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2008.12.24

田中先生と勝手にオルタナティブな議論をしてみる

 ちょっと酔っ払って書いていたので、きちんと伝わるような書き方をしてなくてすみませんでした。

■[ネタ](今夜もお酒は飲まない)日本は不況をうまく活かせるのか???
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20081223#p3

 とはいえ、ちょっとお出かけをするので、簡素に書きますけれども…。

○ 清算主義について

 困ったことに、清算主義って概念が何だかよく分かっていなかった…。なので、いま適当に具具って得た解釈を勝手に真実と判じて論ずるので間違いも多いかもしれない。私が得た解釈は「不況によって、非効率な企業がより淘汰される」が清算主義とす。

 で、私の言いたかったことは論理的に逆で、非効率な企業が(資金調達の不備や売上高の慢性的な現象によって)淘汰される局面を不況と呼ぶのが金融的なアプローチだろうと思います。つまり、非効率だから不況の際に銀行から借り入れをできなくなり、死んでくことは、誰にも止めることはできないし、銀行も行政の強い監督下に置かれているとは言え民間なのだから個々の判断で融資を止めている状況が連鎖して、不況が強まるんじゃないの、という意味合いですね。

 したがって、主義(ism)の問題じゃなくて、事実関係の問題です。不況になったら赤字の会社が先に倒れるんで、「そうであるべき」というより「そうなってしまう」し「それを防ぐことは(民間では)無理」であるということです。

 その意味では、どっかで読んだ竹森俊平氏の著作でそういう話が書いてあって、それはそうだけれども、現実に黒字倒産を含めキャッシュフローがマイナスなところが倒産しているのが不況の現象のひとつなのだし、そういう非効率で採算の悪い会社が潰れることで実際に残存者利益風に売上全体がその業界内での強い会社に寄せられるのだから、それは批判とか反論とかあっても事実そうなっていてどうしようもなかろうと。

 現象を促進させているのは業績管理モデルで融資可否を決める銀行の仕組みが回ってるからで、担保があっても業績が悪ければお金は貸しませんよという状況になると、ロールオーバーできない赤字企業から倒れるのは「学術的にそうじゃない」と言われても現実に起きているのだからしょうがないような。

 赤字だけど、効率のいい会社というのが存在するなら別ですが…。

○ IMFの統計が信用に足るかどうかについて

 信用に足ると思います。

 で、経済成長率を額面で見た場合、日本の落ち込みが他よりも大きい、したがって相対的に日本経済はよろしくないという理屈は成立しますが、金融においてこれらの議論は次の二つの意味で役に立たないです。

 ・ ドルベースで計算すると日本は10%以上のゲタを履く

 経済成長率について言うならば、金融においては調達している通貨を基準に優劣を決めるべきであり、流動性のない通貨圏がいくら高い成長率を誇っていたとしても兌換性の限界点を超えればそれは価値を持っていないも同然の結末を迎えることになる、ということはLTCM問題で経験済みです。円を持っていて日本で生活している人は、オーストラリアドルなどの外貨預金が高い利息で魅力的であったとしても、その投資はいずれ取り崩して円転して利用するということであればAS$自体の価値が下がってしまうことのリスクと隣り合わせであるという理屈と同じです。

 つまり、原則として多くの金融機関の調達通貨はドルであり、ドルベースで各国の経済情勢(あるいは各国に保有している証券や不動産など、ある程度の流動性と客観性が担保で切る資産価値)をみなければならないわけです。

 逆説的に、円高が続いてこれが政策如何を問わずまあしばらくドル80円台から90円台に推移すると言う前提で考えても差し支えない状況であるならば、去年平均103円の相場から比べて常に日本経済は10%以上のプレミアムが資産評価に乗っかっているのであって、経済成長という単純評価と金融業界での価値判断とは必ず乖離することになるのです。

 また、この状況で1%や2%の経済成長率の高い低いを見て投資に出る事業家はいません。むしろ、流動性や対運用ベース通貨での見通しをディフェンシブに見て博打を張るのが普通じゃないでしょうか。

 ・ IMFの発表する数値は後付け的に解釈されるもので、相場の見通しではない

 これは為替や証券などの取引を担当する人間であれば、仕事開始三ヶ月以内に叩き込まれる内容ですけれども、IMFに限らず経済統計というものは過去のデータから統計的に参照されるもので、いままでどうであったかを解釈することは出来ても、IMFが将来その国や地域の経済の将来を見通すものではないということになります。

