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2008年12月24日

◎金大に健康増進拠点 地域貢献の目玉にしたい

 金大に来年度、「健康増進科学センター」(仮称)が創設されることになった。医学系 を擁する大学の使命は高度医療の提供やそれを担う人材養成だが、いまや病気予防や健康管理は臨床医学に劣らぬ重要な研究領域である。金大が人々の身近な関心事である「健康」というテーマに真正面から取り組むことは最たる地域貢献となろう。課題となっている高度な人間ドック導入なども含め、健康医療の拠点としての機能を充実させてほしい。

 金大はセンター設置に合わせ、将来的には附属病院で健康増進に関する外来開設も視野 に入れている。雑誌やインターネットなどで玉石混交の健康情報があふれる中、科学的な根拠に裏付けられた正確な情報を発信していくことは大学の重要な役割でもある。住民の健康維持に取り組む自治体に対しても活発な提言を期待したい。

 「健康増進科学センター」は医薬保健学域に設置され、県内の他大学や自治体、病院、 スポーツジムなどと幅広く連携し、食生活や運動から医療までを網羅するプログラムの開発や、新たな健康増進法、健康指標などを提案する。

 食生活や運動などの生活習慣が病気の発症、進行に深くかかわっていることが近年の研 究で明らかになってきた。メタボリック症候群の改善へ向け、今年度から特定健診が始まり、地域や職場などで保健指導が広がっている。健康に関する知識があっても、それを実行に移し、継続するのは簡単ではない。効果的なプログラム開発は社会的な要請と言ってよいだろう。

 老いていけば完全な健康はあり得ず、長寿社会においては「一病息災」の視点も重要で ある。たとえ慢性疾患があっても、上手に付き合うことも広い意味での健康かもしれない。時代とともに健康の概念が変化する中で「健康増進科学」の学問的な探求も大きなテーマである。

 健康管理や病気予防の取り組みも、幅広い医学の基盤があってこそ成り立つ。金大には 豊富な研究実績があり、優れた人材もいる。センターを金大の看板にするくらいの意気込みで体制を整え、地域の期待にこたえてほしい。

◎今冬の「インフル」 タミフル耐性に警戒を

 米疾病対策センター(CDC)は、この冬に米国で流行が始まったインフルエンザの主 流について治療薬タミフルの効きにくい耐性ウイルスだとして医師に向けて注意を喚起したといわれる。タミフルを多用している日本にとって他人事ではない。今冬は専門家がいずれ必ず襲ってくるだろうとみている新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)とともに、タミフル耐性のウイルスへの備えも必要である。

 というのもタミフル耐性ウイルスによるインフルエンザが人的交流で日本へも感染が広 がってくるのが懸念されるだけでなく、同ウイルスはすでに日本でも検出されているのだ。今年初めの横浜市などや、二月から三、四月にかけて鳥取県で集団発生したインフルエンザから日本としては初めて見つかったのである。

 心臓や腎臓あるいは呼吸器に日常生活の上で軽くない障害になる病気を持った人を除き 、重症化しないのが救いだが、タミフル耐性ウイルスによるインフルエンザに効く治療薬リレンザの備蓄は百三十五万人分といわれる。備蓄が十分かどうかは流行の規模によるため、これで十分かどうかは分からないと言うしかないのである。

 インフルエンザに感染したらタミフル耐性ウイルスによる場合を疑う必要があり、タミ フルだけでなく、リレンザなど別の治療薬を併用しなければならないといわれている。CDCは流行し始めたインフルエンザウイルスはA型の「H1N1」と「H3N2」、B型の計三種類で、「H1N1」が最も多いと指摘している。

 世界保健機関(WHO)によると、二〇〇七年から〇八年冬季に、ヨーロッパではソ連 A型とも呼ばれる「H1N1」からタミフル耐性が各国で高率で検出されている。ノルウェー(67%)、ベルギー(53%)、フランス(47%)等々である。日本のそれは平均でまだ2・8%だが、鳥取県は32・4%と高い。人から人への感染であることは突き止められているが、なぜ高率で検出されたのかは分からない。警戒し、予防に努めるのが基本だ。


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