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2008年12月23日

 高円宮妃久子さまの「鳥の写真」展を見た。自然界の小さな命は美しく、時にはユーモラスだが、厳しい環境の変化を無言で訴えていることに気づく

折も折、分散飼育がきまったトキに思いが飛んだ。放鳥間もない佐渡の一羽がタヌキか何かに襲われて死んだ。環境省は、放鳥した以上は「野鳥」だから、そうした事態もあって当然との立場だ

一方、新潟県は、それでは繁殖実験のモルモットだとして「人為的なことはしない」の原則を改めるよう環境省に申し入れた。野生界は弱肉強食が掟(おきて)である。が、個体数を増やす段階で一定の保護も必要との言い分も分からぬではない。自然のままにあるとは何か。実に難しい

25年前、昭和天皇がのとじま水族館を訪問された時のことを思い出す。陛下は大水槽の中で餌付けされている魚群をご覧になった後、生態系が変わらぬか、との感想を漏らされたのだった。生物学者の目だろう

皇族と自然科学の縁は深い。きょう75歳を迎えられる天皇も生物研究で知られる。ご心労がほぐれ、ゆったりと研究できる日が続くことを静かに願っていきたい。


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