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「異状死」の死因究明に年240億円―日本法医学会試算

 犯罪による死体など、病気や老衰ではない「異状死体」の解剖率を現在よりも上げた場合、年間約240億円の費用が必要であるとの試算を、日本法医学会(中園一郎理事長)が発表した。同学会では、「厚生労働省を中心とする国の予算で全額支弁されるべき」と主張している。

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 日本法医学会は、「解剖にかかわる経費、人件費とを合わせた約100億円に、施設・設備の使用料・更新にかかわる経費を加えた予算」として、「国民一人当たり200円(米国監査医協会の勧告によると2ドル)とし、総額240億円が見込まれる」としている。

 同学会は、12月22日に公表した「日本型の死因究明制度の構築を目指して―死因究明医療センター構想―」の中で、解剖医の増員や都道府県への「死因究明医療センター」(仮称)の設置などを提言している。
 同センターは、「医師による検案と剖検(行政解剖)による死因究明」を目的に、原則として同学会の「異状死ガイドライン」で規定している死体を対象にする。

 同学会によると、年間約118万人の死者のうち、警察官の検視や医師による検案の対象となった「異状死」は15万4579人(13.1%)で、「異状死」のうち1万5617体(10.1%、全死亡比約1.3%)が法医解剖されている。
 同学会は提言の中で、「適正な死因究明のためには、法医解剖の剖検率を少なくとも欧米諸国なみの全死亡の10−30%(現在の10−20倍)にする必要があろう。厚生労働省が計画している診療関連死(年間2万6000件と推定)の調査制度の開始に伴い、解剖の負担が生じる。今後、短期間に解剖数が激増することは疑いがない」と指摘。「異状死体」の解剖率を現在よりも上げた場合に必要となる予算について、次のように述べている。

 「解剖にかかわる経費については、算出根拠によりさまざまな金額が考えられているが、病理学会の試算によると剖検一体あたり約25万円といわれている。ただし、この金額には中毒検査等の諸検査に係る経費、人件費などは含まれていない。仮に一剖検当たり25万円とすると、異状死体の剖検率を現状より10%(1万5000体)上げるとすると、25(万円)×1万5000(剖検体)=37億5000万円が必要となる。異状死体の剖検率を20%と仮定すると、増加分に相当する1万5000体の剖検を実施する医師の確保が必要である。剖検医1人当たりの解剖数を100体とすると、150人の医師の確保が必要である。事務部門、検案・解剖検査部門、病理検査部門、血清生化学検査部門、薬毒物検査部門に医師当たり各2人ずつ配置すると、1500人の職員が必要となる。これに必要な人件費としては、医師については大学助教相当約500万円とすると7億5000万円、技術・事務職員の給与を約350万円とすると52億5000万円となり、人件費として総額約60億円が必要となる。当面の予算は、解剖にかかわる経費、人件費とを合わせた約100億円に、施設・設備の使用料・更新にかかわる経費を加えた予算で運営可能である」

 犯罪などの「異状死」のうち、診療行為に関連した死亡の原因を調査する第三者機関として、厚生労働省は「医療安全調査委員会」(仮称)の設置に向けた準備を進めている。
 同学会では、「(医療安全調査委員会の)調査においても、迅速かつ詳細な解剖が鍵となる。地域ごとに調査機関の設置が検討されているが、解剖体制の検討が不十分なままであり、体制の充実のためにも、法医と病理の連携は重要である。日本法医学会が提唱する『死因究明医療センター(仮称)』は、『医療安全調査委員会』における解剖業務の一端を担うことができるものと考える」としている。

 詳しくは、日本法医学会のホームページで。
 http://plaza.umin.ac.jp/legalmed/siinnkyuumei/minasama.htm

 【提言のPDF】
 http://plaza.umin.ac.jp/legalmed/siinnkyuumei/teigen.pdf.pdf


更新:2008/12/24 18:05   キャリアブレイン

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