新聞・週刊誌記事 <夢の島緑道公園 殺人事件

 

 夢の島殺人事件に関するマスコミ報道記事を参考に掲載します。
 興味半分の週刊誌、真剣にバッシング問題を伝える記事、心温まる新聞記事までさまざまな記事が書かれている。
 さて、あなたはこの記事を読んでどう思いますか? 

INDEX

 2/12 東京新聞

夢の島公園で男性殴られ死亡

 2/13 東京新聞  

男性殺害は複数犯か 夢の島公園

 2/13 時事通信

駅のビデオに被害者? 映る

 2/16 毎日新聞

男性の身元が判明

 2/17 毎日新聞

少年2人を緊急逮捕

 2/17 時事通信

中3と高1の少年2人を逮捕

 2/18 時事通信

夢の島殺人、さらに1人関与か

 2/19 毎日新聞

中野大助容疑者を強殺容疑で逮捕

 2/19 夕刊フジ

夢の島撲殺事件はホモ狩りだった!?
男たちのパラダイスは危険と隣り合わせ

 2/21 週間朝日

東京夢の島「人間狩り」の酷薄非情 
〜中3、高1強盗殺人容疑逮捕の衝撃

 2/26 フライデー

『伸ちゃん』をなぶり殺した犯人は死刑にして!
東京夢の島"ホモ狩り"殺人犯「3人組」の狂気

 2/27 東京新聞 

同性愛差別に無頓着なマスコミ
夢の島公園殺人 目につく興味本位の記事

 3/3  読売新聞 

新たに少年4人を逮捕 1/10恐喝・暴行の容疑

 3/10 時事通信 

高1と中3少年を家裁送致

-------------------------------------

 2001/2 共同通信社

多発するゲイバッシング/差別の根深さ浮き彫りに/東京の殺人事件から1年

 2002/2/8 東京新聞

少年犯罪の犠牲者の母に捜査幹部
〜〜お守りが慰めてくれますように〜〜

 

【注意】 被害者の氏名は新聞・テレビ報道では実名で報道されてますが、
当サイトでは当人のプライバシーを考慮し伏字で表示してあります。 
 


    
夢の島殺人事件に関する新聞・雑誌記事

◆2000年2月12日(土)東京新聞 朝刊 「夢の島公園で男性殴られ死亡」

 11日午前6時45分ごろ、東京都江東区夢の島2の「都立夢の島緑道公園」内で、若い男性が血を流して倒れているのをジョギング中の会社員(46)が見つけ、110番した。男性は顔などを殴られて死亡しており、警視庁捜査一課は殺人事件として城東署に捜査本部を設置、男性の身元などを調べている。

 調べによると、男性は20代とみられ、身長1メートル73。紺のシャツにフード付きモスグリーンのジャンパー、ベージュのズボン、白い運動靴姿だった。ズボンのポケットに現金1600円が入っていた。

 死因は頭や顔、脇腹等を殴られたことによる出血性ショック死で、10日夕方ごろ死亡したと見られる。遺体のそばに凶器と見られる血のついた立木用の添木(直径約7センチ、長さ約150センチ)が落ちていた。ジョギングコースから現場まで約10メートル遺体を引きずった跡があった。
 現場はJR京葉線新木場駅から北へ約300メートルの公園内。


◆2000年2月13日(日)東京新聞 朝刊 「男性殺害は複数犯か 夢の島公園」

 東京都江東区夢の島2の「都立夢の島緑道公園」内で男性が頭などを殴られ殺害された事件で、男性は体に受けた傷などから複数から暴行をうけた可能性が高いことが12日、警視庁城東署捜査本部の調べで分かった。
 調べでは、司法解剖の結果、男性は頭部や顔面を鈍器のようなもので殴られたことによる外傷性ショックや内臓損傷などが死因と判明。全身を足で踏みつけられた跡もあった。死亡したのは10日深夜と見られる。
 現場検証では、多くの人間が現場にいた痕跡は確認できなかったが、捜査本部では、ケガの状況から、暴行したのは複数だったと見て、公園内を通るジョギング愛好者らを対象に、目撃者がいないか調べている。


