野田聖子内閣府特命担当相は26日、消費者保護をテーマにした08年の国民生活白書「消費者市民社会への展望-ゆとりと成熟した社会構築に向けて-」を閣議に報告した。振り込め詐欺やインターネット利用者に対する架空請求が増加していることから、07年度の消費者被害に伴う経済損失額が最大約3兆4000億円に上ると推計。行政機関が被害を受けた消費者に代わって業者に損害賠償請求を行う「父権訴訟」や消費者団体の団体訴訟に損害賠償請求権を付与するなど新たな救済制度の導入を提言した。【尾村洋介】
白書が、消費者保護に本格的に焦点を当てたのは今回が初めて。政府が09年度の設立を目指している消費者行政を一元的に所管する消費者庁の機能も念頭にまとめた。消費者被害は、1件当たりの被害額は数万円程度と少額でも被害者は多数にのぼる「少額多数被害」が広がっていると分析した。新たな救済制度は、内閣府を中心に検討を進めており、その必要性を訴える内容となっている。
消費者被害の実態について、04年をピークに一時減少していた「振り込め詐欺」が08年は再び増加に転じていると指摘。女性高齢者らをターゲットにした年金などにかかわる「還付金詐欺」や、有料サイトの利用料名目で携帯電話やインターネットユーザーからカネをだまし取る「架空請求」なども広がっていると分析した。被害の損失額は07年度、国民生活センターや地方公共団体に寄せられた相談件数(約104万件)などから、契約ベースで3兆3922億円、支払金額ベース(クレジットカード含む)では2兆4535億円に達すると推計した。
一方、アンケートでは、振り込め詐欺などの被害に遭っても「どこにも相談していない」と回答した人が全体の3分の1にのぼった。また、「行政が消費者の権利を守っている」と感じている人の割合が、日本の場合は6・9%にとどまり、50%以上の欧州各国に比べて著しく低い問題点も紹介。行政機関や消費者団体のリードで、悪質業者の「やり得」を許さない安全・安心な社会作りを提案している。
毎日新聞 2008年12月26日 東京夕刊