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PAN、LAN、WANの無線接続は競合から協調への架け橋




 携帯電話、ポータブルメディアプレーヤー、ネットブック、ノートPC、デスクトップPC。世の中には、さまざまなデバイスがある。来年は、これらのデバイスが、競合する時代から、協調する時代へと変化を遂げるだろう。

●進むMicrosoftのBluetooth対応

 PCなんていらない。携帯電話だけで十分という声をよく聞く。でも、携帯電話でできることには限界もあるし、もしかしたら、携帯電話でできることのみに満足してしまい、多くを望まなくなってしまうリスクもある。

 でも、携帯電話は、決してPCと競合する存在ではない。むしろ、PCと協調させることで、今よりも、もっと暮らしを豊かにしてくれるはずだ。

 携帯電話に限らず、PCと協調させることで、その能力を加速させることのできるデバイスはたくさんある。そして、その協調のための手段として、ようやく市民権を得つつあるのがBluetoothだ。

 MicrosoftはWindows 7において、現存するすべてのBluetoothドングルをインボックスドライバでサポートすることを表明、Bluetooth ver.2.1の新たな省電力機能にも対応、また、プロファイルに関しても、従来のMicrosoftスタックが含んでいたHCRP、DUN、PAN、OPP、シリアルポート、HIDに加え、A2DP、Handsfree、Headset、AVRCPの追加を決めている。これだけのプロファイルが使えれば、ほとんどのデバイスで不自由しないはずだ。

 また、これらのBluetooth対応に関しては、すでに2008年の夏、「Windows Vista Feature Pack for Wireless」としてまとめられており、Windows Vista SP2にも含められることになっている。

●協調を拒むドコモ

 Bluetoothでは、使い始めるにあたり、デバイス間のペアリング作業が必要になる。Bluetooth2.1対応デバイスでは、そのデバイスがディスプレイを持っているか、キーボードを持っているかといった情報を頼りに、自動的にジェネレートされたパスキーや、機器固有の0000などのキーなどを使ってペアリングを行う。たとえば、マウスなどは、ディスプレイもキーボードも持たないため、パスキーを使わないでペアリングすることができる。

 Bluetoothのメリットは、消費電力が小さいことと、複数のデバイスを接続する際にも、ドングルのようなトランシーバーが1つですむことだ。

 ノートPCにマウスとキーボードをつなぎ、さらに携帯電話をつなぎたいといった場合も、個別にアダプタを用意する必要はない。もちろん、無線だから、ケーブルはいらない。だから、端子の数を心配することもない。

 たとえば、ぼくが普段使っている携帯電話、パナソニック製のP905iは、ダイアルアップの他、オブジェクトプッシュに対応している。ただ、残念ながら電話帳の送信だけにしか対応していないため、その魅力に欠ける。

 この秋、ドコモが多くの新端末を発表し、少なからずがBluetoothに対応しているので、ちょっと期待したのだが、あっさりと裏切られてしまった。オブジェクトプッシュに対応していても、送信できるのはあいかわらず電話帳のデータだけだ。赤外線やICでは送信できるのに、せっかくのBluetoothが使えない。これは、ドコモが頑なにPCとの協調を拒んでいるということの証明だととられても仕方がないだろう。そういうやり方に未来はないとぼくは思う。

 撮影した写真や、テキストメモ、録音した音声などを気軽に転送したり、音楽データなどの転送をBluetoothでできれば、どんなにいいだろう。また、携帯電話に内蔵されたGPSの位置情報を、PCから取得できればすごく便利に違いないと思っているのは、ぼくだけなんだろうか。

●WAN普及のカギはPANにある

 PCと各種デバイスの協調は、Bluetooth以外にも様々なアプローチが進められている。おサイフケータイの実体であるFeliCaなども協調のための通信手段として、うまく使えば便利になりそうだ。もっとも現時点ではFeliCaがカギの役割を果たしているだけで、データのやりとりといったことは考えられていないようだ。また、日本国内ではFeliCaが広く普及しているが、海外での普及という点ではまだまだだ。グローバルマーケットをターゲットにしたPCとの通信手段という用途では、FeliCaよりもBluetoothの方がずっと有力だと考えることができる。

 ちなみに、Bluetoothの実効速度はたかだか数百Kbpsで、高速化のためのEDR対応でも2Mbps程度だ。決して高速とはいえない。きわめて限定的なデータ通信にしか使えないだろう。無線LANの方が高速なのは火を見るよりも明らかだ。

 2009年2月末からはUQコミュニケーションズによるWiMAXの東京23区、横浜、川崎地区試験サービスが始まることになっている。おそらく最初はPCカードやUSBタイプの端末を使うことになるのだろう。ノートPCにモジュールが内蔵されるのは、まだ先の話だ。

 でも、こういうシーンでこそBluetoothを活かしたい。Bluetoothに対応したWiMAX端末があれば、本体をカバンやポケットに入れておき、それをPCからモデム代わりに使える。ダイヤルアップを使ってもいいが、端末側の操作をせずにPANで接続できればスマートだ。

 イーモバイルも、ドコモも、こうした使い方に対応できる専用端末を出す気配はなく、ユーザーは自分の工夫で、Bluetooth対応端末を調達したり、スマートフォンをゲートウェイにしてバッテリの減りと戦いながら使っている。

 WiMAXがWANの標準を目指すのであれば、こうしたニーズをきちんとくみ取るだけの姿勢を見せてほしい。当然、Bluetoothの帯域は、WiMAXのボトルネックになるはずだが、消費者が求めているのは、いつでもどこでもつながる利便性だ。そこで帯域が犠牲になったとしても、それを妥協するに値する利便性が手に入ればいい。それにはBluetoothが格好のソリューションになるだろう。

 PCと端末の間をBluetoothで結び、端末と基地局の間は802.1Xなどの認証で接続できれば、ユーザーは接続という行為を意識することなく、シームレスなインターネット接続環境を手に入れられるし、将来モジュールがPCに内蔵されたときにも、SIMに依存しない接続ができる。

 実際、ドコモの公衆無線LANサービスやNTTコミュニケーションズのホットスポットは、この夏から802.1X認証による自動ログイン機能をサポートするようになり、ログインの作業なしに接続できるようになっている。エリアに入ってPCを開くだけで、ユーザーは何もしなくてもインターネットに接続するのだ。

 WiMAXによるWANにおいても、こうした利便性が提供されれば、その便利さを知ったユーザーは、次に入手するPCとして、きっと、WiMAXモジュール内蔵機を望むだろう。そんなアーリーアダプタの気持ちを察してビジネスを進めてほしいものだ。

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(2008年12月26日)

[Reported by 山田祥平]

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