機もその一部だったはずだ。
「なぜこんなものに目をつけたんだって俺はきいているんだよ」
「そりゃ、ね」
「?」
「この通信機、別に今の世界に発するだけじゃないのよ」
「……」
「過去でも未来でも、どこでにでも届くといわれている幻の通信機」
「…まさかオーパーツだっていうのか?これが?」
「試して見る?」

彼女が電源をいれた、通信機からノイズと何かが聞こえる。

「まずはマイクテストよね、……マイクテスマイクテス、本日は晴天なり本日は晴天なりーと」

その声をラジオがぽつりと拾った。

次は「沈め、」で

NO.83 桐野芹 [MAIL] 04/10(木) 23:25 IP:219.103.3.40 削除依頼


「好きです、」

皆、似たような化粧ばかりだ。
私はひっそりと溜息を零した。

あまり大袈裟に零してしまうと、
彼らにバレてしまう。

「ごめん、悪いけど……」

彼はお決まりの言葉を、発して頭を下げる。
彼女はどんな行動に出るのだろう。
この前の子みたいに、
悲しそうに目を伏せて、逃げ出すのかしら。

それとも、十月十一日に彼に告白した子みたいに、
怒り出すのかしら。

ああ、七月一日に告白した子は面白かったわ。
急に笑い出して、
冗談、なんていって取り繕っているのだもの。

振られても、友達で居たいだなんて、
本当にあつかましいこと。

「疲れてますね、先輩」

私は、急いで壁に体をくっつけて、
彼等の方を覗き込む。

驚いた。久しぶりの新しい展開。
私は、私の文字で彼の全てが書かれたノートを
ぱらりと捲りながら思った。

「ストーカーって、犯罪なんですよ。
 訴えましょうよ。
 名前、分かっているんでしょう?」

私の存在を知っている貴方だって
十分ストーカーじゃないの、と腹が立ったが、
まさか此処で現れるわけにも行かず、
黙ってうずくまり、彼らの会話に耳を傾けていた。


NO.84 桐野芹 [MAIL] [URL] 04/10(木) 23:26 IP:219.103.3.40 削除依頼
私に勝てるわけが無いのに。
どんなに今までに無い反応を見せたって、
私より彼の近くに居れるわけがない。

他の子達と同じだわ、あの子も。
埋もれて埋もれて、
顔も名前も数日立ったら忘れられてしまうような、
そんな薄い存在だわ。

他の子達のように私への嫉妬心に呑まれ、
早く、沈みこんでしまえ。


「訴えるとか、そういうのは考えてないよ」

「どういうこと」

責め立てる様に彼女は彼に質問する。
彼は気まずそうに俯いてから、
思い切ったように口を開いた。

嫉妬で狂えば良い。早く。

「君が言ってる、ストーカーは
 ……俺の姉ちゃんなんだよ。」

彼女が、理解できない。とでも言いたげな顔で
彼を睨んだ。

「お姉さんが、何故貴方をストーキングするの?」

ほら、もう怒っている。
不審が、嫉妬に変わるのはもうすぐだ。
そして、行き場の無い嫉妬を紛らわすため、
彼女らは私から彼を救おうと最初は私を探す。

しかし、次第に思い通りにならない彼に苛立ち始め、
嫉妬して、諦めてしまうのだ。

ああ、面白い。面白い。


「うざったいなあ、そういうお節介やめてくれよ」

彼が心底嫌そうに眉を顰めて、言い放った。
彼女は凍ったまま動かない。

私と目が合う。
私は笑った。

さあ、早く。沈め。

_______________
何回目でしょう、参加するの……。
そろそろ遠慮しろって話ですね。
今回もまたよく分からないおはなしです。
触れたくもありません。

次の御代は、「紡いだ麦の居場所は何処」

NO.85 黄花 04/13(日) 21:30 IP:218.221.52.166 削除依頼
紡いだ麦の居場所は何処


あいつに彼女が出来たって。
私は今日、朋子からの電話で聞かされた。
ちょうど四ヶ月くらい前、クリスマスからの付き合いらしい。
あたしの誘いを断った初詣も、その彼女と参ったんだろう。

「それにしても全く聞いてないね!」

私とあいつは幼稚園からの付き合いだ。
世間でいう幼馴染、周りからは夫婦漫才だとか言われてきた。
「男女の友情は成立するか?」
こんな質問にも迷わず「成立する」と答えられるくらい、濃い付き合いをしてきたつもりだ。

なのに……

「それにしても、あんたが彼女の存在を知らないとはね。」
「本当だし、何あいつ、今度問い詰める!」

そう言って電話越しに無理やり笑うあたしを、朋子は変に思ったかな?
なんだかあいつの彼女の存在を知った途端、すごく悲しい気持ちが溢れてきてしまったのだ。
仲良くしてきたにもかかわらず、報告をして貰えなかったから?
いや、違う。
あたしはずっと、あいつを1番近くで見てきた。
特別な存在、親友で居れば一生一緒に笑い合えると思っていた。
辛いときは本気で相談に乗り合ったし、休みの日はよく二人でいろんな所へ遊びに行った。
だってあいつは、私のことを女の中で一番気楽に付き合えると言ってくれていた。
そう、だから必然的に……あたしがあいつの彼女になれるはずだった。

あたしとの大切に紡いできた時間を追い越して、どうして――

「ごめん、ご飯だ」

電話を切るとすぐに私は泣いた。
紡いできた時間、大切なあいつ、あたしの居場所を求めて。

――――――――――――――――

初参加です、
伝わりにくい話になりましたが、参加したかったので><
次のお題は「優しい夜」でお願いします*

NO.86 唯瀬 04/15(火) 19:19 IP:221.253.130.220 削除依頼
優しい夜

『終わり良ければ全て良し』とよく言うが、きっとそれは本当だ。
人身事故で電車が動かなかったり、遅刻を恐れて慌てて学校へ行ったら一時間目の授業が自習だったり、昼食を買いそびれて空腹のまま午後の授業に出たり、果てには気になっている女の子から無意味なからかいを受けたりと、正直今日の僕はツイてなかった。
だけど夕焼けの中家に帰ったら、普段は居間でごろごろしている猫が珍しく僕に懐いてきて、ちょっと癒された。

そして夜になると、今日の出来事を思い返して落ち込んだ僕に、猫がおもむろにすり寄ってきたのだ。
「何だよ、リク」
膝の上に乗ってきた猫の頭にそっと手を乗せると、まん丸の金瞳が僕を見上げた。
甘えるように一声鳴いて、僕はその身体を抱きよせる。
小さな体温が僕の身体を通り抜けて、優しく心に響いてくるようだった。
「……元気出せって?」
分かってるよ、そんなの。と、僕は自然に微笑を浮かべて柔らかな毛を撫でる。
猫はごろごろとのどを鳴らし、ただ僕の身体に寄り添ってくれていた。
ああ、たまにはこんな優しい夜もあるものなんだな。
僕はそんなことを思いながら窓の外に目をやった。いつもと変わらない夜空、いつもはない温かな体温。
「明日からまた、がんばるよ」

----------------------------------------
お久しぶりです、皆々様。
今更ながら沖本さま、まとめサイトの作成お疲れさまです。
えっと……あ、猫好きです。癒されますよねv
ではでは、駄文失礼しましたー;

次のお題→それってカタカナじゃん

NO.87 ななみ [MAIL] [URL] 04/15(火) 20:37 IP:219.19.220.86 削除依頼
「それってカタカナじゃん」

 朝学校に行くと、いつもつるんでいる奴から突如変なことを言われた。
「今日一日、カタカナ禁止だから! 使ったら罰ゲームねー!」
 私の所属しているグループだけ、異様に盛り上がっていたのはそのせいのようだ。
 にしても挨拶よりそっちが先かい。
「まあ楽しそうだし、いいよ! てかあたし絶対勝つしー」
 私も笑って、そうはったりを言ってやった。
 いつも何気なく使っているカタカナ。日本語だけで喋るとなると、結構難しいものだ。
 信じられないのならば、貴方も一度お試しあれ。

「それでさバナナ食べてたら……あっ!」
「パソコンぶっ壊れちゃってさー……げ!」
 
 昼休みになると、何人もの奴が脱落して行った。私は今のところ一応生き残っている。
 そして、同じグループ内で少し気になってる奴もだ。

「結構難しいね、外来語禁止遊び」
「そうだなー。罰って何だろうな。迂闊に便所も言えないよなー」
「ははっ、そうだね!」
「笑いごとじゃないって! あはは……なあ」

 普通にふざけていたら、突如真面目な顔で見つめられた。
 その、想い人にだ。どきどきしてしまう。

「好きだ、大好きだ」
「嘘……だ」
 可愛くないわたし。
「ほんとだって……まじラブなんだけど」
「……それってカタカナじゃん」

 素直になれない私は、こういうことしか出来ない。
 本当の気持ちは、アイラブユー。

――――――
次のお題→「悲しき悪魔のプレリュード」

NO.88 ぺんぺん草 04/16(水) 16:32 IP:59.86.22.37 削除依頼
『悲しき悪魔のプレリュード』

集団の日常に紛れ込めない私は、いつものように廊下を往復していた。
合唱曲の練習をしているらしいクラスから、音程こそ合っていないが非常に綺麗だと思わせる旋律が漏れている。
曲名は全く検討がつかないが、その歌はどこか懐かしく、耳に馴染んでいた。
誰かが私の気配に感づき振り向いたが、またすぐに正面を向いてしまった。
それほど私の存在は軽視されているわけで、しかしそれを不快だと思うほど発達した心は持ち合わせていないためどうとも思えなかった。一瞬、指揮者と目が合う。
その人は小さく笑う。私は無視をして踵を返す。
なぜか久方ぶりに心が痛んで、今までの孤独で消し去られたはずの悲しみという感情が復活して、笑い返すことさえできなかった。
壊れた私の中で、壊れた音色が壊れた旋律を奏でる。

初めてクラスに足を踏み入れたとき、周囲は歌の練習をしていた。教室の片隅で自分たちの課題曲を聴いた。
不明瞭で不鮮明で、だからこそ欠陥がよくわかる歌声だった。
「クラスみんなで歌えればいいなぁ」
指揮者兼委員長が、独り言を呟く。
冷たく閉ざされた心は悪魔のようで、私は自嘲することすら忘れているから。
全てを肯定してしまう。

絡まりつく何かを振り払って、なるべくここから遠ざかる。
声が音になり、やがて形を失った。
しかしそんなことは幻想で、足元は教室の前から離れていない。
目を閉じる。
残された空虚感の中で、温かかった自分が凍りついていく前奏が流れる。
誰かが入室を促して、楽譜を受け渡してくれた。
受け取ったかなんて確かめる間もなく、再び鼓膜が旋律に揺れる。
きっと、それはそれ。
あまりに現実感がなくて、夢かもしれないと思った。
透き通った序曲に身を任せて、口が無意識に歌を刻んだ。

――――

初めまして、の癖にこんな駄文を投下してしまい申し訳ないです。
ななみ様のお題をうまく使いこなせていないのですが、これが限界でs
……次のお題は「忘れそうなくらい大切なもの」でお願いします。

NO.89 りみ 04/20(日) 00:57 IP:203.165.164.230 削除依頼

「スマン。今日帰るの遅くなる」


電話の冒頭でそれだけを伝える貴方。忙しいことは、確かに伝わった。プツリと切れた私と貴方を繋ぐ電気の糸は今はもうツーツーと味気無い声を出してる。
受話器を見つめてついたため息。深くなるのに比例して気分も落ちてく。

腕を振るって作った料理を前にして机に突っ伏す。何だか、随分やる気を削がれた。このまま消えてしまいたい。そう思って瞳を閉じた。消えることは叶わなかったが薄い眠りの森に迷い込むことは出来た。

そうしてからどれだけうつらうつらとしていたか。ふと肩に重力を感じ意識を取り戻す。窓の外はすでに真っ暗でチラリと見た時計はもうそろそろ今日を終わらせようとしていた。

「おぉ、スマン!起こしたか?」

風邪引くと思って毛布をな、なんて少しはにかんだ様子で言う貴方。急いで帰ってきたのか少し乱れた服。汗ばんだ額。
そしてテーブルには薔薇の花。たった5本の薔薇。真っ赤な、薔薇。

「覚えて、たの?」
「何が」
「……今日のこと」
「当たり前だろ?俺たちの記念すべき日、だ」

ぽりと鼻を掻いて照れ隠しする貴方。料理食べていいか?俺の好物ばかりだ、なんて言う貴方。遅くなっても今日中に帰ってきてくれた貴方。愛しい、貴方。
今日は記念日。出会えた記念日。記念日には薔薇を。重ねた年の数だけ、薔薇を。

「それであのさ、来年には苗字が同じになってるといいと思わないか?」

嗚呼、なんて素敵な日常。
愛しい貴方と過ごす日々。
忘れそうなくらい大切な、


+++忘れそうなくらい大切なもの

えと、初めましてです。りみです。素敵お題でした**
では、レス収まらなくなりますので早々に撤退致します!
次の御題:苺タルトを食べませんか?

NO.90 かまきりこ [URL] 04/20(日) 14:40 IP:219.53.96.23 削除依頼

//苺タルトを食べませんか?

 春。桜が舞い散る歩道をふらふらと疲れきった表情でふらふらと何処か覚束ない足取りであるく俺。春といえば、この時期期間限定の苺タルトが出るらしく、俺は彼女にそれを買ってこいと言われて早朝から店に並んで、人ごみの中かなりの努力をして買ってきたのである。
 小さな可愛らしい白い箱の中には苺タルト。箱を覗き込めば、僅かに苺の何処か甘酸っぱいようなにおいが漂ってくる。思わず涎を零しそうだったものの、ごくりと飲み込み此処は彼女の為にも我慢をしようと自分に無理やり言い聞かせて再び歩き始める。
 桜並木の道も終わると、彼女の

NO.91 かまきりこ [URL] 04/20(日) 14:46 IP:219.53.96.23 削除依頼
//苺タルトを食べませんか?

 春。桜が舞い散る歩道をふらふらと疲れきった表情でふらふらと何処か覚束ない足取りであるく俺。春といえば、この時期期間限定の苺タルトが出るらしく、俺は彼女にそれを買ってこいと言われて早朝から店に並んで、人ごみの中かなりの努力をして買ってきたのである。
 小さな可愛らしい白い箱の中には苺タルト。箱を覗き込めば、僅かに苺の何処か甘酸っぱいようなにおいが漂ってくる。思わず涎を零しそうだったものの、ごくりと飲み込み此処は彼女の為にも我慢をしようと自分に無理やり言い聞かせて再び歩き始める。
 桜並木の道も終わると、彼女の家が見えてきた。やっとついたと思うと、急激に苺タルトの入った箱が重く感じてきたものの、その辺りはきのせいだと思うので小走りで彼女の家まで向かう。
 インタフォンをならすと、どたばたと彼女が走ってくる音が聞こえてきた。勢いよく扉が開き、にこりと微笑みを浮かべた彼女が視界に入ってきた。はやくはやくといわんばかりに、俺を家へあがらせリビングへとつれていく。テーブルにはもうすでに、紅茶が用意されており、彼女がすわった向いの席に座らせられた。にこにことその際も笑顔を絶やさず俺の様子を見る。彼女のお望みの苺タルトの入った箱をテーブルにおくと飛び着くと表現するしかない様子で彼女は箱をあけて苺タルトを取り出し、早速頬張った。

「ありがとうっ! 此処の苺タルト人気ですぐに売り切れちゃうし、何より期間限定だから中々手に入らないの!」
「…………はあ。そうかいそうかい。ならよかったよ」

頬にタルトにのせられていたクリームをつけながr

NO.92 かまきりこ [URL] 04/20(日) 14:53 IP:219.53.96.23 削除依頼
//苺タルトを食べませんか?

 春。桜が舞い散る歩道をふらふらと疲れきった表情でふらふらと何処か覚束ない足取りであるく俺。春といえば、この時期期間限定の苺タルトが出るらしく、俺は彼女にそれを買ってこいと言われて早朝から店に並んで、人ごみの中かなりの努力をして買ってきたのである。
 小さな可愛らしい白い箱の中には苺タルト。箱を覗き込めば、僅かに苺の何処か甘酸っぱいようなにおいが漂ってくる。思わず涎を零しそうだったものの、ごくりと飲み込み此処は彼女の為にも我慢をしようと自分に無理やり言い聞かせて再び歩き始める。
 桜並木の道も終わると、彼女の家が見えてきた。やっとついたと思うと、急激に苺タルトの入った箱が重く感じてきたものの、その辺りはきのせいだと思うので小走りで彼女の家まで向かう。
 インタフォンをならすと、どたばたと彼女が走ってくる音が聞こえてきた。勢いよく扉が開き、にこりと微笑みを浮かべた彼女が視界に入ってきた。はやくはやくといわんばかりに、俺を家へあがらせリビングへとつれていく。テーブルにはもうすでに、紅茶が用意されており、彼女がすわった向いの席に座らせられた。にこにことその際も笑顔を絶やさず俺の様子を見る。彼女のお望みの苺タルトの入った箱をテーブルにおくと飛び着くと表現するしかない様子で彼女は箱をあけて苺タルトを取り出し、早速頬張った。

NO.93 かまきりこ [URL] 04/20(日) 14:53 IP:219.53.96.23 削除依頼
「ありがとうっ! 此処の苺タルト人気ですぐに売り切れちゃうし、何より期間限定だから中々手に入らないの!」
「…………はあ。そうかいそうかい。ならよかったよ」

頬にタルトにのせられていたクリームをつけながらにこーと苺色に染まった歯を見せる。そんな彼女の喜んだ顔を見ると、自分に利益は得られなくてもなんとなくだが許してしまったりしてしまう。…………本当に、馬鹿な自分だな。参ったといわんばかりに頭をかきむしっていると、もう既に苺タルトを食べ終えた彼女がゆっくりとこちらに歩み寄ってきて、俺の顔を両手で挟み自分の顔へとぐいと近付けた。まず、状況がつかめていない俺は非常に困ったものの、すぐに状況が理解できた。彼女のやわらかい唇が俺の唇に押し付けられ数秒その状況に置かれる。しばらくして、彼女の顔がゆっくりとはなれていって再びにこりと微笑んで見せた。俺は数回瞬きをする。

「どう? 中々、おいしーでしょっ? 今度は二つ分買ってきてね」

 もちろん1つは君の分だよ。ふふとかわいらしげに笑みをこぼす。彼女のキスは酷く甘い苺タルトの味がした。

end


 うわー、間違って途中のものを二度も投稿してしまいました…orzzz 本当にふがいなくて申し訳ないです! 皆様の作品をみてうはうはしているかまきですが、久しぶりに参加させていただきました。ではでは、短いですがこれで! これからもちまちまと参加させていただきます。
 お題→「季節はずれな向日葵とA子さんの日常」

