賃貸アパートの家賃を滞納したことから部屋のドアをロックされ退去を迫られたのは違法だとして、東京都の男性が、家主に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、福岡地裁であった。前沢達朗裁判官は賠償請求は棄却したものの、補助参加人として訴訟に加わった家賃保証会社(東京)がドアをロックした行為については、「男性の占有権を侵害し、不法行為にあたる」として違法と判断した。
家賃保証会社が絡むトラブルは最近目立ち始めており、今月5日には、違法な手段で退去を迫られたとして大阪府や兵庫県の入居者4人が慰謝料などを求めて大阪簡裁に一括提訴。福岡でも司法書士らが電話相談会を開くなど、被害回復を目指す動きが活発化している。
判決によると、男性は05年5月から、福岡市南区のアパートを借りた。その際、仲介業者から「県内在住の親類」か「家賃保証会社」を連帯保証人にする必要があると説明され、同社と保証委託契約を結んだ。
男性は06年6月ごろから家賃を滞納し始め、07年1月からは3カ月続けて滞納。男性に代わって滞納分のうち9万6千円を家主に支払った同社は同年5月、家主の委任を受け、男性に賃貸契約の解除を通知。さらに翌月には部屋のドアをロックし、男性は出入りできなくなった。結局、同年7月に荷物を運び出し、退去した。
前沢裁判官は、同社が家賃の肩代わりを最小限に抑えるためにドアをロックしたと指摘。同社は「契約上、男性はドアロックや鍵の取り換えなどを許諾している」と主張したが、前沢裁判官は「法律で原則禁止されている『自力救済』に当たり、例外的に許される、緊急で、やむを得ない事情があったとは認めがたい」と退けた。
賠償請求については「ドアロックについては家主の関与が認められない」として請求を棄却した。