ニューストラブル相次いだGoogleのサービス 「必要な人」「いらない人」の二極化へ? (1/2)「情報の民主化」を掲げるGoogleのサービスと社会との摩擦が目立った2008年。「Googleの情報を欲するユーザーとそうでないユーザーが二極化するのでは」「メリットだけを享受してきたツケ」といった見方がある。2008年12月22日 13時46分 更新
米インターネット検索大手「グーグル」提供の無料サービスをめぐるトラブルが相次いでいる。ネット上の地図から現場写真を見ることができる「ストリートビュー(SV)」について「プライバシー侵害の恐れがある」との懸念が広がっているだけでなく、地図情報サービス「グーグルマップ」に書き込んだ個人情報が誤って閲覧可能になっているケースも多発。子供の住所録なども流出した。「世界中の情報を集めて整理する」と豪語するグーグル側の“熱意”と、ユーザー側のスタンスに温度差はないのか、一連の問題を検証した。 なぜ個人情報が……「グーグルマップ」でトラブルが生じているのは、自分だけの地図が製作できる「マイマップ」と呼ばれる機能。ユーザーが地図上に目印や線、コメントなどを自由に書き込み、複数の位置情報をまとめて管理できるシステムだ。 昨年4月から導入され、キャッチフレーズは「世界に1つしかない地図を作ろう」。写真やビデオ映像を取り込むことも可能で、食べ歩いた飲食店をマークして料理の写真とともに評価を記す−といった使い方が考えられる。 こうした情報はあくまで個人単位で楽しめば問題は生じないが、このシステムには地図のURL(サイトのアドレス)を知人に送信しておけば、限定的に情報が共有できるという特徴もある。例えば、共同で地図をつくり、待ち合わせなどに利用する使い方だ。さらに、教師が生徒の住所録を作成して共有したり、企業が顧客の自宅地図を管理したり、と用途は限りない。 ところが今年11月になって騒動が起きた。マップに書き込まれた内容が、一般ユーザーからも「丸見え」になっているケースが、続々と明らかになったのだ。 目立ったのは小中学校などの児童・生徒の名前や住所。作成者は主に教師やPTA関係者だった。 文部科学省が調べたところ、確認できただけで全国で約40校に上るなど、教育現場に被害が拡大していた。 それだけではない。大手ゲーム会社に応募したアルバイトスタッフ、病院に通う患者、電話会社の顧客…。当人たちが全くあずかり知らぬところで、個人情報がネット上にさらされていたのである。 「非公開」も「公開」?なぜ、こんなことが起きたのか。最大の原因は「設定」の分かりにくさだ。 マイマップはあえてネット上に公開することも可能で、情報を入力する際に「公開」と「非公開」を選択できる。ただ、初期設定で「公開」にチェックが入っているため、そのままだと誰でも閲覧できる状態になってしまう。 これが最初の「落とし穴」だ。 では、「非公開」を選んだとしよう。当然、ユーザーはネット上で公開されないものと考えるが、実はそうではなかった。 ヤフーなど他社の検索エンジンで捜すと、URLを自動的に検知してしまい、検索結果としてマップが表示されてしまうのだ。マップのURLを直接入力しても表示されてしまうため、仮に第三者にURLが漏れれば書き込まれた情報は「公開」も同然になってしまう。 結局、どちらを選ぼうと完全に情報を守ることはできない、というオチだったのである。 サイトの説明文をよく読むと、こう書いてあった。 〈原則として、誰にも見られたくない地図はここで作成しないことをお勧めします〉 グーグルは問題が発覚して以降、手は打った。 誤解を避けるため、「非公開」を「限定公開」の呼び方に変更。マップの作成者以外でも削除を申請できる窓口をネット上に開設し、公式ブログでも注意を促した。ネット検索各社に対し、限定公開のマップを検索対象から外すよう要請もした。 だが、グーグルが申請を受けてマップを削除しても、書き込まれた情報を一度に消去できないなど混乱が続いている。 ネット上では今回の問題について非難の声が上がっており、ある個人ブログではこんな趣旨の書き込みがあった。 〈背景には、「公開&共有」がデフォルト(標準)なのだ、というグーグル側のコンセプトがあるのでしょうが、これに強い違和感があります〉 一方、行政側の対応はどうだろうか。 経済産業省は調査に乗り出したが、「原因は利用者が登録する際の同意の取り方がはっきりしていなかったこと。個人情報保護法に明文化されている安全管理措置を怠ったとまではいえず、法に基づいてグーグルに改善を指示・指導するのは難しい」(情報経済課)という。 同課は「利用者側の立場に立ち、『お願い』という形でよりよい顧客対応を求めることはありうる」ともしているが、グーグル側から事情を聴く予定はないという。事後の対応で問題は解決済み、と判断したようだ。 革命的なSV……すぐに反発の声米インターネット検索最大手で、世界の「情報覇権」を狙っているとされるグーグル。同社の会社概要には高らかにこう記してある。 〈使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです〉 グーグルマップの付加機能である「ストリートビュー(SV)」もその一つだ。 [産経新聞] copyright (c) 2008 Sankei Digital All rights reserved.新着記事
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