「霞が関文学」という言葉を聞くようになった。立派な文学作品でも連想しそうだが、全くかけ離れた意味だ。
「てにをは」など文書の表現を少し変えて改革を骨抜きにする、官僚の巧妙な手口を指す。官庁街の東京・霞が関にちなんで名付けられている。その霞が関文学と思える事態を目の当たりにした。政府の地方分権改革推進委員会が先に出した二次勧告をめぐってだ。
国の出先機関職員の三万五千人削減を首相に提出した勧告に盛り込んだのだが、それを骨抜きにしかねない二行の文が挿入されていた。人員削減とは違う部分を政府に求める、とする内容だった。つまり人員削減は政府に求めないとも読める。
勧告は直前まで修正を加えて慌ただしい中で提出された。後日気付いた有識者らの委員側は緊急会合を開き、「事務局の官僚が意図的に挿入した」と非難した。事務局側は「そんな意図はなかった」としたが、人員削減が骨抜きにならぬよう委員側は急きょ、削減を求める追加決議をした。
事務局は本来、委員を支援すべき部署だが、地方分権に反対する各省庁からの出向職員が多い。改革を内部から阻む「獅子身中の虫」となる危険を常にはらむ。
わずか二行さえ気が抜けぬ神経戦が続く地方分権改革。霞が関文学の名作にしてはならない。