 すなわち、ファニーメイ破綻前にIMFはアメリカや中国の経済成長見通しにおいて何をいっていたか、サブプライム問題が広がってLB破綻後に彼らは成長見通しを下方修正して問題が深刻であることを明らかにしますが、これらは起きたことが経済全体に対してどのような影響を及ぼすかを、データを元に統計的に解釈しているに過ぎません。

 まあ、起きてしまっている状況が、その経済全体に与える影響がどのくらい重要か(または軽微か)を事後に把握するという目的で参考にすべきものだろうと思います。というか、先物トレーダーが農務省発表を予想するのと随分違うんだろうなあと。

 それゆえ、IMFの発表するデータは間違いなく正しいけど、それが出るころには例外なく事態が先に進んでしまっているので、IMFの出すデータを参考にして売買するなどという投資家はあんまりいないだろうし、パフォーマンスも高くならんだろうなあと。

○ 実体経済の悪化について

 日本経済が火の車かどうかという話ですが、あまり実体経済に厚みのない中国やインドがこれから経験する経済停滞よりは随分穏やかな火災で収まるだろうし、先進国の中で日本が飛びぬけて悪いかと言われるとそうは思わないです。アイスランドなんて99%減という国全体が光通信みたいなことになっていますから、そういうのと日本とは随分違いそうです。

 スイスやドバイと日本を比べるな、と言われる向きも多いですが、保有していた金融資産は昔から比較にならないほど日本のほうが多く、問題は利回りが低いことでした。利回りが低いから日本に資金が集まらない。

 で、利回りをきちんと説明できる状況になってきたのは、バブル気味な資産評価が剥落して常識的な範囲で値段が収まるようになったここ半年ぐらいのことで、「この発想は基本的に強い円(きちんとしたプレゼンの円)論のサブプライム版でしかない」というのは若干違います。円が強いというよりは、他の通貨(とりわけユーロ)で持ちたくない、という別の事情があり、かつ、日本資産を持つことによる運用利回りが相対的に有利になったからに他ならないわけです。

 これが上記IMFの年間金融収支など統計面に反映されるのは2010年以降になります。いま投資した物件の所得は2009年に配当として受け取り、価値の上昇を認められるのは早くとも2010年ですから。証券化して将来の利益を先食いしていれば話は違いますが、いまどき証券化しますかね? だから、いま日本に対して投資が行われている実態は統計上はまだ不胎化状態であって影も形もないです。

 加えて「投資家のマインドが極度にリスク回避的な状況では、「きちんとしたプレゼン」を行った安全資産(現金や国債)にお金が流入していき、それがますます日本の低迷を深めることになるのだけれども?」については、投資家のマインドが極度にリスク回避的であるかどうか考えなければなりません。ぶっちゃけ、日米欧で資産をそれほど毀損しなかった投資家は、そこまでリスク回避的ではないんじゃないですか。7月かその辺のエントリーで書きましたけれども、あのころすでに何事か起きるねと言うことでポジションを整理している投資家はかなりいたろうと思いますし、そういう人々は保有資産が二割減とか三割減で済んでて長期の再投資の余裕もあり準備もしています。

 ヘッジファンドなど、明日にも資産を全部処分して現金に換えなければ死んじゃう人たちが起こしていたトレンドは結構前に終わっていると(私は)思っています。国内の銀行などがお金を貸さなくなって不動産業者などがバタバタ倒れていた時期はありましたけれども(笑)。

○ 「グローバル化云々企業によらず日本の全産業で状況悪化(これも統計みよ)」について

 これは悪化とみるか、価格の適正化とみるか、微妙なところであるわけですが。

 もちろん、去年に比べて情勢は大幅に悪化していると解釈するのが自然ですけれども、もともとグローバルなんて関係なかったんじゃないかと思います。失業率や成長率については… 正直言うと、投資的な見地からいうと良く分からんパラメータです。実体経済が悪化している、と言われても、前のエントリーみたいに飢饉が起きて大恐慌になってという話でもなく、市場も普通に値段がついていて、下がったといっても半値程度で済んでいて、今後悪くなるといっても前の不況もこんな感じだったよとしか…。

 そういった意味では、市場関係者の一喜一憂とは(減ったとはいえ)週間450兆円ほどの動きの一部を示してはいるわけで、はい。

○ 完全失業率とか

 良く分からないです。実体経済は前に比べて悪化してると思いますが、前が異常だったんじゃないですかね。無理な信用創造を繰り広げて世界的にバブっていたころと比べて、いまは実体経済最悪だ、というのは相対的に見てそれはそうだろうけど、元からこんなもんだったんじゃないかと、ロスジェネ世代な私は思ってしまいます。

