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社説:09年度予算案 これでは生活防衛できない

 09年度予算の政府案が24日決定された。これを受けた記者会見で、麻生太郎首相は「生活防衛の大胆実行予算」と自賛した。財務省原案内示後、首相が自ら配分を決めた重要課題推進枠(3330億円)からの775億円を含めて、社会保障関係費が14%増、地域活性化対策や中小企業対策にも配慮したと言いたいのだろう。

 では、これで国民は不安の連鎖から抜け出すことができるのか。

 09年度予算編成は、国際経済情勢や政治の動きに翻弄(ほんろう)された。経済状況が急速に悪化する中で、緊急課題が数多く出てきた。政府の3次にわたる景気対策の事業規模は75兆円、財政措置も12兆円に達する。規模や国内総生産比率では国際的にも見劣りしないが、国民の期待は高くない。

 しかも、税収が大幅に減少しているためその財源は基本的に借金頼みだ。

 09年度の赤字国債発行は前年度当初比5兆6000億円増の25兆7100億円だ。将来の赤字国債発行につながる財政投融資特別会計の準備金からの流用も4兆2300億円に達する。

 赤字財政もそれにより国民の安心が増し、経済の体質も強化されれば、税収増加をもたらし、赤字体質からの脱却も展望できる。09年度予算では、経済緊急対応予備費1兆円の使途は今後のことにしても、医療、介護、雇用のいずれをとっても、当初の予算配分は十分とはいえない。経済活性化や雇用拡大に不可欠な経済構造転換などが展望できる予算にもなっていない。

 100年に一度の経済危機というのならば、予算配分は全面的に見直せばいいが、それができないのだ。

 道路特定財源の一般財源化は実施されるが、道路整備費は地域活力基盤創造交付金分などを含めて8・8%減に過ぎない。これでは看板倒れだ。基礎年金の国庫負担割合引き上げも安定財源手当ての明確な保証があるわけではない。

 一方で、無駄の徹底した排除や歳出改革は道半ばのままだ。歳出にメリハリを付けるよりも、財政規模の拡大で要求に幅広く予算を付けていくことに腐心したと言わざるを得ない手法も使われた。

 「国民生活と日本経済を守る」ことが09年度予算の課題であるという。正論であるが、なぜ、それができそうにないのか。

 持続可能な社会保障のための「中期プログラム」の与党内協議でも、消費税引き上げなど国民に負担増を求めることはできる限り避ける、逃げの姿勢や増税隠しの体質が鮮明になった。これでは、財政がその役割を果たすことはできない。

 日本経済が持続的な発展をしていくためには、衰弱した財政力の立て直しは急務だ。与野党ともこのことを認識し、具体策を国民に提示することこそが求められているのだ。

毎日新聞 2008年12月25日 東京朝刊

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