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生活保護、自治体窓口で申請45% 国の抑制策背景に

2008年7月22日

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 全国各市と東京23区の生活保護窓口へ相談に訪れた人のうち、生活保護の申請をした割合(申請率)は06年度、45%程度にとどまっていた。朝日新聞社が情報公開法に基づき厚生労働省から資料を入手した。バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続ける一方、国は社会保障費の抑制策を進めており、窓口で申請をさせない違法な「水際作戦」の広がりをうかがわせる。

 生活保護制度では、福祉事務所の相談窓口は、住民から申請を受け付けた後、収入や資産などを調査して保護を開始するかどうか決める。本人の意思に反して申請を受け付けない行為は生活保護法違反となる。

 申請率は05年度まで、基となる相談数の集計方法が市区の福祉事務所によってまちまちだった。06年度からは、相談に来た世帯の数を基に統一され、申請率が正確に出るようになった。集計方法を誤り、再集計不能の京都市を除く全市区分を朝日新聞社が分析した。

 06年度は34万8276世帯が相談に訪れ、うち15万5766世帯が申請。申請率は全国平均で44.7%だった。政令指定市は41.2%、それ以外は46.7%で、都市部の方が低い傾向にあった。

 指定市で最も低かったのは、北九州市の30.6%。06年当時、申請率の上限など数値目標を設ける保護抑制策が批判されていた。市は「親族による扶養など生活保護以外の指導に重点を置いた結果の(低い)数値。『不適切』との指摘を受け止め、改善を始めている」という。

 指定市での最高は千葉市の70.5%だった。市によると、福祉全般に通じたOB職員を窓口に配置し、必要な場合は保護につなげているという。

 同じ市のなかでも格差は大きい。保護世帯が全国一多い大阪市では、24区のうち北区の72.4%から浪速区の21.8%まで50ポイント以上の差があった。東京23区でも、足立、板橋、世田谷区は区内の福祉事務所間でも30ポイント以上の開きがあった。(永田豊隆、清川卓史)

■保護費削減へ自治体に圧力

 バブル崩壊以降、生活保護を受ける人は増え続け、06年度の保護費は2兆6千億円を突破した。政府は社会保障費の抑制策をとっており、03年以降、高齢者やひとり親への保護費加算を廃止した。

 保護費の4分の1をまかなう自治体にも、削減の圧力が及んでいる。05、06年に北九州市で保護申請を断られた男性が相次いで孤独死するなど、窓口で申請書を渡さず相談扱いにとどめる「水際作戦」が法律家や福祉団体から批判されるようになった。厚労省も一部自治体への監査で06年度当時の相談記録に、「申請意思を確認していないなど申請権の侵害が疑われるケースもあった」という。

 政府は現在、生活保護基準以下の低所得層のうち実際に保護を受けている割合(捕捉率)を調べていない。だが、複数の研究者らが15〜20%程度と推計しており、欧州諸国と比べて低いとされている。

 厚労省は今年4月、保護申請の意思を確認し、意思があれば速やかに申請書を交付するよう通知。自治体への監査でも、窓口対応の記録の点検を強化した。

 厚労省保護課は「相談したうえで生活保護以外の方法で解決するケースもあるし、対応が丁寧な福祉事務所に多くの相談が集まることもあり得るので、今回の申請率が妥当かどうかは一概に評価できない。ただ、06年度当時、申請意思の確認が不十分な例があった可能性もあり、今は徹底を図っている」としている。

     ◇

 〈生活保護制度〉 国が決めた「最低生活費」を世帯収入が下回る時、その差額が支給される。自治体の福祉事務所は保護申請を受けると、預貯金などの資産、働く能力、親族の援助などを調査し、保護の要否を判定する。申請を受ければ、必ず調査と要否判定をしなければならない。最低生活費は居住地や世帯構成で異なるが、大阪市や東京23区に住む3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、家賃や医療費分を除いて約16万7千円。

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