日本映画の今年最大のヒット作は、宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」だった。青い海からやって来た魚の子、ポニョはガラス瓶の中に体を突っ込み、苦しんでいるところを男の子に救われる。運命的な出会いは、皮肉にも海に捨てられたごみがきっかけだった。
瀬戸内海の海ごみについて話し合う環境省主催のシンポジウムが先日、倉敷市内で開かれた。海のごみは海岸に打ち上げられたものだけではない。海上や海中を漂ったり、海底にもたまっていて、人目につきにくい。
シンポでは、市民への啓発活動の重要性が説かれ、漁業体験などを通じて海への知識を深めることなどが提案された。海の現状をまず知ることだ。
海ごみを回収している漁協の代表は「魚のすむ環境を守ることが出発点」と述べたが、漁業者にとって海ごみは悩みの種だ。漁業資源だけでなく、操業にも深刻な影響を及ぼしている。
さらに河川の環境対策も強調された。川からはごみだけでなく、魚介類を育てる貴重な栄養分が流れ込んでくる。川を守ることは海を育てることにつながっていく。
欠かせないのが瀬戸内沿岸をはじめ河川流域を含めた広域的な取り組みだ。県境を越えてごみは漂い、流れ着く。海ごみ問題は、瀬戸内は一体という意識づくりの大切さを再認識させてくれる。