数年も前にデリバティブ商品を「金融大量破壊兵器」と喝破したウォーレン・バフェット氏は、「潮が引けば、誰が裸で泳いでいたのかが分かる」という警句も吐いている。5兆円近い投資家の資金をだまし取ったと告白し、逮捕されたナスダックのバーナード・マードフ元会長はその代表といえる。
我が国でも米国発金融危機の余波を受けて、裸の投資家が次々と明らかになった。背後には、厳しい成果主義の下で働く外資系の投資銀行が、運用能力を欠く投資家に危険な金融商品を売り込んできた実態がある。
金融界では永らく「証券業界のゴミ箱」と称されてきた一群の投資家がいる。その一つが、金融危機が表面化した直後に破綻(はたん)した中堅生保であるが、その後、多くの大学がデリバティブ取引で巨額の損失を計上したことも明らかになった。理事長を解任し、責任を明確にしたところもあるが、多くは、長期投資で損失は実現していないという口実で、先延ばしを行っている。そのような顧客には、また別の投資銀行が接近し、ソリューションの提供を勧誘する。企業ではサイゼリヤの損失が表面化したが、宗教法人などにいまだ隠れた巨額損失があるとうわさされている。
外資系金融業界の情報ネットワークは驚くべきもので、甘い投資家という情報が流れれば、瞬く間に多くの投資銀行が群がり、食い物になっていく。一方で、広範な顧客ネットワークはないので、その分は我が国の金融機関に商品を卸売りしてきた。
バブル崩壊後「ヒストリカル・レート・ロールオーバー」というリスク商品の後始末で多くの金融機関が苦労したが、また再び悪夢が邦銀を襲う懸念もぬぐえない。(匡廬)