「捜査機関が供述調書を作ることが、誤判を生む最大の理由」
8月に無罪判決が出た県立大野病院の医療事故で、主任弁護人の平岩敬一弁護士は指摘した。同月に1審の有罪判決が出た県政汚職事件の公判でも、佐藤栄佐久前知事の実弟が捜査段階で自白した供述調書の任意性が争点となった。
大野病院事故では、逮捕された医師が取調官から何度も同じ質問を受け、取調官の意に沿った供述をすると「そういうのがいいんだ」とメモを取られたという。県政汚職事件では、前知事の関与を認めない実弟に対し、検察官が「ウソだ」と50回以上怒鳴ったり、机を激しくたたくなどし、実弟は自白調書にサインしたという。ともに2人の公判での主張によるものだが、捜査段階の供述との食い違いは明らかだ。
供述調書は、被疑者が独白する形式で作成されるが、実際は取り調べに答えたことを取調官がまとめて「作文」し、被告にサインさせて出来上がる。精神的に追い込まれた被疑者は調書にそのままサインしてしまうことが多いため、平岩弁護士は「供述調書に取調官の考えが入りやすく、真実とかけ離れてしまう」と指摘する。
鹿児島県議選買収事件(志布志事件)など冤罪(えんざい)事件の多くは、無理な取り調べが原因だ。取り調べの一部録音・録画が始まっているが、裁判員裁判に向け、一般市民の理解も得られる透明性の高い捜査が求められている。
毎日新聞 2008年12月26日 地方版