桜井淳所長から京大原子炉実験所のT先生への手紙-使用済み燃料輸送容器からの高速中性子-
テーマ:ブログT先生
【その1】
記憶が定かでありませんが、昔、京大原子炉の先生が(専門からするとT先生のように思えますが)、使用済み燃料輸送容器からの高速中性子側定を、使用済み燃料輸送容器が通過するのを待ち構え、測定し、予想外の高い値を確認したとの記事を読んだように記憶しています。もし、先生の仕事でしたら、当時の資料等をいただけないでしょうか。私は、現在、原子力学会で、核燃料サイクル施設の核的安全性を検討する研究専門委員会の主査を務めており、ぜひ、参考にさせていただきたいと考えています。
【その2】
いただいたメールに拠れば、20年前に、高感度中性子検出器(HISENS、約50cm長のHe-3検出器を10本並べてポリエチバンクに突っ込んだもの)によって、浜岡の使用済み燃料輸送の際に、公道脇で中性子を検出したようです。スペクトルを測定したわけではないため、線量については不十分とのことですが、輸送トレーラーが通過する度にきれいな計数率ピークが観察されたとのこと(BGが1cpsぐらいのところが数千cpsに上昇)。
【その3】
まだ、詳細な資料を見ていないため、上記の情報から中性子線量率を推定してみました。使用済み燃料輸送容器から漏洩する中性子は、使用済み燃料中の超ウラン核種からの自発核分裂中性子や(α,n)反応による中性子であって、いずれも高速中性子ですが、測定では、ポリエチレンで減速し、熱中性子にして、その熱中性子に対し感度を有するHe-3検出器からなる超高感度測定系で熱中性子線量率を評価しているように解釈されます。被ばく線量は、異なるかもしれませんが、高速中性子線量率がそのまま熱中性子線量率に変換されていると解釈されます。
【その4】
ポリエチレンで宇宙からの高速中性子を熱中性子に変換して測定する中性子レムカウンターでBGを測定すると、6.3nSv/hとなり(文献値、しかし、私も測定したことがあります)、超高感度測定系では、それが1cpsくらいということで、使用済み燃料輸送容器が通過すると、数千cpsに上昇するとのことですから、数字を丸めて10000cpsとすれば、63μSv/hとなります。検出器位置が使用済み燃料輸送容器表面から約2m離れていると仮定すれば、あまりおかしな数値ではなく、技術基準内の値のように解釈されます。よって、京大炉の研究者によるこの種の実験は、大変利用価値の高い情報と位置づけられます。これから、いただいた資料を検討し、厳密な評価をしてみたいと考えています。
桜井淳