◆2000年2月13日(日)(時事通信)
駅のビデオに被害者? 映る=夢の島の殺人事件−警視庁

 東京都江東区の夢の島緑道公園で若い男性の他殺体が見つかった事件で、殺害の数時間前、現場近くの駅のビデオに、被害者に似た男性が映っていたことが13日、城東署捜査本部の調べで分かった。同本部は画像を解析し、男性の身元確認を急ぐ。 


◆2000年2月16日(水) (毎日新聞)
<夢の島公園殺人>男性の身元が判明 警視庁城東署捜査本部

 東京都江東区の夢の島緑道公園で男性が頭などを殴られて殺害された事件で、この男性は、大田区下丸子の○○○○さん(33)であることが警視庁の調べで分かった。捜査本部が15日、同公園近くの地下鉄有楽町線新木場駅構内のビデオカメラに映っていた男性の映像を公開したところ、母親が名乗り出て身元が確認された。


◆2000年2月17日(木) (毎日新聞)
<強盗殺人容疑>少年2人を緊急逮捕 夢の島緑道公園で男性殺害

 東京都江東区の夢の島緑道公園で大田区下丸子、無職、○○○○さん(33)の遺体が見つかった殺人事件で、警視庁城東署捜査本部は16日夜、江東区内の中学3年の少年(14)と定時制高校1年の少年(15)の2人を強盗殺人容疑で緊急逮捕した。

 調べでは、2人は10日午後11時ごろ、同公園で○○さんの頭や背中などを丸太や手足で殴るけるなどしてスボンのポケットから現金8000円入りの財布を奪い、○○さんを出血性ショックで殺害した疑い。
 2人は容疑を認め、「遊ぶ金が欲しかった」などと供述しているという。2人は、ほかにも同公園で強盗事件を起こしていた疑いがあり、捜査本部は余罪を調べる方針。


◆2000年2月17日(木) (時事通信)
中3と高1の少年2人を逮捕=夢の島で33歳男性の強盗殺人容疑−警視庁

 東京都江東区の夢の島緑道公園で大田区の無職○○○○さん(33)が殺害された事件で、警視庁城東署捜査本部は16日、強盗殺人容疑で江東区内に住む同区立中学3年の男子生徒(14)と都立定時制高校1年の男子生徒(15)を逮捕した。

 2人は友人同士で、「遊ぶ金が欲しかった」と供述し、容疑を認めている。同公園付近では休日の夜などに男性が少年らに襲われ、現金を奪われる事件が多発。2人は「ほかにもやった」と供述しており、捜査本部は裏付けを急いでいる。 


◆2000年2月18日(金) 13時28分(時事通信)
夢の島殺人、さらに1人関与か=警視庁

 東京都江東区の夢の島緑道公園で無職○○○○さん(33)が殺害された事件で、強盗殺人容疑で逮捕された少年2人のほかに、さらに1人が事件に関与していた疑いがあることが18日、城東署捜査本部の調べで分かった。捜査本部が裏付けを進めている。

 調べによると、同区内に住む区立中3年の男子生徒(14)と都立定時制高校1年の男子生徒(15)は10日午後11時ごろ、同公園内で○○さんに因縁をつけ殺害した疑い。○○さんは棒で殴られた上、くつで踏まれており、複数に暴行を加えられた跡が残っていた。 


◆2000年2月19日(土) 17時26分
<夢の島殺人>中野大助容疑者を強殺容疑で逮捕 警視庁捜査本部(毎日新聞)