 問題は、実体経済が悪化するのは当然として、それがしばらく続くのも当然として、はて、どう対処して環境に適応するのかしら、という話じゃないでしょうか。

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Comments

金融が恐竜だった、というだけなんじゃないかな。
人間をはじめ適応能力が強い生き物は生き残るでしょ。

で、小さい会社にしても、例えば、社長は一切の仕事が、金の工面だったりするところは、アウト。
大学にしても、授業や研究でなく、資金運用しているようなところもアウト。

現在の仕事はなくなっていないし、
なくなったのは、金融上で予測していた未来の仕事、
つまり、先物取引に失敗したってことだよね。

だいたい、先物取引の使命は価格の安定化だったのに、
高騰させたのが、金融会社だったわけだ。

なので、先物を安めに捕らえておけば、
損は小さいってことなんじゃないの。

じゃぁ、日本全体と、アメリカ全体の先物の、評価をできるかでしょ。

ただ、バカたちが、穀物相場の先物を、非合法的に操作しだしたらヤバイな。

あと、中国は、道路建設と大型自動車の生産が増強されれば、それなりになんとかなるんじゃないの。運ぶものは農産物であったり、大型テレビだったり。

日本は、ネットインフラを、無線、有線に力を入れて、郵便にたよらなくても良いようにすればいいのに。なんかしらんが、デジタル放送が山の中では届かないとか、なんかしらんが、電気がいっているのに、なんで、テレビは、ずっと無線なんだ? それからコストの高い、電柱を埋めればいいのに。ほとんど使われていない道路なんてやめればいいのに。

ということで、仕事そのものが変化していていいのに、昔のままで、あとは金融で利益をだそうとしているから、ポシャッタんじゃないの。

アメリカのサブプライムだって、昔の住人をまるごと買って、新興住宅地にしなおして、金融優先で人の入れ替えをしたツケが大きかったんだよ。住める家を壊して、新しくしたってことなんだから。

とにかく、古いのが新しくなるってことと、古い考えのままで、掘り下げてバカみたいに考えている連中が、迷惑の種を広げているだけなんじゃないの。

だいたい、アメリカの自動車会社だけでなく、日本の自動車会社だって、国益とは関係なく、大きくなりすぎただけだし、大きくなれたのは金融の力だったんだろ。で、それぞれ小さくなって、新しい自動車会社がぼちぼちとできてくるんだよ。

実力があって無名の会社が来年の春ごろには目立つだろうし、人間だって、新しい考え方ができる人がなんだよ。

ただ、オバマがアフガニスタンに燃えるのは、なんとかならんのかなぁ。どうみたって、無駄だよな。まさか、原爆とか落としたりしたら、怖すぎるぞ。そこが一番心配。第一、アフガンに派遣されて、任務が終わって帰ってきた兵隊が、失業っていうのが。なんか、本来の仕事の真理と違いすぎる。

あと、若い人たちは、金融的にみて、貯金は不利だとかいわずに、せっせと貯金して、なにがいいたいかというと、貯金のメリットでなくて、贅沢な生活をやめて、ケチな生活にした方がいいよ。童話のアリとキリギリスでないけど、生活なんて、アリでいいんだからさ。金をもっているから、高いマンションに住むなんて、アホだと思う。そんなことすんだったら、自動車か電車の便がいいところで、都会のハズレに住んだ方がいいだろ。もっと金持ちなら、島とかさ。金がない若者なら、ささっと結婚して、小さい古いマンションに賃貸で同居するとかさ。

とにかく、無駄をきりつめることができないなら、国の無駄だった減るわけがないし、経済の淀みもなくなったりしないよ。バブルの特徴は、すべて無駄使いで、金ころがしなんだから。

Posted by:   | 2008.12.24 at 18:50

田中先生とやらの主張はつまらんですな。

もーだめなんだよw
なるよーにしかなんねーんだよww統計みろよwww
分かってねーなーおまいらプププ

みたいに聞こえるな。
他人事すぎるスタンスがつまらんのですよ。
それで一体何を生み出すの?

お前はただの観測機械か?みたいな。

Posted by: | 2008.12.24 at 19:04

 (立場上?)真っ当な物言いですね。ところで、なぜこのレベルの文体・文面をバブル本で披露しませんか。金払って「ん~…7点(期待感込み)」とか言ってブログ読んで期待感無しで8点9点なら本買う必要ねーじゃん、って感じ。面白ぅございました。ありがとさん。

Posted by: 野ぐそ | 2008.12.24 at 19:18

 元タレントの飯島愛さんが死亡
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081224/crm0812241711020-n1.htm

 田中さんなんかどうでもいい。そんなことより、今はこっちでしょ。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

