全国学力テストの結果公開問題で新たな動きが出た。秋田県の寺田典城知事は、07、08年の市町村別の平均正答率など結果公表に踏み切った。全自治体名を明記した公表は全国初で、「県内地域別ランキング」ができた格好だ。1校の自治体では事実上学校個別の結果が出たことにもなる。
市町村教育委員会は反発しているが、これは全国各地の動きにも影響し、文部科学省は従来の一方的通知ではすまない対応が必要にもなろう。改めてテストの意義を明確にすべきだ。
巨額の税金を投じて行われる公の事業の結果について、情報公開がされるのは当然の原理原則だ。ただ、序列化を排し、学力向上につなぐ学力テスト本来の趣旨に照らせば、慎重な配慮と共通認識が欠かせない。
現行テストは「学力低下」対策で昨年始まった。文科省は都道府県別結果は公表するものの、県教委などに対し、市町村別、学校別結果は開示しないよう実施要領でクギを刺した。
過熱して混乱した60年代の旧学力テストの再現を避けるためだが、「教委の責任回避になる」などと各地で反発の声が上がり、橋下徹大阪府知事らは文科省を厳しく批判。鳥取県では来年度から市町村別、学校別に開示する条例改正が成立し、埼玉県情報公開審査会も開示を答申した。公表は流れになりつつある。
今回の秋田県の措置で知事は「公教育はプライバシーを除いて公表が基本だ。有益な情報が県民に提供されないままになっている」と言う。同県では情報公開請求に対し市町村教委は反対し、県教委が市町村名を塗りつぶした結果を開示した経緯がある。教委に任せないで知事が判断するという構図も、今回の各地と文科省の「対立」に見える特徴といえる。
だが、一般に「順位」への関心の高さの割に、このテストがどのようなものか十分に理解されているとはいい難い。対象は小学6年、中学3年のほぼ全員で、毎年、国語と算数(数学)を基礎と活用に分け基本知識や記述する力を見る。一部の学年であり、国・数以外の分野の学力や適性を見ているわけでもない。
子供たちには採点結果が渡されているが、保護者や地域住民がさらに相対的に正答率の高低や傾向を知りたいと考えるのは、自然なことともいえよう。秋田の判断の支えもそこにある。
しかし、その前提として、これがどんなテストで、部分的ながらもどのような力を探り、その不足をどのように指導し、学力や適性を伸ばしていくか--を学校や教委も周知に努め、校区や地域にある程度共通の理解を広めておかなければならない。
でなければ、数字や順位がかつてのように独り歩きし、現場に再び混乱や萎縮(いしゅく)、偏見を生む恐れを懸念せざるを得ない。
毎日新聞 2008年12月26日 東京朝刊