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【記者コラム:越中春秋】回顧編’08 ■9■ 氷見市民病院民営化2008年12月26日
医療、雇用守り合格点慢性的な赤字と医師不足などに悩んだ氷見市民病院が、四月に民営化された。金沢医科大(石川県内灘町)が運営を引き受け、市は二〇一〇年度中の新病院開設を打ち出した。〇九年は医療の一層の充実と市の医療政策の明確な実現が問われることになる。 新生の「金沢医科大学氷見市民病院」は、医科大学が自治体病院を運営する国内でも珍しいケースになった。赤字に悩む他の自治体病院にすれば羨望(せんぼう)の的。氷見は「地域医療の崩壊」という最悪のシナリオは免れた。ただもう少しうまくやれなかったかと、今でも歯がゆく感じる。 それまで医師を派遣してきた富山大が医師を大量に引き揚げた。民営化に当たって市が約束した常勤医三十六人の確保はできず、いまだ三十一人のみ。再雇用をめぐる労働組合との交渉が難航を極めた。患者置き去りの改革をめぐる諸問題は複雑で重苦しく、不安な将来を思わせた。 多難な船出からもうすぐ九カ月が経過する。ただ現状をみると、一連の改革は合格点ではないかと思う。地方の小都市で雇用も医療も残せたからだ。 竹越襄最高経営責任者(CEO)は「縮小すれば確かに楽だが、医療への市民の期待がある」と努力を強調。同病院は引き続き医師、看護師の充足を目指しながら、さらに〇九年四月には医師の増員計画も進める。 「公設民営化」の言葉通り、市の課題は新病院の建設だ。老朽化した現在の病院を鞍川の国道415号バイパス南側約三ヘクタールの農地へ移転新築することが決まっている。 ただ不安は、民間手法で割安なコストとはいえ、建設費は五十二億円。大学側との折半とはいえ、財政の厳しい市がいかに工面するのか不透明だ。当然、目標の「一〇年度開院」の真実味が伝わってこない。 大学には、新病院の建設までより安心できる医療の基盤を築いてほしい。市には慎重な財源確保と執行、市民への丁寧な情報開示を求めたい。 (美細津仁志)
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