 東京都江東区の夢の島緑道公園で無職、○○○○さん(33)=大田区下丸子=が殺された事件で、警視庁城東署捜査本部は19日未明、江東区東雲2、無職、中野大助容疑者(25)を強盗殺人容疑で逮捕した。すでに区立中学3年(14)と都立定時制高校1年(15)の少年2人が同容疑で逮捕されているが、中野容疑者は「遊ぶ金欲しさにやった。これまでに少年らと数件の強盗を重ねた」と供述しているという。

 調べでは、中野容疑者は少年2人とともに11日午後11時ごろ、同公園内で○○さんの頭や背中などを丸太や手足で殴るけるなどして殺害し、現金8000円入りの財布を奪った疑い。中野容疑者は少年らの中学の先輩で、同じ都営住宅に住んでいて知り合ったという。

 少年たちの供述に基づき、捜査本部が18日夜から事情を聴いていた。中野容疑者は「現場付近で見張りをしていた」と供述しているが、捜査本部は○○さん襲撃の際の役割分担についてさらに追及している。


◆2000年2月19日(土)夕刊フジ
夢の島撲殺事件はホモ狩りだった!? 男たちのパラダイスは危険と隣り合わせ

 東京・夢の島緑道公園で起きた青年(33)の撲殺事件は、金欲しさの少年2人の犯行とわかり、事件はひとまず解決した。だが、現場からの報告で、夢の島のもう一つの“顔”が浮かんできた。いまや、都内有数の「ゲイ(同性愛者)のメッカ」になっているのだ。春ともなると、公園の茂みは男たちの愛の交歓場になるという。少年は「襲っても警察に届けないから…」と供述、以前にも別の男性を襲ったことを認めており、事件は“ホモ狩り”だった可能性が強い。

 埋立地の夢の島は、かつての“ごみの島”と呼ばれていた。それが都民の憩いの場に生まれ変わったのは昭和50年以降。シーサイドの景観を生かして、付近一帯には公園やテニスコート、ゴルフ場、住宅団地などが造成された。

 ここが、ゲイ仲間に一躍注目されるようになったのは8年ほど前から。愛好者が開設しているインターネットのHPでも「昼間行ってもできる。一般人がいないのでやりたい放題」「東京の公園仲間ではちょっと別格扱いのパラダイス」などと紹介されている。

 ゲイの世界では「ハッテンバ(発展場)」というそうで、新宿中央公園などと並んで、男たちの“秘密の花園”となっている。

 今月10日夜、青年が撲殺された現場は、総合運動場の南にある緑道公園内の木の生い茂った所。青年は最寄駅の営団地下鉄有楽町線新木場駅で下車して、公園に行ったとみられる。

 「早朝や昼間はジョキングや公園内のスポーツ施設で汗を流す人が多いが、夜になると真っ暗。待ち合わせでもしない限り、 大人の男性でも一人で入っていくのは勇気がいる」(付近の商店主)という。

 そんな暗がりが同性愛者にはたまらないようだ。

 「緑道公園には、夏なんか、運河沿いの茂みやベンチで30人ぐらい集まるときがあるワ」(同性愛者のメッカである新宿区2丁目の若者)

<以下省略>

◆2000年2月21日(月)発売 週刊朝日

 東京夢の島「人間狩り」の酷薄非情 〜中3、高1強盗殺人容疑逮捕の衝撃

【東京・夢の島で起きた凄惨な強盗殺人事件の容疑者として逮捕されたのは、25歳の男と2人の中高生だった。現場は、男性の同性愛者が集う公園で、少年たちが同性愛者を「ホモ狩り」と称して襲う事件が頻発していたことも明らかになった。少年たちは、なぜ凶行に走ったのか=上田耕司、本誌・大波綾、木之本敬介】

 突然、真っ暗は草むらの中から1人の男が現れ、目の前を走り去った。

 「あっ、ホモだ!」
 「ホモは、俺たちの姿を見ると、逃げるんすよ」
 少年たちは口々に叫んだ。
 事件からちょうど1週間後の夜、地元の少年数人に殺害現場を案内してもらった。
 埋め立て地のこのあたりは住宅はなく、工場、倉庫、オフィスビルが立ち並ぶ閑散とした地域。高速道路やJRの高架わきにある公園も、周囲の車の通りは多いが、1歩踏み入れると、木が生い茂り、街灯もない。

