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【社説】

高校新指導要領 教師の力量が問われる

2008年12月23日

 高校の新しい学習指導要領案では、卒業単位数は変わらないが、言語活動や理数、文化などの広範囲で改善が行われた。増強した感がある。重要なのは授業の質であり、教師の力量が問われる。

 学習指導要領は約十年ごとに改定されている。今回は二〇〇四年度に作業がスタートし、高校の新しい指導要領は来年四月から一年間の周知期間を経て、一〇年度から一部が先行実施される。

 改定案での卒業単位数は「七十四以上」で現行と変わらない。

 だが、内容は増強傾向がうかがえる。「細かな事象や高度な事柄には深入りしない」という「歯止め規定」が削除され、全日制の週当たり授業時数は三十単位時間が標準としながら「必要な場合は増加できる」と明文化された。

 教科別でみると、英語の強化が顕著だ。高校で習う標準的な単語数は千三百語が千八百語に増える。すでに改定が告示された中学校では三百語増えるから、中高で計三千語学ぶことになる。これで韓国や中国並みになるという。

 さらに「授業は英語で行うことが基本」という規定が新設された。いまの高校英語は文法や訳読に偏っているため、コミュニケーション能力を高める狙いという。

 外国語学習だから当然と言えばそれまでだが、要領に明記すると現場は戸惑わないか。教師の研修を増やすなどの対策がほしい。

 英語の授業内容が偏る原因は大学入試にもある。入試問題が「読み・書き」中心である限り、学ぶ側の姿勢は変わらないだろう。

 数学では統計に関する内容が必修化され、公民では宗教や文化に関する学習の充実が図られる。

 一方で、学習の遅れがちな生徒には義務教育段階の内容をあらためて指導するよう求めている。

 教えることが増えれば教師の負担も大きくなる。文部科学省は指導要領充実で学力を向上させたいのだろうが、それには教員を増やし、質を高めることも必要だ。

 ところが、人員増はハードルが高い。生徒数は一九八九年をピークに減っており、国、自治体とも財政的な問題もある。

 改定案を現状で実現していくには、教師が自ら研さんを積み、授業の中身を改良するしかない。力量が問われることになる。

 「歯止め」削除は現場の裁量が広がったと受け止めることもできる。それは知的好奇心を高める機会にもなる。生徒が引き込まれるような授業をつくってほしい。

 

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