NO.94 ななみ [URL] 04/20(日) 15:39 IP:219.19.220.86 削除依頼
「季節はずれな向日葵とA子さんの日常」

 今日もまたいつもと同じ一日が始まる。
 
 うるさい目覚まし時計を叩いて止める。時刻はいつもどおり、八時半だ。
 ピンクのスリッパに履き替えてのびをしながら二階に下りて行く。
 長男が昨日出したと思われる、教材費の封筒があった。暫く意味もなくそれを見る。
 汚い字だ。もうすぐ中学生なんだから字くらい丁寧に書けばいいのに。
 簡単な朝ごはんをすましてTVをつける。いつもと同じ番組をボーっとしながら見る。
 するといつもと同じ時間……九時四十五分に飼い犬のココが鳴き出した。
 さあ、散歩に出かけよう。いつもと同じコースを飽きもせず歩こう。 
 ココの青色のリードをしっかりと握って。
 
 人通りの少ない川原をココと散歩する。これが私の日常だ。
 爽やかな風を顔に受けて目を細めていると、ココが路地に入りたいと言って鳴き出した。
 珍しいこともあるもんだ。時には変化が欲しいのだろうか。
 私だって変化くらい欲しい。だから私は、大人しくココについていった。
 ……向日葵が咲いていた。季節は十月。季節はずれもいいとこだ。 
 私は向日葵を見上げながら笑った。
 時には日常から外れてみるのもいいかもしれない。

次のお題→「木霊(こだま)した、」

NO.95 04/26(土) 14:50 IP:59.171.235.249 削除依頼
わんわんわんわん頭の中でわめくかれらは
またひとりの僕という人間で
それを理解しつつも、僕はその木霊する声に耐え切れずに
また君を失った。

なくしてはつくりあげるそれは
言ってしまえば子供のころに遊んだ粘土遊びと変わらなくて
何が格好よいだとか、こんな世界だといいとか、
現実感をもたない御伽噺

わんわんわんわん、泣き声は響き在った
僕に居たはずの僕はいつのまにか
大好きな君に入り込んで僕に告白する
こんな世界ならば、すべてが想うままなのに
どうして後悔するのかなぁ
打てば響く、木霊の如く
打てば響く、刃の如く
ただの一人お芝居空回りの気持ち

誰か、教えてよ。僕じゃないほかの誰かの想いを
どうしてそこに立っているんだまるで木偶人形じゃあるまいし
なぁお願いだから、僕以外の感情をおしえて

----
木霊する、木霊する、木霊した、
感情が木霊して返ってくる前に、逃げなきゃいけない
そうじゃなきゃ、また君も
僕になってしまう

next→デイズノイズノウズ
(days noise knows)

NO.96 カラス [URL] 05/02(金) 00:21 IP:218.126.125.5 削除依頼


 テレビで話題のドラマの曲をピアノで引いたものが、生徒会室に流れ込んできた。

「あ、これ確か、“捜査一課の日常”“の、」
 オープニングテーマ、と言うはずの書記の言葉は飛んできた黒革のバインダーによって遮られた。
「今日はお開き! また来週!」
 ショルダーバッグを引っ掛けて、勢い良く扉を開け放って駆けていった生徒会長を役員達が呆然と見送る。新任の書記が、狼狽えながら部屋と先輩を見渡す。
「おれ……なんか言いました?」


 階段はまどろっこしいから、もう2段飛ばし。駆け下りる、じゃなくて、飛び降りる。手すりを掴んで、勢いを止めずに踵で踏ん張ってキュッと体を半回転。バッグを跳ねさせながら1階を目指す。
 ああもう! 言ったのに!
 ピアノの音はまだ止まない。

 この音の起因を語るには、まずは校庭に集まる鳩の話からしなくちゃいけない。この白い群れ目当てに、鳩を遊び相手だと思い込んでる、あの悪戯好きな黒猫がまた侵入してくるのだ。ここで猫めがけて駆けてくるのは、塵取りを放っぽってやってきた、学校のご近所の飼い主のおばさん。そして、知らない人を校内に入れる訳がなく、その監視のために、わざわざ軽食を放り出して慌てておばさんを追いかける警備員。警備員が不在時に、いつもサッカーをしに学校へやってくる少年が警備員さんの帽子に目を留める。それをそぅっと持ち出し、いつも話をしてくれるお姉さんがいる音楽室の窓まで走る。ピアノの上手い女生徒は、少年の頭に帽子を被せ、似合うと褒め、小さな警官さんに今話題のドラマのテーマを引いてやるのだ。
 そこで話は元に戻る。
 なんで鳩の軍団がいるかっていうのは――。
 

NO.97 カラス [URL] 05/02(金) 00:23 IP:218.126.125.5 削除依頼

 靴を履くのもまどろっこしく、突っ掛かりながら下駄箱から転がり出る。
 警備員さんが慌てて宥めてるおばさんの前で猫が狙いを定めて飛びかかろうとしている先にいるのは鳩達。その中でぼんやりと立ち尽くし、お昼に買ったパンをちぎっては落としているのは――。
「ひなた!」
 今日は会議があって遅くなるって言ったのに!
 声をかけて振り向いた彼女の顔があまりに綺麗に嬉しそうに輝いたから、あーもう可愛いなーとか、あー言ってくれたら良かったのに、とか考えながら、ばたばたと彼女の元に駆け寄る。


 猫が思いっきり鳩達に飛びかかって白い群れが一斉に飛び立つ。
 大きな帽子を被って満足気な少年のための、優しいテーマが終わるのを聞いた。


+Days’ noise knows. (――applause!!)
(デイズ ノイズ ノウズ。 アプローズ!)

ーー
まった2スレ申し訳ありません!
あっは、御題が生かせてないというか!涙
アプローズは、拍手喝采、の意味で。

次御題:ショッキングレィディ!
 

NO.98 あお 05/17(土) 03:43 IP:59.171.235.249 削除依頼
ショッキングレィディ!

テレビの中にうつる彼女を見つめる。彼女になれたらどんなによかったのだろうか。
特徴的なほくろの位置をさぐる、何もない自分の唇右の上、頬に届く手前に触れて見る。
代わりにあるのは骨ばった頬に触れる強張った指。

「もし、彼女みたいになれるのならば」

世界はかわるだろうか、この部屋から出られるだろうか?
男じゃなくて、世界中の男が振り向く彼女になれれば……
あざ笑われることなく、陰口を言われることなく、太陽のさんさんとあたる木陰の道を勢いよく自転車で滑って、生きていけるだろうか。

「もし、彼女になれたのなら」

ふと目についた母親の化粧台から真っ赤な口紅を引っ張り出して見つめる。真っ赤なあのエロティックな口なれるのだろうか、恐る恐ると口紅のキャップを外して、紅をひねりだした。
しっとりとした感触が唇を濡らす。

真っ赤になった俺は、意を決したように、母親がお気に入りといってみせてくれた青いドレスを身にまとう。
これが男にみえようか?
届かない背中のチャックに必死に手を伸ばしながら鏡をみた。
これで彼女にみえようか?

あの、彼女に似合う微笑みを浮かべて
スカートを翻すとあたしは特有の独特な歩きで町へと一歩踏み出した。

----
モンローと引きこもり少年。

next>さよならなんて聞きたくない

NO.99 沖本 06/01(日) 14:13 IP:210.153.231.74 削除依頼
さよならなんて聞きたくない

 私が、眼前の相手に殴り飛ばされたのだと気付いたとき、既に体は地面と平行になっていました。
 焦点の定まらない視界の中で、そしてそれをしたところの人物が一歩ずつわたくしに近付いてくるのです。


 別れることは然程問題ではないのです。
 ただ私は、「それ」が嫌なだけでして。
 解りますか、その違いというものが? まあ、仮にあなたがそれを理解出来ないと言おうが、言うまいが、私には一切関係ないと思いますがね。

「……」

 あのー、何か言っていただけませんかね? そうでないと、私はどうにかなってしまいそうで。

「……」

 まあ、何も言わないというのはそれはそれでいいとは思いますが。
 理由をつけるとすれば、そうですね……。大っ嫌いな奴の捨て台詞が、「それ」だったんですよねえ。無関係な人を巻き込むのは、ええ、いけないことだとは思いますよ? ですが、ねえ。運が悪かったとでも思っていただければ、何かと助かります。……私が。

「……」

 嫌いな奴を思い出して少し、ムシャクシャした。
 そんな理由でしたが、何か? ああ、もう返事も出来ないんでしたね、すみません。
「会って早々、別れの台詞を言うのも少々あれですが、まあいいでしょう」
 それでは、「さようなら」。
 もう会うことはないでしょうが――」


「……(さよなら)」
 ほおにじめんのかたさをかんじながら、わたくしはひとつのかんじょうをもってそれをつぶやきました。
 おそらくとどいていないのでしょう。
 じゃりじゃりと、さっていくあしおとだけがやけにおおきくきこえました。


次題→哀しき幸福の影

やっちゃったぜ! と全力で叫びましょうか、お久し振りです。んー、素敵御題なのに申し訳ないとしか、いいようが、無いな! 普段書かないような書き方をして、沈没しました。

NO.100 06/24(火) 00:04 IP:59.171.235.249 削除依頼
哀しき幸福の影

ダムダムダム、
軽く引き金を引くとそれに応じて、弾が放たれた。
リボルバー式の拳銃はすぐに弾ぎれしてしまって切ない。だから一年ほど前からはセミ・オートマチックの拳銃を使っている。
気がつけばシングルカラムをすべて使い果たしていたらしくいくら指を動かしても空気の泡すらでなかった。
っち、と小さく舌打ちをして拳銃を後ろのポケットに戻すと片手で死者に十字を切った。
本日のターゲットは彼女によく似た男だった。
彼は人を殺すのが好きだった。最初にやったのは彼女だった、その彼女の死体を数度殺し直し、そこで自分の趣向に気がついた。それから今の仕事をしている。
しかし、その男はその穴だらけの姿で何故か起き上がった。
彼はちょっと驚いて目を見張り、それでも尚冷静に拳銃を抜き男を撃ちなおす。男は再び倒れ、また起き上がる。
そして、
かちかちかち、と彼は弾の入っていない拳銃の引き金を引き続ける。
女に見えるその男はゆらり、と起き上がると笑いながら、言った。
「なぁ、あと何回殺すんだ?」

---
彼にとっては幸福のはずだった、それは、殺しは。でも死なない相手は、彼にとっては恐怖でしかない。

次、青龍の恋わずらい

NO.101 市之介 06/26(木) 15:01 IP:58.188.20.215 削除依頼

(1人の少女に、こいをした。)

いつもどおりのたいくつな日々、
いつもどおりに世界をみおろす。

なんだろう、いつもとちがう、

きらきらする何かを感じて、西のほうがくに目をむけた。

そこに見たのは、
すきとおる海みたいなあおみどり色の瞳のきみ。

うちぬかれるのは、コンマ3秒。

彼女はとてもうつくしくて、可憐で、すてきで。
ぼくはハジメテ 「恋」 を知った。

(ハロー・ハロー!)
(はじめまして、こちら竜神様。)
(出会いにいっても かまいませんか?)

         青龍の恋わずらい

- - - - - - - -
すてき企画、参加させていただいちゃいます!
素敵お題にそぐわない文章ですみません;
next→きせつはずれのサンタのおじさん
でお願いします><

NO.102 ななみ [URL] 06/26(木) 21:02 IP:219.19.220.86 削除依頼

 少女は、泣いていた。悲しみの涙を流していた。目の前にはランドセル。その赤いランドセルの中には大量のごみが。まるでそれはランドセルというよりもゴミバケツといった方がよさそうだった。
 少女はいわゆるいじめにあっていた。もともと気弱な彼女はその状況をどうすることもできない。ただこうやって誰にも見られないようにして泣くことしかできない。そんな自分が情けなかった。
 だけども涙は止まらない。泣きやまなきゃ、と思うほどに涙の勢いは増す。ランドセルの赤が滲んでいく。
 そんな少女の小さな耳に小さな音が届いた。しゃんしゃん、という儚げな鐘の音。思わず顔を上げると目の前に赤い服に身を包んだおじさんが立っていた。
 何処から出てわいたのか分からない。だがそのおじさんは少女にあたたかさを分けてやっているようだった。
「だ、誰……?」
 突然の出来事に少女の脳は追い付かない。上手く状況処理が出来ない。問いかけてもおじさんは何も答えない。口を開く代わりに、おじさんは少女に向かって右手を差し出した。握手、といっているみたいだ。
 少女は思わず手を握る。優しいあたたかい手だ。おじさんの手に刻まれたしわの感触が少女の小さな手にも伝わってくる。いつのまにか少女の涙は止まっていた。
「――ありがとう」
 何といえばいいのか分からなかった。でも元気になれたことは確かだった。ほんの少し、少女はおじさんに元気をもらったような気がしたのだ。だからとりあえずお礼を言った。
 

NO.103 ななみ [URL] 06/26(木) 21:03 IP:219.19.220.86 削除依頼
その言葉はおじさんをひどく喜ばせる材料となったようで、おじさんはにこりと優しく微笑んだ。どんな女神の微笑みよりもあたたかい微笑みだった。
 また、しゃんしゃんという鐘の音が響く。次の瞬間おじさんの姿は消えていた。
「あ、そういえばあのおじさん……!」
 やっと状況処理が追いついた少女は、おじさんの名前を思いだした。そして静かに微笑んだ。もう一度心の中でありがとう、と呟きながら。

 
 //きせつはずれのサンタのおじさん

次のお題
「そんな恋愛はデリートしてしまえ」
(デリート=消去)

NO.104 桐野芹 [MAIL] [URL] 06/26(木) 23:48 IP:219.103.3.40 削除依頼
「あのさあ、」

パソコンを目にも留まらぬ速さで打ち込みながら、妹が尋ねてきた。どうやら文章を打ち込んでいるらしい。よく会話できるものだ。

「あたしに好きな人居るって言ったら、お兄ちゃん驚く?」

いきなりなんだ、と人参を切る手を止めて彼女のほうを向くと、彼女はこちらに背を向けたまま、手ばかりを動かし続けていた。

「それでさ、その好きな人がさ、すっごく背が高くて、あたしとの共通点がたくさんあって、顔はまあそこそこだけど、優しくて、家庭的な人だったらどうする?」

俺は休めていた手を再び動かした。
なんと返事を返すのが正解なんだろうか。

「ピアノが上手で料理も上手なの」

上ずっていく彼女の声を、なんと制してあげればいいのだろうか。

「そしてね、これはあたしの勘だけど、あたし多分その人と両思いなんだ。」

震える声を、肩を、どんな言い訳をつけて抱きしめてあげればいいんだろうか。

煮詰めたひじきの味見をしている最中、ピアノの上に置いた携帯が鳴った。

彼女からだった。熱心に画面だけを見詰め続ける妹の背中はすぐそこにあった。

「でも、絶対付き合っちゃいけないの、その人とは。その人、あたしのこと好きなくせに彼女居るしね」

彼女からのメールの内容は、俺じゃなく友達に宛てるつもりのものかと思ったが、きちんと俺宛だった。

……俺の愚痴を俺に言ってどうする。
溜息をひとつ零す。妹の肩が大きく動いた。

「でもあたしが彼氏作ろうとすると邪魔するの。自分は彼女居るのに勝手だよね。そんなことするなら彼女と別れればいいと思わない?」

「そうだな」

俺はわ、か、れ、よ、う の五文字をようやく打ち終えながら呟いた。安心したように息を吐く音が聞こえた。

NO.105 桐野芹 [MAIL] [URL] 06/26(木) 23:50 IP:219.103.3.40 削除依頼
「年頃の女の子の前で平気でパンツ一丁だったりするし、寝不足のときの顔とかもう最悪なの。常に身だしなみは整えておくべきだよね、トイレで本読む癖とかあるし。そんな奴、同じ男として、お兄ちゃんどう思う?」

「最低だな、俺は絶対関わりたくない」

「でもね、どうしても惹かれちゃうの。どうしたらいいと思う?」

「そんな思いは消してしまいなさい。今ならまだ間に合うだろ、ほら、飯できたぞ。この前一緒に帰ってたアイツに彼氏になってもらえ」

「お兄ちゃん猛反対したじゃん」
「今言ったそいつより断然マシだ。夏にマフラーする神経はどうも許せんけどな」

「ほら、早くしろ、飯が冷める。」

ずず、と鼻をすすって、振り向いた妹の目と鼻が真っ赤なことに気づかない振りをしてあげることしか、俺には出来なかった。

   :そんな恋愛はデリートしてしまえ


お久しぶりです、桐野です。
もう何度目の投稿になるんでしょう…。
いつも自分でも満足のいかない作品しか投稿できていないので再度チャレンジです。
また数日後読み直して後悔するんでしょうけどね。

次のお題:「大きな瞳を派手に縁取る綺麗な睫」

NO.106 枯野きのこ 08/08(金) 13:52 IP:59.135.38.216 削除依頼
大きな瞳を派手に縁取る綺麗な睫

あんたの作品、それってどうなの。
彼女は粘土まみれの腕の、かろうじてきれいな部分でおでこをふいた。
彼女の作品は粘土のかたまりのあちこちから、金属が飛び出ている抽象的なものだ。
それに比べ、ただの眼を形取るぼくのものが、彼女には具体的すぎるように見えるのだろう。
テーマは恋だよと僕が言うと、彼女はもともと大きな目をさらに大きくした。納得はしていないようだったけれど、彼女はふうんと鼻で返事をして、作業に戻った。
ちらりと僕は盗む。彼女の眼。
その大きくうるおった瞳はすうと人を引き込む。その眼になにかが映る時、きらりとそれらが光るのを僕は知っている。
そのきらめきをうまくあらわせるだろうか。ただただリアルを求めただけの作品は、まだ、彼女に潜む輝きを盗んではいない。やはりなにか足りない。
いくらニスを塗ろうが、へこみを直そうがきらめかない僕のつくった眼。
ちらりと彼女の眼を再び見る。
横顔を何度見つめただろう。
あーつかれた!彼女は、大きくため息をついてごろりと床に寝転がる。
仰向けになりまるで天井をこえて青空を見つめるかのように、目を閉じて、いる。
あ、と僕は瞬きをした。
彼女のまぶたが、眼を覆っても、彼女の顔は相変わらずきらめいていて、それはまぶたの上下にぎらりと漆黒が揺れていたからだった。
え、なに見てんのよ。
彼女が目を開けこちらに気がついて、怪訝そうな顔をする。
ぼくは慌てて笑顔をとりつくろう。
別に、なんでも。
ああ、材料が足りないな、買ってこないと。ぼくは彼女に背を向けてかけだす。
目を閉じてきらめく黒を思い出す。何を使ってつくろうか。
記憶の中で彼女は笑って、また、綺麗な睫が揺れた。

こんにちはお久しぶりです。変態チックになってしまいました笑
次の御題は「記憶兵器」でお願いします。
難しかったらすみません。続きますように!
それでは〜

NO.107 ひなた 08/11(月) 22:27 IP:218.216.250.73 削除依頼


 ふと気がつくと、わたしはわたしではなくて。

 すこしだけ冴えていたのは頭で、動くことはできいのだけれど、なぜだかわたしは驚いたりはしなかった。ただすこしだけ、頭の中がむずむずとかゆいような感覚があった。
 
 鏡などと云う便利な物もそこにはおいてはいなくて、わたしは自分を確かめる術がわからなかった。形容しがたいその雰囲気のなかで、わたしはただ、ひたすら、ぼうっとしていた。

