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2008年12月26日

森 まゆみ 作家・編集者 経歴はこちら>>

【回顧・展望】「疑わしきは罰せず」じゃなかったの?(2/3)


○開かずの「再審の門」

 今年は「黒と白~自白・名張毒ぶどう酒事件の闇」という東海テレビ放送の作品が優秀賞となった。
 これは1961年、三重県名張市の公民館で開かれた住民懇親会で、出されたぶどう酒を飲んだ女性5人が亡くなった事件である。ほとんど物的証拠がなく、脅迫的な捜査によって自白させられ逮捕された奥西勝さんは、一審で無罪となったものの、二審・名古屋高裁で一転死刑判決を受け、最高裁で確定した。事件から47年たった今も服役中で、82歳になる。

 その後、科学調査が進み、唯一の物的証拠とされるビンの栓をあけた歯形は被疑者のものと一致せず、また白ワインに入れられたとされる毒物は赤いなど不審な点が多く、冤罪の可能性が極めて高いといわれる。2005年、名古屋高裁が再審開始決定をしたものの、06年12月、同じ名古屋高裁の別の部の裁判長が検察の異議を入れて、再審を却下してしまった。

 読売新聞は、『死刑』と題する続き物の中で、「帝銀事件の平沢貞通死刑囚(当時95歳)が1987年に獄死して以降、執行されないまま死亡した死刑囚は富山(常喜)死刑囚を含め7人。このうち4人は70歳以上で、10年以上拘置され、病死している」と記している(10月10日付)。帝銀事件も冤罪である可能性が高いのではないか。松本清張はじめこの事件を扱ったノンフィクションや小説も多い。

 いまもマルヨ無線事件、ピアノ騒音殺人事件、袴田事件、連続企業爆破事件など、社会が忘れかけている古い事件で、被告たちは長い再審請求の戦いを続けている。もしこれが冤罪であったらどうなるのか。

   →次ページに続く(人ごとではない)

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