2008年12月24日 社説
[県立病院独法化]
結論出すのが早すぎる
県立病院の経営形態は、財政の視点だけで議論すべきではない。たとえ不採算部門であっても、取り組まなければならない医療というものがあり、それを中心的に担うのが公的機関の役割だ。
離島県沖縄の地域医療をしっかり確保することが可能な経営形態かどうか―それが議論の前提である。
その一方で、財政の視点を抜きにしては、安定した地域医療を確保することができないのも確かだ。県立病院は多額の負債を抱え危機的状況にあり、経営健全化に取り組まなければ病院の存続そのものが危うくなる可能性もある。
この問題を審議してきた県医療審議会の「県立病院のあり方検討部会」は、県内にある六つの県立病院の経営形態を二〇一三年度までに地方独立行政法人とする独法化構想をまとめた。
精和病院については独法化のほか、指定管理者制度の導入も検討するという。
県立病院事業は〇六年四月から、地方公営企業法を全部適用(全適)する事業に移行した。組織や人事などの裁量権を拡大し、自主性・独立性を高めると同時に、経営責任を明確化するためだ。
なぜ、現状の全適ではだめなのか。全適と独法化はどこがどう違うのか。独法化によって果たして地域医療は維持できるのか。
石垣市と竹富町は、不採算医療が形骸化し、都市部との医療格差が拡大するとして、議会で独法化反対の決議をしている。住民側から見れば極めて分かりにくい方針転換である。
県立病院が全適に移行してから二年以上たつが、当初想定した効果を発揮しているとはいえない。
だが、全国的に見れば、全適移行を経営改善につなげ、効果を上げた病院もあり、制度上、全適よりも独法化が優れていると決めつけるのは早計だ。
県立病院の六病院長は、独法化によって人材が流出することを危惧する。
県立八重山病院長を務めたこともある石垣市の大浜長照市長も「医師確保は今でも困難で、単独の病院でやっていくのは到底無理」だと指摘する。
独法化によって病院の自主性・独立性が強化され、県の財政負担軽減につながるかもしれないが、独法化にはもともと「自分のことは自分で」という発想が根っこにある。不採算部門の多い離島医療になじむ経営形態なのかどうかは疑問だ。
全適にしろ独法化にしろ、制度を取り入れたから万事うまくいく、というものではない。
各病院が置かれた状況はそれぞれ異なっており、もっと慎重に、時間をかけて、検討すべきである。
独法化によって自己責任の論理が前面に出すぎると、「地域医療よりも大事なのは病院経営」という倒錯が生まれかねない。
住民の不安を解消するためには、県民に開かれた議論を通して問題点を共有していくことが重要だ。最終結論を出すのはまだ早い。
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