「なに、あの子ったら、ヒッピーみたいじゃない....」
一人娘のマグカップに日本茶のティーパックを落としながら,まり子は何故かクスッと笑っていた。
優しく微笑んでいた。きれいにかたづけられたダイニングは、家庭的な匂いが一切しない。
まるでモデルルームの様なその作りに女性なら誰しもが憧れるであろう空間。
でも、生活感のない無機質なその場所には、冷たさは感じない。むしろ暖かい。
やわらかな時間が流れている。
「あっ、ちぃ」もうなんでだろう?
なんで猫舌だと言うことを忘れて、時々やってしまうのかしら? 舌先の火傷は気分が悪い。
この感じが大嫌いだから二度としまいと毎回思うのに...
また、やっちゃった。 また.....してまう。
いつの間にか窓の外は夜景と言う言葉が似合う都会の景色に変わっていた。
蛍光灯の白い光と注意信号の赤いライトが共産主の産み落とした命の様
脈脈と同じ打ち方をする赤。どうしても好きになれない。
見上げても星は死んでしまっている。
「 アナタと魅た空はキラキラしていたのにね。」
独り言だと気がつきくと無性に寂しく成り、そして、寂しい自分ごっこに冷めた。
もう、寝よう。
あの子は、葵は、今頃、友達と笑ってるんでしょうし....
そう、その頃、葵は笑っていた。