 東京都江東区、新木場駅のすぐ近くにある「都立夢の島緑道公園」。週末の昼間は、競技場などの運動施設を利用する人や家族連れでにぎわうが、夜になると別の顔を見せる。男性の同性愛者同士が出会いを求めて集まる、都内でも有数の公園なのだという。さらに、その同性愛者のカネを狙って少年たちが集まる。

 この公園で、東京都大田区の無職の男性(33)が遺体で見つかったのは11日朝。丸太で上半身をめった打ちにされ、顔の右半分は崩れて判別できないほどだった。死体写真を見た関係者はこう話す。

 「顔は青黒く、額には大きな裂傷、頬は腫れ上がっていた。体はあざだらけでした」
 ズボンのポケットからは、八千円入りの財布が消えていた。
 16日、強盗殺人容疑で、都立定時制高校1年のA(15)と江東区立中学の3年生B(14)が、さらに19日には同区の無職、中野大助容疑者(25)が同じ容疑で逮捕された。現場に残された足跡が、Bの靴とみられ、靴底に付いていた血痕が被害者の血液型と一致したのが決め手となった。3人は調べに対し、
 「遊ぶカネほしさに襲った」
  と供述。同じメンバーで強盗を繰り返していたことを認めた。

 逮捕された3人をよく知る友人も、

 「彼らは、あの公園で何度も『ホモ狩り』をやっていた。やった後にはいつも電話があって、その日の稼ぎがいくらだったと自慢していましたから。あの日は何の連絡もなかったんだけど……」
  と証言する。

 公園で遺体が発見された日、Aは携帯電話で友人とこんな会話をしている。
 「夢の島で人が死んだらしいよ。何か知ってる?」
 「えっ、死んじゃったの? 気を失ってるだけかと思った。殴りすぎたかな」
  だが、その後は一転、友人には、

 「やってない」「その日は公園に行ってない」
  とかかわりを否定。5日後の16日にも電話で、

 「俺はやってないから全然平気、平気。きょう泊まりに行くからね」
 と言っていたが、その晩、逮捕された。

 関係者によると、この公園に男性の同性愛者が集まるようになったのは8年ほど前から。同性愛者関係のホームページで、出会いの場として頻繁に紹介されているほか、昨春、CS放送の「北野チャンネル」も同性愛者が集まる場所として紹介した。

 同性愛者を狙う強盗事件が横行し始めたのは数年前からのようだ。ある少年によると、隣の江戸川区や墨田区などからも、同性愛者を狙う少年たちが集まるのだという。

 「これまで被害にあった人は、数百人はいるはず。いくらカツアゲできるかは、やってみないとわからないけど、うまくいけば、5万〜6万円になることもあるみたいっすよ」(近所の少年)

 なぜ同性愛者が狙われるのか。別の少年が言う。

 「ホモは、脅せばたいていすぐにカネを出すんです。しかも、警察に被害届を出さない。バットを持って行くやつらもいる。公園は木で遮られているから、周りから見えないし、叫んでもだれも助けに来っこないっすから」

 今回の事件後、同性愛関連のホームページには、新聞報道が逐一掲載され、
 「夜、ここへは行かないことをお勧めします」
 などと呼びかけている。

 同性愛者の人権問題に取り組んでいる特定非営利活動法人(NPO)の「動くゲイとレズビアンの会」が昨年実施したアンケートや電話相談でも、過去に「ゲイ・バッシングにあった場所」34件中、「新木場・夢の島周辺」の9件がいちばん多かった。 

