Divers eye 王道の誇り 坂田健史 〔後編〕
12月31日、大晦日に防衛戦をひかえるボクシングWBA世界フライ級チャンピオン、坂田健史(28)。亀田興毅、内藤大助らの活躍によって注目を浴びている世界フライ級戦線だが、坂田はその中で1年半、着実に世界王座を守り続けている。
Divers eye 全力で生きるために 坂田健史 〔前編〕
に続き、今回は、世界チャンピオンとしての強いこだわりと、私生活の面など、坂田の素顔にせまった。
-フライ級にはこだわりがありますか?
そうですね。この階級で防衛していきたいという気持ちはあります。フライ級でいちばん強い選手と言われたいですね。世間からフライ級最強と思われたい。そういう認識が広まったら、こんどは階級を上げてみたいとも思っています。
-日本人選手の中で、坂田選手以外にもフライ級で話題になっている選手がいますが?
はい。でもぼくは誰からも逃げるつもりはありません。
-たとえば、亀田興毅選手との試合もしてみたいですか?
もちろんです。
ただ、ぼくは亀田選手の交渉側のことは知らないんですが、今すぐ試合ができるかというと、難しい側面もあるとは思います。
-もともと同じ協栄ジム所属だった亀田選手ですが、話したことはないと聞いたことがあるのですが?
そうなんですよね。しゃべったという記憶はないです。挨拶程度しか話したことはないです。
-嫌いだったんですか?
いやいや、個人的に嫌いだったなんてことはありません。ただ、プライベートで付き合う機会はありませんでした。彼には常に周りに取り巻きの人がたくさんいて、結局話すことはなかったということですね。
-亀田選手というとテレビなどではパフォーマンスの部分ばかりが目立っているような気がします。しかし、実際に会ってみると礼儀正しい好青年である、ということも言われています。その辺はどう考えていますか?
もちろん、プロ選手だからパフォーマンスの部分はあってもいいと思います。ただ、あまりにも相手を侮辱したりだとか、ばかにしたような発言というのは、やっぱりいけないと思います。
-坂田選手はWBA一筋です。内藤大助選手の持つWBCの緑のベルトに興味はないのですか?
いえいえ。もちろん興味はあります。日本人選手でWBAとWBCを統一した選手はいませんから。フライ級で最強ということを証明したいので、当然興味はあります。統一チャンピオンになりたいという気持ちはあります。
-WBOやIBFも?
そうですね。ただ、WBOやIBFは日本ボクシングコミッションが公式に認めていないので、難しいかもしれないです。
でも、全王座をすべて統一できたら、それは最高ですね。その夢がかなったらすごいことだと思います。
フライ級でいちばん強いのは自分であるという自信と誇り。これは厳しい練習を重ね、何度も防衛してきたからこそ生まれる本当の自信と誇りだ。統一戦について語る坂田の目は輝いていた。
-予想として、もし亀田選手と内藤選手が、対坂田選手よりも先に対戦をしたとして、どちらが勝つと思いますか?
うーん、そうですね。やってないのに、予想っていうのは本当に難しいんですけど、キャリア的に、内藤選手の方が修羅場というか、いろんな経験をしてきているので、そういう意味では、強みがあるとは思います。
-内藤選手とは2001年に一度、試合をしたことがありますが、そのときと比べて変わっていると思いますか?
はい。やっぱりあれからかなりのキャリアを積んでいるので、より老かいなテクニックを身につけた、強いチャンピオンになっていると思います。
-2001年の試合では、内藤選手をやりにくい相手だと思いましたか?
思いましたね。変則的なファイトスタイルの選手なので、やりにくいなって思いました。
-やりにくいけども、自分のほうが強いと感じましたか?
はい。あの試合の判定に関してはいろいろ言われていますが、
自分では勝ったと思っています。
-それならば、なおさら内藤選手との試合を見てみたいとファンは思いますね。
はい。実現したいです。
ここで坂田は刷り上ったばかりの、大晦日の防衛戦のポスターを見せてくれた。まっすぐ正面を見つめ、拳を構える坂田の写真の背後に大きく「王道」の二文字が書かれている。これは、坂田が今までボクシングのスタイル、選手としての心構えなど、すべてにおいて王道を歩んできた自負があるからこその二文字だ。
防衛戦では坂田は指名挑戦者デンカオセーン・シンワンチャーを迎え撃つ。地元広島での試合だ。通常ならリスクの高い指名防衛戦を先送りにし、やりやすい相手を選択することも出来たであろう。だが、あえて坂田は1年前に引き分けたことがある、デンカオセーンとの強制試合に挑むことに決めた。坂田は最もリスクの高い相手との地元での決着戦に堂々と立ち向かう「王」者の「道」を選択、本物を体現し、ボクシング界における今年の大取りを務める。これは、坂田の、今やれることを常に全力でやっておきたい、という考えの現れである。
それが坂田の考える「王道」なのだ。