第69回国際写真サロン
コンテスト概要
作品審査会は、2008年11月27日、朝日新聞東京本社で開かれ、130点の入選が決まりました。 主要作品と国内入選者は2008年12月23日付の朝日新聞紙上で発表されました。 審査委員より審査委員特別賞が6点選ばれました。 The screening Committee convened on November 27, 2008, at The Tokyo Head Office of The Asahi Shimbun Company. 130 winners were selected. Some of the outstanding works and the names of winning Japanese entrants were published in The Asahi Shimbun on December 23, 2008. The judges selected 6 of the works for special prizes. |
結果・講評
[総評]
審査委員長・田沼武能
近年、国際写真サロンの審査が楽しみになっている。特に国内編では、当サロンを目指して作品作りをしているせいか、レベルがあがっている。
今年の審査を終えて改めて感じるのは、現代的な感性や視点が作品に写し込まれていないと、上位入賞は難しいことだ。時代が進化しデジタル全盛の昨今に、サロン分野の人気が高まっているのはうれしい限りだが、頭の中だけで考えた奥行きのない作品は、見ているうちに飽きがくる。体の奥底からにじみ出た感性を写真に表現して欲しい。
海外編については、国内と比べて旧来型の作品が多く、意欲的なデジタル作品が少なかった印象を受ける。当サロンの長い歴史の中で作品のはやりすたれはあると思うが、デジタルのテクニックを駆使して、過去の形を破った意外性のある写真表現を求めたい。
いずれにしろ大切なことは、その人でなければ表現できない独創性であり、選者の目はその魅力に引かれる。
[作品講評]
◆「漁を終えて」
構図や光を考えて撮るのが普通だが、この作品は計算外の良さが出ている。夕日を浴びて金色に輝くトラックに乗り込む漁師の後ろ姿。左横に飛んでいる鳥も重要な点景となっている。光のバランスと色彩が魅力的だ。
◆「ネイルアート」
現代女性の一面を切り取り、ファッション性がある作品だ。成人の日の式典会場で撮ったのだろうか、背景に和服姿が見える。大胆な手のクローズアップが効果的。年全日本写真展で銅賞を取った作品の別カット。
◆「僧」
心の中がそのまま出ているような修行を積んだ表情が、作品に奥深さを与え、哲学的な印象さえ受ける。全体的に暗いトーンで仕上げているが、ディテールまできっちりと描写され、背景ともマッチしている。
◆「Mother」
まるで悲しみと希望をたたえたかのような3人の表情。未来に向けてさまよい歩く印象も受ける。背景のどんよりとした空といい、作者が思い描いたイメージに沿った演出だが、意図的ではない自然な印象がよい。
◆「I Ask You For God's Sake!」
黒とグレーの暗い色調の中でキリストの画像が輝き、うずくまる年老いた女性の姿は、孤独感と人生の行く末を写しているかのようだ。単純なフレーミングも好感が持てる。
◆「Missing Mom」
乳飲み子の悲しみの表情と涙が効果的で、強い印象を与えている。下に見えるしわだらけの手は祖母の手だろうか。暗く落としたライティングが巧みだ。
審査員
田沼 武能 (Takeyoshi Tanuma) | 全日本写真連盟会長、写真家 |
細江 英公 (Eikoh Hosoe) | 全日本写真連盟理事、写真家 |
熊切 圭介 (Keisuke Kumakiri) | 全日本写真連盟理事、写真家 |
山岸 享子 (Koko Yamagishi) | 写真キュレーター |
林 喜一 (Yoshikazu Hayashi) | 全日本写真連盟理事関東本部委員長 |
富田健治 (Kenji Tomita) | 全日本写真連盟関西本部委員長 |
麻川尚良 (Naoyoshi Asakawa) | 全日本写真連盟西部本部参与 |
伊藤 滋 (Shigeru Ito) | 全日本写真連盟愛知県本部委員長 |
山川富士夫 (Fujio Yamakawa) | 朝日新聞東京本社写真センターマネジャー |
清水祐一 (Yuichi Shimizu) | 朝日新聞大阪本社写真センターマネジャー |
河合真人 (Mahito Kawai) | 朝日新聞西部本社報道センター・フォトディレクター |
冨永伸夫 (Nobuo Tominaga) | 朝日新聞名古屋本社報道センター・フォトディレクター |
協賛:コニカミノルタプラザ