岡山

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

岡山・高1自殺:事件から1年 「なぜ息子だったのか」 今も割り切れぬ母 /岡山

 ◇高校生いじめ自殺

 ◇続く自問自答

 岡山市の高1男子生徒(当時16歳)が昨年11月、中学時代の先輩2人に暴行、恐喝を受けて自殺した事件から1年余り。逮捕された少年2人はいずれも今年1月、中等少年院送致が決定した。それでも事件は終わっていない。「なぜ息子だったのか」。母親(48)の自問自答は続く。【石戸諭】

 まだ、骨つぼが残る居間の一室。事件から1年後の今も、花束が供えられている。死亡した生徒の母親は「なぜ、かけがえのない息子が被害に遭ったのか。今も割り切れない」と肩を落とした。

 テーブルには40センチほどに積み上げられたA4用紙の束。暴行の一つ一つが詳細に記載された息子の事件記録のコピーだ。母親は「息子のつらさを思うと、なかなか読めなくて」と声を振り絞った。

 岡山家裁の審判で意見陳述する際、要点部分は読んだ。当時、報じられていたのは「無理やり、泳がされた」「ライターで火あぶりにする」などの内容だった。しかし、記録に書かれていたのは想像をはるかに超える陰惨な暴行の数々。陳述では大人と同じ裁判を求め、検察への逆送致を訴えた。「報道で知ったことなんて、本当に一部だった。全身がやけどだらけだった理由が分かりました。息子は殺されたようなもの。少年院送致の理由が分からない」と語る。

 市内の食品会社で、午後9時~午前6時まで働き、3人の子供を育てた。犯罪の動機の一つはカネ。「家計のやりくりを亡くなった息子に任せていました。家の事情を知っているから、暴力を振るわれても『お金がほしい』とは言えなかったんでしょう」と話す。

 被害に遭ったのは、「たまたま目をつけられたから」という。偶然に出会ってわずか約2週間、執ような暴行が続き、生徒は自殺した。自殺前日には10時間を超える暴行を受け、「家で死ぬから帰らせてくれ」と帰宅し、そのまま死を選んだ。

 今月、一部の事件で被害者、遺族の審判傍聴が認められるようになり、被害者側への情報公開は進んだ。「(事件記録を)読まないといけない、とは思っているのですが」。母親は声を詰まらせる。

 「なぜ息子だったのか」。事件の問いかけは続く。

毎日新聞 2008年12月11日 地方版

岡山 アーカイブ一覧

 
郷土料理百選
みんなで決めよう!08年重大ニュース

特集企画

おすすめ情報