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【雇用崩壊】豊田・保見住宅の空き380戸募集せず2008年12月26日 愛知県が解雇などで住居を失った非正規労働者らに県営住宅70戸を提供することを決め、25日に募集を行った事業で、同県豊田市の「保見住宅」に約380戸の空き部屋があるにもかかわらず、今回は一切、募集対象としていなかったことが分かった。 保見住宅は、空き室を除く970戸のうち過半数の540戸を日系ブラジル人が占める。県は「今回の提供物件に含めれば日系人が殺到する。これ以上集中すれば自治会活動が困難になる」と説明するが、日系人の支援団体は「緊急の保護所として入居することも許さないのは差別だ」と批判している。 同住宅では1990年代から自動車産業で働く日系ブラジル人が住み始めた。ごみ処理や駐車マナーなど生活習慣の違いから一般住民とのトラブルが相次ぎ、県は2000年2月以降、募集戸数を制限して日系入居者の増加を抑えてきた。 こうした背景から愛知県県営住宅管理室は「今回は緊急対策としての提供も検討したが、やはり日系人が殺到し収拾がつかなくなることが予想されるため見送った」という。県は提供可能な約450戸の中から、保見の約380戸を除いて70戸を選んだ。 これに対し、保見住宅で日系ブラジル人支援などをする特定非営利活動法人(NPO法人)「保見ケ丘ラテンアメリカセンター」の野元弘幸代表理事(47)は「外国人だけを入居させてほしいのではない。100年に1度と言われる緊急事態。空き室が多くあるのだから、提供すべきだ」と話し、26日に県に保見住宅の空き室提供を要望する予定だ。 在日外国人の支援を行っているNPO「交流ネット」(同県一宮市)も「日系人は日本人より先に解雇されるなど厳しい環境にある。従来の差別的な制限を維持するのはあまりにも冷たい」と批判する。 一方、同住宅の自治区長の成瀬壮さん(77)は「日本の生活習慣になじめない日系人がいることは事実」と指摘し、日本人を増やしてほしいと県に要望してきた。ただ、自治区に今回の提供に関する相談はなく、「ルールさえ守ってくれるなら、入居を反対する理由はない」と話す。
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