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年末スペシャル 〜年賀状が届くまで〜

 年賀状は正しい郵便番号を記入して12月25日までに出していただきますようお願いいたします。

by 垂βイ更事業木朱式会ネ土



 というわけで、民営化された某社々員の息子から年賀状が配達されるまでのprocessをご説明しましょう。

<取集>

 まず、午前10時にポストに投函したとします。すると、東京近辺では昼過ぎに回る「2号便」(具体的な時刻は各ポストに記載有り)の赤い車で回収され、14時頃に集配局(小平市内なら小平郵便局=垂Bイ更事業木朱式会ネ土小平支店)に集められます。ここまでは集配営業課の仕事で、支店に着くと、かごで郵便課に引き渡されます。

<粗選別(アラセン)>

 郵便課に引き渡されたポストからの郵便物は、とりあえず郵便課の中の年賀担当が最初に処理します。これは、一般社員と数十名の年末年始短期ゆうメイト(郵便局のアルバイト)によって組まれる特設部隊で、小平支店では昼過ぎのこの時間は社員数名、ゆうメイト十数名の計20名ほどがあたります。
 年賀専用ポスト以外からの郵便物は、普通の郵便物(一般信書、略して一般信)と年賀郵便物がごちゃまぜの状態です。また、年賀専用ポストに一般信が混ざっていることもあります。
 そこで、真ん中にどんと引き渡されたかごをおき、左右のかごに一般信と年賀をひたすら分けていきます。これがアラセン。普通ハガキに「年賀」と書かれたものや、場合によっては裏を見ないと年賀状と分からないものもありますが、これも分けてやらないといけません。…毎年必ず年内配達が複数発生してしまうのですが。
 逆に、年賀ハガキを懸賞応募などに使うお客様もいらっしゃるので、そのようなものは間違えずに一般信に分けないと元旦まで配達されず、締切りに間に合わないなどという事態も招きかねないので、「粗選別」といいながらも気を使う作業です。
 これで、元旦に配達する年賀と即日配達の郵便に分けられました。即日配達の一般信は担当の職員もとい社員に引き渡されます。終わると15時近く。

<取り揃え>

 元旦配達の年賀郵便物をさらに分けなくてはいけません。具体的には、消印を捺さずにすぐに区分に回す官製年賀ハガキと、消印を捺さなくてはいけない切手が貼られた私製ハガキや普通の官製ハガキ、さらにアラセンで漏れた一般信や海外宛て年賀状(自分も1枚出しました)が混ざっていることもあります。
 ここでは、それらの即区分でない郵便物を取り除き、残った郵便物を区分機(後述)にかけるために向きを揃えてやる必要があります。逆さまや裏返しだと区分機が読み取れません。
 年賀状は多くの場合お客様が束ねて投函されます。アラセンの時、これは非常にありがたく、束はそのまま年賀の方へ放り込みます。しかし、束のままでは区分機にかけられませんので、取り揃えの際に輪ゴムや紐をすべてはずします。輪ゴムは専用の箱にいれ、それ以外の紐やビニール袋等はゴミ箱へ。2号便の取り揃えが終わると数千本の輪ゴムが箱からあふれんばかりになります。元旦に配達される年賀状、一家単位で輪ゴムで束ねられてますね? この輪ゴムの出元はこれです。リユース。
 もう一つ。年賀状を投函する際、市内・都内・都外等、分けて束にしてくるお客様がいらっしゃいます。中には県単位で束ねられるお客様もいらっしゃいます。しかし、残念ながら取り揃えの段階ですべての束がばらされ、ごちゃまぜになります。例外としては、その集配局の配達地域内(小平支店なら小平市内)の郵便物だけは束ねてあると市内枠でまとめられます。何故かというと、後述の差立区分という段階において区分機にかけると、区分機が郵便番号を読み取り、送り先の地域ごと(市内、石神井支店、横浜港支店etc. 東京から離れるほど数量も減るので大雑把になる)に分けてくれるからです。小平市内として束ねられた年賀状ならこの差立区分をせずに小平市内の配達区分に回るので若干近道になりますが、市外はどう束ねても結果は変わらないのです。

 束を外し、数十枚単位でダァーっと機械にかけないものを取り除き、向きを揃えたものはその固まりを崩さないよう向きをそろえてかごに詰め、区分に回されます。
 ここまですべて人海戦術の手作業で、2号便の取り揃えは夜までかかったりします。