 
 ちいさく息を洩らした。ふう、と息をはいたつもりだったのだけれど、わたしのそれは、ひゅうとも何とも似つかない微妙な音をかもし出し、消えた。
 そのため息のおかげ(と云っていいのかどうかは定かではないけれど、)でわたしにまだ聴覚が残っていることと、それまで呼吸をしていなかったことが分かる。
 目のまえが真っ暗なのは、わたしに視界がないのか。それともただ、ここが暗闇なのか。呼吸をしなくても平気だったのは何故だろう。酸素がここにはあるのだろうか。それさえもわたしには分からなかった。
 そのうちに何もかもが曖昧になって。わたしはよくわからない何処かを彷徨っていた。その場所は、やはり何もない暗闇だった。

 

 どれくらいの、時間がたったのだろう。

 頭以外で唯一はたらいている聴覚がなにかを聞き取る。ひくいから、きっと、男の人の声だ。

「……わすれ、ない、」

 忘れない、と云っているのだろうか。すこし涙声で上ずっている。わたしはこの声を知っている。いつもやさしくて、おもしろくて………、わからない。誰だろう。
 大切ななにか。誰か。忘れてはいけないような大事なもの。ひと。

「……あい、していた、こと、」

 

NO.108 ひなた 08/11(月) 22:49 IP:218.216.250.73 削除依頼

 
 ああ。

 ぷつり、と何かが切れた。そこから何も聞こえなくなる。そしてわたしは思い出す。

「わたし、しんじゃったんだね」

 もう逢えないんだね。つぶやきたかった言葉は、言葉にはならずに嗚咽に埋もれた。



 あまりにも唐突すぎて、最初は何が起こったのか、わからなかった。
 覚えているのは眩しい車のライトと、おびえている子猫。そして驚きとわたしに手を差し伸べている、あのひと。あの子猫をわたしは助けられただろうか。そうだとしたらとても、うれしいことだ。

 最後に聞こえたのは「にゃあー」と子猫がおびえた声だ。ぐ、とかう、とかわたしは呻いていたかもしれないけれど、そんなのが最後の言葉なんて嫌だから、聞かないことにする。

 
 これから、あのひとは泣くだろうか。
 それとも馬鹿、と云って笑って、そのあとに一人で泣いてしまうのだろうか。

 きっとどちらにしても結局は泣いてしまうのだろう。あのひとは、とても泣き虫だから。

 そう思うと、こっちまで涙腺が緩んでくるような気がしてくるから不思議だ。実際はもうなにもわからないのだけれど、思念の類だけははっきりしている。自分の声も、きこえる。


「もう泣かないでよ。なきむし。わたしだって、」


 あいしてるんだから。
 
 言葉は飛散るガラス細工のように、きらきらと光って消えていった。わたしはそれを見ることができないまま消えてゆく。それはとても残念だけれど、わたしの記憶のなかにあのひとが居たことは、きっと幸せ以外のなにものでもないのだろう。

 わたしは笑った。笑えたかどうかはわからない。けれど、笑った。あのひとにそれが見えていたなら、とてもいいと、思った。

 


・記憶兵器


***
うあーすみません><
「兵器」部分が……まったく無(ry
でもでも面白かったです!素敵御題ありがとうございましたっ><

次御題!
「おぼれたねこと、せかい」
使いにくくてすみません><
 

NO.109 08/14(木) 21:58 IP:59.171.235.249 削除依頼
おぼれたねこと、せかい

ぽたぽた落ちるは、世界の涙
はらはら降るのは、捕まえた鳥の羽
彼は少しわらって、手元のグラスを揺らした。

すらりと白い手足、肩にかかる程度の金色の髪。耽美な彼の姿に僕は一目ぼれをした。
彼はいつでも儚く微笑んで、薄暗い石に囲まれた部屋で薔薇をめでていた。
「お外に一緒にいこうよ」
僕が誘っても彼は目を細めてゆるく首をふるだけ。声は聞かせてくれなかった。仕方がないので僕は彼の足に擦り寄って甘えた声をあげてみせた。
迷い込んだのは本当に偶然だった。探検の途中、みつけた小さな石の塔。好奇心から窓にとび乗って中に落ちた。そんな僕を介抱してくれたのが彼だった。月の光がきらきらしてこの人はかみさまなんじゃないかってそれくらい、過剰に想ってしまった。
それから僕は毎日ここに通っている。
「ねぇ、お兄さん。名前なんていーうの?」
「……」
話しているうちに彼が喋れないことはわかって僕は苦笑いしながら首を振った。

ある日、お空をきれいな鳥が飛んでいた。彼に見せてあげたいほどの太陽にキラキラ跳ね返る鳥
彼にみせたら微笑んでくれるだろうか、僕は思わず手を伸ばして地を蹴っていた。

「……!」
彼は声にならない悲鳴をあげて必死に水の中に手を伸ばした。それでも世界を映し出すことしかできないそれは猫には届かなくて。鳥にも猫にも届かない。
堕ちた猫も落ちた鳥も一緒に湖の底へ沈んでゆく。

それはここの神様。だけれどおぼれた猫ひとつ、掬えない

ぽたぽた落ちるは、彼の声
はらはら散るのは、小さきものの魂
彼が傷つかないように、僕を忘れてほしいと願った。

next>雲は霞み花散り、

NO.110 山田 08/15(金) 01:37 IP:218.110.79.6 削除依頼
庭の花が散りましたよ、という声が掛かった。ああ、またこの季節がやってきたのか。
俺は机に読んでいた本を丁寧に置き、そっと腰を上げた。

「兄さま」

心配そうに俺を見上げる弟。その頭を撫でると、彼は気持ち良さそうに目を細めた。

「あれから何年経つだろうね」
「四年です、兄さま」
「そうだったか。お前はよく覚えているね」

本当は聞くまでもなかった。
そうだ、もう四年になる。忘れるはずも無い、毎日指折り日にちを数えている位なのだから。
そう。俺が唯一愛した彼女が消えてから、四年が過ぎた。

「もう、そんなに経ったのか……」

いつの間にか手は要の頭を撫でるのを止めてしまっていた。ぼんやりと窓から外の世界を見やる。

「彼女は言っていたね。時が移ろい、様々なものが他のものに成り代わっても、空だけは変わらないと」

要は何も言わずに俺の腰にしがみついてきた。
痛いほどに力を込める彼を抱き返す事をせず、俺は続ける。

「そんなの大嘘だ」

窓の外に広がるのは、霞んだ雲。

「彼女がいた頃は、あんなにも雲がはっきりしていたのに」
「兄さま、それは」
「わかっているさ」

八つ当たりだ、こんなのは。
雲が不確かなものであると言うところに付け込んで、俺は屁理屈を言っているだけなのだ。

「彼女だけじゃない。雲が霞むわ花は散るわ、俺の周りのものはどんどん消えて行ってしまうね」

熱いものが両頬を伝っていくのが分かる。その時ふと思い出したのは、彼女の言葉だった。
「自分が可哀想で泣くのってさ、餓鬼の涙だよ。わたしは、嫌いだな」
今の俺の涙は、きっとそれだ。そうは分かっていても止める事は出来なかった。


何となくお題からそれました、済みません。
次→「根性見せろ! 」

NO.111 やせたい 08/25(月) 01:31 IP:219.108.157.46 削除依頼



 ぐちゅ。腹に触れれば鮮やかな赤をした液体がてのひらを濡らした。
 あーと鈍い声がどこかから聞こえたので一体誰かと顔を上げ、はい、と返事をしてみて、そこでそれは自分の声だったかと気付く。ついでに視界がぼやけてきたことにも気付く。
(これは死ぬんじゃないかしら。)
「あー」
 今度は自分の声じゃなく、前方に人の足が見えた。眼球だけ上に向ければ、なんのことはない、見知った顔の男だった。そこで自分が何かに背を預け座っていたことに気付く。
 男は膝を曲げ正面にうんこ座りをして、こちらをどうということもなくじいと見詰めた。最後の最後に視界を遮りにかかるとはどういうつもりだと言ってやろうかと思ったが、大人気ないのでやめた。もう終わる人生なのだ、こんな男の相手をしている暇はない。走馬灯のように過去を振り返るのだ。
 あーあ、と男は今度は明らかに何か落胆の色を交ぜそう言った。
 お前なんぞに何を残念がられなくてはならんのだと今度こそかちんときた。そう言おうとしてしかし声は出ず、ただ喉がひゅうと鳴る。成る程いよいよだと悟り、そして代わりに男が泣いた。

NO.112 やせたい 08/25(月) 01:38 IP:219.108.157.49 削除依頼

(涙の出る男だとは知らなかった。)
 ので、少なからず驚き、そしてそれを人生最後の映像に、視界はブラックアウトする。
 人間は聴覚が一番最後まで機能するというから、その声は鮮明に響いた。



「しなないでくれよ」



 あー、無茶を言う。



 
 
・根性見せろ!


・・・・・・
2レスめは、携帯からなので途中で切れて一回消してしまった部分ですくやしい!

next→君の前で不幸になる幸福論

お邪魔しました!

NO.113 唯瀬 09/11(木) 13:57 IP:221.253.130.220 削除依頼
 結局、君といると俺は不幸になる。
「あの人が来るから、そろそろ帰るね」
 だなんて嬉しそうに俺へ言う君。ポケットにはカッターのお守り、ひとつ。
「……うん」
 それしか言えない俺。ポケットには渡せなかった小さな紙切れ、ひとつ。
 教室を出てゆく足音を耳で追いながら、俺はますます不幸になる。どうせ君は振り返らない。
「あ、忘れてた」
 ふと止まった足音に、俺は思わず顔を上げた。君がこちらを振り向いて、にっこり笑う。
「誕生日おめでとう」
 呆然とする俺の視界から君が消える。……忘れてた、なんて言われたら泣きたくなるよ。
 それってつまり、俺よりもあの人の方が好きなんだろう? 俺のことは忘れるのに、あの人のことは忘れないってことだろう?
「あーあ」
 一人きりの教室で溜め息を吐く。――ただ君の傍で生きていければ幸福、なんて幸福論、誰が信じられる?
 たぶん俺の心はもう限界だ。いつまでも君といられると思っていたあの頃が懐かしい。
 ポケットの紙切れを床へ破り捨て、ポケットのお守りを利き手に持つ。
「もう捨てよう、こんな不幸な幸福論」
 遠ざかる足音、階段を下りて。追いかける足音、階段の上から。
「祐介!」
 君が踊り場で立ち止まる。そして俺はこちらを見上げる君へ一直線に駆けていく。
 ――赤い花が咲こうとも、俺はその手を離さない。

全ての原因は『君の前で不幸になる幸福論』

***
お久しぶりです、唯瀬です。
BLでした、読者の皆さんが騙されていたなら幸いです。BLでした(強調)

次お題→現実トリップ

NO.114 ななみ [URL] 09/11(木) 21:20 IP:119.105.201.195 削除依頼

 
 暑くもなく寒くもなく。強い風が吹くこともなく。かといってじめじめしているというわけでもなく。適度に暖かい。今は秋なのに、まるでこれは春のようだ。
 普段着ることのない、白い女の子らしいワンピースが、そよそよと時折吹くそよ風に揺れる。なんだか気恥かしいけれど、こういうのが嫌いというわけではない。むしろ好きだ。だから知らず知らずのうちに、わたしの頬は緩んでしまう。もちろん靴も、ワンピースによく似合うベージュのパンプスだ。
 うんと女の子らしい気持ちになったわたしがいるところは、色とりどりの小さな花の香りが鼻腔をくすぐる、お花畑。うざったくないほどの量の蝶が、あたりを飛び回っている。蜂がいるかもしれない、と一瞬考えたけれど、こんな平和な場所にそんなものがいるはずもなくて。いたとしても、わたしを刺すなんてことはきっとないだろう。そう直感した。
 ああ、平和だ。地球のすべてがこんな感じだったらいいのにな。わたしはそんなことを思いながら、思いっきり深呼吸する。気付いたら隣には、わたしの好きな人もいて。ワンピースかわいいね、なんて言ってくれる。そうだ、これは彼とのデート。だからこんなに気合の入ったおしゃれをしているわけだ。
 とろとろと、暖かい日差しに瞼が重くなってくる。幸せすぎて。寝てもいい? と聞くと、彼は膝を指さしてくれた。わたしは甘えて、彼の膝枕のお世話になる。

 ゴン。鈍い痛みがわたしを襲った。意外と骨ばんでいるな、と彼を見上げようと目を開けると、そこは数学の授業の真っ最中の教室の中だった。ああ、妙に現実的な夢だなあ、と思いながらわたしは再び目を閉じた。頭の痛みももう気にならない。

――

次のお題は「メドレーは気の済むまで」

NO.115 あわ 09/12(金) 01:24 IP:210.153.84.104 削除依頼
俺には変な、習慣があった。そしてそれを公言したのはたった一回切り(これから先も恐らく公言しないだろう)であり、彼女とは結婚出来る、そう自負していた26歳の秋の事である。当時は酷く傷付いたものだが今思い起こせば、失笑さえ漏れる可愛らしい思い出の1つになっている。
広葉樹の葉が落ち始めて、すっかり冬の気配さえも孕んだ風が吹き抜ける秋晴れのあの日。俺は彼女を自宅に呼んでいた。珍しく俺達は、付き合っていても相手の領域を侵すのを双方躊躇った為に同棲はしてはいなかった。
「正臣、」
「外は寒かっただろう」
 マフラーを巻いて、鼻の頭を赤くして玄関先に立つ彼女は俺の部屋の暖かさに喜びながらヒールを脱いだ。リビングに通すと、彼女はコンポから流れ出すメロディーに気付く。いい曲だね、と。少しして曲が終わらぬ絵うちに別の曲が流れ始めて、彼女は俺に問う。
「これ、メドレー曲?」
「一応、俺が編集したんだ」
「へー、正臣凄いのね。あ、これがジャケット?」
 手に取ったCDのケース。表は何も描かれていないもので、ひっくり返して裏面を眺めた彼女の表情は徐々に強張っていった。発した声は、何故か掠れていた。
「何……これ」
 差し出されたCDケース。別に何も変わりないじゃないか、と云うが彼女はそれでは納得しないらしい。
「……これ、全部女の人の名前だよね」
「そうだよ、あ」
「何」
「奈津美の曲だ」
彼女は眉を顰めてこちらを見詰めた。いや、今のは少し言葉足らずだな。言う言葉を考えているうちに別の曲へ変わる。
「あぁ、ほら今度は君のイメージソングだ。曲のテンポ、使われる楽器が君によく合っているだろう?」

 頬を叩かれ、唖然とその場に独り立ち尽くす俺の足下に、今まで付き合ってきた女のイメージに合わせた曲のメドレーが入っていたCDケースが無残な形で落ちていた。

◎お題は、面影に隠された

NO.116 らた 09/12(金) 09:56 IP:121.111.231.21 削除依頼
―面影に隠された

あなたがいなくなって
どれほどの月日が
止まることなく
流れていったことでしょう
あなたがいなくなって
どれほど残酷な胸の痛みを
感じたことでしょう

朝の光
木漏れ日
ふわり髪を揺らすそよ風
青く広く澄み渡る空
それでも小鳥たちは
唄ってはくれない

何かが欠けた日常

面影に隠れるあなたは
いまどこにいるの
なにをしているの
だれが傍にいるの
生きているの
呼吸をしているの
わたしのこと
忘れないで
いて
くれているの

涙は枯れきったように
頬には暖かい風しか感じず
何度も壊れるように崩れた
この心は
もう修復もきかないらしく
ただ痛いだけで

「いっそのこと、大嫌いになりたい」

そんな嘘を吐いて
わたしは報われるかな
面影にぼやけて残る
あなたの顔は
悲しむのかな

ならば

「いっそのこと――・・・」

叫んでやろうか
だいすき だよ と
何度でも、叫んでやろうか

そして
喉が枯れて
もう二度と
わたしの声が
聞けなくなると
言えばあなたは
焦った顔して
それから
ばかだね、と
わたしの好きな困り顔で
言ってくれるのかな

最後の言葉は
あなたに贈る
愛してる が
いいよ

面影に隠された
あなたの笑顔
想うたび、
わたしがこんな
気持ちになっていること

あなたは
いつまでも
知らないままで

いいよ。

(、もう、困らせたりしないから)
(、ね、どうかしあわせに)

それだけを願うよ


* わあわあ長くてすみません;
 こんなやつが参加してごめんなさい
 素敵なスレですね(∀)!

nextおだい

届かないと、知りながら


NO.117 柳井 和 [URL] 09/13(土) 19:46 IP:124.255.179.232 削除依頼
届かないと、知りながら

『みっちゃん、元気にしてますか?
ピアノ、あいかわらずつづけてますか?
みっちゃんのひく、「ノクターン」は、ぼくの心の中で、今でもひびいてます。
早く、また、みっちゃんにあいたいです。』

――懐かしいな。

僕の机から出て来た一通の手紙。まだ切手の貼られていない、出し損ねの、手紙。
もし、今みっちゃんにこの手紙を送ったら、みっちゃんはどんな気持ちになるんだろうか。
拙い文章に、笑ってくれるかなぁ。何で連絡くれないの、と怒るかなぁ。
それでも本当は、
この手紙が届かないことを知ってて、悲しむだろう。

みっちゃん、僕は君に逢いたい。
最後の我侭、聞いてくれないかな?

