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石原知事:就任丸10年の春へ(その1) 優先政策、問われる年に /東京

 「人間は結局死ぬかもしれない。20年後に。ほとんど死ぬかもね。先進国ほど死ぬよ」。師走の昼下がり、石原慎太郎都知事(76)に08年を振り返ってもらうと、そんな悲観的な言葉が返ってきた。地球温暖化の話題に触れた時のことだ。不況が深刻化しそうな09年春には知事就任から丸10年。「経済性にがんじがらめになったら、何もできませんよ」。来年は都政のプライオリティー(優先順位)が大きく問われる1年になりそうだ。【聞き手・須山勉】

 ◇体力つけ走り直す 海外のパートナーに活路も--新銀行

 --「火の島」(注1)を読ませていただきました。

 ◆おもしろいだろう?(笑)

 --ええ。建設会社内の様子とか、ああいう描写は何かに触発されてお書きになったんですか。

 ◆いい友達がいてね、牛島信ってね、彼も小説を書くんだけど、経済問題の優秀な弁護士なの。彼に「こういう設定ってできる?」とか知恵を借りてね。おかげで(小説に書いた)内紛の駆け引きっていうのはリアリティーがあって、法律的にも間違ってませんから。

 --終わり方に救いがない印象も受けましたが(笑)。

 ◆人間が生きていくと、いろんなことに執着するけどさ、全部何もかも捨てる勇気があったら何でもできるんだよね。その勇気の源泉は何かっていったら、やっぱり官能の問題しかないんだな。

 --さて今年の都政ですが、振り返って印象深い出来事は。

 ◆それは一番厄介だったのは、銀行(新銀行東京)ですよ。

 去年1年もね、どうも危ないなあと思って勉強したんですけどね。いろいろヒアリングしてね。やっぱり官庁も民間も、日本の金融関係者は世界を知らないし、金融っていうビジネスの知識が乏しいね。東京が自治体として、一つのセクターとして持っている可能性っていうのは、はるかに外国人の方が熟知していますよ。

 秘密協定があるから詳しく言えないけど、いくつか外国のセクターと共同作業をして、銀行の体力をつけようと思っていたら、今度の経済危機で向こうが倒れちゃった。だからまた違う方法考えていますけどね。とにかく東京のポテンシャルを認識している相手は世界にいっぱいいる。政府が金融機能強化法を作るのは結構だけど、もともとあれに頼るつもりもなかったし、活路はあります。

 ただ今は、零細企業には貸せないな。あんなバカなことをやって銀行を半分つぶしちゃったんだから。やっぱり体力つけないとね。それでもう一回走り直そうと思ってます。少し時間かかるかもしれないけど、まあ墜落せずに済んだからね。

 --来年はさらに景気が悪化するとの予測もありますが。

 ◆だから、ますます「貸して確かな相手」を選んで貸す以外にないよね、今のところは。そりゃ危ない所はこれ以上貸せませんわ。銀行そのものが棄損されては元も子もないし、せっかくの追加出資を食いつぶしたら意味ないですから。力がつくまで待ってもらって。

 --旧経営陣の責任追及ですが、新銀行の体力をつけている段階はやめておいた方がいい、との意見もあるのでは。

 ◆やっぱりやらざるを得ないでしょう。そうしないとね、あんなずさんな経営がまかり通るわけないんだし、中には犯罪やったヤツまでいるわけだしね。

 マスタープランを隠れみのにしているけど、マスタープランは憲法でもないんでね。この会社の性格はこういうものにしますよ、って形にしているだけだからね。「相手が確かなら担保をいちいち取る必要はない。無担保で貸してもいい」とは言ったよ。ただ「担保のない会社に貸せ」と言ったわけじゃないんでね。企業の可能性にはプラスアルファの要因があるわけでしょう。

 だから「マスタープランに拘束されたから(経営が悪化した)」って言うのは体のいい言い方でね。(旧経営陣を相手に)訴訟するかしないか、それは銀行が判断したらいい。最後に相談は受けるでしょうけれども。

 --新銀行の体力をつけながらでも、旧経営陣の責任を追及することがありうると?

 ◆責任の所在をはっきりさせることも社会的に必要だしね。いま出てくるのは僕の名前だけだからね。僕がポケットに入れたわけじゃないのに、業腹でしようがないよ(笑)。

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 注1 石原知事が雑誌「文學界」に連載していた小説。11月に単行本化された。

毎日新聞のインタビューに答える石原慎太郎都知事

〔都内版〕

毎日新聞 2008年12月23日 地方版

 
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