民主、社民、国民新の野党三党が提出した雇用対策四法案はきょう衆院本会議で採決され、自民、公明の与党の反対多数で否決、廃案となる見通しだ。
年の瀬を控え、雇用対策は緊急課題である。国民の間に社会不安が広がっているにもかかわらず、一致して手を打とうとしない与野党に、大きな失望感を抱かざるを得ない。
雇用対策四法案は、新卒者の内定取り消しの規制強化、住み込みの非正規労働者が失業した場合の公的住宅のあっせん、契約期間中の非正規労働者の解雇の制限―などが柱だ。
四法案は、付託された参院厚生労働委員会で、民主、社民両党の賛成多数で可決された。審議時間約二時間半で法案内容、審議とも不十分とする与党の反対を押し切り、民主党主導で採決された。本会議では、自民、公明など与党が採決に反発して退席する中、民主、社民、国民新、共産四党などの賛成で可決され、衆院に送られた。
野党側には、二〇〇八年度第二次補正予算案の提出を通常国会へ先送りした政府、与党との違いを際立たせたいとの思惑があるようだ。与党との協力を探ろうという動きは最初からうかがえず、参院の数の力で押し切った。これでは与党との対立をあおるばかりで、与党多数の衆院で可決の見通しが出てくるはずもない。
一方、野党の姿勢に反発する与党だが、そもそも今国会で〇八年度第二次補正予算案を出さなかったことが問題だ。政府は、非正規労働者の支援を中心とする新たな雇用対策も打ち出した。しかし、財源の裏付けとなる補正予算案を先送りし、政策についての本格的な論戦を避けた。責めを負うべきは与党側にもある。
野党の雇用対策法案と政府の雇用対策を比較すると、期間従業員など「期限を定めた雇用」の解雇への対応など対立する点はあるが、失業者の住宅確保や就職内定取り消しへの対応など共通点も多い。互いに歩み寄って一致点を見いだせば、法案を修正することも可能だろう。
期間従業員などの大量解雇が深刻化している地域では地方自治体が急きょ、雇用や住居の確保に乗り出した。年末年始、路頭に迷う人を出さないようにと、各自治体は懸命だ。
それに比べて、雇用問題を政争の具に、党利党略を優先する国会の論戦がいかに不毛なことか。このまま二十五日の会期末となれば、国民の政治不信は増すばかりだろう。
中部電力は静岡県御前崎市にある運転停止中の浜岡原発1、2号機を廃炉にし、代わりに6号機を新設する計画を決めた。
1号機は配管破断事故で二〇〇一年十一月から、2号機は定期検査で〇四年二月から停止している。ともに一一年の再稼働を目指していたが、耐震工事などに約十年、費用も約三千億円に上る見通しとなった。最新鋭の原子炉の建設には四千億円程度かかるという。1、2号機の運転再開よりも新設した方が経済的と判断したようだ。
1、2号機ともに運転開始から三十年以上経過した古いタイプの原子炉だ。国は、原発の立地が難航する中、既に原発のある場所で廃炉と新設を行う「リプレース(置き換え)」戦略を打ち出している。浜岡原発の計画は初のケースで、全国の原発計画にも影響を与えるだろう。
ただ、浜岡原発の問題は、いつ発生してもおかしくないとされる東海地震の想定震源域の真ん中に位置していることだ。東海地震はマグニチュード(M)8クラスが想定されている。原発立地に関する国の指針は、原則的条件として「大きな事故の誘因となる事象が過去になく、将来もあるとは考えられないこと」と規定している。浜岡原発は本来、原発立地に適切とは考えにくい場所といえよう。
中部電力は既存の3―5号機の補強工事を終え、「十分な耐震安全性を確保している」とする。しかし、想定以上の揺れが起きないとは言い切れない。
6号機は一五年着工、一八年以降の運転開始を目指す。計画の報告を受けた静岡県の石川嘉延知事は、関係する市の動向を見極める姿勢を示したが、当然だろう。国の戦略が「置き換え」であっても、想定震源域内への立地は、より慎重な検討が望まれる。
(2008年12月24日掲載)