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社説
少年審判傍聴 更生につながる運用を(12月24日)これまで非公開だった少年審判を、事件の被害者やその家族が傍聴できる制度が始まった。 改正少年法施行に伴う措置で、加害少年と向き合って真相を知りたいと訴えてきた被害者側にとって、大きな前進だろう。 ただ、少年審判の目的は、少年の立ち直りにあることを忘れてはならない。裁判所には、傍聴制度を少年の更生につなげていく運用の工夫を続けてもらいたい。 傍聴が認められるのは、殺人や傷害致死などの重大事件や交通死亡事故、被害者の生命に重大な危険が生じた事件だ。 被害者や家族・親権者からの申し込みを受け、家裁は少年の付添人に意見を聞いて傍聴の可否を決める。十二歳未満の事件は除かれる。 少年審判は、家裁送致から一カ月以内に開かれることが多い。被害者側にとっては、事件のショックから立ち直る時間が限られている。 少年が反省を深めずに審判に臨めば、不用意な発言で被害者の心をさらに傷つける恐れもある。 傍聴制度の運用に当たって、裁判所は、少年に接する調査官や心理面を調べる鑑別所の意見を十分に聞く必要がある。 そのうえで、少年が被害者や遺族の前で話せる状態かを、慎重に見極めてもらいたい。 被害者が極度に不安を感じるようならば、弁護士らの付き添いなども弾力的に行ってよいだろう。 加害少年と被害者側が一室に居合わせることで、思わぬトラブルが起こる心配もある。 京都家裁や名古屋家裁のように、加害少年と傍聴席を隔てる仕切りや柵を審判廷に設ける裁判所もある。 傍聴席を少年が座る席の後ろに設け、直接に顔を合わせない配慮もあってよいだろう。 少年審判は「懇切を旨として和やかに行う」というのが趣旨である。裁判官が、少年の更生を願って励ましの言葉をかける場面もある。 被害者を前にした少年が、自分の思いを率直に話せないような事態は避けねばならない。 審判の進行や発言内容などによっては、被害者側に一時的に席を外してもらうなど、柔軟に対応することも必要ではないか。 これまでの少年審判では、被害者側の強い悲しみや怒りを伝え聞いて、真剣な償いの姿勢に結びついた事例が報告されている。 被害者の傍聴が、加害少年の更生にどこまでつながるのか−。 最高裁は、審判傍聴の事例を積み重ねる中で、メリットや運用上の問題点を検証し、納得できる制度への改善を怠ってはならない。 |
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