その時、何処からか『ノクターン』の音色が聞こえた気がした。


*************

こんばんわ!
皆さんレベル高いですね((゜Д゜;)))
こんな若輩者が此処に居ていいのか、って感じです←
次のお題は↓
「ロスタイムは二分」
サッカーと関係なくていいです!!私が好きなだけです(殴
続いてくれたら幸いです。

NO.118 日向 葉 09/28(日) 16:10 IP:220.215.89.226 削除依頼
ロスタイムは二分

 ――ああ、なんて陳腐なことだろう。

 私は私が嫌いだった。何をしても巧くいかない。才能もなく、頭だってよくない。
 なによりも、両親に見捨てられたのが理由だった。
 小学生だった私の頬を大きな父の手がぶち、母は、冷酷な視線で私を完膚なきまでに壊してくれた。
 それを悲しいと思ったのは、たった二分。それが辛いと感じたのは、二分もの間。
 そのなんとも長い二分を私は『人生の恥』と呼ぶ。
 だから、決めたのだ。今この瞬間、決めたのだ。後の二分を私が満足するものにしよう、と。
 「……でも、何をしようか」
 何もない私の部屋。私の声だけが、虚しく響いた。
 友達なんかは居ないし、何かを残そうとも思わない。もしかしたら、何もしたくないのかもしれないとも思った。
 ――だったら。

 「もう時間だ」
 まるでどこかに出かけるみたいに、私は呟く。それが可笑しくてちょっとだけ笑って、そして立ち上がる。
「父さん、母さん。恨んではないから」

 何もない私の部屋。私がいなくなった後に残ったのは、ゆらゆら揺れる醜いものと、作りかけのカップラーメンだけ。

 

ーーーーー
どうも、はじめまして、こんにちは。
すてきな企画だったので参加させていただきます。
とても爽やかな作品の後にこんなので良いのかと迷いつつ投下。
後悔はしませんよ。後には引きませんよ。
ということで、つぎは『飛び込んだ海は、コバルトの夢だった』
よろしくお願いします

NO.119 桐野芹 [MAIL] 10/05(日) 01:35 IP:219.103.3.40 削除依頼

「こうやって見下ろすと、飛び降りても普通に着地できそうな気がする」

そういってベランダにもたれかかると、彼は見たことも無い眼差しを私に向けた。

不安そうな表情の奥には、探るような、軽蔑を含めた冷ややかな目つき。
全身の毛穴が開いた気がした。

「落ちんな。そんなこと絶対ないから」

厳しい口調でそう言って、私の腕を掴む。
強い力でその腕を引っ張られた。
胡坐をかいていた彼の足の上に座る。

「こんな校舎、お前が飛び降りるのに相応しくない」

耳元でそう囁かれた。
ぞっとするほど甘やかな声だった。

「あたしが飛び降りるに相応しい場所ってどこ?」
「プール」

すぐ後ろにある彼の胸を肘で小突いた。
私の腕を掴んだままの彼の腕の力が強くなる。
鼓動が早まりすぎて、痛みさえ感じた。

「あたしはあんな塩酸臭いところ、やだ」
「じゃあなんで俺の前で飛び降りる、なんて単語遣うの? 」

引き戻して欲しいんだろ、とまたしても耳元で、
今度はとびきり冷たい声で、伊田スイミングスクールのコーチは囁く。

「自惚れないで。」

私はそれだけ言い捨てて、彼の元から離れた。
抱きしめられた。 そう思った後にはもう遅くて、
柵を越えてベランダから突き落とされた。


花壇の青々しげった芝生が一瞬でも海に、水に、見えただなんて口が裂けても彼には言えない。

たとえそれが夢の中のことだったとしても。

そう思って私はまた目を閉じた。
さっきまでこの目で鮮明に捉えていた青色は、もう掠れてしまっていた。

//飛び込んだ海は、コバルトの夢だった



NO.120 桐野芹 [MAIL] 10/05(日) 01:40 IP:219.103.3.40 削除依頼


何度目の参加だろう。
今更ながら大好きです、この企画。

素敵なお題でとっても楽しかったです。
無理矢理海とかに結びつけちゃってます。


次のお題 → 鼓膜を擽る声、鼻腔を掠める香り。

NO.121 ななみ [URL] 10/05(日) 12:05 IP:119.105.201.195 削除依頼
//鼓膜を擽る声、鼻腔を掠める香り。


 わたしは、目をつむっているときしか、きみをきみとして認識できない。

 一か月ほど前だろうか。わたしは、トラックにはねられ、大がかりな手術を受けたらしい。幸い命は取り留めたけれど、わたしの記憶から、大好きだったという彼の存在は消えていた。初めての面会で顔を合わせても、彼の頬を伝い落ちる純粋な涙を見ても、わたしは誰? と首をかしげることしかできなかった。それは、今もおなじこと。だけどなぜか、彼はそんなわたしにあきれずに、こうやって会いに来てくれる。でもわたしは、まだ彼のことがよく分からない。どんな人なのか。なぜわたしが、好きになったのか。

「おはよう。えっと、元気?」
「うん」
 
 まだ安静にしていることが必要なわたしは、元気なのにもかかわらずこうやって部屋のベッドに横たわっている。そしていつも、学校を終えた彼はお見舞いに来てくれる。

「おれのこと」
「――ごめん、まだ分かんないんだ」
 顔を伏せてそう答えると、彼は何にも悪くないのに、そっか、ごめんな、と小さく笑う。そんなときわたしは、目を閉じる。彼の顔は見えなくなるけれど。

「髪、伸びたね」
 
 耳を掠めるきみの声。ふわりと香るきみだけの香り。

「うん。たまには長いのもいいでしょ?」

 目を閉じて、きみの存在を視界から消し去るとき、わたしの中にきみが戻ってくる。

――

よく分からないものですみません…
次のお題は「ぐしゃぐしゃに丸めたテスト用紙」

NO.122 眞鍋とら 10/05(日) 14:01 IP:219.111.143.78 削除依頼
ぐしゃぐしゃに丸めたテスト用紙

月並みに部屋の掃除なんてものをしてみた。
自慢じゃないが、この部屋を与えられた小学5年生から今までの間、掃除や片付けはしたことが無い。部屋の模様替えなんかはそもそもやる意味が解らないし、別段汚れたこともなかったので、自ら進んで掃除などをする必要性もなかったのだ。

ベッドの下から始まって、本棚の隅までの掃除を終わらせた後、最後に取り掛かったのは8年間お世話になった机だった。自分で言うのも何だが俺は掃除が上手いと思う。教科書やらプリントやらですっかり埋もれていた机も、10分足らずで元の姿を取り戻した。残るはあと一ヶ所。引き出しだ。上から順番に開けていくと、三段目に一枚の紙切れを見つけた。幾分古いのか既に色褪せていて、それに随分乱暴に丸められている。

そこには下手な字で書かれた自分の名前。
一気に追慕が溢れ出す。何の変哲もないテスト用紙だ。きっとこの時の俺は、明日に出発を控えていて少し感傷的になっていたのだと思う。そうじゃなければ、こんな風にみるみるうちに文字が歪んでいくようなことにはならない筈だ。

NO.123 眞鍋とら 10/05(日) 14:04 IP:219.111.143.78 削除依頼
素敵な企画だったのでこっそり参加させていただきました。
こちらの手違いで2レスになってしまい、すみません。
投稿されている作品はどれも本当に素晴らしいものばかりで
創作意欲に詰まったときに時々覗かせてもらっています。
また参加したいなんて思いつつ。

次のお題、かすれた写真

NO.124 ななみ [URL] 10/09(木) 17:03 IP:119.105.201.195 削除依頼
//かすれた写真


 よく晴れた日曜日の朝。ふと思い立ち、わたしは部屋の掃除をし始めた。まずは小学生の時から今に至るまで、お世話になっている学習机のひきだしを整理することにした。懐かしいプリントや、テスト用紙がどっと溢れ返ってくる。長い間開けもしていなかったのだから、当然のことだろうけれど。わたしは誰もいないのに、一人で苦笑し、一枚ずつプリントを撤去していった。最終的にはつかめるだけ手に持って、紙袋に突っ込む。面倒くさがり屋なんだからしょうがない。――そうやってプリントを捨てる作業をしていると、残りもあと少しになってきた。ふう、と息をつき、引き出しの中を覗き込む。するとそこには、一枚のかすれた写真があった。

「……あ」
 
 かすれた写真の中で笑う彼女は、小学生の時に死んだわたしの親友だった。凄く悲しくて。プリクラもなかったあの頃は、この写真がただ一つの、わたしにとっての彼女の形見となった。ずっとずっと、これをお守りとして持っていようと思っていたはずなのに、数十年後の今日、こんな汚い引出しの奥の方で発見された。人の記憶なんて、しょせんそんなものなんだ、と改めて実感する。所詮わたしは生きているのだから、ずっと死んだ彼女を思っていることはできないのだ。
 わたしは、すでにかすれてしまっている写真の表面についた、ほこりを払い、彼女の写真を机の上にそっと置いた。

――

次のお題は「十月十日は、何の日でしょうか」

NO.125 雛向 莉嗚* 10/09(木) 19:31 IP:125.55.95.138 削除依頼

「じゃんじゃーん、問題でーす」

 行き成りクラッカーを取り出した僕の彼女の名前は大崎真琴。ブラウンの癖っ毛の髪を二つに束ねている、かわいらしい顔立ちをした女の子だ。ぱっちりとした二重の瞳に薄い唇、すーっとした鼻筋。一目惚れしたのは僕で、告白したのも僕だ。けれど、今、僕にベタ惚れなのは彼女自身である。しかし、僕は彼女とは対照的である。性格も明るくないし陽気でもない。そんなに格好よくもないし、近頃の男に持っているものを全く持っていない。其れなのに、何故彼女はこうやって笑みを浮かべてくれるんだろうか。と、不思議に思うことがある。
 そんな地味な僕が、本を読み耽っていた時に声をかけられたので、大変吃驚した。ここからが僕の悪い癖ですぐに不機嫌になってしまう。

「……さあ」

 首を少しだけ傾けると、また僕は文字を追うことにした。すると、彼女は頬を膨らませ読んでいた本を没収し、視線をまっすぐ僕に合わせる。
 別段、僕の部屋だし何ら問題も無い。本といえば図書館というイメージだろうが、あんなくさい空間に彼女をおいとけるはずがないのだ。だから、決まってデートといったら互いの家である。

「もう、なんでそうやってデリカシーがないの? いいもん、思い出すまであっち向いてるから」

 ふんっ、と鼻を鳴らして違う方向を向いている。本はまだ彼女の手の中だ。さて、如何したものか。彼女の機嫌を直した方がいいのか、其れとも何をすればいいのか。とりあえず、僕は回って彼女の正面に行くことにした。そうして、深く土下座をした。

「御免、判らない」


NO.126 雛向 莉嗚* 10/09(木) 19:32 IP:125.55.95.138 削除依頼
 怒られるかと思い身を固くしていたらはははと、彼女は高く笑った。目頭には涙が浮いており、お腹も抱えている。若しかして、いや、若しかしなくとも大笑いをされた。

「な、なんだよっ」
「いやあ、やっぱりなって思って。謝ってくれて、嬉しかったよ」

 ふんわりと微笑む彼女に胸が時めく。嗚呼、こんなにも愛らしいと感じたのは久しぶりだ。僕は何も考えずに、彼女の唇に触れていた。それは、ほんの軽いキスデ彼女も何のことか判らずにきょとんとしている。僕も頬を真っ赤に染め上げる。彼女の反応は判らなかったが、恐らく引いているだろう。現実に醒めたかもしれない。こんな男にキスをされたら誰でも気持ち悪がるだろう。
 でも、僕の自己満足でよかった。少しでも楽しい時間を過ごせたから。そう思った矢先だった。彼女の体温が体中に伝わってきたのは。

「今日、十月十日はなんの日でしょーか」
「……」
「正解は、付き合ってから一ヶ月目の記念日、そして……」

 耳元にささやかれたワードは、そう、僕らだけの秘密。

*「十月十日は、何の日でしょうか」

 2レスにわたっての駄文失礼致しました。あ、この企画に参加したのはななんとなく久しぶりでしたね。
 それでは、次のお題は「あいつの心を奪っちゃえ!」
 あらま、ダメなお題ですみませorz

NO.127 あえての 10/19(日) 23:21 IP:211.132.104.99 削除依頼

・あいつの心を奪っちゃえ


目を閉じると、一気に渇いた目が潤うので、痛い。擦り傷の上に水がかかったときと少しだけ似ている。
沈黙が嫌いだ。そのくせ、自分はあまり口を開かない。だから、自分が嫌いだ。沈黙は、僕だ。
静まりかえった家の中に、美しい音楽が空気にとける。柔らかい金管の音と、ピアノの優しい音。それは、父がいつも車の中で聴いている曲で、僕も小さい頃から知っていた。最近あまり口をきかなくなったけれど、やっぱり今も車の中で聴いているらしい。微かに、父の車の独特な臭いがする。
何度も何度も聴いたメロディーを、もう一度耳の中に閉じこめる。そのメロディーは、僕の頭の中にまで響いて、汚い汚い部分を消してくれるだろうか。
自分の唇に触れる。あまりにも気持ち悪い行動で、僕は血の滲むほど唇を噛んだ。鉄の味。泣きたくなる。

「……みさき」

幼なじみの名前を口にして、やっぱりそうだと確信する。
一方的な想いなのは、分かっている。彼女には、もうすでに男がいる。おしゃべりな彼女は、嬉しそうにそのことを話してくれた。
みさき。平仮名の名前が、とても愛しい。悲しい。
僕は静かに目を閉じる。その行動は、ただの若さからくるものなのか、ただの彼女への気持ちからなのか。
ゆっくり目をあけて、曲の題名をふと見た。

「……あいつの心を奪っちゃえ…?」

今まで聴いてきた優しい音楽が、こんな題名だとは思っていなかった。少しだけ、笑みが零れる。
すぐにみさきの顔が思い浮かんだのは、やっぱり好きだからだ。
僕は、姉が家を出て行くときに置いていった大きなパンダのぬいぐるみを、潰れるくらいに握りしめる。

「……みさき」

呟く。いつのまにか、そのメロディーは止まっていた。ぬいぐるみの長い毛が指の間に張り付く。
さっきの曲のメロディーを思い出しながら、僕は彼女を想った。

 
 
--------------------------------------

NO.128 あえての 10/19(日) 23:22 IP:211.132.104.99 削除依頼

お……わりかたが…ごめんなさい。
素敵な御題でしたのに……
……気を取り直しまして!←
次は、「現実ピエロ」でお願いします。
変な御題ですいません;;
続くことを祈ります……!!←
では!

NO.129 ななみ [URL] 10/20(月) 21:17 IP:119.105.201.195 削除依頼
//現実ピエロ


 縦に並ぶ文字を追って、続きを読むために白いページをめくろうとした瞬間、ちらりと視界の隅っこに、現実世界で生きるピエロのようなクラスメイトが入り込んだ。視線が合ったような合わなかったような。どちらにせよ、わたしは再び物語の世界へと入り込んでいく。わたしのまわりでは、男子が騒いでいたり、女子が笑っていたりするけれど、わたしにはまったく聞こえやしない。すでにそれらは、わたしにとって違う世界のものだからだ。どうでもいい、と言えばこのニュアンスが伝わりやすいのだろうか。
 
「さっすが愛理ちゃんだよーっ。めちゃくちゃ可愛いね、その髪型! よく似合ってるーっ! いいなあ、まじで羨ましいよ!」
 
 主人公と友達が、これからどんな冒険を繰り広げていくのか、見届けようとしたとき。騒音の中から浮き立って、自ら率先してわたしの耳に入ったかのように、高い声が聴覚神経を刺激した。松宮愛理という、クラスでリーダー気質を大いに発揮している少女が髪を切ったことをべた褒めする、少女の声。――やっぱり、あの子はピエロみたいだ。現実世界の波にのまれないように、必死になって綱渡りをする、ピエロのような子。

「まじでっ。美穂は優しいねえっ、相変わらず! さっすがあたしの友達だよーっ」
 松宮が天狗になり、そう言葉を発すると、彼女を取り囲む輪の中から、どっと可愛らしい笑い声がわく。ひときわ目立つ、えへへえ、という園田美穂の声。吐き気がする。かわいそうになって。みじめで、哀れで――馬鹿みたいで。持っている本を投げつけてやりたい衝動にかられる。わたしの読書を邪魔したこともそうだけれど、わたしは園田のピエロみたいな生き方が分からない。だから――現代風の言い方をすると――ムカつくのだ。


NO.130 ななみ [URL] 10/20(月) 21:17 IP:119.105.201.195 削除依頼
「ねえねえ美穂? 美穂って由里たちとも仲いいじゃない。なんかあたしの悪口言ってたりしたあ?」
「……えーっとね。由里ちゃんが愛理ちゃんのこと、ぶりっこしてるって」
「はぁ!? アイツ意味分かんねえ」「ほんとだよ」「由里の方がぶってんじゃん」
 ――あとできっと、園田は星野由里たちにも、松宮らが悪口を言っていたと告げ口することだろう。あっち側とこっち側を、一本の綱で行ったり来たりして。いつ切れるか分からないのに、こんな綱。楽しそうな笑顔して、本当は涙を流しているくせに。本当に馬鹿みたいだ。
「美穂はあたしの味方だよね?」
「うん、当たり前じゃん!」
 嘘をつくことでしか生きていけない。
 馬鹿じゃねえのか、とぶん殴ってやりたい衝動を必死になってこらえ、わたしは静かに立ち上がった。近くにいた男子たちが、わたしを見てスペースを少しだけ空ける。わたしは、なんとも素敵な笑顔を浮かべる園田愛理を横目で一瞥して、本を片手に屋上まで向かった。

――

次のお題は「よそ見をするだなんて、百万年早いのよ」


NO.131 沖本 [URL] 10/22(水) 01:20 IP:210.139.117.150 削除依頼

よそ見をするだなんて、百万年早いのよ


「――ちょっと!」
 横目で窺うと、背筋をぴしりと伸ばした状態で助手席に納まった彼女の顔は、驚くほど険しくなっている。肩の辺りで素直な黒髪が揺れた。
「ん」
 左から聞こえた声に短く返す。
「「ん」じゃないわよ。……はい、人と話すときは相手の眼を見る」
 言いながら手を伸ばした彼女に、顎を掴まれた。
 半ば無理やりそちらを向かされる。整った顔を眺める。怒っていても美人は美人だなあ、などと考えた。彼女は視線が合ったことに満足そうに頷く。顎が解放された。
「何?」
 首をかしげながら尋ねると、視線を逸らされた。
「いや、なんとなく呼んでみただけなんだけど」
「んー。……暇なの?」
 目を僅かに見開いた、その顔がわずかばかり上気した。顔を前に向けながら、そうだなあ、と一人ごちる。
 照れたからだろう、
「なっ、何言ってるのよ!」
 怒涛の口撃を半ば聞き流しながら、
「あ、えーと、ああそう! 単に緊張をほぐそうとかっ!」
 反対車線を流れる車を眺めたりしていると再び、肩を軽くはたかれた。

「ちょっと! 信号変わっているわよ!」
「え? ああ、本当だ」
 慌ててハンドルを握りなおす。
 なんてったって、僕はまだ若葉マークなのだから。



 お久し振りです。ツンデレ要素が足りないと知人に言われました。
 次題「眠りとの駆け引きのあとに」

 ついでに、と言ってはあれですが、纏めサイトのほうアドレスが変更されましたことを報告しておきます。URLから飛べます。

NO.132 いつか 10/22(水) 21:18 IP:61.245.83.9 削除依頼


「もう寝た?」
「うん」

あなたはわたしをいつも支配してた。あなたの声はわたしの耳をいつも支配してた。あなたの笑顔はわたしの脳をいつも支配してた。あなたのキスはわたしの心をいつも支配してた。
わたしもあなたを支配してみたかったと思うのは、ただのわがままなのかな。

「……じゃあいい、」

あなたの優しい声が胸に突き刺さる。ぐっと胸をわしづかみされたような、そんな感覚を感じる。
何でそんなに優しくするの。こんなあたしでも誇りぐらい持ってるよ。羽毛布団を頭まで被って、寝返りをした。ソファの上で寒そうに布団を被って寝ているあなたの姿が見えた。

