弁護士過疎対策で日本弁護士連合会が鹿児島県奄美市に開設した公設事務所に多重債務の処理を依頼していた男女2人が、処理を放置されて給料を差し押さえられるなどの精神的苦痛を受けたとして、前所長の高橋広篤弁護士(32)を相手取って計770万円の損害賠償を求める訴えを鹿児島地裁名瀬支部に起こしたことが23日、分かった。後任の所長に同様の苦情が約120件寄せられており、日弁連も調査している。
訴えによると、高橋弁護士は2005年5月と06年9月、市内の40代女性と男性から依頼を引き受けた。しかし、債権の整理を放置したため、女性は消費者金融会社から給料を差し押さえられ、男性はホームレス生活を強いられたなどとしている。ともに22日に提訴した。
2人の代理人は現所長の大窪和久弁護士。大窪弁護士によると、高橋弁護士は「やるべきことはした」と書面で反論している。
公設事務所は05年3月開業。高橋弁護士は初代所長として派遣され、今年4月までの在任中、多重債務問題に力を入れ、800件の依頼を受けたとされる。現在は静岡県掛川市に事務所を開いているという。
日弁連は奄美市に担当者を派遣する一方、高橋弁護士からも事情を聴いた。日弁連公設事務所・法律相談センター副委員長の青木信昭弁護士によると、高橋弁護士は「事件を多く引き受けすぎた」と話したという。本年度中に調査を終え、依頼者の救済などを検討する。
=2008/12/24付 西日本新聞朝刊=