音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説1 保育所の認可基準は地方に任せよ(12/23)

 少子化対策の基本ともいえる保育所の改革が進まない。待機児童が今年は5年ぶりに増え、病児保育や休日保育など多様なニーズへの対応も不十分だ。地方分権改革推進委員会の勧告に続き、規制改革会議が今年も保育分野の改革の必要性を指摘した。硬直した制度を変えるには、まず地方が実情に合わせて機動的に対策を打てる体制が重要である。

 国は児童福祉法に基づく省令で、認可保育所について子ども1人当たりの面積や職員、保育時間などの最低基準を詳細に定めている。それを下回れば補助金を支給しない。

 子どもの健全な発育のため床面積が広いに越したことはないが、待機児の多い都市部では、基準を満たす用地を確保できず保育所の新設をあきらめざるをえない場合もある。

 全国知事会は地域の実情に応じて基準を決めるのを認めてほしいと要求している。東京都が独自の基準を設け、国の補助を受けない認証保育所を発足させたのは、このままでは住民ニーズにこたえられないとの判断からだ。政府の地方分権改革推進委員会も今月初め、基準作りを地方に委ねたらどうかという趣旨の勧告をした。もっともな考え方である。

 認可保育所の基準について、国が科学的裏付けに基づき目安を定めるのはよい。しかし保育所のすべてに細かい注文をつけ、その基準を少しでもはみ出せば補助の対象外とはいかがなものか。自治体とて責任をもって適切な基準を考えるはず。保育の質が危うくなるとは思えない。

 今は国や自治体から多額の補助金を受ける認可保育所と、補助がなく質もバラバラな認可外保育所が併存する。認可保育所に預けられない親は認可外保育所を利用するしかない。同じ納税者でも受けられるサービスに格差がある。劣悪な保育所で育つ子どもへの影響も心配だ。

 基準作りが自治体に移り緩和されれば、補助金の対象となる保育所が増え、個々の保育所への補助金を減らさざるをえないかもしれない。保育所予算の増額が望ましいのは言うまでもないが、経営効率化を促すほか、高額所得者らの利用料を引き上げることも検討課題となろう。

 一方、かねて保育所問題の改善を訴えている規制改革会議は22日の答申で、国の補助金を保育所にではなく利用者である親に直接渡す方式も提言した。不公平を是正するほか事業者間の競争を促して夜間保育などきめ細かいサービスが増えるとの判断だ。株式会社が経営する保育所への過剰な制約や負担の見直しとともに、真剣に検討すべきである。

社説・春秋記事一覧