市外宛

<差立区分>

 小学校で見学しました。区分機の登場です。区分機のフルネームは「郵便物宛て名自動読み取り区分機」(21世紀こども百科「大図解」より)です。…がググってもこのブログ以外にその名は出てきません。
 取り揃えの項で説明しましたが、区分機にかけられる状態になった"市内宛として明記して束ねて投函されたもの"以外の年賀状は、全部まとめて差立区分の区分機にかけ、宛先地域ごとに区分します。
 差立の段階では、区分機はOCRで郵便番号のみを読み取り、読み取ったデータは紫外線を反射する透明インク(引火性あり。区分機そばは火気厳禁。)でバーコードとしてハガキに印刷されます。ブラックライトを郵便物の表面にあてれば見ることができます。たまに屋外の日陰でも太陽からの紫外線でうっすらと見えることもあります。
 

 
 
 高速モードで3万6000通/時、1枚が供給されてOCRで読み取られ、バーコードを印刷し、各区分棚に入るまでの時間は10秒足らずです。当然ですが、区分機へのハガキの供給、各棚へ区分された郵便物を抜き取って束ねる作業は人手に依ります。供給1人、抜き取り2人程度。
 ちなみに報道によると銀座支店など一部の大規模支店では5万通/時の新型機が入ったとか。

 供給時、本来は取り揃えの段階で向きが揃えられて、要消印の郵便物(官製年賀ハガキ以外すべて)や一般信は取り除かれているはずなのですが、差立の段階でもまだ混入していることがあるので供給時にもう一度確認します。3時間で10万通流すと数十通混じってます。まぁ取り揃えも大半が新人の短期ゆうメイトだからね…。

 郵便番号が機械で読み取れないと人手による"差立手区分"に回ります。最近の年賀状ソフトは郵便番号簿内蔵なのでいいのですが、区分機で読み取れないものは、えてして郵便番号が間違っているものが多い。要注意。

<さようなら〜>

 早ければその日の夜のトラックでこの地域の地域区分局(解説する気力はない。ググるべし。)である東京多摩支店(通称「とーたま」)へ送られます。夜の内にに多摩各市から集められた郵便がまとめられ、おおまかな地域ごと(およそ郵便番号上2桁)に分けられたかご単位で区分されます。さらに多摩地域宛のものはそこから集配局ごとにわけ、集配局に送られます。
 また、多摩地域全域からの広島宛郵便物は東京多摩支店から広島中央支店へ大型トラックに乗せられて運ばれます。
 逆に、全国から多摩地域あてに送られて来た郵便物は、東京多摩支店で管轄の各集配局ごとに区分され、前述の多摩地域内相互のものと合わせてトラックで集配局へ送られるのです。




市内宛

<1パス(ワンパス)>

 まず、取り揃えで市内と分別された郵便物と他局から小平市宛として送られてきた郵便物の郵便番号と住所をOCRで読み取ります。
 たとえば稲穂県ミドリ市花山町の郵便番号が310-8780だっとすれば、310-8780という7ケタに花山町までの情報が含まれています。つまり、稲穂県ミドリ市花山町1-23-4というのは言い換えれば「310-8780-1-23-4」ということになります。なので、区分機は数字だけを読み取れば原則としてすべての処理が行えるのです。
 こうして印刷されたバーコード情報を元に、一見するとよく分からない順番で区分します。これが1パスと呼ばれる作業です。
区分率は83%前後。その83%に入れば、その日のうちになんとか終わるでしょうか。残りの17%はVCSか配達手区分に回されます。

<VCS打鍵>

 達筆な文字、プリンタの設定不足で印刷位置が大きくずれた文字、小さな文字…。機械で読み取れない場合は多数あります。それこそ本当に万単位で。それらはVCS=Video Codeing Systemに回されます。宛名書きをスキャンした画像がディスプレイに表示され、人間が読み取ってキーボードで入力してやり、それを機械がバーコード化して印刷し、ある程度まとまったら区分機にかけ直されます。速い人だと3000通/時くらい、つまり1秒ちょいで1枚を処理するそうで、それでも数人の社員で機械読み取り不可を全部処理するのに数時間かかるとか…。新入りの短期ゆうメイトがやったって終わらない。

結論:早く確実に届けたければ郵便番号は楷書体で、印刷なら試し刷りで位置を合わせて、枠に合わせた適切なフォントサイズで、ゴシック体など機械が読みやすいように記入しましょう。

 郵便番号を打ち込まれたものは今度は住所を打ち込みます。郵便番号と違い、書いてある場所がバラバラですからなおさら打ち込む人間は大変です。
 最近の年賀状ソフトは工夫されてますが、ワープロで打たれたもので

