昨年、この欄で視聴者の「テレビ離れ」の警鐘を鳴らしたが、2008年のテレビ界はさらに深刻な事態に見舞われた。スポンサーの「CM離れ」である。

テレビCMの危機

 2008年は、スポットCMが大きく落ち込む1年になった。なんと前年比1割減。

 CMは大きく分けて、番組を提供する「タイム」と、番組と番組の間に流す「スポット」に分けられるが、タイムは番組の制作費に当てられるため、これまでテレビ局はスポットから利益を生み出してきた。

 ところが、このスポットが落ち込み、収益が大きく悪化したのである。在京キー局5社の9月中間決算では、日本テレビとテレビ東京が赤字に転落。フジテレビ以外の4社が営業減益になった。

 そこで、この秋からテレビ局はこれまで不文律で禁止してきた業種のCMを解禁し始めた。パチンコホール、宗教法人関連、そして金融商品のFXなどがそう。しかし、利益を追求するあまり、安易にそれらの解禁に走る行為は、改めてテレビ局のモラル・ハザードが問われそうである。

 悪い話は止まらない。CM離れは、来年、さらに深刻化すると見られている。

 「100年に1度」と言われる不況で、既にトヨタ自動車は広告費の3割削減を打ち出している。CM出稿量5位のトヨタだけに、その影響は計り知れない。また、そんなリーディングカンパニーの行動が他の企業へ波及する恐れもある。そうなると、50年間築き上げてきたテレビというビジネスモデル自体に、黄信号が点りかねない。

NHKの台頭

 そんな中、今年、CMに左右されないNHKが大きく視聴率を上げたことは象徴的である。今年度の上半期(3月31日〜9月28日)のゴールデンタイムの視聴率が、1963年の調査以来、フジテレビを抜いて初めて1位となったのだ。

 その要因として、全話20%を超えた大河ドラマ『篤姫』の存在、開会式(37.3%)や女子ソフトボール(30.6%)など高視聴率を連発した北京オリンピックの中継、昨年より1.4ポイントも視聴率を上げた『ニュース7』の健闘などが挙げられるが、同時に視聴者の“民放バラエティ離れ”もNHKをアシストした要因の一つと言わざるを得ない。

 どの局を回しても、似たような企画に似たようなタレント。そんな安易な番組の乱造に、視聴者が食傷気味になっているのだ。そこで仕方なく、消極的理由でNHKが選ばれるようになったのである。

 だが、民放もこのままではいけないと思ったのだろう。この秋からゴールデンタイムでドキュメンタリーをいくつか始めている。NHKに流れた視聴者を戻そうとの狙いだろうが、残念ながら苦戦しているのが実情である。

 鳴り物入りで始まったTBSの『水曜ノンフィクション』は、5%前後の視聴率で低迷。関口宏の影響力に翳(かげ)りが見られた。

 また、テレビ朝日の『報道発ドキュメンタリ宣言』も、初回こそ長門裕之・南田洋子夫妻の老いと向き合う姿を報じて22.9%の高視聴率をあげたものの、翌週から題材が一般人になったところ、一ケタにダウン。結局、芸能人以外では苦戦している。