 「7、8人の10代の連中に取り囲まれ、十数万円とられた」「十数人の少年グループに『お前ホモなんだろう』と言われ、棒で殴られ、数針縫う大けがをした」

 など、凶悪な事例も寄せられていたが、同性愛者に対する差別を恐れて、表に出るケースは少ないようだ。

 それにしても、なぜ被害者の顔がわからなくなるほどめった打ちにした「異常な犯行」(捜査関係者)にまで、エスカレートしたのか。

<以下省略>

◆2000年2月26日(金)発売  フライデー 3/10号
「『伸ちゃん』をなぶり殺した犯人は死刑にして!」
東京夢の島"ホモ狩り"殺人犯「3人組」の狂気

 「伸ちゃんが、いったいどんな悪いことをしたというんですか。あんな事をした犯人は当然、死刑ですよね・・・・・・」
 70才になる母親はすがりつくように口を開いた。東京・大田区に住む「伸ちゃん」ことSさん(33)の遺体が「夢の島緑道公園」(江東区)で見つかったのは2月11日。遺体は、公園の樹木を支える丸太で全身をメッタ打ちにされており、顔立ちが識別できないほどに腫れ上がっていた。
 <中省略>

 Sさんが殺害された夢の島緑道公園は、男性同性愛者が出会いを求めて集まる、都内有数の「ハッテン場」として知られていた。「人当たりは柔らかく、家賃も3日前には必ず払う几帳面な青年」(アパートの大家)と思われていた彼も、そうした性的嗜好の持ち主だったらしい。夢の島をよく訪れる別の同性愛者は、「これまでにも別な公園で彼の姿を見かけたことがある」と証言する。
 だが、この公園は同性愛者にとって、ひどく危険な公園でもあった。数年前から、近所の少年たちによる"ホモ狩り"が頻繁に行われていたのだ。「実際、今年1月26日にも51才のホモの男性が5人組の男たちに殴られ大ケガをしている。その事件にも今回の3人組が参加していたんです」(捜査関係者)
 つまり、◯◯さんを襲った3人は"ホモ狩り"の常連だったのだ。
 <中省略>

 以前、"ホモ狩り"に加わったことがあるという少年が語る。

 「"ホモ狩り"は3〜4年前から始まったんじゃないかな。でも、単にカツアゲが目的じゃない。あいつらは俺たちを見ると内股で走って逃げ出すから、それを追いかけ回すのが楽しいんだよ。3人もそれが狙いだったんだろ」

 襲われた同性愛者たちが被害を表沙汰にしたがらないこともあり、最近、さらに拍車がかかっていた。そして今回の悲劇が起きたのである。
 <中省略>

 殺害されたSさんの母親はこう涙ぐむ。
 「何度も何度も殴られて、どんなに苦しかったか、痛かったか。あの優しかった子がどんな思いで死んでいったかと思うと、悔しくて悔しくて・・・・」