稲穂県ミドリ市花山町1―1
1―101

となっていると1-11-101なのか、1-1-1-101なのか区別がつきません。

 漢数字もやっかいです。

  一
  |
  二
  三
  三
  一
  |
  五

とか手書きだと人の目でも判別できないときがあります。

 算用数字でも
  1
  |
  7
  |
  1
  |
  7743
などは機械には辛いのです。フォントによっては1とハイフンがくっついていたりとか。

と言うわけでとってもありがちなよくない例を1枚。クリックすると拡大します。
(差出人名と宛て先住所・人名・郵便番号は架空です。差出人住所・郵便番号は実在です。)




 早く配達してもらうためのよりよい書き方・出し方はこちらのページにあるので一読されることをお勧めいたします。VCSで読みやすい字とは即ち機械も読みやすい字ですので。7年前のページなので区分率が6割とか古い情報もありますが、大体は今と変わりません。
 



 VCS打鍵が済んだものは1パス再供給としてもう一度1パスにかけられ区分されます。


<2パス(ツーパス)-道順組立>

 1パスで分けられた年賀状は、さらにもう1度区分機に通すことによって、バーコードを読み取り区分します。1パスは適当でいいのですが、2パスは1パスで区分された棚ごとに順番を間違えずに供給しないといけません。するとあら不思議。1パスでよく分からない区分をされていたものが、配達順に並べられちゃうのです。
 ここには1パスにおいて区分機で読み取れたものとVCS再供給でバーコードが印刷されたものしか回ってこないので、大方スムーズに行きます。区分率は97%以上。供給順を間違えると壊滅します。2パスで配達順になる仕組みを知りたい人はトランプを持って私のところまで。


<配達手区分>

 配達手区分に回るのは、2パスで漏れた3%と、差立で187だけ読み取れて小平市内と区分されたものの、それ以下が読めなかったものなどです。1パスで漏れたものは大抵VCSに行きます。数値で見ると少なく見えますが、仮に小平市民1人に平均10通年賀状が来るとしての170万通、2パスで漏れた3%だけでも5万通あまりになります。実際はそれより遥かに多いです。
 手区分では、郵便番号ではなく住所を目で見て棚に放り込みます。郵便番号が間違ってるなど多々あるので。他局から小平に来た郵便物には三鷹、西東京、東村山宛の郵便物が特によく間違って入ってきます。理由は郵便番号簿を見ればわかるでしょう。つまりは小平宛が三鷹にいってることもたくさんあるのでしょう。それらは端にある「誤配」の棚に放り込んで、あとで別に処理します。その分だけ配達は遅くなるわけです。


<配達>

 この道順組立を終えると、配達区ごとに担当の集配営業課に引き渡されます。そして配達担当者が区分機で道順組立されたものに、手区分のバラバラのもの(VCSに回った分は打ち込まれたあと区分機に戻るので道順組立されるが、手区分は配達区分までしかされない)を1枚ずつ混ぜていき、配達先ごとに輪ゴムで束ねて配達するのです。
 この最後の配達区分作業は配達ギリギリまでやるため、元旦に配達ができるのは「大晦日の朝までに区分機による道順組立または手区分による配達区分が完了して集配営業課に引き渡されたもの」になるわけです。



 簡単にまとめると、広島の街中のポストに朝10時に投函した、区分機で読み取れない且つ間違って福島の郵便番号が記入された年賀状の流れは…

25日
10時 投函
14時 集配局着
アラセン→取り揃え→
差立→VCS→再差立

26日
午後 広島中央局着
夜 長距離輸送

27日
朝 福島中央局着
午後 福島の集配局着
   VCSで福島として打たれているので区分機による配達区分は華麗にスルー
夜 道順組立で異物の混入が発覚?!

28日
朝  福島中央局へ返送夜  多摩中央局着

29日
朝  小平局着
   手区分で配達区分
夜  集配課へパス

30日
配達準備完了



 というわけで、元旦配達ギリギリになります。まぁ結構アバウトな例なので実際このようになるかは分かりませんが…。
 ちなみに広島でVCSが短期ゆうメイトではなくベテラン社員に当たれば、住所が東京ってので郵便番号が違うってすぐに気付いてそのまま東京に送ってくれるかもしれません。この例はあくまでもとっても時間がかかった残念なパターンということで。


 でも実際にこうなることがありえるから、


 年賀状は正しい郵便番号を記入して12月25日までに出していただきますようお願いいたします。

by 垂Bイ更事業木朱式会ネ土



なのです。お分かりいただけましたでしょうか。

 では、よいお年を。
 
 
 
<お詫び>
 私はまだ15枚ほど年賀状を出しておりません。一部の方には元旦に届かないことをあらかじめこの場を借りてお詫び申し上げますm(_ _)m









え? なんで30日にもなってこんな記事を書いたかって? 私も鬼ではありませんから、24日くらいに書いてみんなを慌てさせるのもよくないかなとおもったのでね。


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