〈朝大 朝鮮自然博物館 F哺乳類〉 絶滅の危機にさらされる動物 |
朝鮮半島のネコ科動物全種展示
最近、ヒマラヤで幻の生物の足跡を発見したというニュースが世間を騒がせた。以前からその存在が噂されてきたが、未だ確たる証拠のない生物、「ビックフット」だ。いわゆる雪男である。全身毛に包まれた巨体、雪山に隠れ住む彼らの正体は一体なんだろう。いや存在すら疑わしい、と批判しつつも、筆者はその手の話には目がない。幻の生物大好きである。 実際、絶滅したと思われていたが実は過酷な環境でひっそりと命をつないでいたという生物は少なくない。「生きた化石」(とは失礼な呼び方だが)、シーラカンスはそういった生物の代表格だろう。太古から姿をほとんど変えずに生きてきた彼らには敬意を表する。 ところが、逆にさまざまな要因でこの地球上から姿を消そうとしている種も少なくない。その筆頭は哺乳類ではなかろうか。地球上には約4630種の哺乳類が棲息しているらしいが、絶滅の危機に瀕している種がどれほど多いことか。今回は、当博物館に展示されている貴重な哺乳動物の紹介をしよう。
朝鮮半島には約120種の哺乳類が棲息している。わが朝鮮自然博物館には18種、27点のウリナラから送られてきた哺乳動物の剥製が展示されている。 博物館の中央に位置する動物展示室の上座に威風堂々と立ち、来館者を睨みつけているのはチョウセントラである。そのトラを取り巻くようにヒョウ、オオヤマネコ、チョウセンヤマネコと、朝鮮半島に棲息する4種のネコ科動物が全種そろって展示されている。彼らは、白頭山やウリナラ北東部に棲息するらしいが個体数は非常に少ないようだ。 次に目を引くのはアカシカであろう。馬のように大きな体とそれに似合った立派な角で捕食者と勇敢に戦ったのか、それとも雌を巡って争ったのだろうか。ほかに偶蹄類ではチョウセンシカ、ジャコウジカ、チョウセンカモシカの3種が展示されている。 小動物では尾の大きなコウライリスとおなじみのシマリス、背中が固い針で覆われたハリネズミ、ユキウサギやアナグマもかわいい。コウライイタチ、チョウセンカワウソは毛並みが美しい。
日本では既に絶滅が噂されているカワウソ。ウリナラでは現在も妙香山周辺など目撃例が多数あり、正確な生息地、生息数の調査が進められている。わが大学の「野生生物研究所」はこれらの哺乳類、鳥類などウリナラの動植物を保護する活動の一翼を担っている。ほかにもツキノワグマやキツネ、アザラシ、哺乳類以外ではアカウミガメ、巨大なオサガメやイトマキエイなどが展示されている。 「人は生物進化の頂点に位置する特別な動物である」と、ほとんどの人は思っていることだろう。確かに哺乳類は感情が豊かであったり思考能力が優れていたりする。とくに人は文明を持ち、科学を発展させてきた。だがそれは生物界で最も強く、最も偉い存在たる証なのだろうか。人を含む哺乳類はこれからも地球で繁栄できるのだろうか。人が住める環境とは現存する全ての生物が共存できる世界ではなかろうか。このままでは人が「幻の生物」になる未来はそんな先ではないのかもしれない。われわれ人類は偉大な力を持つがゆえに、とても重い責任を担っているということを忘れてはならない。(李景洙、朝鮮大学校理工学部准教授) 朝鮮自然博物館へは「朝鮮大学校国際交流委員会」へ電話連絡のうえお越しください。 朝鮮大学校 東京都小平市小川町1−700、TEL 042・341・1331(代表)。 アクセス ・JR中央線「国分寺」駅北口より西武バス「小川上宿美大前行き」または「小平営業所行き」「朝鮮大学校」下車徒歩1分 ・JR中央線「立川」駅北口より立川バス「若葉町団地行き」、終点「若葉町団地」下車徒歩10分 [朝鮮新報 2008.12.25] |