◆2000年2月27日(日)東京新聞 朝刊

連載:週刊誌を読む(2月21〜26日発売分)
同性愛差別に無頓着なマスコミ
夢の島公園殺人 目につく興味本位の記事

 世相を反映してのことなのだろうか。最近、気が重くなるような事件が目につく。2月11日にめった打ちにされた男性の遺体が発見された「夢の島公園殺人事件」もそうである。
 逮捕されたのは25才の男性のほかに、高校1年と中学3年の男子生徒だった。そして現場の公園は同性愛者の集まる場所で、そこでは「ホモ狩り」と称して同性愛者に暴行を加えたり金銭を奪ったりする事件が以前から起きていたことも明らかになった。つまり今回の事件は、同性愛者への社会的差別を背景にした犯罪だったのである。
 なぜ同性愛者が狙われたのか。『週刊朝日』3月3日号で、同公園に出入りしていた少年がこんなふうに語っている。「ホモは脅せばたいていすぐに金を出すんです。しかも、警察に被害届を出さない。バットを持っていくやつらもいる。公園は水で遮られているから、周りから見えないし、叫んでも誰も助けに来っこないっすから」
 今回の事件に関して、同性愛者の人権問題に取り組んでいるアカー(動くゲイとレズビアンの会)が、昨年行った「ゲイバッシングに関する電話相談・アンケート」のデータを報道機関に公表した。過去バッシングや嫌がらせがあった場所として挙げられている34件中、最も多い9件が「新木場・夢の島周辺」。犯行グループの様相・年齢で一番多いのは「10代・中高生の集団」。今回の事件は起こるべくして起こったというわけである。同会は「学校教育において『人権』意識が醸成されていれば、こうした事態に至らなかったのではないか」とも訴えている。
 少年たちが社会的差別を受けている人たちの弱みにつけこんで暴力行為を働くというのは、学校や社会が病んでいることの端的な表れだろう。そしてもう一つ忘れてならないのは、部落差別や障害者差別には神経をとがらせる日本のマスコミが、ごく最近までゲイに対する差別に極めて無頓着だったことだろう。
 「例えば今回の事件についても、興味本位でひどい週刊誌の記事が目につきます」。アカーのメンバーがそう言って挙げたのは『週刊文春』3月2日号の「週末は大にぎわい“ゲイの楽園”だった『夢の島』撲殺現場」の記事。「撲殺された◯◯さんは“その種の趣味”を持っていたのかどうか」などと詮索しているのだが、確かにこれでは被害者やその家族にさらにムチ打つようなものだろう。
 『週刊朝日』によると、逮捕された少年2人について友人はこう話しているという。「2人とも、根はシャイでいいヤツ。カツアゲしてたのは知ってたけど、殺人なんてとても出来るタイプじゃない」。シャイな少年を殺人に駆り立てたものは何なのだろうか。

<メディア批評誌「創」編集長・篠田博之>


◆2000年3月3日(金)読売新聞夕刊
 城東警察署は本件と関連する事件で新たに4名の少年を逮捕。
 これは、1月10日未明に夢の島競技場管理事務所・公衆トイレ近辺で20歳の男性を恐喝・暴行した疑いによるものだそうです。(読売新聞夕刊報道)


高1と中3少年を家裁送致=夢の島強盗殺人事件−東京地検(時事通信)
 東京都江東区の夢の島緑道公園で大田区の男性(当時33)=が殺害された事件で、東京地検は10日までに、強盗殺人容疑で逮捕した江東区に住む高校1年生(15)と中学3年生(14)の少年を東京家庭裁判所に送致するとともに、犯行の見張り役だった同区の25歳の男性を同日、強盗致死罪で起訴した。 8日に送致を受けた同家裁は、即日観護措置を決定し、2人の少年を東京少年鑑別所に収容。今後、少年審判が必要か否かを判断する調査を行う。これまでの調べによると、少年らは2月10日夜、同公園で、無抵抗の被害者から現金約9000円などを奪った上、現場にあった重さ1.6キロの木の棒で殴るなどして殺害した。  [時事通信社 2000年 3月10日 17:58 ]


◆2001年2月 共同通信社

この記事は、殺人事件の一周忌にあたる2001年2月10日に共同通信社から取材を受けたもので、1週間後に共同通信社から全国の加盟新聞社に配信されました。

◎多発するゲイバッシング/差別の根深さ浮き彫りに/東京の殺人事件から1年

 同性愛者が集まる東京・夢の島の公園で、男性が見知らぬ少年グループに殴り殺される事件が起きてから一年が過ぎた。しかし「ゲイバッシング」と呼ばれる同性愛者に対する暴力は各地で多発、差別の根深さを浮き彫りにしている。
 事件は昨年二月十日夜、東京都立夢の島緑道公園で起きた。大田区の無職の男性(33)が、現場近くに住む少年ら三人に現金約八千円を奪われた上、丸太で全身を殴られて死亡した。
 直接手を下したのが当時十四歳と十五歳の二人だったことから、新聞やテレビは、相次ぐ凶悪な少年犯罪に焦点を合わせて報道。裁判でも、動機は金目当てとして処理された。
 だが、裁判記録によると、少年らは「ホモ狩り」という差別的な言葉を使い、仲間とともに同じ手口の襲撃を繰り返していた。同性愛者の人権擁護団体「動くゲイとレズビアンの会」(アカー)は、続発するゲイバッシングの最悪の事例と位置づける。
 実際、アカーが事件直前に相談電話を設けたところ、四カ月間に八十八件の被害例が寄せられた。
同性愛者のためのホームページを主宰するシンジさんが昨年七月から続けているアンケートでも、回答者の一七%に当たる五十人が実際に被害に遭っていることが分かった。