「嘘だよ、寝てない」

あたしは小さく呟いた。
真っ暗の部屋はあたしの希望だとか願いだとかを全て飲み込んでしまいそうだった。それが怖かった。あなたの家に泊まりたい、とわがままを言ったのはあたし。なのに何でこんなに息苦しいんだろう。
ねえ、何か言ってよ。これで最後なのに。布団が濡れる前にあたしは涙を拭った。

「ねえ、……」

変わらなきゃいけない。分かっていたはずなのに。あなたを愛していたって、あたしは傷つくことしかできないのだ。あなたを愛していたって、あたしは幸せになんてなれないのだ。何度確かめたって、変わらない事実。あたしは分かっている。ちゃんと分かっている。なのに。

「おやすみなさい、」

あなたの声が聞こえた。
明日はあたしが言おう。あたしがあなたより早くに起きて、あたしがあなたより早くにおはようと言おう。そしてあたしからキスをしよう。あたしの証を、あなたに全て捧げよう。
それが例え、酷く残酷な現実だったとしても。



/眠りとの駆け引きのあとに


はじめまして。
素敵なお題を見事にするーしちゃっててごめんなさい……。
素晴らしい筆者様ばかりで、あたし完全に浮いちゃってますが
次のお題は「しあわせが似合わないヒーローの結末」で宜しくお願いします、。
素敵企画に参加させていただきありがとうございました、

NO.133 ななみ [URL] 10/22(水) 21:44 IP:119.105.201.195 削除依頼
//しあわせが似合わないヒーローの結末


 彼女はクラスで少し――いや、かなり浮いている。少し古い言葉で言うと、一匹狼というやつだろうか。今も友達としゃべりながら、ちらりと彼女を見ると、彼女は一人で文庫本を読んでいた。本の中に完璧に入っているというようにも見えない。なんだか、わたしたちとはどこか違う世界にいるような。そんな気がする。文庫本が面白くないのか、それとも彼女にそんな感情がないのか分からないけれど、今も彼女の表情はつまらなさそうだ。
「ねえ聞いてるー?」
 彼女のことを考えていたら(もちろんわたしに、そういう趣味はないが)、友達に不審そうな顔をしてそう問いかけられた。
「うん、ごめん、聞いてるよ!」
 だからわたしは、友達の機嫌を損ねないように、にこりと笑ってうなずく。

 わたしの所属する二年B組には、いじめられている子がいる。仲が良さそうなグループなのだけれど、それは表面上のことであって、その中で今ひとりの子がいじめを受けているのだ。そのことは今話している友達の情報網による。だからわたしは特に首を突っ込むことはしていない。いじめられている子とかかわりがないし、それに何より報復が怖い。

「見て」
 友達に脇をつつかられ、そちらの方を見ると、例のグループが固まっていた。
「あ……」
 とわたしは思わず小さな声を漏らす。
 にこにこと笑った女子三人が、気の弱いその子に対して、買い物を頼んでいた。頼むというよりも、命令と言った方が正しいかもしれない。
「ねえいいじゃん、コンビニ近いんだしさあ」
「あたしポッキーね」
「え、でも……お金もないし、それにもうすぐチャイム鳴るし……」

NO.134 ななみ [URL] 10/22(水) 21:44 IP:119.105.201.195 削除依頼
「そんなのあんたならどうにか出来るでしょー」
 何が面白いのか分からないほど、けらけらと楽しそうに笑うその子たち。カチンときたけれど、動くことはできない。友達と視線を交わしていると、不意に視線の隅にうつっていた彼女が、静かに文庫本を伏せて立ち上がった。思わず彼女の動きを追うと、彼女は迷わずそのグループに近寄って行く。何? という目で彼女を射るいくつかの視線。うつむいていた子もかすかに顔を上げる。そして彼女が口を開いた。綺麗な形をした唇が動く。
「あのさ、あんたたちそんな小学生っぽいことやめたら? 学校終わったら買いに行けばいいと思うんだけど。それにほらその子、困ってる」
 彼女は綺麗な声でそういうと、無遠慮にうつむくその子を指さした。白い人差指がすっと伸びる。
「は? 何? あんたには関係なくね?」「うざいよー」
 そんな悪意のある言葉に屈せず、彼女はすっと、いじめられていた子の手を取った。驚いたように彼女を見る。
「屋上行かない?」
 それだけ言うと、返事を待たずに彼女は背筋を伸ばし、教室を出て歩き出す。沈黙に包まれる教室内。
「な、なんだろうね……、びっくりした。あの子ってやっぱ変わってるよね」
 友達が、苦笑交じりにわたしに話しかけてくる。わたしの視線は、二人が歩いて行った廊下の先を泳いでいた。
「どしたの?」
「あ、ううん」
 慌てて視線を友達に戻す。どうして彼女らを気にするのか、とでも言いたげな怪訝な表情の友達。
「わたし」「え?」
「わたし、ちょっとトイレ行って来るね」
 わたしはそれだけ言うと、微笑んで教室をかけ出た。損をする性格の彼女に、少しでも幸せになってほしくて、わたしは迷わず二人の向う先――屋上への階段を上る。

――

次のお題は「悲劇のヒロインを気取る会」
 
 

NO.135 つくしみやこ [MAIL] [URL] 10/30(木) 18:18 IP:61.27.60.98 削除依頼
 :悲劇のヒロインを気取る会


「もー、ほんっと最悪なの!」
「なにが?」
「なにがって…ばか!川畑先生だよ、
 ちょっとの忘れ物で2時間も説教。おまけに反省文10枚だってー」

 放課後の教室、いきなり半べそでドアを思い切り開けたと思ったら、優花はそのまま大きな声で叫んだ。最悪だ、と。最も悪い…そんなに? ふーん、なんて適当に僕は相槌をしていると、「修哉ひどいっ!なぐさめてくれたっていーじゃん!」と叫んでばたばたと教室を去っていった。
 そしてそれとすれ違うかのように今度はリンが「あ、修哉じゃん。ちょっと愚痴聞いてー」と僕の前の席に座った。大きく足を開いて、後ろ向きに。女の子が…こらこら。

「彼氏がお前女らしくねーぞってうるせーの!
 あたしはあたしだっつの、ねえ?」
「…まずはその足閉じたら?」
「は?」
「椅子の向き変えるとかさ。ほら、色々あんじゃん」
「あんたも隼人みたいなこというの?がっかり。あたし帰る」

 そう言ってリンは僕の前で舌打ちをしてから帰った。わざわざ。あー、めんどくせー。でも僕は間違ったことは言ってない。間違いない。うん。
 やっと落ち着いて宿題ができると思ったら、また人が来た。次はだれ?また僕に文句とか言いにきた?

NO.136 つくしみやこ [URL] 10/30(木) 18:20 IP:61.27.60.98 削除依頼

「あ、佐々木くんだ」
「田中さん、」
「何してるの?」
「宿題、おわんなくって」
「そっかー。偉いね」
「そうかな?」
「そうだよ。私はいっつも提出期限遅れて怒られてるもん。
 その宿題、来週までなのにもう終わらせようとしてるの、偉いよ」
「…暇、だしね」

 褒められると、照れる。しかも田中さんは冗談とかでそんなこと言わない人だって知ってるから、余計に。

「そんな佐々木くんには、チョコ、あげるよ」

 はい、と渡されたアルファベットチョコレート。文字はD、ってそんなことどうでもよくて。

「あ、ありがとう!」
「いいえ、どういたしまして。勉強頑張ってね、じゃーねー」

 重そうな鞄を背負った右手で、僕にさよならと手を振ってこの放課後の教室を去った。やっと静寂。これで宿題もできる。それにしても、やけに色んな人が僕を巻き込む日だ。もらったチョコレートを口に放り込むとやっぱり甘くて、最初の2人にもこんな優しさがあればいーのに、と思った。ははは。
 うん、こんな放課後も悪くない。

***

初めまして、つくしみやこです。
この企画、すごく長く続いてますねー。
愛されてるんですね^^!
参加できてしあわせですー。
そんなわけで、次は「指の先までまっかっか」でお願いします。

NO.137 唯瀬 11/02(日) 21:17 IP:221.253.130.220 削除依頼
 木枯らしが吹いている。
 荒んだ景色に、恋人たちがいる。寒いと言った彼女が両手をこすり合わせると、彼がその手を、その大きな手で包み込む。
 彼女が笑う。彼が照れくさそうにして、彼女の小さな両手を優しく握りなおす。
 木枯らしが消えていった。
 冷え切った空気の中に、一人ぽつんと僕が立っている。
 見上げた夜空は真っ黒で、それはまるで世界の中心がここであるかのように感じられた。
 痛めた喉からは声も出ない。閉じた両目に季節外れの花火が見える。
(ああ、もう誰もいない。車さえ通らない時間だ)
 再び木枯らしが舞い上がる。
 しっかり防寒していなかった身体は震え、左右の足が凍えだす。
 はあ、と吐いた息は白く散って、久しぶりに動かした指に妙な痛みが走る。
 俯くと、その手はすっかりかじかんでいた。

――指の先までまっかっか。

*****
寒い季節です、みなさま風邪など引かれませんよう。
次お題:デジャヴな明日

NO.138 ななみ [URL] 11/02(日) 22:46 IP:119.105.201.195 削除依頼
//デジャヴな明日


「すすす好き、なんだけど……!」
「え?」
 
 放課後の裏庭。二人きり。黒いきれいな髪が、風に揺れる。季節はもう冬に差し掛かった秋。風はとても冷たいけれど、わたしの頬はとても赤く、そして熱を持っている。片思いの相手への告白。ちなみに告白するのは、今までの中で四度目だ。今まではすべて玉砕してきた。おそらく、すべて同じ理由で。だから今度こそ、今度こそわたしは、幸せを掴んでみせる。今までよりも真剣な瞳で、相手を見つめる。すると彼は、一瞬びくりと肩を震わせた。顔は青い。また嫌な予感が、わたしをとらえる。

「ええ、え、っと、俺?」
 彼のおびえたような一言に、心を痛ませながらもこくりとうなずく。きっとさっき見つめたのは、にらんだのだと勘違いされてしまったのだろう。それもしょうがないことかもしれない。なぜならわたしは、全校生徒に恐れられているのだから。家はいわゆるヤのつく一家だし。女プロレスラーの母親と、組長の父親のDNAか、わたしも馬鹿力の持主だし。現にそれで今までに何人もの生徒を、病院送りにしてしまった。売られたケンカをついつい買ってしまったのが、過ちだった。だから、わたしのまわりには誰も近寄らない。本当は友達もいっぱい作って、楽しい学校生活を送りたいのに。いつの間にか近寄ると、にらまれて因縁をつけられ、思い切り殴られて病院送りにさせられる、という噂さえできてしまった。わたしだって恋くらいするのに。普通の女の子なのに。


NO.139 ななみ [URL] 11/02(日) 22:47 IP:119.105.201.195 削除依頼
「あ、あの、俺」
「……返事明日でいいから」
 すっかりわたしに脅えている彼から、目をそらして、わたしはそれだけ言うと駆け出した。待って、という言葉さえ追ってこない。やっぱりわたしは、嫌われている、怖がられているんだ。その事実をまたも改めて目の前に突きつけられ、なんとも言えず悲しくなる。明日の結果なんてわかってる。無理、とおびえた声で言われるか、何事もなかったかのようにまた無視されるか、のどっちかだ。ふう、とため息をつく。この動作でさえ、周りから見たら、怖い動作とうつるのだろう。全く、悲しさを通り過ぎて笑いたくなってしまう。
 明日のことは、もう何度でも頭の中で描ける。未来のことなのに、すでに決まってしまっていることだから。



次のお題は「世界で一番」

NO.140 ひじり 11/07(金) 00:34 IP:59.171.235.249 削除依頼
 鏡に銃口を押し当てた。これはそこら辺のおもちゃ屋で買ってきたパチもんで本当に弾がでないことくらいしっていたけれど、それでも殺せると思った。
俺が強く願うなら、俺が本物ならばこんな悪夢は破れるはずなんだ

だけど、きえない、鏡の中

パンパンと、薬莢倉のまわる音が耳に響く、無駄だとそれにすらあざ笑われてるようで俺は銃を捨てた。
そっと傷もついていない鏡にふれる、同じ動きをせずに鏡は俺の腕を掴む。俺は嫌々と手首をふるが鏡の戒めははずれてくれる様子はなかった。

世界で一番は。

嫌だった、こっちの世界が本当なはずなのに、取り込まれてしまう感じが嫌だった。
ぐい、と鏡にのめりこむ感触がして思わず俺は鏡の方を見る。まっすぐに俺を見つめる俺の顔
彼が言うには、俺は世界で一番の男で、彼が言うには、俺はそれに成り代わった鏡の中の存在でしかないんだって。
だから今のお前は弱弱しくて世界で一番みっともない、だから早く俺と代れって俺に身体を返せって。
俺は抵抗を緩める、鏡の中の俺がにやりと笑った。
思うんだ。俺は、こんな笑い方する人間は俺じゃないって、世界で一番の人間になんかなれやしないって、俺は世界で一番なんかじゃなくたってイイ。だけど、
鏡に掴まれてる方の手にもっていたカッターの刃をぐいと押し出して、鏡につきたてた。

一番は譲れても俺は譲れません


next:幻夢の音階律

NO.141 空越あき [URL] 11/08(土) 22:57 IP:219.98.101.201 削除依頼
緒斗はなににもめげなかった。僕が手帖にメモする際に、緒斗の名前の表記を誤って、「音」と記しても、緒斗は少しも怒らず、柔らかな茶髪を揺らして欠伸混じりに小さく指摘した。
「うん、違う。それじゃないんだ。こっち、こう書くの」
驚くほど白い、小さな細い手が、僕のボールペンを攫って紙面に正しく名前を書いてみせる。目を見ると彼は既になににも興味を示していなかった。間違えられた憤りにも、正しさに固執することにも。それだから僕は余計に恥ずかしくなって、顔を伏せてしまうのだった。
「ごめん。よく歌を歌っているから、絶対これだと思ったんだ」
緒斗は清潔なベッドの上に寝転んで、すぐに軽く寝返りを打った。裸の踝が寒そうだ。緒斗が視線をわずかに上げて、その繊細そうな指でサイドテーブルの上から下がったピラカンサスの赤い実を摘み、淡い色の唇で潰した。おまえは鳩か、と言いたくなる。

NO.142 空越あき [URL] 11/08(土) 23:00 IP:219.98.101.201 削除依頼
緒斗の歌声はうつくしい。この病室に閉じ込めておくにはひどくもったいない。濃密でゆっくりで、いつも彼自身の内側から溢れ出るあらゆる豊満さを表している。こころの広さ、声域、絶対音感、芸術的感性、その他のたくさんの大きさ。見た目は痩せているのに、彼はたくさんの満たされたものを秘めている。僕はそれに惹かれた。
「緒斗、僕と一緒にこないか。ここを抜け出すんだ。道端で思いきり歌ってみよう。すごく気持ちいいから」
緒斗は仰向けになって静かに目を瞑る。透けそうな瞼に、僕は手を置いた。そこはすぐに熱を持ち、熱い雫を滴らせ始める。
僕ははっとして手を離した。緒斗は泣いているとは思えないほど気丈な声で呟いた。
「莫迦を言うなよ。僕はここにいてもあとひと月と保たない身体だよ」
僕はひと月後のことを思い浮かべた。太陽も月も変わらず空へ昇るだろう。けれどそこに、緒斗はいない。まるで幻夢だったとでもいうように、彼は消え去る。僕の脳裏に豊満な歌声の余韻を残して消え去る。目の前の、柔らかな茶髪も、青い目も、白い肌も、僕の呼びかけに震える薄い肩も。どうしようもなく。
「分かってるよ。いちいち言うんじゃない。莫迦はどっちだ。諦めるな」
緒斗は目を開いて僕を見る。
「諦めるよ。僕は幻夢なのだもの。きみだって、知っているでしょう?」
僕は緒斗の手首をきつく掴んで、永遠に離すもんか、と思った。いつか緒斗が白い骨になっても、僕はここから離れられない。歌声を忘れられない。

//幻夢の音階律

初めまして。素敵なスレだなあと思ってこそこそ覗いておりました。参加できてよかったです*
次お題「耳鳴りのあとに」

NO.143 柳井 和 [URL] 11/10(月) 17:32 IP:124.255.180.95 削除依頼
 キーン、と耳障りな音が、私の頭の中を駆け巡る。
 しかし私の周りに何の異変もない。――まただ。これは 耳鳴りだ。
「どうしたの?」
 顔を歪めうずくまっている私の顔を覗き、
 心配そうに幸紀が声をかけた。
「うん、ちょっと耳鳴りがね」
 私は耳をつまみながら、成る丈笑顔を装って答えた。
「そう」少し澄ました顔で、幸紀は言った。
 学校終わりの帰り道は、秋の夕焼け雲が綺麗で、
 セーラー服姿の私たちをオレンジ色が照らす。
「ねえ、こんな話知ってる?」
 風景が墓地に差し掛かったとき、幸紀がにやりとした顔 で訊いてきた。
「あれでしょ、また都市伝説?」
 私が言うと、彼女は、
「図星なんだけど……」
 私は思わず笑ってしまった。幸紀は、オカルトとか、超 常現象に都市伝説と、そういうことが好きな節がある。 なので、『こんな話知ってる?』イコール、『不思議な 話』と私の中で割り切っているのだ。
「で、何なの?」
 私が問うと、幸紀は再びにやりとした。
「耳鳴りがするのって、霊が近くに居る証拠なんだって」
 少し間をおいてから、
「そんな訳ないじゃん、だって私霊感ないし」
 でも、私たちが歩いている道の横には、堂々とお墓が並 んでいる。
 ――まさか、ね。
 季節外れの怪談は、アキアカネとともに飛んでいった。

*耳鳴りのあとに

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二回目の参加です^^
此処、とても素敵スレですね!改めて思います*
さて、次の御題は

「繊細ですから」

で、宜しくお願いいたします。
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NO.144 ひなた 11/24(月) 15:55 IP:115.36.221.185 削除依頼
 

「あ、…それ、覚えてる?」
「それって、これ?」
「うん。それ」

 ガラスの小瓶を指差して、鈴はそう云った。太陽の陽があたり、小瓶がキラリと光った。

「…何かあったっけ?」

 小瓶を陽に照らしながら聞くと、彼女は拗ねたように「ばか。もういい」と云った。ごめん、と僕が呟くと鈴はちらりとこちらを向いた。僕と目が合うと、またふいっと窓の外に目線を泳がせた。


「ねえ、鈴」
「……なに」
「でもこれ、昔どこかで見たことが、あるかも」
「……………そう」
 
 その小瓶に、少しだけ見覚えがあった。相変わらず鈴は外の景色を見たままだけれど、その頬はすこしだけ朱に染まっている気がした。鈴が照れるような、何かがこの小瓶にはあるのだろうか?

