 運動に参加しているのは、単純に楽しいからというのがまずあります。参加者と話すことがすごく刺激になりますし、それが結果的に取材になり、書くことにつながっているので。全部イコールでつながっているんです。
今やってる一連の活動はすごく楽しいのですが、それはその裏でものすごくたくさんの犠牲者、自殺者を見てきたからです。直接の知り合いじゃなくてもネット心中事件が起きたときに、ここまできたかと本当にショックでした。日本の若者はどんなに厳しい状況でも立ち上がらずに、連帯するとしたら自殺する方向に、ネット心中とか死のための連帯しかできないのかというのがショックでした。
それがここにきてやっと「自分たちのせいじゃないから絶対に黙って死なないし、野垂れ死にしないぞ」と、若者がどんどん立ち上がり始めて、食い物にされてきた企業や政府に合法的な反撃をしているんです。
彼らも本当は死んでいたかもしれないのですが、ちょっとしたきっかけで「実は企業や政治など社会側にもこんなに問題があるじゃないか」ということに気づけたのが本当に大きいんですよね。それが楽しいというか感動的というか、本当に良かったと思います。このまま自殺者が増え続けていたら自分自身も頭がおかしくなっていたと思います。本当に絶望的な状況でしたから。それが一気に怒るほうに転じると、自分を責めて手首を切って自殺するんじゃなくて、社会に目を向けて怒るとこんなにいろんなことができるんだというのは大きな発見であり喜びでした。
そういう運動によって具体的な成果がどんどん生まれてきているんです。そもそも全労働者の約3割と、ここまで非正規社員が増えているのに、あまりにも権利が与えられていないし、差別されることが多いという現状自体がおかしいんですよね。差別する方が糾弾されるべきなのに、当事者の非正社員たちが「悪いのは自分だからしょうがない」とあきらめちゃっている。でも差別的待遇をされたときにあきらめちゃいけないんですよ。それはおかしいんじゃないかと常に言っていけば、変わる可能性だってあるんです。
例えばグッドウィルのデータ装備費の返還問題(※4)とか、日雇い雇用保険を厚生労働省に適用しろと言いに行ったら、本当に適用されたりとか。まず動かないと思っていた巨大な山が少しずつ動きつつあるのを間近で見て、本当に動いたときの喜びがすごく大きいです。こういう歴史が変わる瞬間に立ち会えるということが、仕事の醍醐味でもあり、私自身の大きなやりがいになっています。それまで数多くの自殺者を間近で見てきたから、余計に大きいですね。 |