 大半は同性愛者の出会いの場となっている公園で、若者の集団に襲われている。中には重傷を負い入院したケースもある。

 社会で多数を占める異性愛者の偏見が強い中、ゲイバッシングの被害者は同性愛者であることが明らかになるのを恐れ、警察に届け出ないことが多い。アカーの稲場雅紀さんは「弱い立場につけ込んだ犯行だ」と分析。自身が鉄パイプで殴られた体験を持つシンジさんも「(加害者は)面白がってバッシングを重ねるうちにエスカレートしてくる」と指摘する

 同性愛者が公園を接触の場に使うことには批判の声もあるが、稲場さんは「同性愛者は知り合うのが難しいので、ゲイバーや公園などの出会いの場をつくり出してきた。異性愛者のカップルなら問題にならない行為でも、同性愛者だとバッシングを受けるのが現実」と訴える。

 ゲイバッシングのように、性的指向や性別、人種、宗教などによる差別に基づく暴力は、欧米では「憎悪犯罪」と定義され、通常より重い刑罰が科される。日本にはこうした法令はなく、夢の島事件の少年たちも未成年ということもあり、数年後には社会復帰する見通しだ。稲場さんは「差別を正す教育や行政が広がらなければ、再発は防げい」と話している。


◆2002年2月8日東京新聞夕刊記事(抜粋)
少年犯罪の犠牲者の母に捜査幹部 〜〜お守りが慰めてくれますように〜〜

 「息子さんの代わりだと思って。つらい時はこのお守りが慰めてくれますように」
 東京霞ヶ関の警視庁の一室。捜査幹部は一人息子を殺された母親(72)にこう語りかけ、小さなケースを手のひらに握らせた。
 中には扇形のキーホルダー。「末広がり」の幸福を願って、幹部が前任地の警察署の近くにある神社で買ったという贈り物に、母親は声を詰まらせた。

 (中省略)

 一昨年二月十日夜、一人息子=当時(32)=は都内の公園で金目当てのの中学生グループに襲われ、辺りにあった丸太棒などで殺害された。
 幹部は、事件からから半年後に捜査を担当した地元に署長として赴任。着任初日に、捜査員から「夢まくらに息子が立った」という母親の話を聞いた。事件の発生日が自分の誕生日と偶然同じだったこともあり、因縁めいたものも感じたという。
 息子を失い、一人暮らしとなった母親。捜査員たちは、犯人を逮捕し事件が解決した後も、仕事の合間を縫って母親を訪ねて励ました。
 母親は「警察の皆さんにお礼を言いたい」と切望。幹部は署長から外国人犯罪を捜査する部署に転任していたが、その話を聞きつけて本庁に母親を招き、この初対面となった。
 幹部に温かく迎えられた母親は、抑えてきた思いを一気に語り始めた。加害者からいまだに謝罪がないこと。自宅を売って老人ホームに入居したこと。民事訴訟を前に事件調書を読み通したことも訴えた。

 (中省略)

 「血を分けた一人息子を奪われた悲しみは、一生消えない」と母親は言った。その手に幹部が握らせた小さなお守りは今、愛する息子の仏前に大切に供えられている。

(東京新聞 2月8日夕刊記事より抜粋)

Parks heaven シンジのハッテン情報