 
「……うみ。てがみ」
「え?」
「……うみ! てがみっ!」
「…う、み? 手紙?」

 ──海と、手紙? ヒントだろうか。けれどまったく分からない。見覚えがあるのは確かなのだけれど。
 真剣に悩んだ結果、分からなかったので、僕は鈴に謝──ろうとしたその時、鈴の口がちいさく動いて、言葉を発した。

NO.145 ひなた 11/24(月) 15:56 IP:115.36.221.185 削除依頼

「小瓶の横、みて」
「小瓶の横……これって、紙」
「そう。紙。みて」

 折りたたまれていたそれを開くと、子供っぽい字で、しかも平仮名で「やくそくだよ」と書いてあった。──ああ、思い出した。これは、
 

「けっこんしようね、鈴ちゃん」

 僕がそう云うと、鈴の肩がぴくりと動いた。どうやら正解らしい。「中々思い出せなくてごめん」と僕が謝ると、鈴は「ほんとよ、ばか」と云った。くるりと振り向いた鈴は、言葉とは裏腹に笑顔だった。ひどく可愛いその笑顔に僕はくらりとめまいがした。
 

「ちゃんと守ってよね。その約束も──」

 わたしも。云いながら鈴はふわりと僕を抱きしめる。握り返したその手にはさっきの小瓶が握ってあった。
 それは力を入れすぎると割れてしまうし、力を入れなさ過ぎると手からこぼれ落ちてしまう、とても難儀な物だ──けれどとても綺麗で、透明で、繊細なのだ。

 大切にするよ、鈴。呟いて、僕はやさしく鈴を抱きかえす。壊れないようにそっと、それでも強く、落とさないように。

 

@/繊細ですから

楽しかったです^^
何だか小さい女の子ってとっても可愛いですよね(じゅるり←
2レスになってしまって申し訳ないです;;

次御題は「アリアの歌」でお願いします><

NO.146 桐野芹 [MAIL] 11/30(日) 21:54 IP:219.103.3.40 削除依頼

朝礼。
校長の話が始まる数秒前、
ココアと紅茶を持って彼の隣を陣取った。

「何の真似だ?」と言いたげに彼の表情が苦くなる。
私は紅茶とココア、どっちがいい?と缶を差し出すと
彼はココアを受け取った。

「何考えてる」
ずずっ、と暖かいココアを飲んでから
彼がようやくそう尋ねた。

「いいじゃん。舞台裏なんて誰からも見えないんだし」
「そういう問題じゃないと思うんだけど。
 家のピアノ、壊れたんでしょ。練習できたの?」

うん、と頷いて、彼に指揮棒を渡す。
「お前に渡されなくても、すでに準備中だ」

そう言って彼は学生服の下からマイ指揮棒を取り出した。

「何でここの学校の校歌って宗教的なんだろうな」
「マリア様とかいう単語がごろごろ出てくるからじゃない?」
「マリアじゃなくてアリア。伴奏者なんだからそれくらい覚えとけよ」

彼の小言を「伴奏だから歌詞を覚える必要はないんです」の一言であしらって、話題を戻した。
彼が私と自分の分の空き缶をこっそり舞台のカーテンの裾に隠した。

「宗教的ってたとえば?」
「歌いだしの青空の〜、のあとの部分のさ」

と彼は美しい声を交えて、説明をしてくれる。
彼に歌に関しての質問をすると、こうやってすっと伸びる力強くも繊細な声を聞けるのが嬉しい。

おまけにシャイな彼は、朝礼の校歌斉唱の準備を待つこの時間しか饒舌にならないし。

「校歌、斉唱」

舞台の下で、朝礼司会の数学教師がそういうのが聞こえた。
私と彼は頷いて舞台へと進んだ。

         :アリアの歌

NO.147 桐野芹 [MAIL] 11/30(日) 21:59 IP:219.103.3.40 削除依頼
すっごい楽しかったです!
アリアの歌…じゃないですね、校歌ですね。すいません。
校歌にアリアって単語が入る学校ってどんなんでしょうね。

裾に隠した空き缶はその後ちゃんと持ち帰ってます。←
この企画愛してます。
テスト前に必ず参加しているような気が…。
中毒性が高すぎて困ってます^^(笑

次のおだい
「こっそり食べた、コンビニのおでん」

NO.148 ななみ [URL] 12/04(木) 16:54 IP:119.105.201.195 削除依頼
//こっそり食べた、コンビニのおでん


 買い食いは禁止されている。家でも学校でも。理由は、不明。だけれど私は、きっちりとその決まりを守っている。俗に言う優等生だから。その優等生、という肩書を守るために、私は今日も校則を守る。スカート丈も、靴下の色も、セーターの色も。まわりの友達は、少しの校則違反くらい、と言って短いスカートをひらひらさせたり、紺のハイソックスをはいたりしている。
 茉由はまじめだねえ、とよく言われる。もうそれにも慣れてしまった、入学してから八か月たったある日の放課後。委員会がようやく終わった私は、下校時間をすぎないように足早に学校を出た。寒い。そろそろコートを着よう。もちろん校則に沿った、灰色のダッフルコートだ。はあ、と息をつけばそれは白く、冬の空気中に目に見える形で現れ、どこかへ飛んで行った。早く家に帰って、こたつで宿題でもしよう。そう思い、私は足を少し早める。向かい風が顔に当たり、さらに寒い。手袋をした手で頬を触ると、布越しでも頬の冷たさがよくわかった。

 家に帰る途中の道に、コンビニがある。もうとっくにおでんが始まっていて、今年の冬休みも昼ごはんによく利用するんだろうな、と目の前に見えるコンビニを眺めて思う。先生の話だと、よくこのコンビニに寄り道する不真面目な生徒がいるらしい。私はコンビニからなんとなく目をそらし、足早に前を通り過ぎようとした。しかしそれはかなわなかった。

NO.149 ななみ [URL] 12/04(木) 16:54 IP:119.105.201.195 削除依頼
「あっ、立花じゃん! 今帰り?」
 私のクラスの不良(と私は認識している)の、横田隼だった。私は、かかわり合いたくなかったので、気づかないふりを決め込んで足を速める。だけど横田は買ったばかりなのか、おでんを持って竹輪を食べながら、私の方に歩いて来るではないか。
「……何?」
 しょうがないので、それだけ言った。すると横田はにっ、と白い歯を見せて笑う。不良のくせに、こんな笑い方もするらしい。
「あ、やべー学級委員におでん見つかっちまった」
 やばい、とはちっとも思っていなさそうな横田に、私は冷たいまなざしを向ける。横田は小さく笑いながらも、竹輪をおいしそうに飲みこみ、次に割りばしでがんもを取った。
「なあなあ、立花ってがんも嫌い?」
「……別に嫌いじゃないけど。何か?」
 なるべく冷たい声を作ってそう答える。次の瞬間、私の口の中だけが熱をもった。横田の手によって、がんもが私の口の中に入れられたのだ。
「熱っ……!」
 思わず涙目になってしまう。舌をやけどしてしまった。きっ、と横田をにらんでやると、お気楽そうに笑っていた。おでんのがんもは、熱いけれどその分体を温めてくれて、とても美味しい。それがなんとなく悔しくもあった。
「……ちょっと横田!」
 ようやくがんもを飲み込んだ私は、きつい口調で横田の名前を呼ぶ。
「これで立花も買い食い仲間だな!」 
 しかし、横田はそんな風に言って今度は大根を割りばしでつかむのだ。



次のお題は、
「硝子の林檎と白い鳥」

NO.150 [MAIL] 12/05(金) 00:43 IP:116.64.202.234 削除依頼
「…雪。」

窓の外を見ると、白銀に輝く雪が降り積もっている。
雪は温かく、それでいてとても残酷。
私には、冷たい思い出しか残っていない。

目を閉じれば、冬空の下で初めて手を繋いで帰ったあの日の事を、私は今でも鮮明に思い出せる。
冬の寒さなんかより、繋がれた手の暖かさの方が印象に残っている。
なんだかもどかしくて、頬を紅潮させた私に、貴方はこう言ったよね。

「奈々の頬、林檎みたいだな。」

貴方はそっと私の頬にキスをして、そのまま去って行った。
残った私の右手が、寂しいと叫ぶ。
幸せだったあの日々が、私は忘れられない。

外に出て、適当に町を歩く。
クリスマスが近く、どの店も派手な装飾に彩られていて。
それがまた、虚しく見えた。
行く当てもなく歩いていて、たどり着いたのは、見覚えのある公園だった。
ここも、冷たく私を迎え入れる。
幸せと感じた場所は皆、私をひとり残して変わっていってしまった。

「どうして、かなあ…」

子どもながらに、必死に愛していた。
誰よりも、好きでいる自身があった。なのに。

「…せめて、理由が知りたかった。」

貴方は理由も言わず、私を捨ててしまった。
好きだったのに。貴方も、好きでいてくれていると思っていたのに。
もしかすると、この愛が重かったのかもしれない。
貴方からもらったもの、ケータイのメモリー、全てが消せずに残っている。
私の気持ちも、そのまま。

「大好き、だよ…」

貴方はこの白銀の思い出から、鳥のように羽ばたいていった。



- 硝子の林檎と白い鳥 -

NO.151 [MAIL] 12/05(金) 00:45 IP:116.64.202.234 削除依頼
* 二度にわたる投稿お許し下さい *

初めての参加でした!
ななみさまの素敵な題名に合わない文になってしまったかもしれません…
硝子=奈々の心 林檎=奈々 白い鳥=彼 的なイメージでした。
奈々は不本意別れをした彼の事を、まだずるずると引きずっている…感じにしたかったんです。
とても楽しかったです。ぜひまた参加させてください!

次のお題は 「時には転んで道から外れたって」 でお願いします。
以前私が題名にして書いたことがあるのですが、別の方が書くとどんな感じなのかなあと思い^^*

NO.152 12/07(日) 12:29 IP:59.86.20.103 削除依頼
「時には転んで道から外れたって」

七転び八起き。

七回しか転んでいないのに、八回起き上がれるという謎の言葉で……その不思議さゆえに多くの若者の心を掴んで離さず……離さず、もたず、つくらず、持ち込ませずの精神は各国から評価を得て……なんと世界の七不思議が世界の七転びに改名されるくらいに……あー。解説をしようとしたら嘘だらけになってしまった。四つどころではないぞ、嘘。
つまり、人生とは一つの道であって失敗することもあるけれど立った人間が前進できる、ということなのだ。多分。知らんけど。
齢17歳の私が語るにはあまりにもスケールが大きすぎるんだよね、人生とか道とかは。
と、言うわけで話題転換。
私は留年も浪人もしていないため年齢正しく高校二年生で、今春、最上級生になる身分にある人物だ。とか書くと、なんだか色々と凄い人っぽいけれど、実際は頭に「ただの」とつく女子高生だ。
優等生ではなく、かと言って、取り立てるほど問題があるわけもない。

NO.153 12/07(日) 12:30 IP:59.86.20.103 削除依頼
大人の歴々はよく、「夢を持て」と仰る。そして、「高校に進学して、いい大学に進学して、立派な職業に就け」とも仰る。
果たしてその流れに夢と呼べる成分が存在するかと問われれば、首を横に振らざるを得ないと思う。
道は、それだけなの? って。
これはある方の台詞から抜粋した言葉だけど。
本当に、それだけが夢なのだろうかって。
夢ってさー、もっとこう、現実離れしたもんでしょー! とまで言ってしまえば過言の領域に入るけれど、用意された道を無理なく進んでいくことに、夢はあるのだろうか。
ないとしたら、私は何に夢を見出せばいいのだろう。ふむ、哲学的ね。
もしかしたら、私は常に用意された道の上を歩いていただけかもしれない。

ならば。

この変哲の無い、つまり変わり映えの無い人生に夢なるものを作り出すために。
時には転んで道から外れてみるのもいいかなー、と。

なぜなら、それが間違った道だとしても、そこに夢があるなら、それはきっと

大切なものだろうから。

瞼を閉じて、息を思い切り吸い込む。
窓を閉め切っているためか、若干暖かい空気が肺を汚す。
よーし、時には。
私は授業中の教室を堂々と抜け出し、通学路を逆走した。
程なくして十字路に差し掛かった。そこを気分的に右折する。理由は特になし。
一本道は再び分岐路に突き当たる。
なんだか、道は、いくつもあるような気がした。


NO.154 12/07(日) 12:33 IP:59.86.20.103 削除依頼
初めまして、鱗です。
雛さまのお題で書かせていただきました。
……素敵な題名に似合わぬ何ともぐだぐだな話になってしまい、申し訳ないです。
しかし、書いていてとても楽しかったです。これも素敵お題の力でしょうか?(笑

次の御題は「それでも僕が望むもの」で。

それでは、この辺で。

NO.155 唯瀬 12/13(土) 23:05 IP:221.253.130.220 削除依頼
 指が震える。その振動に合わせるように、心が震える。――怖い。
 利き手に握った筆の先が小刻みに揺れて、上手く線を描けない。
「っ……!」
 がたんと勢いよく腰を上げ、目の前の全てをなぎ倒す。
 床に落ちたキャンバス、転がる筆。散らかる絵具。
 心なしか、息が荒い。換気をしていないせいだろうか、空気が悪くて息苦しく思えてくる。
 不意に響いた頭痛に頭を抱えると、彼女の声がリピートされた。
『あなたなら出来る。あなたにしか出来ないことが、今を乗り越えた先に、必ずあるから。だから……』
 くしゃくしゃになった視界、拒絶できない恐怖。
「……っ」
 何も出来ない無力な僕。何も表せない凡人の僕。それでも僕が、望むもの……。
「……」
 ――筆の感触を確かめて、空いた片手にそれを拾った。

*****

次お題→その全てに、カンパイ

NO.156 ななみ [URL] 12/15(月) 19:21 IP:119.105.201.195 削除依頼
//その全てに、カンパイ


 涙が、一筋その瞳からこぼれおちた。続いて、必死にこらえるような、だけどどうしてもこぼれてしまったような、こちらまで泣きたくなるような嗚咽。
 僕に背を向けて泣き続けるような、彼女の背中は、いつも見るそれよりも何倍もか細く、頼りなく見えた。そんなに細かったっけ、そんなに小さかったっけ。僕は不謹慎にもその時、彼女の弱みを握った、と思った。
 いつも明るく快活で、時にはこんな僕を厳しくしかりつけてくれるような。そんな彼女のことが僕は大好きでたまらなくて。友人に例え、マゾだと言われたとしても。友人いわくサドの彼女の背中を追い続けてきた。
 しかし今僕が見ている彼女の背中は、よわよわしい、普通の悲しみに明け暮れる女の子の背中だ。それでも僕は、彼女にあきれることができなくて。むしろ余計に彼女に惹かれてしまっているんだ。



次のお題は、「口元にできたニキビ」

NO.157 椎那 [MAIL] 12/19(金) 20:06 IP:221.190.53.114 削除依頼
★)口元にできたニキビ

君の真っ白い肌にひとつ、ぽつりと赤い点。にきびだ。私は両親共々にきびができない体質で、ちょっとその赤い点が珍しいかった。触ってみたらまあ、想像通りの感触。ぷにゅってしてる。あ。でもちょっと固い。何だか潰せそうだ。流石に潰したらだめかな。それに君の白い肌ににきび跡が残るなんて恐ろしい。だから、潰すかわりに人差し指で爪でひっかいてみる。少し色が濃くなった。
そう言えば、思い思われにきびってあったっけ。確か思いにきびが額で、思われにきびが顎。あれ、反対だった? まあいいや。
それにしても、なんでこの赤い点は口元にあるんだろ。顎か額にあったら面白いのに。


もし、額にあったなら「だれのことをおもってるの?」ってきいてあげるのに。
もし、顎にあったなら「きみのこと私がおもってるの証拠ね」なんてからかってあげるのに。


それにしても、早く目、さまさないかな。あ、でも起きちゃったら触らしてくれないか。けちな奴だから。つまり、現在触り放題。よし、思う存分触ってやろう。ってことで、人差し指をにきびから外し、代わりに両手で君の顔を包み込む。柔らかいけど、あと数年もしたらこんな柔らかさなくなっちゃうんだろうな。残念。というかむかつく。いつまでも柔らかさを保ってくれてもいいのに。その苛立ちを詰め込んで顔をぎゅーってしてやる。うわ、不細工。

「やめろ」
「ありゃ、起こしちゃった?」
「起きてたんだよ」
「いつから」
「お前がニキビ触ったときから」

全てお見通しですか。意地悪なやつ。
まあ、起きてても触り放題だったみたいだからよしとするけど。

「それにしても、にきび、できるんだね」
「ん? ああ、出来ない体質だと思ってたんだけどな」
「出来るならもっと違うところに出来てもよかったのに」

含み笑い。きょとん、としていた君だけど、しばらくすると笑った。


「にきびなら他にもあるよ。」


え?



初めまして!
素敵企画に思わず参加してしまいました

次のお題は「ひび割れた硝子の靴」でお願いします

NO.158 らた 12/19(金) 22:07 IP:121.111.231.23 削除依頼
/ひび割れた硝子の靴

十二時の鐘が鳴る 心臓が潰れるような感触があった
ああ、嗚呼 「夢カラ覚メル」
うつむきまた顔を上げると、不意に王子様と目があって
無性に悲しくなって涙がこぼれそうだった
気がついたらあたしは走りだしていた
憧れの王子様とからめた指先がほどける
驚いたようにまた手を伸ばす王子様
あたしの背中にふわりと触れて消えた温もり
艶やかなドレスにあしらわれた薔薇の花弁が、走るにつれてはらはらと散る
まるであたしが居たという証を残すかのよに
香水くさいドレスとドレスの合間を抜け
テーブルの見たこともない色とりどりのケーキにも目をくれず
あたしは走った
後ろから王子様がなにかを取り乱した声で叫ぶのが聞こえたが、
あたしは走った

魔法ガとけたら
あたしはあたしに戻ってしまうのです
大嫌いなあたしに戻ってしまうのです

会場を飛び出して大きな階段の前にでた
勢い余って右足の硝子の靴に力が入って視界がぐらついた
―――落ちる・・・!
瞬間 時間が止まった
王子様は息を切らしてあたしの腕をつかんで、自分の胸のほうに抱き寄せた
―嗚呼、なんて
心臓が叫んだ 同じ言葉が何度も何度も頭の中をぐるぐるまわる
―温かかった温かかッタ温カカッタ
人の温もりを知らない、愛を知らないあたしは流した涙の意味を知った
「どこにもいかないでくれ」
ささやいた王子様の低い声が余計にさみしくて
それが急に怖くなって
あたしは無理やり振りほどいて、階段を駆け下りた
長い長い階段をおりるにつれて、魔法がとけるのを感じた
ふわふわの金髪はボサボサの汚い茶髪に
純白のドレスはしみだらけのエプロンに
硝子の靴は片方溶けて、バランスを崩した
あたしは立ち直して、もう片方を脱ぎ捨てまた走った
透明な音をきいた
それは確かに破壊音だったけど、優しかった


NO.159 らた 12/19(金) 22:14 IP:121.111.231.25 削除依頼

その夜あたしは泣いた たくさん泣いた
理由は知ってた だけどたくさんありすぎてなにがなんだかわからなかったんだ

王子様は探しに来てはくれなかった
硝子の靴は王子様が触れると共に溶けるようにして消えてしまったからだった
解けない魔法などこの世界になかった

だけど一度知ってしまった愛は、永遠に変わることはなかった
あの温もりがどうしても恋しくて
語り継がれるうちに、いつの間にかハッピーエンドにされていた
あたしが主役の大切なストーリー


・参加させていただきました!^^
こんな文才のないやつがでしゃばってすみませんorz;
しかも2度にわたる投稿をお許し下さい
とっても楽しかったです(・ω・`)えへ←
次のお題は「さみしさがこぼれた」
でお願いします


NO.160 ぬー [URL] 12/19(金) 22:43 IP:219.160.32.59 削除依頼
さみしさがこぼれた

::
電車を待つホームで君は、足元の石ころを転がしている。
私は君のポケットに入っている手を見つめていた。
大きなバッグを肩からさげた、大きな背中が遠いものだと感じた。
今まで一緒に居た時間が、すごくちっぽけに思える。

寂しいな、行かないで。
今すぐにその手をとって、来た道を帰りたいのに!

