2008年12月24日 【朝刊】 社会
真相解明 危ぶむ家族/産科医療補償制度1月スタート
脳性まひ限定も懸念
医療事故で脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合、妊産婦に総額三千万円の補償金を支払う「産科医療補償制度(無過失補償制度)」が来年一月からスタートする。障害児を抱えることになる家族の経済的負担を軽減するほか、産科医が訴えられないための手だてにも映る。出産時の脳性まひは、県内でも年間二十―四十件。福祉関係者や産科医らからは「親の気持ちが分かっていない」「仕組みが分かりにくい」など、批判の声も上がっている。(又吉嘉例)
日本産婦人科医会県支部によると、脳性まひ児の家族による産科訴訟は、県内では年に三、四件程度。高良光雄支部長は「家族は赤ちゃんに期待していた分、原因を知りたくて紛争に持ち込むが、医師は仕事どころではなくなる。速やかに救済して、早期解決を図る必要がある」。訴訟が多いことで若手医師も産科を希望しなくなるといい、「このままだと『じり貧』だ」と危機感を持つ。
制度を運営する日本医療機能評価機構(東京)は「脳性まひは産科訴訟において高い割合を占める。一定の確率で起こるため、保険の仕組みになじむ側面もある」と説明。同機構は補償対象の事例を第三者機関として検証、分析し、家族や分娩機関への情報提供も行う。
しかし先天性の障害が補償されず、対象が脳性まひに限られることや、各分娩機関が同機構を通して民間の保険会社に掛け金を支払う点など、制度の不公平性や複雑さを指摘する声も。
障害や病気がある子どもとその家族をサポートする「NPO法人ほほえみ」を運営、自身も息子の宙君を難病で亡くした経験がある福峯静香理事長は「補償対象があまりにも絞られている上に、訴訟を減らしたい、という発想が見え見えの制度」と強調。「お金が欲しくて訴訟を起こす親は誰もいない。『とにかく真実を知りたい』という気持ちに向き合っていない」と力を込めた。
また、制度開始に合わせ、掛け金を負担する分娩機関は分娩料に三万円を加算するため、補償金の実質的な「原資」は、公的医療保険から各妊産婦に支払われる出産育児一時金の上乗せ分でまかなうともいえる。
年間分娩数が八百件以上という糸数病院(那覇市)の糸数健理事長は「国のお金が民間の保険会社に行くのが適切かどうかは疑問。掛け金三万円が高いのか安いのか、補償対象の範囲も含めて検討が必要なのではないか」と話した。
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