Posted by: 野ぐそ | 2008.12.24 at 19:29

UBSやモルガンとじかに不動産や証券売買を手がけてる人と、経済論戦を舞台に理論家として頑張ってる人との話が噛み合うわけないだろ。

むしろ、理論と現実をうまく融合できるような論戦を二人にやってもらいたいんだが。

Posted by: | 2008.12.24 at 19:40

立場がここまで違うと見える風景もかなり違いそうだな

Posted by: | 2008.12.24 at 19:57

 名無し長文さんがいいこと言うから既に(ある程度)やってる俺が言うけど、

>童話のアリとキリギリス
 アリとかギリギリッス、でいいんだよね。その程度に笑い?のある慎ましやかさが無いと、絶対に10年先なんか見据えられない。10年先が見えないヤツに1年先は見えない。1年先が見えないヤツに生活設計なんか立てられるわけがない。その日暮らしで満足ですって言い張るなら、じゃあ今すぐホームレスやって来いとしか言いようが無いんだ、そんなもん。ホームレス同然の感性しか持ってないようなのが当たり前のようにいいとこ住んでいい生活してるから軋みが出るってだけのことだよ。

>金をもっているから、高いマンションに住むなんて、アホだと思う。
 そらぁ単なる成金趣味ですわ。ほっとけ。どうせそのうち落ちるんだから。って感じ。

>そんなことすんだったら、自動車か電車の便がいいところで、都会のハズレに住んだ方がいいだろ。
 人によっては出来ないこともあるだろうから強いては言わんけど、今ある自分の生活を多少落としてでもいいから長期安定を志向しないと、駄目よ。損が出ても一杯働けば(何かしら手を出せば)取り返せるって考えに固執してると、ソルジャー界隈の人であれば「じゃあ仕事無い時はどうするの? →パチンコ、ニート、盗賊稼業」…って感じになって、負のスパイラルに入り込むよ。堂々と。ネットなんかは光(NTT)で月額7000円ちょいで年額で見ても8万そこらだからノーリターンでも十分遊び金の範疇だけど、下手に商売っ気出して要らんことして損出したら、そんなもんじゃ済まなくなる。パチスロ破産なんか山のようにあるだろに。
 そーゆーヤツらと変わらないようなベクトルのヤツがネットに手ぇ出しても、愚民だイナゴだって叩かれるだけ損だろ。俺でさえ馬鹿の野ぐそだっつーのに。

 弁えが足らなさすぎる。

>バブルの特徴は、すべて無駄使いで、金ころがしなんだから。

 「消費の基本は無駄にあり」だから、一切の無駄の切り詰めがそこまで良しとも言わないけど、自分にとってある程度必要とされる「無駄」へ集中的に投資(←笑。俺の場合は遊び金www)して、そうでないところは慎ましやかにやるもんです。世間並みで十分、みたいな。

 テレビ新聞のニュース見てると「派遣で月給12万円でとてもじゃないが生活出来ない…」なんて言ってるけど、俺だって東京居た頃は月給15万円で月間540時間働いて超カツカツだったし、田舎帰っても派遣仕事で12~15万くらいしか貰ってないから、もうそーゆーもんだって腹括って辛抱したさ。実家暮らしで親に助けて貰ってる側面が無いとは言わないけど、俺だって自分で百姓やったし生活の相互扶助は当たり前だし父ちゃん倒れたら介護したさ。
 その上で、10年越しで1000万円貯めたから、今こうしてのんびりしつつネット散歩に勤しんでるわけでね。

 最初っから楽してここに居るんじゃねーんだ。

 学生や子供ならいざ知らず、社会人で働いて給料貰ってる身分のヤツだったら、先ずは働いて貯めるもん貯めて自分の力でキッチリゆとり作って、遊びに出るのはそれからだって覚悟決めてからやれと言いたいよ。ゆとりのそんなに無いヤツが「ゆとり(若しくは出会いや儲けwww)を求めて」ネットやってる時点で、本末転倒って言うんだ。
 そういう「現場」になってしまったら、扇動や詐欺が幅を利かせて当たり前だっつーの。最初っから身の程知らない馬鹿しか居ないんだったら、教育や議論なんか、余程に相手を選ばないと出来るわけが無い。気の短いヤツだったら、てっとり早く「商売する」に決まってんだろ。
 んで、↑そーゆー「現場」だって思われたら場を維持する金が逃げてくから、結局遊び場が亡くなって「次逝こ次」になっちゃうんだよ。

 貧乏人に来るなとは言わないんだ。馬鹿は来るなとも言わないんだ。来ればいいよ。遊べばいいし便利ならそれでいいよ。ただ、身の程を弁えろってこった。そんだけだよ。

Posted by: 野ぐそ | 2008.12.24 at 20:23

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