まずは2006年にプレカリアートの集会に出て、勉強するようになって、ますます自殺や生きづらさの背景には、人の命や心よりも稼ぐことの方を優先させる経済至上主義や、社会全体を覆っている競争ムードや弱肉強食ムード、そして政府によって盛んに喧伝されていた「自己責任」などが、絶対に関係あるだろうなと感じたんです。なぜそうなったのか突き止めたい、そしてこの問題をなんとかしなきゃと思ったんです。それは自分の問題でもあったからです。
私もフリーターだったころは生きづらさを感じて厳しい毎日を送っており、とにかくフリーターから脱出したいと自分のことだけしか考えていませんでした。そのときの仲間でいまだにフリーターの人や、ホームレスになった人もたくさんいます。
私も20歳のころは、将来はホームレスになるしかないと思っていました。当時は普通に働いているのに貧乏で、家賃が払えなくて親に頼んでお金を借りていたのですが、親が死んだらそれもできなくなるので、「親が死んだらホームレスになるだろうな」と。そう思っていたら、30代になったときに、現実に周りのたくさんの同世代の人たちが不安定な生活で家賃が払えなくなって、ホームレスになっていて愕然としたんです。
さらに、うつ病になって引きこもったり、自殺した人もけっこういるんですよ。なぜ自殺したのかその経緯を調べると、やっぱりまず就職活動の時期に就職氷河期で100社に応募したけど全部落ちて、その後フリーターになるしかなかった。仕事もすごく低賃金で不安定でちょっとしたことですぐクビになる。働けなかったらお金が入ってこないので、電気、ガス、水道などのライフラインが全部止まる。家賃を滞納して追い出される。フリーターでいる限り、不安定で生活がぜんぜん楽にならないし、一度フリーターになったらなかなか抜け出せない。親や周囲からはダメなやつと責められて、精神的にきつくなるばかり。「自分は本当にダメな人間なんだ」「誰からも必要とされていないだ」「生きていちゃいけないんだ」という思いが日増しに強くなって、うつ病になる。そして自殺しちゃったというケースが多いんですね。
そういう人をたくさん身近に見ているので、自分だけフリーターから脱したら、今度はそのことに罪悪感を抱いてしまって。自分さえよければいいのか、仲間のことは見捨てていいのかという思いが強くなったんです。
私も彼らと同じなんですよね。私はたまたまフリーターから脱出できたわけですが、それはすごい奇跡のような偶然で、決して自分の努力の賜物ということではありません。もうひとつのありえた人生としては、フリーターでい続ける確率の方が高かった。奇跡のような幸運がなかったら、高卒だし何のスキルもないので、ずっとフリーターのままで、ホームレスになっていただろうと思うんです。もしかしたら野垂れ死んでしまっていたかもしれない。そう思うと本当に全然、他人事じゃないんです。それでこの問題を何とかしたいと思ってプレカリアート問題に本格的に取り組むようになったんです。
プレカリアート問題の根本の原因について調べていると、ものすごくショッキングな事実に突き当たりました。生きづらい人たちが増えたのは、政財界の企みによるものだったのです。 |