石油輸出国機構(OPEC)が、来年一月から日量約二百二十万バレルの大幅減産に踏み切ることで合意した。九月以降三回目の減産決定だが、世界的規模で進む急速な景気悪化で石油需要は減退を続けており、合意後も原油価格の下落に歯止めがかからない状況だ。
一度に約二百二十万バレルの減産は、「ヤミ増産」の大幅削減を除けば、一九八二年の生産割当制導入以来、過去最大だ。原油価格急落への産油国の強い危機感の表れといえよう。九月以降の減産量はこれで、計四百二十万バレルに達する。
ニューヨーク原油先物相場は、指標となる米国産標準油種(WTI)で今年一月に初めて一バレル=一〇〇ドルを突破、七月には一四七ドル台の史上最高値を記録した。原油高騰はガソリンなどの値上がりを招き、世界的なインフレ傾向を助長してきた。
しかし、その後は金融危機に端を発した世界経済の先行き不安と歩調を合わせるように下落基調に転じ、わずか五カ月余で最高値の三分の一以下に下落していた。相場を押し上げてきた投機マネーの市場離れや、需要急減が主因だ。
今回の減産合意は原油価格の立て直しを狙ったものだが、下落歯止めの効果は限定的と言わざるを得まい。減産発表後、ニューヨーク市場で原油価格は一時、一バレル=四〇ドルを割り込んだ。OPECの影響力と価格調整能力の限界をあらためて露呈したといえよう。
OPECに合わせて、非OPEC最大の産油国ロシアも、日量三十二万バレルの協調減産に応じる用意があると表明した。
世界的不況に対する不安感は強く、石油需要が回復する見通しは立っていない。最大消費国である米国の景気後退は戦後最長になるとの見方も強まっている。日本や欧州も景気低迷が鮮明化し、中国やインドなど新興国も経済成長にブレーキがかかっている。これまでのような勢いでの需要増は期待できない状況だ。
原油価格の下落は実体経済には数少ないプラス材料となろう。企業や家計にとっては、ガソリンや電気料金の値下がりなど負担軽減につながり、景気の下支えに役立つからだ。
ただ、需要低迷による資源安で世界的にデフレ懸念が強まれば、外需に依存する日本経済にも逆風となろう。原油高を前提にした新エネルギー開発などが失速する恐れもある。脱石油への取り組みを維持し続けることを忘れてはなるまい。
政府は、十二月の月例経済報告で景気の基調判断を「悪化している」とし、前月の「弱まっている」から下方修正した。
基調判断に悪化の文言を使うのはITバブル崩壊後の二〇〇二年二月以来、六年十カ月ぶりだ。基調判断の下方修正は三カ月連続で、今年七度目。景気の急減速に政府としてあらためて危機感を示した形だ。
主要項目では輸出が二カ月連続で「減少」、生産と企業収益は「減少」から「大幅に減少」に変わり、設備投資も「弱含んでいる」から「減少している」に下方修正された。雇用は「悪化しつつある」から「急速に悪化しつつある」となった。
総崩れの感があるが、個人消費だけは「おおむね横ばい」とし「足元の弱い動き」に警戒感を示すにとどめた。家計調査の実質消費支出が横ばい圏内にあるためだ。しかし、消費を支える雇用について報告は、企業の急速な減産が雇用の大幅な調整につながる懸念を記した。
雇用不安の一層の深刻化や賃金下落は消費の冷え込みにつながろう。個人消費は国内総生産(GDP)の六割を占める。消費がしぼめばさらに生産や企業収益が縮む。日本経済が負の循環に陥る可能性が出てきた。
連合は〇九年春闘でベースアップを掲げる。経営側の日本経団連は、先に示した交渉指針で賃上げ抑制姿勢に加え、雇用の安定について原案にあった「最優先」の表現を後退させ「努力目標」とした。既に各地で非正規労働者の解雇などが続き、波紋を広げている。
国や自治体の雇用対策も大切だが、やはり重きをなすのは企業の対応だろう。負の循環に入れば結局自らのためにもならない。大企業を中心に、それぞれができる限り雇用の安定に尽くすべきであろう。
(2008年12月23日掲載)