日本人の薬好きや医者好きは、江戸時代には始まっていたらしい。1820年ごろの江戸には人口10万人当たり250人もの医者がいた、と言われる▼現在と比較しよう。10万人当たりの医師数は全国平均で206人(医師免許を持つ人の数)。江戸より少ないことに驚きませんか。東北に限ると、6県とも全国平均を下回った状態がずっと続いている ▼歴史家の磯田道史さんの「江戸の備忘録」(朝日新聞出版)で知ったのだが、医療が行き届かない村々を巡回する「郷医」や「郡医者」という制度を設けた藩もあったという。領民にはありがたがられた▼福祉を先取りしたような医療政策がこの時代に早くも行われていたのには、目からウロコだ。いやでも現在の医療崩壊と引き比べてしまう。ただしこの制度、大抵は長続きはしなかったそうだけれど ▼医師の臨床研修を見直す国の検討会が、研修医の受け入れ人数に地域ごとの上限を設ける素案を議論することになった。研修医が地方の病院を嫌って、大都市の病院に集中するのを防ごうという目的▼医師の地域的偏在を是正するには国のある程度の規制が必要に違いない。世界でトップクラスの長寿を支えるのは誰もが容易に受診できる日本の医療環境。薬好きや病院好きでいられるのは、悪いことではない。 2008年12月24日水曜日
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