トヨタ自動車の本年度決算が赤字になる見通しとなった。過去最高益から一転、来年の販売台数すら予測できない苦境に追い込まれた。市場の大幅減に対応する迅速で思い切った体質改善が急務だ。
トヨタは来年三月期連結決算の予想で、営業損益を千五百億円の赤字に下方修正した。十一月初旬の修正から一カ月半で、車づくりなど本業での稼ぎが七千五百億円も減った計算だ。今年三月期には、二兆二千億円もあったことを考えれば、天国と地獄を一年で味わうことになる。
トヨタの今年(暦年、ダイハツ、日野分含まず)の販売台数は、前年比5%減の約八百万台と、落ち幅はさほど大きくない。だが、もうけが多い大型車が米国で売れず、急激な円高が海外で得た利益を八千九百億円も目減りさせた。
「各国市場は底が見えない」。会見で渡辺捷昭社長は自動車産業の置かれた環境をこう説明し、来年の生産や販売台数の計画公表を見送った。ただ、当面は世界販売で「七百万台になっても利益が出る体質づくり」を最大の課題とし、マツダ一社分相当の百万台減をにおわせた。
ホンダも下期決算が千九百億円の赤字に転落する見通しを発表したばかり。両社とも新工場の操業開始を延期するなど、もはや聖域はなくなっている。
十一月の貿易統計の輸出は、自動車の約31%減が響き過去最大の減少率となった。輸出や海外生産の拡大でもうけを増やし、国内では車種の豊富さや販売拠点の多さで「碁盤の目」を埋めるトヨタの戦略は練り直しを迫られている。
トヨタは来年、全工場の一斉休業日を増やし減産を強める。正社員の雇用は守ると明言したが、非正規従業員を三月末に三千人まで減らす計画は変わらない。非正規従業員の大量解雇には、政府や自治体を中心に救済へ動いている。
しかし最終製品をつくる企業が縮小均衡を目指せば、離職者が増えるばかりだ。一人当たりの仕事量を減らし雇用をつくるなど、体力を生かした職の提供方法はある。それは地域に生きる企業市民の責務でもあろう。
下請け企業を含めたグループ全体で大胆な改善を進め、小型車や低燃費・ハイブリッド車の積極投入で回復を図るというシナリオは、トヨタの体質や技術力から見て効果があるはずだ。これが製造業全体の再生をけん引することを期待したい。
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