付き合ってるわけじゃない。
好きだって言ったことなんてない。
私に君を繋ぎとめる資格はないんだよね。

「もう、会えないんだな」
ふぅっと、白い吐息と一緒に彼の低い声が2人の沈黙を破った。
そうだよ、もう会えないんだよ。

今までの溜めていたさみしさが、こぼれる。
目の奥が熱くなり、じわりと視界がくもった。
熱さは水滴になり、つぅっと流れ落ちる。

「おい? どうした」
彼は焦ったように私をのぞく。
やだ、見ないでよ。

ふわりと彼の温かい手が私の頬をなでて、涙を拭いてくれた。
「ここで死ぬまでお別れじゃないんだから! お前はいつまでも子供だからなー」
くしゃりっと笑って彼は言った。
ぽんぽん、と肩を叩いて背中をさすってくれる。
子ども扱いしてんのは君なんだよ!
恋愛対象には、ならないの?

ぐすぐすと泣き止むのに一苦労しながら、私は頷く。
いっぱい言いたいことがあるのに、いえなくて。

「ありがとう」
ぽつり、とこぼれたのは感謝。
彼はびっくりしたような表情をしてからくすっと笑って、こくんと頷いた。

「あ、電車が来るね」
遠くに電車のライトが見える。
プァアッと大きな音も聞こえた。
ああ、本当にお別れだ。
そう思ったと同時に、言わなきゃいけないと心臓が高鳴る。
だめかもしれない。伝わるかわからない。
それでも!私は…!!

「ねぇ、私―――!」

NO.161 ぬー [URL] 12/19(金) 22:48 IP:219.160.32.59 削除依頼
***
どうもこんばんわ。ぬーと申します。

文才無いのに参加してしまってすみませんっ
連続レスも許してください

無駄に長いのにまとまってなくて…
見苦しいものを書いてしまいました・・・

でも凄く楽しくかけました^^
やっぱりお題が素敵だったからですね!

スペースありがとうございました!!

>>NEXT→「笑わないで聞いてね」

NO.162 麻倉 12/20(土) 12:26 IP:121.111.3.247 削除依頼
@ 笑わないで聞いてね

 ここから落ちたらしぬのかな。ふと、そう思う。錆び付いた銀色の手すりの向こうは大きく広がる青い世界。何の穢れも無く澄み切った青い、青い世界。この手すりが境界線、か。

「ここから落ちたらしぬのかなあ」
「何が?」

 声に出してみると反応する人物がいた。
 くるり、と後ろを振向くと案の定、アイツがいた。染めた栗色の髪を風になびかせながら、私に近づいてくる。

「何がしねるの?」
「この三階建ての学校の屋上から飛び降りたらどう思う?」
「どうだかな」

 アイツはふっと口元を緩ませるとポケットからイヤホンを取り出し、耳元に持っていった。かすかにもれる音楽は聴いたことも無い。

NO.163 麻倉 12/20(土) 12:26 IP:121.111.3.247 削除依頼

「あんた、いっつもそれだね」

 声をかけてもさっきの様に反応は無い。でも私は気にせず、話しかける。

「ふらふら来たと思うと音楽聴き始めるし」
「……」
「ずっと屋上にいるのに私はあんたの名前も知らない」
「……」
「いつからここにいるのかも知らない」
「……」
「……たっく、屋上まで何しに来てんだか」

 そこでアイツは、やっと耳からイヤホンを外して私を見た。男にしては大きな黒い目の中に私が写る。

「お前こそ、こんな所に何しに来てるんだよ」
「……」
「自殺防止の為、立ち入り禁止されてるこの屋上に」
「立ち入り禁止、ねえ」

 私はふうっと息をはきながら、何気なく空を見上げる。いつもと変わらぬ、澄み切った青い、青い世界。
 隣ではアイツがじっと私を見ている。視線を空からアイツに戻し、私は笑いながら口を開いた。

「いい? 笑わないで聞いてね──」




 こんにちは。麻倉と言います。
 前々から拝見させて頂いていたスレッドに素敵な御題が! もう、これは書かなければと思い、調子に乗って書かせて貰いました。
 素敵な御題なはずなのに麻倉が書くとそんな風には見えないから不思議っ!(何
 それに中途半端な終わり方。こういう終わり方が好きなんです。私では上手く書けませんが。
 でも楽しく書けました^^ 有難う御座います。

 次のお題は「午後三時の憂鬱」
 宜しくお願いします。

NO.164 12/20(土) 13:00 IP:59.86.9.17 削除依頼
/午後三時の憂鬱

冬にも拘らず、窓際の席は陽光が降り注いで温もりを形成している。
換気が行われていない為、生暖かい空気が停滞し、丁度よい日光も相俟って眠気を生み出す。昼休みと地続きになっている六時限目となれば、それも尚更だ。
ぼんやりと黒板を見る。教師の手によって白墨が黒板に削られ、白い筆跡を描いていく。
隣席の奴の教科書は、古典の授業を無視して美術になっていた。
男子にしては絵がうまい、と勝手に評価してみる。
私はまた、視線を黒板に戻して机上のノートに板書をした。古典は得意なのだ。
だから、半サボタージュ状態で学んでもそれなりに理解できる。……はず。
脳が酸素不足を訴え、無意識に欠伸をする。
あぁ、憂鬱だ。眠いからかもしれないが、やる気が沸いてこない。それどころか、何もやらなくていいような気さえしてきた。退屈で、憂鬱。
時計に視線をやれば、午後三時。
六時限目はまだ始まったばかりで、伝説になるには程遠い。うむ、意味不明。
退屈が憂鬱を型作り、憂鬱が退屈を製造する。
そして、それらは私からやる気を吸い取っていく。と、いうことにする。

午後三時。
憂鬱な高校生は、今日も元気よく居眠りをした。


―――
次回のお題は『桜、散る散る』でお願いします。
駄文、失礼いたしましたっ

NO.165 椎那 [MAIL] 12/23(火) 20:50 IP:221.190.53.114 削除依頼


樹齢二千年を越す桜を見上げ、老人はゆっくりと息を吐いた。傍らにいた青年もその桜を見上げ、目を細めた。多くの支柱に支えられた樹齢二千年にもなる桜は、見ていて痛々しさを感じさせる。周りの力強く花を咲かせる樹齢百年にも見たぬ若木がより一層そう思わせているのかも知れない。

「ただでさえ短命な桜が、樹齢二千年にもなるとこうした姿になるのか」

縄文杉のような神々しさもなく、今にも崩れ落ちそうな桜の木。
青年は桜を飽くことなく見つめる老人に視線を移し、そっと過去に思いを馳せた。

数年前に見た老人は年齢より随分若く見え、活気溢れた偉丈夫な男であった。男は自分の祖父の年齢を上回っていたはずだが、凛々しく伸びた背は大きく青年の憧れであった。老いなんて感じさせることのない物言い。全てが輝いて見えたものだ。彼の配偶者が息を引き取ったときも、彼は病むこともなく力強くあり続けた。
しかし、今はどうだ。偉丈夫だった面影はすでにない。唯一その面影をみせる長身は、男が背を丸めることによって影を潜めていた。長い足を不自由に、おぼつかない足取りで動かし所々体を支えながら歩いている。この数年で何をそんなに彼を衰えさせたのだろうか。青年は疑問に感じたが、尋ねるような無粋な行為はしなかった。
老人はベンチの背に手をおき、徐に立ち上がる。ゆらりと体がぐらついた。青年は手を差し伸べたが、老人はその手を取ることなく、桜に歩みよる。桜の根元にしゃがみ、皺まみれの手で太い幹に触れた。そして、老人は木に触れ瞑目した。その横顔には悲壮とも言える表情が浮かんでおり、ざわりと、嫌な胸騒ぎを感じる。はらり。風に吹かれて桜が舞う。老人の肩を幾枚の花びらが彩った。

青年は訝しげに老人の名を呼ぶ。
しかし、老人は事切れたように、瞳を伏せたまま答えることはなかった。


(桜、散る散る)


わわ、2回目の参加です。
本当は前後があったのですが長かったのでのですっぱり切りました。清々しいです。

次のお題「道ばたの花束」

NO.167 ももかん 12/24(水) 14:30 IP:114.180.9.9 削除依頼


たくさんの花束を両手に抱えて、あたし幸せだった。
あたしの17回目の誕生日を祝ってくれる人たちがいる。
あたしの為にみんなが集まってくれる。
それがあたしにとって、どれほど嬉しかったことか。
本当はもっともっと、早く伝えるべきだったんだ。


※道ばたの花束※


「あ」

あたしは足を止めた。
夜空に滲む月のカーテンに照らされた車道に、ひっそりと花束が添えられていた。

──…交通事故…

あたしは誰だかわからない人の死に手を合わせた。
なんだか無性に悲しくなった。
どこからかほのかに線香の香がした。

あたしは家に帰ってまず花束を生けた。
それからもらったプレゼントを取り出して、
一人一人の顔を思い浮かべながら封を切った。
おかしなものから高価なものまで、
その人らしさが存分に溢れているものばかりだった。
あたしはつい笑みを零して、その厚意が眩しくて目を細めた。

その時、急に外が騒がしくなった。
救急車のサイレンや母の泣き叫ぶ声、パトカーも何台か到着していた。
不安になったあたしは外へと飛び出した。

「いやぁあぁあぁあぁぁぁあぁあ!!」
「落ち着いてください!」
「まだ大丈夫です、なんとかしますから」

聞いたことのないような母の叫びに、あたしは立ちすくんだ。
騒然としたあたり一面は、まるで戦時中のようだった。
あたしはどうすることもできず、ただただ一人佇んでその光景を見ていた。


「娘を…!!娘を返してぇぇええぇえぇえぇえ!!」


あの時、あたしはずっと深い眠りについていて、長い長い夢を見ていた。
 


──そうだ

──あたし、死んだんだ…
 


NO.168 ももかん 12/24(水) 14:33 IP:114.180.9.9 削除依頼
あの日、17回目の誕生日に、
あたしは花束が添えられていた道でトラックにはねられた。
そのまま引きずられて、皮肉にもあたしの体はあたしの家の前に捨てられた。

「ばっかみたい…あたし、生きてるつもりだった…」

あたしは感覚のなくなった足を曲げて、その場に座り込んだ。
神様のささやかな誕生日プレゼントは
あたしにとって何よりも残酷なものだった。

あたしだってまだやりたいことがたくさんあるのに。
友達とお酒飲んでバカ騒ぎしたかったのに。
好きな人つくって、その人のことで一喜一憂したかったのに。
お父さんとお母さんに親孝行したかったのに。
いつか自分の子供がほしかったのに。
まだまだ、あたしにはたくさんの未来があったのに…。


あたしは泣き叫んだ。
それでももう、誰もあたしに気づきやしなかった。
あぁ、あたし消えちゃうんだ。
みんなに”ありがとう”って言うことも
”ばいばい”って手を振ることもできないんだ。
これからやろうと思ってたこと、全部全部できないんだ。


あたしはゆっくりと目を閉じた。


あの日もらった花束の匂いが
何も見えなくなったあたしの世界に漂っていた。



+++

はじめまして、ももかんです。
素敵な企画だったのでつい参加させていただきました。
勢いで書いたので補足しなければ伝わらない部分は多々あると思いますが
あえてしない方向で行きます笑

あ、それと最初のは間違いました…すいませんっ
今消去依頼を出しているので、もう暫くたてば消えるかと思います…
すいませんでした。


…それでは、お邪魔しました。


次のお題:幸せをたとえるなら


NO.169 なつもとにぇふ [URL] 12/24(水) 15:40 IP:60.37.253.23 削除依頼

 まさに毒々しい。彼女をあらわすにはそれがいちばん相応しいのだ、とわたしはおもう。
時代錯誤なてらてらとひかる赤いルージュも毒々しい。彼女はとにかく野生的で恐ろしい人間だ。
例えば、顔が好みだとか資産家だとか、そういう理由で手に入れたいとおもった男は必ず自分のものにしてしまう。ほかに恋人や妻がいてもまるで気にしない。
わたしは、その生き方に少しだけ憧れている。でも彼女と同じことをするつもりにはどうしてもなれなかった。彼女が、わたしの母親だからである。
 冒険をするのは避けたかった。理由は明確だ。彼女は冒険をしたからわたしという生命体を宿した。そしてわたしを失った。莫迦らしいと思う。
でも、それでも彼女は幸せだと言う。何が幸せなのかを理解するのには、わたしにはまだ知らない事が多すぎる。
たとえるなら彼女は毒蛇のようだ。非常に毒々しくて、いずれわたしさえも飲み込んでしまうのだろう。
赤いルージュが流行った時代に、彼女と男たちは生きていた。それをおもうとわたしは、尚更幸せが何なのか理解できなくなる。

(幸せをたとえるなら)

……
いつか参加したい!とおもっておりました。
ももかんさんの素敵な御題で書けてすごく楽しかったです。

次の御題:浅はかな夜に溺れる

NO.170 桐野芹 [MAIL] 12/24(水) 16:27 IP:219.103.3.40 削除依頼

俺が音楽室に入ってくると、彼女は鍵盤から手を離した。校舎に満ちていたメロディーがかき消される。

「いつまで弾いてんだ。もう七時だぞ」

彼女が手招きをする。俺はなんだか急かされた気分になって駆け足で彼女の傍へ寄った。
冷えた室内で鍵盤を叩いていた、まだ少しだけ日焼けの残った手が俺の頬を撫ぜる。
ひんやりとした指の先は火照った頬の温度と混ざって温い。

「祥、ちゃん」

彼女の手はひどく小さい。指も短いしピアノに向いた手じゃない。まんまるくて非常に愛らしい。
その手を強く掴んで引き寄せると、彼女は僅かに頷いて少しだけ顔を上げた。 彼女が小さくまばたきをする度に、俺の瞼の上をそっとさする。
乾いた唇同士が何度もくっついて離れてまたくっつく。


NO.171 桐野芹 [MAIL] 12/24(水) 16:29 IP:219.103.3.40 削除依頼

浅はかだ。俺も彼女も。
あれだけの行為で全てがうまく良くと思ってた。

校歌斉唱の指揮者と伴奏者。
ただそれだけなのに。その程度の特別でもなんでもない関係なのに。
わざわざ俺が彼女のピアノの練習に付き合ったり、かのぞが俺の日直に付き合ったり。毎日一緒に帰ったり。
そんな必要はまったくなかったのに。
俺と彼女の、恋人の機嫌が悪くなるだけ。
何も良いことなんてないのに。

あの日のあの夜の音楽室での出来事が忘れられなくて。俺達は練習と称して、毎日音楽室へ向かう。

きっと、卒業まで、俺達はこの場から抜けれない。
ずぶずぶ深く足元から嵌ってしまってる。
もがいたところでもうどうにもならない。苦しいだけだ。

朝礼のとき、こっそり舞台の裏で彼女と一緒に飲んだココアをふたつポケットに入れて、俺はまた音楽室へ足を運ぶ。


//浅はかな夜に溺れる

_________

前回、ここで書かせていただいたものとつなげてみました。
片方ずつ読んでも意味が通じるようにしたかったんですが……。私の力不足で今こうして自分で報告しているところです ←

一人でこんなにばこばこ書き込んで迷惑なんじゃないかと思いつつも書いてしまっています。本当すみません。

次のお題「お風呂か夕食か。ふたつにひとつだ!」

NO.172 桐野芹 [MAIL] 12/24(水) 16:31 IP:219.103.3.40 削除依頼

「おはよう」

藍色のカーディガンを羽織った彼が、私の顔を見るなり微笑んでくれた。
そのおかげで恐怖心が萎んだような、膨らんだような気がした。

「あおから、宮沢さんがこの写真家が好きって聞いたから。良かったら」

そういって彼は机の中から一冊の本を取り出した。

「ありがとう。金澤さんがさっき言ってた。杣野君の家に忘れちゃったって。」
「そうそう。人の本棚漁ってこれ見つけて喜んでたくせに忘れちゃってるの」

くすくす思い出し笑いをする彼は、全然いつもと変わらなくて。
甘い期待と共に胸がざわついた。

「スーパーで私服見たときも思ったけど、センス良いよね。宮沢さん。」

私に写真集を渡しながら彼が微笑んだ。

「ありがとう」

嬉しいはずなのに、私はこの場から逃げ出したくて堪らなかった。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。

だからいやなのだ。恋なんてしたくない。
自分が惨めになるばかりで、昔は軽く憧れていたさえ彼女にまで汚い感情しか向けられない。
美しい彼とはかけ離れた自分が、周りからどう映っているのか。そんなことを考える前にまず自分で嫌気がさす。

好きなのに、いや、好きだからこそ、会話したくない。
でも関わりたい。彼女と話している姿を彼が仲良く会話している姿を見たくない。
私だけのもので居て欲しいけど、そんな彼はきっと美しくない。
私に毒されてしまう筈。

そんなことを考えていたら気持ちに締まりがつかなくなって、彼に心配された。

「宮沢さん?」

きっと彼は、私の目の淵にうっすら溜まった涙に気づいている。
私のこの小さい瞳を見詰めている。

恥ずかしくなって、
前髪をいじるふりをしながらなるべく彼から顔が見えないように、そして彼の顔を見ないようにした。

NO.173 桐野芹 12/24(水) 19:05 IP:219.103.3.40 削除依頼
うわあああああああああ!!
本当すいません!!上のはあれです。
短篇板にてやってる連載の一部です。

うわわあああ///
間違ってこっちに書いちゃったみたいで。

本当すいません。
はっずかしい。

主さまにお願いなんですが、
時間があるときにでもこのスレと上のひとつのスレを削除していただけるとうれしいです。

御迷惑おかけしました。
はっずかしいい////

NO.174 ゆりさき南瓜 [MAIL] [URL] 12/24(水) 21:37 IP:118.2.133.207 削除依頼
寒い寒い寒い真冬の夜。
雪が深深と降って、星の瞬きなんてちっとも見えやしない。月明かりも見えやしない。ベランダの窓にコツンとおでこを当てると、ひんやりとしていて気持がよかった。家の周りは真っ暗だけれど、山の下には家の明かりがポツリポツリと灯っている。きらきらきらきら。星が瞬くみたいに、雪が月に照らされるみたいに、輝く。

もう時計は12時を回っている。
ああ、遅い。何をやっているんだろう。お鍋の中の赤いポトフはもう温まっているというのに。冷蔵庫の中のケーキはもうひんやりと冷たいのに。浴槽のお風呂はもう冷たくなりそうなのに。彼は帰ってこない。あまりにも遅いので心配になって、飲み掛けのココアを置いてソファから立つ。そしてリビングよりずっと寒い、でもきっと外よりは暖かな玄関を行ったり着たり。意味のないことだけれど落ち着かなくてそれを幾度と無く繰り返す。

何往復目かの行き来をしていると、ガチャリとドアが開く。はっとして顔を上げると、真っ黒なコートをしっかりと着た彼が帰ってきた。「ただいま」柔らかなその笑顔と声に自然と笑顔になる。急いで駆け寄ると、彼は靴を脱ぎながら私の頭を撫でた。「どうしたの?まっててくれたの?寝ててもよかったのに」「ふふ。そんな勝手なことできるわけないもん」そう言って笑うと彼は、ありがとうといって私のおでこにキスをした。窓に付けた時と違って、今度は暖かくなる。私もお返しにと頬にキス。ああ幸せ。自然と零れる笑みを彼に渡す。彼とリビングに戻ったところで私は、寒そうな彼に問う。

「お風呂か夕食か。ふたつにひとつだ!」

  

お題「お風呂か夕食か。ふたつにひとつだ!」より

桐野芹様からのお題なんて嬉しすぎて死んでしまいます。死んでしまって愚だ愚だな文章になってしまいましたが。本当に申し訳ないです。ああ、これならいっそ他の方が書いた方が…。
でも、もう書いてしまったので次のお題を提供したいと思います。

次の御代は「糖分に犯された吐息」

NO.175 12/25(木) 19:55 IP:124.18.231.6 削除依頼
すきだと思う。すきになって欲しいと思う。
なんて乙女な思考回路だと自分で毒づき、それから、はあと大きく溜息。けれどもそれとは裏腹に嫌な気分にはならないのだから私はげんきんなものだなあ、とまた口の隙間から溜息がこぼれた。

雨の日に傘をそっと私の目の前に差し出したわけでもなく、泣いているところを慰めたわけでもなく──そもそも私は人前では絶対に泣くまいと云うポリシーを持っているのでそれは有り得ないけれども──、まとめて云ってしまうと、あいつは平凡だ。似合う四字熟語は平々凡々みたいな奴なのだ。でも、でも。
むずむずした感覚がいつまでもとれないままじっとドアを見つめていると、ふいにがらりとそこが開いた。顔をのぞかせたのが奴だったから、よけいに驚いた。

「あれ、お前まだ残ってたの?」
「……う、ん。もうそんな時間?」
「とっくに下校時間過ぎてますー」

そう云われて、時計を見る。すると奴の云う通り時計はとっくに下校時間を過ぎた数字を指していた。ちくたくちくたく。なんだか不安定な音だけれど、それは今の私と奴だけの空間には妙にあっている気がした。

「ほれ、帰るぞ」
「……そう云えばあんたは何で帰ってなかった、」

の。最後まで云う前に奴の手がにゅ、と伸びてきて私の口に何かをおしこんだ。甘い苺味。でも嫌いじゃない、すこし酸味の効いた、味。
うるさい。奴の口がそう動いた気がした。仄かに頬に赤みがかかっていたのはきっと気のせいではないだろう。
嗚呼、もう。
くすくすと忍び笑いを洩らす。その後に息継ぎをしてから、はあ、と大きく吐息を吐きだす。甘ったるい苺のにおいが、した。



>>「糖分に犯された吐息」

元/ひなたです(^q^)
次の御題は>>弱音をはく赤いひと
久しぶりで面白かったです!有難うございました!!


NO.176 ななみ [URL] 12/25(木) 22:50 IP:119.105.201.195 削除依頼
//弱音をはく赤いひと


 突然部屋に現われた彼女は、全身が赤かった。そんな人間はいないと思うだろうが、皮膚が赤い色素を有しているのではない。分かりやすく言えば、血まみれだったのだ。

 そして彼女は、赤い血をぽたぽたとたらし、わたしの部屋のあまりきれいとは言えない床を汚しながら、わたしの方を向いた。帰宅したばかりのわたしが最初に見たものは、彼女だったので驚いた。だから教科書とノートとその他もろもろによって重くなったカバンを、どさりと落としてしまったのだ。その音により、彼女はわたしに気づいたみたいだ。わたしもそうだったかもしれないけれど、彼女は恐ろしいほどに目を見開いていた。驚きたいのはわたしの方だというのに。
 向こう側の壁がうっすらと透ける彼女を通して見える。だらりと垂れた両手。そして今もなお血液をたらす全身、黒いばさりとした長い髪。わたしの友達――とても怖がりで、ありきたりなホラー映画でもぎゃあ、と大きな悲鳴を上げる――が見たら、即失神だ。間違いないだろう。
 だけどわたしは怖がらなかった。否、怖がれなかった。彼女のたらす血液をほんの少し薄める液体。それはおそらく涙で彼女の瞳から生み出されていたからだ。


NO.177 ななみ [URL] 12/25(木) 22:50 IP:119.105.201.195 削除依頼
「……どう、した、の?」
 敬語で尋ねようとしたが、やめた。彼女はよくよく見ればわたしと同じくらいの年齢だと思ったからだ。
「猫が、みつから、ないの」
 涙交じり。
「……そういや外。帰ってくるとき黒猫が」
 わたしはそんな彼女に少し驚いたが、もう彼女のことは全くもって怖くなかった。むしろ彼女がわたしのことを怖がっているようにも見えた。
「その子だわ! ああ、でも車に轢かれているかもしれない。そうでなくても私に愛想をつかしてどこかへ行ってしまったかもしれない……」
 一度は目を輝かせた彼女だったが、すぐにぶつぶつと弱音を吐きながら、再び涙を流し始めてしまった。わたしはくすりと心の中で笑いながらも、はあ、とわざとらしくため息をついて、ゆっくりと玄関に向かう。
「探してきてあげるよ」
「え、いいの、ありがとう……! ああ、でも迷惑よね。それに死んでいたらショックだわ」
 いや、死んでいるのはあなただから、とは言えなかった。わたしはぐちぐちと泣きごとを言い続けている彼女を背に、スニーカーをつっかけると北風の吹きつける外に出た。



なんだかおかしなものですみません…!
次のお題は、「花びらの軌跡」
でお願いします。
 

NO.178 せり 12/25(木) 23:35 IP:210.153.84.137 削除依頼


「ね、神さまって信じる?


――あまりに唐突な質問に、私は少し面食らった。
世界が闇に呑まれようとしていた頃、2つの影がどこにでもあるような砂利道にあった。
進むこともなく、戻ることもなく。私より幾分も美しい少女と向かい合って。私は立っていた。
少しの間を置いた後、
「神さま…って」
何を今更、と吐き捨てるように答えた。
彼女はそうだよね、と屈託のない微笑を浮かべる。
その美しさに私は何をしゃべろうか忘れてしまったから、星屑がぶちまけられた空を見上げて呟いた。
「…本当に今日で、終わるんだね」
「嬉しい?」
「なんにも感じないな」
「あはは…あたしも」
お互い困ったように笑いあう。
静かな世界に響くその笑い声は、…あまりに心地よい音楽のようで。
不意に、彼女が時計と空を交互に見た後、
「そろそろみたい」
微笑を崩さず言った途端、暗闇の世界が赤く光り出した。
「静かだね」
それは、これからこの星が消えるなんて、信じられないくらいの静けさだった。
「どうして私らが最後に残ったんだろうね」
十六年の人生最期も腐れ縁のあんたと一緒だなんてね、と最期の皮肉を付け足す。
彼女の返事を待っている間も、世界が赤く染まっていき、体が悲鳴を上げ始めていた。……熱い……。
「…さっき、神さまを信じるかって聞いたよね?」
その中でも彼女は微笑を崩さない。
舌すら回らなくなってきた私はこくんと頷いて返事をした。
彼女が霞んで見える。



続きますごめんなさい!

NO.179 せり 12/25(木) 23:35 IP:210.153.84.33 削除依頼
「あたしがね、神さまなんだ」
彼女も時間がないことを悟ったのか、まくし立てるように先を話す。
私は、その言葉を狂言だとも冗談だとも思わなかった。
何故ならその赤に包まれていく彼女はとても神々しくて。
その微笑は何より優しく、…美しかったからだ。
そう、花びらのように、儚く、美しい。
「ありがとう……」
私は精一杯絞り出すように掠れた声を出した。
彼女は最初、意外そうな顔をしていたが、また元の微笑に戻り、
「やっぱり貴方でよかった…またね」
清らかな声でそう言い、私の手を取った。
瞬間、シュ、という呆気ない効果音と共に私は彼女と共に銀河の一部になったのを感じた。


【お題→生贄の少女】

NO.180 らた 12/26(金) 00:14 IP:121.111.231.19 削除依頼
/生贄の少女

「 あなたがしあわせならそれでいい 」
彼女が思わず叫んだのは「馬鹿野郎」
昔から口は悪いと感じてきたが、
こんなときにもなって馬鹿と吐き捨てられるなんて思いもしなかった
ただそのことばと一緒に見せた無垢で無邪気な満面の笑みが脳裏に焼きついて
僕の心を惑わせた

彼女は誰だったのか
なんのために存在していたのか
僕は抱きしめたかったんだ
キミのすべて
最期の言葉を僕にくれるなんて、さ
期待してもいいのかな
少しは僕のこと、思ってくれてるのかな

彼女は強かった 僕の何千倍にも
彼女は清らかだった そのため、
彼女はまぶしかった こんな世の中だから
彼女はわらった 

涙が零れ落ちた 制服のズボンに小さなしみをつくり
それが合図かのように大雨が降った
僕の膝の上で

病気だということは知っていた なのになにも出来なかったんだ
それでもいい、それでいいからと
僕の手のひらをつかんだのはキミだった
小さな手が離れたとき、僕はキミが大好きなことに気づいてしまったんだ
キミは僕に永遠の愛を教えにきた通りすがりの天使
僕はキミと引き換えに、愛を思い知らされたんだ

僕はもう残ってはいないキミの温もりを探して、無意識に手のひらを握りしめた
無垢な少女はもうわらってはくれないんだね
僕の大好きな女の子


∀また参加させていただきました^^
意味がわからないものですみません;
少女は「僕」に愛を教えるために生贄になった
というかんじ うん、まあええ←
素敵お題なのにすみませんorz
次は「仮初めの愛」でお願いします


NO.181 二言三言 12/26(金) 07:58 IP:59.86.2.133 削除依頼
/仮初の愛

大切で大嫌いで愛しくて好まない僕の彼女は、珍しく夜更かしをして睡魔と戦っている。
勝利してもレベルは上がらないし、経験値も得られない。けど、彼女は目を擦りながら懸命に起きている。
そこまで頑張る理由は不明。
労わり以外の目的で、中々目蓋を下ろさない子に声を掛けた。
「眠かったら寝ちゃっていいんだよ?」
「だめ。だって一人は嫌。私、知ってるんだよ? いっつも夜中、隣にいてくれないこと。だからー寝ない!
それに、私は、もう大人なんだから」
「自分で大人って言っちゃうところがまだ子供なんだけどね」
誤魔化して、質問を虚空へ投げ捨てる。
「あー! 子ども扱いしてるっ」
「子ども扱いじゃなくて、僕も君もまだ子供だよ」法律上は。
「むー」
納得したのか不貞腐れたのか、彼女はそっぽを向いてしまった。
彼女は、墨汁を流したような不透明な黒に染まった夜空を見ながら呟いた。
「寝るー寝ない、寝るー寝ない……寝るー寝ない、寝ない」
寝ないが僅差で勝ち抜く。中間層であるうたた寝は不戦勝だ。知らんけど。
静まり返った空間で、彼女は口内でもごもごと言葉を転がす。そして、無感情に言った。
「愛してる?」
何を、と返そうとして、捻くれ者は聞こえない振りをした。
「ねぇ、私のこと好きー?」
そんなこと僕に尋ねるなよ。しかし、心とは裏腹に嘘が口を突いて出る。
「もちろん大好きだよ」
「私も」
「だからおやすみなさい」
「むー……だからとか全然かんけーないよ?」うむ、正論。
「そうだねその通り。じゃあ、一緒にひつじでも数えようか?」
「私、生き物嫌い」僕も君も生き物だがな。
「うにゃ? どうしたの? なんか、目が死んでる」的確な表現に僕は、
「君が死ぬほど好きだからだよ」嘘でしか相手が出来なかった。
そして、彼女が質問を掘り返す。
「ねぇ……どうしていつも、私を置いてくの?」
それはねぇ、僕は君と二人きりの世界が怖いからなんだよ。
あと、君を愛してなんかいないから。
せめて眠るときだけでも、一人にさせてほしいんだ。
「ごめんね」
僕は、謝った。

―――
次の御題→意識的無意識

NO.182 なつもとにぇふ [URL] 12/26(金) 08:35 IP:60.37.253.23 削除依頼

「なんて顔をしているんだ」
彼が怒ったようにそう言ったので、わたしは心の中でこっそり笑った。
本当に泣いていたのだけれどそれは孝実が来てくれたからで、あの不細工な男に振られたからではない。
恋は盲目とはよくいったものだ。今ならあの男の横っ面をはたいて罵倒を浴びせることだってできるのに。
わたしが悲しそうな顔を演じ続けていると、孝実も何故だか知らないが顔を歪めるのだ。この男は絶対にわたしに惚れている。そしてそれは確信に変わる。わたしを強く抱きしめられたのだ。

「泣くな。泣くな。なくな。なかないでよ」
泣いているのは自分のくせに。そう思いながらわたしも泣く。無意識のうちに涙がでるのは、感化されちゃったからなのかしらね。

・意識的無意識

(^ω^)
このスレッドの趣向がすごく面白くて好きです。
次の御題→「あしたのさよならでおわりにしよう」

NO.183 なつもとにぇふ [URL] 12/26(金) 08:38 IP:60.37.253.23 削除依頼
日本語がおかしかったですっ

×わたしを強く抱きしめられたのだ
○わたしは強く抱きしめられたのだ

推敲せずにがしがし書いてました(;ω;)

NO.184 雨いじんぐれいす 12/26(金) 16:49 IP:114.151.242.213 削除依頼


親友がさよならを言った。
通りはきらきらと輝いていた。わたしもさよならをいった、彼女はやわらかく微笑むと街明かりのなかに溶け込んでいくように立ち去った。
ああ、たぶんわたしは知っている。
いまから彼女がどこへ行き、なにをしようとするのかを。彼女もたぶん知っている、わたしがそれに勘付いていることを。
ブレザーの胸ポケットから携帯電話をとりだすとまだ別れたばかりの彼女宛てにメールをおくった。


〈あした早起きしてふたりで逃げようぜ〉

彼女からは返信などこなかった。
街は青さをますだけで朝は遥かとおい場所にある気がしたけれど、あしたがやってくることは確かで、それだけで生まれ変われるように感じた。


#あしたのさよならでおわりにしよう

まえから一度やってみたかったです^^
次のお題「ねむれる花のした」



NO.185 12/26(金) 21:33 IP:124.18.231.6 削除依頼

 
すべてすべてすべて、おわってしまった。
ぽたりぽたりと眼球が悲鳴をあげているのが分かった。そのまま拭う事もせずに、目線を下にうつす。
瞳にうつるのは変わりはてた恋人の姿。頭皮がない笑顔がない眼球がない。そこにあるのは──骨。
嗚呼、と嗚咽のような空気が洩れた。それがじぶんのものだと気づいたのは、空から冷たい雫が落ちてきてからのことだ。

「……ごめん、ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん」

くるしい、と彼女は云った。たすけてとも怖いよとも云っていた。救えなかったのはじぶんだと知っている。それでも神様は運命はとても残酷だと、おもうのだからじぶんはとても勝手だ。
嗚咽が洩れ、空気がしろくそまってゆく。頬を雨と涙がつたい、最早どちらだかわからないまでになっていた。

胡蝶蘭が萎れ、下を向いているのが視界にちらつく。それをじぶんと重ねてしまう。泣いているかのように雫を落とすその花は無垢で、純白で彼女に似ているとおもった。すい、と手を伸ばしてつかむとぽきりと云う音とともに、折れた。それも彼女に似ているとおもうのは皮肉ではなく本心だった。

もう帰ってこない彼女──の骨を埋め、その上に折れた胡蝶蘭の花を添える。雨で土が湿っていて手は泥で茶色くなってしまったけれど、そんなことはまったく気にならなかった。

「………、ありがとう」

ごめんねと云う言葉よりありがとうの方が彼女にはあっていることにやっと気づき、すこし早足でそこから立ち去った。最後にもう一度だけ彼女をふり返り、ねむる彼女の上に佇むその花を見ながらもう一度だけ、ありがとうと呟いた。

 

>>ねむれる花のした

また参加してしまいました(`・ω・´)
趣向のセンスと云うか…全てがすきです!←

次の御題は>>夢現(ゆめうつつ) でお願いします(^q^)

NO.186 二言三言 12/27(土) 14:51 IP:59.86.4.13 削除依頼
/夢現

目を瞑って考え事をすると、何だか色々なことが脳を巡る。
夜中、私は一人きり。
これだけ暗いと、目蓋を閉じていた方が残像の光で明るく感じられる。
遮光カーテンは月明かりの進入を許さず、電気の供給を絶たれた蛍光灯は暗闇に身を潜めている。この部屋に明かりを灯すものはなくて。
私は何度か瞬きをして、特に意味はなく目を見開いた。
そしてふと、闇の色は黒ではないと感じた。
いや、言葉では明確に表現できない色をしているんだ。
視覚は解雇されて、触覚及び聴覚が研ぎ澄まされる。
私は息を吸って、吐き出した。途端、それは白く凍り付いて一瞬空間を色彩して散った。
なんだか、寂しくなる。
急に寂寥が込み上げてきて、この世に取り残されてしまったような気持ちになった。
実際、取り残されているのだけれど。
また目を瞑る。
そしてしばらく目蓋の開閉を繰り返していたら、次第に閉じているのか開けているのかの境界が失わてしまった。だけど、目の前は暗いまま。
ぼんやりと時間の流れに翻弄されていると、何の前触れもなく視界が明るんだ。
しかし辺りは真っ白で、暗いときと何ら変わらないような気がする。

これは、夢か現か。

はたまた、夢の現実か。

……ということはあれだ。私は目を開けているということだ。
視界を閉ざしたら、そこもまた、真っ白だった。


―――
意味不明な感じになってしまいました←
何も考えずに書くとだめですね……。
ところで、このスレは旧掲示板の削除と共になくなってしまうのでしょうか?
28日に旧掲示板は削除されるらしいです。
今まで繋げてきたリレーなので、これからも続けばいいなぁと思うのですが。
ま、とりあえずこの辺で。

次のお題→「甘く朽ちる世界の片隅」

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